響オルタさんは怨讐の化身を呼んでしまったようです 作:まだお
今回は番外として自分の一番好きなマリアさんのネタで書きました。
主人公はどっちかというとネタに全振りしてますんで閲覧注意ですネ。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ここだけの話、ファリア神父の名前を間違えたカスがいるらしいです。
そんな奴は見つけ次第出荷してください…
私は今から世界に向けて宣戦布告をする。
セレナが命をかけて守った世界、例えそれを敵に回したとしても為すべきことのために戦い抜かなければならない。
セレナが残したくれたアガートラームに誓って。
ただ…この変なのは残して欲しくなかったなぁ
「ラァー、ラァー、んん〜発声練習バッチリ!いつでも良くってよマリアさん!」
どこから入ったのか準備のために楽屋に入った私を待っていたのは、セレナを失った時、入れ替わるようにして現れた黒髪の少年だった。
それだけならまぁいい。
いや良くないけど。
問題はこの男の子が女装していて、今にもステージに出れますと主張して来ることだ。
こうならないようにあの2人に見張っておくよう頼んだはずなのに…
それからドタバタと音がしたかと思うと慌てた様子で2人が駆け込んで来た。
「こら!ぐだお!今から歌うのはマリアだけデェス。お前は大人しくわたし達と行くデス!」
「いつも言ってるでしょ、マリアの邪魔をするならもぐよ?」
「くっ!2人にはバレないようにこっそり楽屋に潜んだ迫なのに!というか調ちゃん、もぐって一体何を…あっハイ、俺が悪かったからそれ以上その紅い工具を近づけないでください。やっぱりこの子バーサーカーなんじゃないかな、うん」
遠い目で空を見上げる私の後ろでは、調がシュルシャガナを展開して黒髪の少年にじりじりと近寄っていた。
それを切歌が止めて、更に少年が煽るというのが最早日常とかしつつある。
セレナ、お姉ちゃんの胃は限界です。
この男の子との出会いは私がセレナを失った時まで遡る。
あの時、セレナは私の目の前でその命を燃やし尽くしてしまった。
そして残ったのはあの子が纏っていたアガートラームだけ…の筈だった。
「やぁやぁ、君がマリアちゃん?俺はセレナちゃんからのお願い君に仕えることになったサーヴァントだよ。呼び方はガーチャーでもぐだおでも回す方ののっぶでも好きな呼び方でウェルカム!」
いつものように実験を終え与えられた自室に戻って来た私は、見知らぬ男性がいる事に目を見張る。
F.I.S.の人…ではなさそうだし、私達と同じで境遇の子に男性がいるなんて聞いたこともない。
何よりこの人は私の聞き間違いでなければ、セレナからのお願いでと言ったはず。
少なくともF.I.S.の職員ならマムを除いてセレナのお願いなんて聞かないし、私達と同じ境遇の子ならばセレナのお願いとは言えF.I.S.の目を忍んでここまで来ることは不可能だ。
状況が読み込めず目を白黒させる私に男の人は続けてこう言った。
「うんうん、よく分からないよね。大丈夫!俺も最初はそうだった。快楽天ビーストにピチュられたと思ったらなんか覚者ぽい人にコンティニュー?て聞かれて思わず「はい」を選んだら炎の中。説明不足にも程があるネ!」
「まぁ、今の俺の話は置いといて一つ間違いないのは俺は君の味方だよマリア。辛かったね、よく頑張ったね、さぁ俺の胸の中で泣いていいんだよおいで?」
私に向かって両手を広げて慈愛の目を向けて来る。
それはまるで娘を見守る親のようでさえあった。
私は数歩後ずさったあと全力で彼に向かって駆け出してその胸に飛び込みー
蹴りをかましてやった。
「weak!99999!」とよく分からないことを叫びながら崩れ落ちる男性を睨みつける。
当然だ!セレナはたしかに私の目の前で瓦礫にのまれて…
それを1番近くで見たのは私だし何度も夢だと思おうともしたし、本当に夢ならばどれ程良かったか。
だがあれは現実なのだ、どれだけ辛くとも現実…なのだ。
だと言うのにこの男はセレナの名を出して私の関心を向けようとした。
それはその時の私にとって、セレナの死をダシにして私を利用しようとする思えなかった。
きっとロクな奴ではない、締め上げてセレナの名前を出した事を後悔させてやると私は考えながら、未だうめき声を上げて床でのたうち回る男性を睨みつけ続けるのだった。
それから月日が流れて、私は未だにその男性…いや、男の子であるぐだおと一緒にいる。
結局、私はぐだおの話を信じざるを得なかったのだ。
なにせ彼は、私とセレナしか知らないような事を言い当てるし、私がセレナならばこう言うだろうと思うことを言ってのけた、それに自由に姿を消したり歳をとらなかったりと普通の人間、と言うには難しかった。
「どうしたのマリア?難しい顔しちゃって」
今もよく分からないY字のようなポーズを取りつつ、顔だけ私の方に向けて来る。
彼の奇行は今に始まった事ではないが、本当によく分からない事をする人だ。
以前、背伸びでもしているのかと思って声をかけたところ返ってきた答えは「ローマを感じている」だったかな。
私が軽い頭痛を覚えながら「体が凝っているならほぐしてあげようかと思ったけど大丈夫そうね」と言ったところ、彼は土下座しながらお願いして来たのだった。
それ以来、Y字のポーズを取りながらチラチラと私の方を見てくることが増えた気がする。
「デェス!ぐたお、いつになったらローマを感じることができるデスか?そろそろ腕が震えてきたデス!」
「甘い、甘いよ!切ちゃん。ローマは一日にしてならず、始祖皇帝のお告げは簡単には聞けないのだ!」
ただ、このF.I.S.という機関において彼はたしかに私達の味方だった。
彼はいつのまにか調や切歌からも信頼されており、今のように切歌を偶に奇行に誘っては調にお仕置きされるのを繰り返している。
恐らくこの後も席を外している調が戻ってきたらキツい一撃を貰うのだろう。
私は、それを想像して笑ってしまうのだった。
切歌とふざけて調にしばかれてマリアを笑わせて(偶に胃にダイレクトアタック)するそんな日常を書きたい