響オルタさんは怨讐の化身を呼んでしまったようです   作:まだお

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あけましておめでとうございます。
新年早々駄文でお目汚しを失礼しますが、良ければ読んでいただけると幸いです。

PS
ユニゾン奏が当たって小躍りしてたらFGOで闇鍋ガチャ…だと…
皆さまは闇鍋いかれますか?
私は逝きます(白目)



響オルタさんに陽だまりが少しだけ出来たようです

まだ朝日が昇って間もない時間。

わたしは山の奥にある開けた場所でアヴェンジャーと対峙していた。

 

「では始めるぞ」

 

「準備は出来てる。どこからでもかかってくれば?」

 

挑発するように手まねきをしてみるけど、こんな事で釣られるような相手じゃないっていうのは今までの訓練で身にしみている。

ただ、それでも自分を奮い立たせることできた。

常に強気であれ、敵を前にして弱音を吐くなとは彼の言葉である。

どんなに不利な状況でも不敵に笑えば相手は警戒して手を緩めることがある、そう教えられた時は何を言っているのか分からなかったが、彼と戦う内に何となく理解できた。

確かに、わたしが攻め込んでいる時に見せるアヴェンジャーの笑みは背筋を凍らせるものがある。

要は相手に不利を悟らせない、若しくは何かあるのかもしれないと思わせることが大切なのだと思う。

ノイズ相手に意味があるかは分からないけど、少なくともやらないよりマシだ。

不意にアヴェンジャーの姿がブレた。

これは彼が人の限界を超える程の速度で動いているということ、らしい。

最初に見た時は驚いたけど、流石にもう慣れた!

わたしは、ふぅと息を吐いて神経を研ぎ澄ませる。

自分を中心にじわりじわりと円のような物が広がっていく感覚がしてきた。

そして、それが広がり切る前に何かがわたしの後ろに近づいて来るのを感じる。

 

「そこっ!」

 

わたしは振り向きざまに右足ので近づいて来たナニかを蹴りつける。

 

「クッ、ハハハハハ。いいぞ、今の攻撃に反応できるならば早々に不意を突かれることはあるまいよ」

 

蹴りつけられたアヴェンジャーは咄嗟に左腕でガードして飛び退く。

カウンターで合わせれたつもりだったけど、あんまり効いてなさそうだな。

わたしは彼に駆け寄り距離を詰めてから拳を乱れ撃つ。

一発一発に相手を倒すという気持ちと力を込めて撃ち込んだつもりだったけど、アヴェンジャーには難なく捌かれてしまった。

やっぱり彼と正面から撃ち合うと不利なのはわたしか…

 

「ふっ、工夫を凝らせよマスター!力量が上のもの相手に正攻法では勝てぬぞ?」

 

「このっ…舐めるな!」

 

その後もわたしとアヴェンジャーの修行は続いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはりお前には才があるな。僅かな期間でここまで力をつけるとは正直予想外だ」

 

「…それ、今言われても嫌味にしか聞こえないんだけど。結局勝てなかったし」

 

あれから2時間、途中休憩などを挟みながら訓練を続けたけど、結局わたしはアヴェンジャーを倒すことはできなかった。

 

「当たり前だ。この身は人ならざる超常のもの、仮にも人間であるお前に負けたとあればサーヴァントの名折れだ」

 

アヴェンジャーはどこから取り出したのか、紙巻きの煙草に火を付けて一息吸うと続ける。

 

「だが才があるというのも本当のことだ。少なくとも生前の俺よりは飲み込みも成長も早い」

 

「才能があったって…結局負けてるなら意味ないでしょ。わたしは万が一にもあいつら負けるわけにはいかないんだから」

 

絞り出すようにしてわたしの口から出た言葉にアヴェンジャーは答えなかった。

 

 

 

 

山奥とはいえ昼頃になれば人が通る可能性もある。

だから訓練は早朝から始めて昼前には終わることが多かった。

訓練が終わってからは、わたしもアヴェンジャーもそれぞれ思いのままに行動する。

まぁ、わたしの場合平日は学校に行くんだけど。

ただ、今日は休日ということもあって午後からの予定は特になかった。

何をしようかと考えながら山を降りている途中、ふと自分の匂いを嗅いでみた。

…とりあえず温泉に行こうかな。

 

温泉に浸かりながらゆっくりと息を吐き出す。

自分が望んでやっている事とは言え体の負担は大きいなぁ。

…アヴェンジャーが来てからそれなりに月日が経った気がするけど、未だにあの日現れたノイズは姿を見せていない。

あれからわたしも強くなった、という自負はあるけれどもしまたあのノイズが現れたとしてわたしは勝てるのかな?

不意に頭をよぎった弱気な考えを、振り払うように頭まで湯船に浸かる。

勝てるのかなじゃない、勝つしかないんだ。

わたしから全てを奪ったアイツら復讐するためには。

 

火照った体を冷ますように、わたしは風の強い通りを歩いていた。

普段はそこまで人通りが多くない街だけど、休日ということもあってか今日は沢山の人が歩いている気がする。

当然のことなんだけど、中にはわたしとそう変わらない歳の女の子達もいる。

その子達は3人組のグループみたいで、何か楽しそうに話しながらショッピングモールの中へと入っていった。

ふと、わたしの頭にあの子の顔が浮かんだ。

もし、わたしがもっと素直にあの子に頼っていればさっきの女の子達のように今でも仲良く遊んでいたのだろうか、もし、あの子が最後までわたしの側から離れないでいてくれたなら、わたしは今こうして一人でいる事はなかったのだろうか。

そこまで考えてわたしは自嘲気味笑う。

そんな考えても仕方のないもしもを考えてしまうなんて、今日のわたしはよっぽど弱っているらしい。

はやく帰って眠ってしまおう…そう思って、自宅に向けて脚を向けたところに耳を裂くような悲鳴が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!?」

 

一人の少女の前で人の形をした灰が、その姿を崩しながら空へと舞い上がっていく。

数秒前まで正しくは人であったそれは異形ーノイズによってその命を刈り取られたものであった。

このままでは数秒とも経たずに少女は同じように人であったものとなるだろう。

それを理解してしまった彼女の口からは意味のない言葉が溢れ、目からは止めどなく涙が流れている。

無慈悲にもノイズが少女へと迫り、その身が灰へと変わるまで後わずかーーーーーといったところでノイズは横から来た衝撃に吹き飛ばされた。

少女は驚き目を見開く。

そこには自分とそう歳の変わらない少女が拳を突き出しマフラーを靡かせていた。

後に少女はこう語る「まるでアニメみたい」だったと。

 

 

寸前のところで間に合ったみたいだ。

別に人助けなんてするつもりは無いけど、ノイズが好き勝手に暴れるのは気に入らない。

わたしはノイズに正対して拳を構え直す。

吹き飛ばされたノイズの周りには新しいノイズがわらわらと湧き出てきたけど、今日の鬱屈のとした気分を晴らすには丁度いい相手だ。

わたしは一足跳びにノイズとの距離を詰めて、吹き飛ばしたノイズを拳の一撃で倒して周りにいたノイズを蹴りつける。

数は多いけどノイズ一体一体の力は大したことない、それにアヴェンジャーとの修行は何も強敵を想定してした一対一だけじゃない!

 

「今のお前ならば通常のノイズ相手に遅れはとるまい。だが多数の敵を相手取るのであれば相応の戦い方というものがある」

 

「多対一であるならば背後を取らせるな。敵に頭がいるなら真っ先に潰せ」

 

今までの訓練がわたしの頭によぎる。

まるでアイツが隣にいて声をかけてくるみたい。

今までいつもノイズと戦う時は一人だった。

それを不満に思った事はないし、誰かと一緒に戦う事なんて考えたこともない、誰かといてもいつか裏切られるんだって分かってたから。

それでもノイズを倒せば胸の空くような思いがして気分が良かった。

だけど…

 

「クハハハ、もう息切れかマスター?基礎体力からつけなおさねばならんな」

うるさいな!カウンターを狙ってるだけだよ

 

「ほら、上から来るぞ気をつけろマスター」

分かってる!

 

「及第点だな。まぁこんなところか」

上から目線、ほんとむかつく

 

いつもは一人で只々ノイズを倒すだけだったのに、今日はアイツと一緒に戦ってるようで、というか横から茶々を入れられているようでスッキリしなかった。

そう、スッキリなんてしてない、してないんだけど不思議と心は陽だまりにいるように温かった。

 

ノイズを倒し終わってからわたしは辺りを確認する。

今日はまだ、あの人達は来ないみたい。

それなら好都合だ、今の内に帰るとしよう。

わたしは窓から隣のビルに飛び移る。

そうやってビルからビルへと移って行くとさっき助けた女の子が友達と合流するのが見えた。

3人は互いの無事を祝うようにして抱き合ってる。

それはお互いの事を本当に大切に思っているのが伝わってきて、無事を喜んでいるんだなっていうのが分かって、本当は人としてはそれを見たら良かったねって思わないといけないんだろうけど…

さっきまで晴れていたわたしの心は、今はもう曇ってしまっていた。

あの子とわたし、同じようにノイズ襲われて助かったのに…なんであの子は喜ばれて、わたしは…なんて考えが浮かぶのを必死になって振り払いながら家への帰路を急ぐ。

そんなわたしを冷たい風が吹き付けてきて、それは体だけじゃなくて心まで凍てついてしまうように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは自分の家に帰り着くと着替えもせずにソファーへと身を投げ出す。

洗濯とか掃除とか色々としないといけない事はあったんだけど、今はなんにもする気にはなれなかった。

あぁ…なんだか眠いや…

自分の体を抱きしめるように丸くなったわたしの意識が無くなるのに、そんなに時間はかからなかった。

 

どれくらい時間が経ったのだろうか、ふとコーヒーの匂いがして眼が覚める。

わたしが目をこすりながら起き上がると、そこにはコーヒーカップを啜るアヴェンジャーがいた。

 

「…帰ってたんだ」

 

「あぁ」

 

いつものように喧しい笑い声も、伝わり辛い遠まわしな言い方もせずに短く一言だけ返事をするとアヴェンジャーは席を立って台所の方へと向かって行った。

わたしは何故だかそれが酷く寂しく感じてしまい、またソファーへと体を預ける。

本当に今日はわたしらしくない。

唇を噛み締めながらはやく元の自分に戻らないとと思う。

そんな中、顔の前に熱気を感じ再び目を開けるとアヴェンジャーがコーヒーカップをわたしに差し出していた。

 

「なにこれ?」

 

わたしは一瞬理解が追いつかずに尋ねてしまう。

 

「俗にいうあったかいものというヤツだ。飲むがいい…いらぬ、というのであれば無理にとは言わんがな」

 

そんなアイツの言葉にますます訳が分からなくなったけど、とりあえずコーヒーカップを受け取る。

そうすると手のひらからジワリと温かい温度が伝わってきた。

寝起きということもあって、お腹も空いてたし喉も渇いていたわたしは一口コーヒーカップの中身を口に含む。

てっきり、いつもこの男が好む無糖のコーヒーが入っているものだと思っていたわたしは、驚きに目を見開いてしまった。

 

「甘い…」

 

「キャラメルマキアート、とかいうらしいな。コーヒーと呼んでいいのかは知らんが」

 

カップの中を改めて見てみると、たしかにその中身は黒い液体ではなく白いクリームのようなモノが浮いている。

一体この男はどこでコレを覚えてきたのだろうか。

というより何故このタイミングでわたしにコレを渡してきたのか。

色々な疑問が浮かぶわたしに対し、何でもない風にしてそいつは言う。

 

「甘いコーヒーなどと俺らしくもないが、まぁお前の反応を見るにそう悪い出来でもなかろう。なに気にするなマスター、たまにはこういったらしくない日があってもよかろうよ」

 

それを聞いたわたしの表情はどんなものだったんだろう。

自分では確認出来ないけど、きっと呆けていたと思う。

ただ、あったかいものが体の中からジワリジワリと広がっていくようで、何だか悪い気はしていなかった。

何となくだけど、曇り空の中からほんの一筋だけ太陽の光がさしたように思えた。

 




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