動画を見ていること前提で話が進むので、先に動画を見ることをオススメします。
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm33905904
ここは、鉄華団団長、オルガ・イツカの体の中。
人間の体の中には、約37兆2千億個もの細胞たちが毎日毎日、24時間365日元気に働いている。
タカキ・ウノに負けないくらい休まず働いている細胞たちの中で、黒い戦闘服を着ている男の細胞たちはリンパ球と呼ばれているキラーT細胞の軍隊だ。
「オラァ!もっと声出せ!!それでもT細胞か!お前ら!!」
「「「「イエッサー!!」」」」
そのキラーT細胞たちは今、訓練の真っ最中であった。
キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)。ヘルパーT細胞の命令によって出勤する。ウィルス感染細胞や癌細胞などの異物を認識して破壊する殺し屋。
「俺たちT細胞はこの身体を守る最終兵器だぞ!その最終兵器が弱くてどうする!己を鍛えろボケ共がぁぁぁ!!」
キラーT細胞の叫び声は近くの休憩所まで届く。
その休憩所で休憩をしているのは、鉄血球T0319番と樹状細胞、マクロファージ、そしてマクギリスT細胞と制御性T細胞。
「暑苦しいな。こんなところまで怒鳴り声が聞こえてくる。仮にもギャラルホルンの一員ならば、もう少し落ち着きをもってもらいたいものだ」
キラーT細胞の怒鳴り声を耳にしたマクギリスT細胞はうんざりしたようにそう言った。
ヘルパーT細胞。外敵侵入の知らせを受け、戦略を決める司令官。キラーT細胞に出動命令を出す。この体内世界では火星の特殊な環境状態により、『マクギリスT細胞』に細胞分化している。(バエル馬鹿なだけで役割自体はヘルパーT細胞となんら変わりはない)
「お茶入れますね~」
「感謝する」
「すまねぇ、恩にきる」
マクロファージの入れたお茶を飲むマクギリスT細胞と鉄血球T0319番。
「やはり、ティータイムは……」
お茶を飲んだマクギリスT細胞がそう呟いたその時──
「うわああぁぁぁぁぁ!!」
キラーT細胞に投げ飛ばされたT細胞の部下の一人が、休憩所まで飛んできて、マクギリスT細胞はそれに巻き込まれる。
「ああぁぁぁぁぁ!!」
回り回るマクギリスT細胞。
鉄血球T0319番も重なり合って、
「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
そこにキラーT細胞もやって来て、悪びれもせずにこう言った。
「おっと司令官殿。勢い良く投げ過ぎちまったな」
「あぁぁ……ヘルパーT司令に直撃した……」
そんなキラーT細胞の態度に後ろから着いてきた部下たちは萎縮している。
マクギリスT細胞は静かに激怒した。
「キラーT……前から思っていたが、もう少し冷静に物事を考える事は出来ないのか?昔から効率というものを考えない男だったな、君は。まるで成長がない。もう少しアグニカ・カイエルを見習ってはどうだ?」
「こっちも仕事なんでね。あんたの司令に合わせて、きちっと攻撃連携出来るように鍛えなきゃならんのですよ」
マクギリスT細胞の言葉にキラーT細胞も反論する。
「いざって時にへなちょこの戦闘員しか居ないと困るのはそっちじゃないスか?」
「君たちはもっと大局を見る必要がある。私は確信しているのだ。君たちが自分で考え、動く事が出来るようになれば、私は…俺は本当に望んでいたバエルを手に入れられるかもしれない!」
「あんたは昔から何言ってんのか、意味分かんねぇんだよ!!」
彼らの言い合いを横で見ていたキラーT細胞の部下たちは困惑する。
「な、なんだ……?」
「あの二人……どういう関係なんだ?上司と部下では……」
「正直、ピンと来ませんね」
困惑するキラーT細胞の部下たちと復活した鉄血球T0319番を見た樹状細胞は休憩所に置いてあったアルバムの一つに手を掛けながら、笑みを溢した。
「ふふっ、知りたい?」
樹状細胞。体内に侵入してきた細菌や、ウィルス感染細胞などの断片を抗原として提示し、他の免疫細胞に伝える。T細胞の育成にも関わっている。
「彼らはね……」
樹状細胞は手に取ったアルバムから一枚の写真を抜き出して、彼らに見せる。
そして、マクギリスT細胞とキラーT細胞の胸腺学校時代について話し始めた。
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「「おっおっお~♪俺たち無敵のT細胞~♪」」
胸腺。T細胞の元になる細胞(前駆細胞)を立派なT細胞に分化・成熟させるためのリンパ器官。
その胸腺に連なる山の一角に掲げられた『THYMUS』と書かれたランドマークの下で掛け声を響かせながら、前駆細胞たちはランニングをしていた。
「ランニング終わり!!集合!!」
「「「「イエッサー!!」」」」
その時、黒い帽子に『上皮』と書かれたT細胞が前駆細胞たちを呼びつける。
すると前駆細胞たちはすぐにランニングを終え、そのT細胞の元に集まった。
「地獄へようこそ!!今日からたっぷりと鍛えてやるから、覚悟しておけ!!」
「「「「イエッサー!!」」」」
胸腺上皮細胞。胸腺を形成する上皮細胞。リンパ球を飼育し、T細胞の分化を助けている。
今日は胸腺学校の入学式。今は試験前の準備運動であるランニングが終わったところだ。
「さっそくだが、貴様らには今からテストを受けてもらう!外敵である抗原に反応出来るかどうかのテストをな」
胸腺上皮細胞の教官はそう言って、マクロファージ、樹状細胞とともにテストの準備を始める。
そのテストのため、持ってこられたパネルには……
「離しやがれっ!!…頼む!頼む!……待ってくれ!鉄華団の団長である俺の命だけは…!!」
鉄血球が挟まって動けずにいた。
つまり──捕獲されていた。
「ウィルス感染した鉄血球と普通の鉄血球が捕獲された二種類のパネルがある。突然現れるパネルの内、ウィルス感染した鉄血球のパネルの方を各自で判断して攻撃しろ」
胸腺上皮細胞はパネルに挟まって動けない鉄血球の懇願を無視して前駆細胞たちにそう説明する。
「「「「サー!イエッサー!!」」」」
前駆細胞たちの思い切りのいい返事に鉄血球は……
「勘弁してくれよ……」
ガクッ、と項垂れた。
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「心してかかれ!!」
「「「「サー!イエッサー!!」」」」
胸腺上皮細胞の合図で一斉に飛び出した前駆細胞たち。
その中の一人、後にキラーT細胞となる金髪の少年は走っている途中、視線の先にマクロファージが支えるパネルを見た。
そのパネルに挟まって動けずにいる鉄血球の頭には帽子がある。奇妙な色と模様をした細かな棘がたくさん生えている大きめで丸い帽子だ。
(あれは……もしかしてウィルス感染した鉄血球かな?)
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ……!」
「よーし!!」
金髪の少年が意気込んでウィルス感染した鉄血球のパネルを攻撃しようとしたその時──
「バエルッ!!」
という謎の掛け声とともに、金髪の少年は後にヘルパーT細胞となる茶髪のメガネを掛けた少年に踏み台にされた。
「ぐわっ!」
金髪の少年の頭を踏み台にして、高く飛び上がった茶髪のメガネ少年は思いっきり拳を振りかざす。
「うおりゃあぁぁ!!」
その拳を受けたパネルは綺麗に真っ二つに割れ、鉄血球は
「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
踏み台にされた衝撃で鉄血球のパネルとともに地に伏した金髪の少年は蹴られた頭を押さえながら、茶髪のメガネ少年に抗議する。
「お、おい!そのパネルは僕が先に……」
「バエルを持つ私に逆らうか?」
「は?」
「それと私の名はマクギリスT細胞だ」
「は?」
マクギリスT細胞と名乗った茶髪のメガネ少年の意味不明な言動に金髪の少年はただ首を傾げるのみであった。
マクギリスT細胞たちが胸腺学校でT細胞になるため訓練を続けていたとある日の夜。
マクギリスT細胞は胸腺学校の宿舎を抜け出し、森で一人、自主練をしていた。
「バエル!バエル!バエル!バエル!」
そう呟きながらシャドーボクシングをしていると、どこからか声が聞こえた。
「とおりゃあぁぁ!!」
「う"う"っ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
声は二つ。一つはマクギリスT細胞のルームメイトである金髪の少年の声。もう一つは鉄血球の声だ。
声の聞こえてきた方向へ足を進めると、そこではマクギリスT細胞と同様に自主練をしている金髪の少年と『"希望の花"訓練』をしている鉄血球がいた。
"希望の花"訓練。鉄血球はいつでも希望の花を咲かせられるように訓練する。
(彼らも頑張っている…俺も頑張らなくてはな……)
そう思ったマクギリスT細胞は再び訓練を始めた。
「バエル!バエル!バエル!バエル!」
「とおりゃあぁぁ!!」
「う"う"っ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
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(何あれ。変人の集団?通報しますよ……)
そんな感想を抱きながら、彼らの様子を宿舎のベランダから見ていたのは、後に制御性T細胞となる前駆細胞の少女だった。
「青春って感じだねぇ」
その少女の隣に樹状細胞がやってきて、カメラを片手にそう言った。
樹状細胞の言葉に前駆細胞の少女は疑問を抱き……
(そんな風に見えますかね……)
そう心の中で呟いた。
そして、胸腺学校での日々は過ぎていき、卒業の時期となった。
「お前たちにはこれから『正の選択』テストを受けてもらう!!」
正の選択・負の選択。胸腺では有用なT細胞を選択して生存させる"正の選択"と、自己を攻撃する有害なT細胞を排除する"負の選択"が行われている。正常な鉄血球を攻撃すると反撃される。最終的にT細胞になれるのはわずか数%といわれている。
「ルールはいつもと同じ。制限時間までにウィルス感染した鉄血球のパネルを攻撃すればいい!……では、かかれー!!」
視界を遮る煙幕の中、前駆細胞たちが試験場へと走っていく。
その中の一人、黒髪パーマの前駆細胞が曲がり角から見える鉄血球のパネルを発見。
煙幕に視界を遮られて、影しか見えないが、その鉄血球のパネルの頭には何やら帽子のようなものが見える。
「あの頭……抗原発見!よっしゃあ!!」
黒髪パーマの前駆細胞は思いっきり拳を振りかぶり、鉄血球のパネルを殴り付ける。
しかし──
「う"う"っ!」
ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!
──鉄血球は『発砲作用』で反撃してきた。
「何でえぇ~?」
黒髪パーマの前駆細胞は鉄血球にジュウで撃たれて倒れ込み、その倒れ込んだ先の床が突如失くなる。
黒髪パーマの前駆細胞はそのまま地の底へと落ちていった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!」
そして、鉄血球が
「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
「アウトー!それは漬物石を持った鉄血球だー!!」
胸腺上皮細胞のアナウンスが試験場に響く。
そのアナウンスを聞いたマクギリスT細胞は走りながら、今回の試験について考えていた。
(なるほど……今回はいつもより難易度が高いらしいな……)
そう思考するマクギリスT細胞の前に鉄血球のパネルが現れる。
「なっ!?」
その鉄血球のパネルも何かを被っていた。
マクギリスT細胞は拳を構えながら、そのパネルを注意深く観察する。
(……いや、これは……)
その鉄血球のパネルの頭にあるのは、ウィルス感染した鉄血球の被る帽子ではなかった。
(……これは『防災頭巾を被った鉄血球』!)
そう判断すると同時に背後から何者かの気配を感じ取る。
その気配は今まで何度も拳を撃ってきたウィルス感染鉄血球独特の気配だった。
(間違いない……こっちだ!!)
そう判断したマクギリスT細胞は背後のパネルに『バエル神拳』を打ち込んだ。
「バエルッ!!」
「う"う"っ!」
その時、鉄血球が
「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
ウィルス感染した鉄血球を間違えずに攻撃したマクギリスT細胞は晴れてT細胞に分化する事が出来た。
「マクギリス!よくやった!合格だ!!」
胸腺上皮細胞のアナウンスを聞いたマクギリスT細胞は試験場を後にしながら、嬉しさをこう表した。
「バエルはよみがえった!!」
その後、金髪の前駆細胞も女性の前駆細胞も、なんとか合格する事ができ、それぞれキラーT細胞、制御性T細胞に分化する事が出来たのだった。
『正の選択・負の選択』試験が終わったその日の夕刻。
尿道へと繋がる川の近くで座り込み、夕陽を浴びながら佇む一人の男へとマクギリスT細胞が声をかけた。
「良かったじゃないか。合格出来てさ」
「ふん、嫌みにしか聞こえねぇよ……」
その男──キラーT細胞に分化した金髪の青年は、一番最初に合格出来たマクギリスT細胞を少し妬みつつ、路傍の石を川へ向けて投げた。
その石は何故か川を泳いでいた鉄血球に当たり──
「う"う"っ!」
その時、鉄血球が
「……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……」
筆が乗らない……
夏ですし、300年くらい休暇を取ります……
嘘です。7月19日の異世界オルガ二周年に向けてまだまだ頑張らないと!!