誰かのための戦い   作:ゆっくりff

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さて、始まりました本編です。
あんまりグロテスクな描写は深く書くつもりはないんですけど、
一応少量ながら入っているので、一切無理!という方は
ちょっと注意したほうがいいかもです。


壊滅した鎮守府

「落ち着け…考えろ…」

 

自分の所属していた呉鎮守府の執務室が

自分の知らない間に崩壊していた。

文字通り知らない間だ。寝て起きたら崩壊

していた。今この現状だけで考えられる

可能性は3つほどある。

 

1つは艦娘達によるドッキリ。

まあ、はっきり言って論外、候補に挙げただけで

可能性は0だと思っている。

何せ、何かの焼け焦げた匂い、硝煙の匂い、

壊れた甲種勲章など、すべてが本物だ。

いくらいたずら好きの艦娘がいるとは言え、

さすがにここまでのことはしないだろう。

 

2つ目艦娘による反逆。

ここに所属する艦娘、もしくは別の所に所属

する艦娘が、反旗を翻し、鎮守府を攻撃し

始めた可能性。そういったことは艦娘が

姿を現したころに、懸念されていたことだが、

今現状そういった話は上がっていないし、

仮に反旗を翻したなら、なぜ自分がここで

呑気に寝ていることができたのか…

 

3つ目深海棲艦による襲撃

現状これが一番可能性が高いと考えている。

ただ、反逆の時にもあったが、これも俺がなぜ

起こされなかったのか、それが謎に残る。

自慢する気はさらさらないが、これでも戦略を

立てたり、不測の事態に陥ったあとの

リカバリーは得意なつもりだし、艦娘達も

そういってくれている。鎮守府が襲撃された

なんて、緊急事態速攻で叩き起こして

くるはずだ。

 

「だいたいこんな所か…まあ、知らなすぎる

まずはここら辺を調べてもう少し情報が

ほしいところだな。」

 

そういって、俺は執務室の扉を開けた。

歪んでいて、開けにくいどころか開かなかった

ので、体当たりでぶち破った。

 

「ああ、クソがっ!」

 

廊下に出るだけで、ここで何が起きたのか

即座に推測することができた。

扉の目の前にいたのは、円形の黒い物体…

駆逐艦に分類している深海棲艦だ。

そして近くには無残にもバラバラになっている

烈風の残骸が数機残っていた。

 

「烈風を直接ぶち当てることで、倒したって事

なのか?もし、それなら相当劣勢だったのか」

 

烈風…空母たちが使う艦上戦闘機と呼ばれる

種類の艦載機で、ドッグファイトが役目だ。

旧日本軍よろしく万歳突撃をするような物

じゃない。何せ烈風がなくなれば制空権が

相手に取られということを差す。

陸上での戦いはあまり訓練していないが、

魚雷が使えない以上艦上爆撃機を使って

戦うのが、空母の陸上での戦いだろう。

それをしなかったって事は…

 

「敵に空母がいなかったか…あるいは

制空権を奪われてでも攻撃手段を

増やしたかったのか…」

 

廊下のほうもひどいものだった。

片側の通路が崩落していて、通路が

ふさがれている。もう片方には激戦の跡が

残っていた。砲撃の後、壁に塗り付けるが

ごとく大量に付着した血、主砲の残骸、

墜落した艦載機に…動かない深海棲艦。

 

「ひどい匂いだ…俺はこれに気づけずに

寝ていたのか?それとも何らかの記憶障害?」

 

襲撃が確定したので、次は生存者を探す

ことにした。深海棲艦の残りがいるかも

しれないので、注意深く探りながら、

歩を進める。崩落した天井などの上を

通らないといけないので、ヒヤッとした場面は

何度かあったが、無事目的地にたどり着いた

 

「…………」

 

キィ…となるべく音を立てないように静かに

扉を開ける。ここの鎮守府で、生き残りが

いた場合に避難もしくは隠れることができる

場所は正直言って限られてくる。シェルター

もあるにはあるが、こう内部まで侵入された

場合、逃げるのが遅れる人も必ず出てくるはず

シェルターに逃げた人はとりあえず外敵から

は守られるため、まずは逃げ遅れた人を

探すことにしたのだ。

そしてここ、食堂はその数少ない隠れることの

出来る場所となっている。厨房の奥に

内部から閉められる隠し部屋があるのだ。

 

普段ならば、夕食時だろうか…なんてそんな

今はどうでもいいことを考えながら厨房に

向かう。椅子や机が散乱している…

そして、まるでバリケードになるかのように

人為的に積み上げられている。

 

「覚悟は…していたさ……でもよ、

こんなのって…あんまりだろっ!」

 

バリケートの裏には、体中穴だらけにされた

職員がいた。着任当初から、足りない部分を

補って鎮守府を大きくしてきた衛兵…

艦娘、職員まで、すべての胃袋をつかんで

離さなかった、食堂のおばちゃん、

艦娘はいなかったが、見知った人物が

無残にも虐殺されるのを見て、つい声を

荒げてしまった。

 

「すまん…すまんっ!」

 

腐敗も進み、もはや今の俺にどうすることも

出来ない、ただ、謝ることしか出来ない。

 

厨房の中までは、さすがに砲撃は

来ていなかったようで、中の様子はそのまんま

だった。

 

「おーい!誰かいないのか?」

 

正直、隠し部屋は職員用に作ったもので、

提督である俺が使うことは想定されておらず

詳しい場所を知らない。なので仕方なく声を

あげているわけだが…

 

「くそっ…だめか」

 

10分ほど時折声をあげて待っていたが、

足音一つ聞こえない。どう考えても

ここにはいないだろう。

もしかしたら恐怖で出られないだけかも

しれないが、どうしようもない。

 

「ならば次に……ん?」

 

ここで俺は机の上にポツンと乗っている

皿を発見する。ラップでくるんであって、

中には鯛の活き造りが置いてあった。

漁業も満足にいかないこのご時世

深海魚はありえないくらい高価なものと

なっている。まあ、漁業をする人が少なく

なっているので、そういう意味では固体数は

増加している。海に出れば毎回油の乗った

おいしい魚が大量に確保することが出来る。

 

そんな中でもやはり鯛は高級魚。いくらこの

小さい皿に収まる大きさでもかなりの値段が

したはずだ。そして…俺はこれに見覚え

というか、これが誰に向けて作られたのか、

少しだけ心当たりがあった…

 

 

~回想鎮守府執務室~

 

 

「提督さん少しお聞きしてもよろしいですか」

 

そういいながら姿勢よく執務室に訪れて

来たのは、軽空母、鳳翔だ。鎮守府立ち上げの

頃から空母だけじゃない、人間関係や小さな

悩みまで、幅広い形で艦娘達を陰で、

支えてきた、俺の尊敬する人物だ

 

「おう、鳳翔からくるなんて珍しいなぁ」

「ふふっそうですね。前は仕事で分からない

ことがあると、訪ねてくるほうが多かった

ですよね」

 

艦隊運用が思ったより難しく悪戦苦闘していた

俺を支えてくれたのも彼女だ。最近は俺から

彼女に頼みごとをするのは減ってきた。

そして鳳翔から頼みごとをするなんてことも

無かったので、こういった関係で話すのは

本当に久しぶりだったのだ。

 

「話がそれてしまいましたね。それで提督

あの…終戦したら食べてみたい料理とか…

あったりしますか?」

 

鳳翔は相談や出撃だけでない。ここの食堂で

厨房も任されているのだ。補給艦が作る

料理に引け劣らないおいしさで、多忙のため

多くは作れないためいつもいつも、鳳翔が

作った料理は抽選となっている。

 

「食べたい料理?…いやすぐには

思いつかないな」

「そうですか、突然こんなこと聞いて

すみません」

 

申し訳なさそうに鳳翔は頭を下げる

 

「いや、鳳翔君は悪くない。ただ…また急に

どうしたんだ?」

 

すると鳳翔は笑顔を向けて

 

「提督…あなたの頑張りは表には出ませんが

本当に素晴らしいものです。ですが、

提督業は多忙です。提督がご褒美らしい

ご褒美を受け取れていないのは明らか…

なので、終戦した暁には、私が腕によりを

込めて、お料理を振舞おうと思いまして…」

「鳳翔…」

「すみません、私こんなことしか

思いつかなくて…。金剛さんとかなら

もっといい送り物とか送れるのでしょうけど」

 

俺は鳳翔を手招きして頭をなでる

 

「あ//…あの…て、提督さん?」

「鳳翔、君の料理が報酬としてもらえるなら

俺は何でもできる。それくらい魅力的な

報酬だ。謙遜しないでくれ。」

「は、はいぃぃ…」

 

顔を真っ赤にして俯いた鳳翔に苦笑を浮かべ

頭から手を放す。名残惜しそうに右手を

眺める。

 

「そうだな……鯛の活け造りかな」

「活け造りですか?」

「ああ、今の時上官が夕食会をする時

くらいしか出ないみたいなんだ。

今の食事には華やかさは、そのあんまり必要

ないだろう?だから、そんな華やかな料理

見て、食べて、楽しんでみたいな…なんて」

 

それを聞くと鳳翔は太陽のような笑みを

浮かべて

 

「活け造りですね!作ったことはないので

うまくできるか分からないですけど、

精一杯腕によりを込めて作らせてもらいます」

「ああ、よろしく頼む。そのためにも

お互い生きて終戦まで持ち込もうな」

 

 

~鎮守府食堂跡地~

 

 

……そうだ、つい最近こんな会話をした

ばっかりだった。これが鳳翔が作った物

だと確定したわけじゃないし、俺宛に作った

物だとも確定したわけじゃない。

ただ、小さい皿にきれいに造られた鯛を

見ていると、鳳翔が頭を悩ませながら

盛り付けをしている姿を想像できる。

 

「ははっ…鳳翔、こんなに腐ってちゃ…

くえねぇよぉ…」

 

うっすらと目を濡らして改めて活け造りを見る

食べることはかなわなかったが、

見ている人を魅了させるかのような、美しい

盛り付けに俺は目を奪われ続けた。

しかし、いつまでも感傷に浸るわけには

行かない。しっかりと目に焼き付けて

俺が食堂を後にする。

 

 

~鎮守府内部廊下~

 

 

「ははっ…こりゃあ、確定じゃねぇかよ」

乾いた笑いを浮かべて、俺は歩き続ける。

まだ、艦娘は見つかっていないが、

鎮守府は文字通りあっちこっちで崩壊炎上

していて、誰かが生活している痕跡は

ただの1つも残っていなかった。

だが、俺はまだ諦めていなかった。

誰でもいい…誰か1人でも生きていれば…

 

「また深海棲艦か…」

 

執務室の近くで見つけた烈風の残骸にまみれた

深海棲艦の残骸を目にした。コックピットに

妖精さんの姿はもちろんない

鼻を刺すような強烈な異臭は、陸で死んだ

深海棲艦のものだろうか…?

 

「…?…ッ!?深海棲艦っ!」

 

廊下の曲がり角の付近で立っている人影を

目撃する。光が一切ないため、人影は真っ黒に

見える。相手が誰であれ、まずは最悪の事態を

想定して動く。

 

「動かない?」

 

しかし、多少大きな声を出したにも関わらず

人影は一切動いていない。そしてよくよく観察

してみるとその人影は、曲がった先を見ていて

何かが体に突き刺さっていて、壁に縫い付け

られるように張り付いていた。真剣?にしては

大きい。長さは成人女性の身長より少し小さい

くらいで、幅は大体人体の半分ほど。

 

「あれは…何なんだ?」

 

あんな状態でももしかしたら生きているかも

しれない…そう考えた俺は途中であの深海棲艦

がこちらに攻撃をしてもいいように、

背を向けてダッシュをする準備をしながら

慎重に足音を抑えて前に進む。

 

「死んでいる…のか?」

 

何かが突き刺さった深海棲艦にゆっくりと手を

伸ばす。種類は重巡洋艦のようだ。特に血の

ようなものは吐いていない。生物であって

生物でない…改めて実感させられる。

ただ手に持っている主砲のようなものは

ひしゃげているし、何より体中が

名状しがたい状態になっている。軍隊とは言え

提督業は死体を見る機会はあんまりない。

少し気分を悪くして吐き気を覚えたところで

俺の思考は停止する。

 

ピーというノイズ音だけが頭の中を駆け巡り

俺が思考を阻止しようとする。

それは重巡洋艦を壁に貼り付けている何かを

目撃したからだ。遠くからで分からなかったが

突き刺していた何かは2本あったようだ。

 

1つは深緑の迷彩を施した、装甲空母

を象徴とする試製甲板カタパルトだ。瑞鶴の

要望に合わせて、この色にしたのを

よく覚えている。そしてもう一つは

漆黒の板に、艦載機の着陸の目安となっている

白い線が施された改二甲の証である

試製甲板カタパルトだ。これは翔鶴の自慢の

カタパルトだった。

 

普段ついてなければいけない彼女たちの腕に

ついておらず、こんな所に突き刺さっていた

いつもいつも整備を欠かさずに入手当初は

お礼と自慢をよく言われていた。カタパルトは

今や見るも無残な姿になっている。

所々欠けていて、血が付着している。

 

「ははは…おいおい、冗談だろ?

まさかそんなわけないよな…

そうだ、きっとそうだ。あいつらなら

こいつをぶっさ差した後で、逃げているさ」

 

そう言い聞かせて、言い聞かせ続けて俺は

曲がり角のその先に顔だけを向ける。

 

いったい彼女たちはどれほど戦ったのだろう?

どれだけの痛みに耐えて戦い続けてきた

のだろうか?

何を思って戦い続けてきたのだろうか?

こんな惨状になるまで気づかず寝ていた

クソ野郎のために、こんなになるまで

戦い続けてきたのだろうか?

 

彼の目には四肢の一部を無くし、カタパルトの

ついていた、右手と左手で手をつなぎ

もたれかかるようにして倒れている、

姉妹の姿が目に入った……

 

「しょ……しょう………かく…?」

 

その目に絶望ない、あるのは戦士の顔だ。

最後の最後まで、戦い抜いた自身をそして

相棒を称える。安らかで、それでいて

自信に満ち溢れた、勝気の顔。

いつも見続けてきた彼女たちの笑顔だった。

 

「嘘…だろ?…ずい…ぁぁ……か、く」

 

しかし、その顔はもう、変わることはない、

笑いも、泣きも、悲しみも、喜びも、表す事は

ない。その声はもう二度と聞くことはできない

 

「うああああああああああああああああ

ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!

あ˝あ˝あ˝あ˝ぁぁぁあああああああ!!」

 




いかがだったでしょうか?
少しでも彼が味わった絶望をイメージ
してもらえれば幸いです。
次回もお楽しみにしてください!
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