用語に関しては次回の話で
その少女は天才だった。
ずば抜けた頭脳に、凄まじい発想力。あらゆる物が他とは一線を画す少女は、神童と持て囃された。
少女が狂ったのは、10歳になった時だった。
少女は嬉々として、母親を自分が作ったアイテムの実験と称して惨殺した。それを発見した父親も、ついでにと殺したのだ。
その後、少女は行方をくらました。
2年後、とある研究所で発見された12歳の少女は、自らが作成したアイテムで、無機質な顔で、孤児らしき子供達が強化ガラスを隔てた部屋で惨殺されていくのを見ていた。
その時彼女の顔を見た者達は口を揃えてこう言った。
まるで機械のようだ、と。
◇
カタカタと、照明が消された部屋にキーボードを叩く音が響く。ブルーライトカットの眼鏡をかけたつたえは、自身が作り出したサポートアイテムのプログラミングをしていた。つたえの集中力は凄まじいもので、幾つかの例外を除き彼女の意識をこちらに向けることは出来ない程だ。
すると、その例外の1つが起こった。
プルルルルルル、と電子音が彼女の携帯から発せられた。何の変哲もない着信音だが、知り合いの着信音にはお気に入りのアーティストの曲を入れている彼女にとって、それは知り合い以外の存在からの電話という事になる。そして、知り合い以外からの電話は1種類に限られる。
「どーもおじさん。お仕事?」
『その通りだ』
「古ちゃんじゃダメなの?私いまプログラミング中なんだけど」
『古忌君では間に合わん。君達がいるのが東京で、今回のターゲットは鹿児島にいる』
「まーたそういうやつかぁ………ねぇ、現地の
作業を中断したつたえは、
『例の如く、
「うへぇ………ねぇおじさん。大概その2年前の事件で死んでない?古ちゃんと私とツーちゃん以外の処刑人って今何人生き残ってんの?」
『悪いが、それは言えない』
「ふーん、言えない程度には少ないってことね」
つたえは処刑人になったばかりの頃、俺が新人だった頃は1つの県に2〜3人はいたぞ、という古忌の言葉を思い出していた。しかしつたえはそれに対する興味をすぐに捨て去った。調べて、知った所でメリットは皆無だからだ。
「お仕事の内容は?」
『とある
「掃討ね、じゃあ
つたえがパソコンのキーボードを叩くと、何かの操作画面に切り替わった。するとコントローラーを傍らから取り出し、その何かの操作を始めた。別の方法でそれを見ていた男はそれの正体を呟いた。
『ドローンか』
「うん、輸送用のね。中の兵器が殺害用」
『そうか………まぁいい、ナビゲートはいるか?』
「場所のデータ送ってくれればこっちで片付けるよー」
『了解した。すぐに送ろう』
送られてきたデータをドローンに入力し、その場所へ向けて飛ばす。やがてその真上に到着すると、ドローンに備え付けられていた箱の下部が開いた。しかし、中には何も入っていない。
『………どういう事だ?』
「見てれば分かるよー」
つたえはコントローラーを元の場所に仕舞うと、再びキーボードで何かを入力していく。
すると、
『ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!??!!?』
そこにいた者達が、耳障りな悲鳴を上げる。男は困惑した様子でそれを見ていた。なぜなら人間が段々と、何かに削られていっているからだ。困惑する男につたえは得意気に説明を始めた。
「対人用超極細型細胞切除装置。簡単に言えばナノマシンだね。まぁ殺人用だから私はナノウイルスなんて呼んでるけどね」
まぁまだ調整しきれてなくて、近くで使うと自分も巻き込まれるんだけど、とつたえは加える。
『ナノマシン……またオーバーテクノロジーな物を………』
「いやーそうでもないよ?私が使ってるのと同レベルの設備さえ渡してあげれば、今の技術レベルなら結構な人数が完成させれると思うけど」
『………本当か?』
「うん」
つたえの言葉に、男は頭を抱えた。捕縛当時、ビルボードチャートにて26位と47位という高順位を誇る2人のヒーローを、まるで紙屑の様に引き裂いた、彼女が
「後片付けはよろしくねー」
『了解した。それと、もう1つ仕事があるんだが………』
「……切るねー」
『1週間後から雄英n』
ブツッ、と電話を強引に切断する。つたえは切断直前に聞こえた「雄英」という言葉に気分を沈める。
「はぁ、何で私まで………てか私まだ14なんだけど………」
仕事だからという理由で回避出来ない面倒事に、つたえは深いため息をつく。ふと携帯を見ると、メールが届いていた。
『書類等は後日送る』
「はぁぁぁぁあ……………」
再びため息をついてから、つたえはアイテムのプログラミングを再開する。キーボードを叩く音のペースが、心なしか先程よりも遅かった。
◇
私は、よく夢を見る。夢の中の登場人物は2人だけ、私と古ちゃん、いや古忌開介だ。
内容は単純、私と彼が初めて会った時の映像だ。2人のヒーローが息絶え、死体となって転がっている研究所から始まる。
「んー、お前が稲山つたえかな?」
「………」
「沈黙は肯定。んじゃあまぁ………」
そう、ここまでは良い。ここまでの私は、彼の一挙一動を見逃さないよう集中し、どう殺すのが最適か、最速かを考えていた。
彼の次の言葉が、私と彼の圧倒的な実力差をひっくり返したのだ。
「殺す」
これだ。これがダメなのだ。当時の私はこの言葉を彼から贈られた瞬間、原形も残さずグチャグチャになる確かなヴィジョンが見えた、見えてしまった。
為す術もなく、彼が振るうナイフが私の首に吸い込まれていく様を見る。
豆腐のように首が切断され、私は死んだ。
「っ!!?!?」
目を覚ます。私はいつも、殺された時点で目を覚ますのだ。
「………気持ち悪い」
私は先程まで見ていた悪夢のせいで汗だくになっていた。シャワーを浴びようとベッドから出てリビングへの扉を開ける。するとそこにはツーちゃんがいた。
「おはよう……」
「おはよう、また悪夢?」
「うん……」
「よく正気でいられるわね」
私の悪夢の内容を知るツーちゃんが言う。確かに、普通の人間ならば知り合いに殺される夢を見続けたりすれば、おかしくなっても不思議ではない。私が正気な理由は、一重に、夢の中の彼が古忌開介ではない、という確信があるからだ。
「まぁ古ちゃんじゃないって分かってればどうにでもなるよ」
「古ちゃんじゃないって、開介なんでしょ?貴女を殺すの」
「ううん、古ちゃんじゃない。古ちゃんにしては殺され方が
「呆気ない?」
「あの古ちゃんだよ?一撃で殺される訳ないじゃん」
「あぁ、確かに……」
納得した様子のツーちゃんに、シャワーを浴びてくると一言伝え、浴室に向かう。鏡に映る自分を見て、ふとアイデアが浮かんだ。
「肉体改造………」
肉体の一部分を機械化する。本来なら倫理観から許されないアイデアだが、技術者と被験者が同じならば問題は無いだろう。
「後でやってみるか」
湯船に浮かぶ泡の如く、アイデアが浮かんでは消えていく。どれが最善か、それを考える私の顔には笑みが浮かんでいた。
◇
P.S.あの後肉体改造実験を行った結果両足を骨折。実験で足に入れた装置のおかげで治りは早くなるが絶対安静を言い渡された。古ちゃんに爆笑され、ツーちゃんにものっそい怒られた。