~ 重晴 SIDE ~
「「重晴、おはよう」」
「優子、秀吉、おはよう」
「相変わらずのんびりとしているわね。二年生になったんだからシャキッとしなさいよ」
「一年前も同じようなことを言われた気がしますね」
たしか『高校生になったんだからシャキッとしなさいよ』だったかな。
「姉上、これが重晴じゃから今さら無理じゃ」
「そうそう。優子も家にいるときみたいに肩の力を抜いた方がいいですよ」
「いいのよ。それこそ今さらでしょ」
そうは言っても、優子も丸くなってきましたね。
一年前は一緒に遊んでいたときの姿しか知らなかったから驚いたけど、可愛くなりましたね。
「何よ?」
「一年前から可愛くなったなと思いまして」
「なっ!?」
「人として女性としての魅力が増して、手を握るなら間接技はやめてほしいな……っ!」
「あ、姉上、落ち着くのじゃ。それ以上はいけないのじゃ」
「重晴が変なことを言うからよ」
いたた、もう少し穏やかにしてほしいけど、これが優子ですよね。
☆ ☆ ☆
「「「おはようごさいます、西村先生」」」」
「おはよう。木下姉弟は良い挨拶だが、竹中はもう少し覇気を出したらどうだ?」
「これが僕ですから。ところで、何をしているんですか?」
「ああ、クラス分けの通知を配っていてな」
そう言って、僕たちの名前が書かれた封筒をそれぞれに手渡されました。
「一人一人に配るのは大変ですね」
「掲示板にでも大きく張り出したほうが効率よくないですか?」
「そうじゃな。先生の負担が大きいのじゃ」
優子と秀吉が言うことはもっともですが、この学園ではそうはいきませんね。
「試験召喚戦争のためですね」
「そういうことだ」
「なるほどね」
秀吉はわかってないようですね。
「誰がどのクラスにいるかわかっていると、戦争で誰を警戒すればいいかわかっていると同じだということですよ」
「そういうことじゃったか」
あとは学園長がそっちのほうが面白いからとか考えていそうですね。
「ねぇ、とりあえず開けてみましょ」
「そうですね」
「わしはすでにわかってるのじゃ」
『竹中重晴……Aクラス』
『木下優子……Aクラス』
『木下秀吉……Fクラス』
「改めて現実を突き付けられるときついのじゃ」
「木下弟、今回は残念だったが、まだ来年がある。気を落とすな」
「そうだよ、秀吉。今の調子で勉強を続ければ来年は三人揃ってAクラスに行けますよ」
「あなたが一生懸命勉強していたのは知っているから頑張りなさいよ」
「重晴、姉上……うむ、約束じゃ」
~ 凱斗 SIDE ~
「想像以上に酷いわね」
「これ程とは……」
外見から酷いだろうなとは思いながら入ったFクラスは卓袱台、座布団、畳、窓ガラスなど、全ての設備がボロボロで教育施設としてどうなのかと思う。
婆さんがこんな風にしたとは思えないな。
これでは体調を崩す生徒も出てくるだろうな。
「凱斗、とりあえず座りましょう」
「そうだな」
若干引っ掛かるが、今は気にしてる場合じゃないな。
さて、あいつはいるかな……ああ、いたいた。
「康太」
「……何だ?」
カメラの手入れを中断して土屋康太はこっちに来た。
「こいつをすぐに調べてきてほしい」
「……わかった」
俺からメモを受けとると、康太は教室を出ていった。
「何を頼んだの?」
「ちょっとした情報収集だ」
康太が同じクラスだといろいろとやりやすいな。
「おっ、早いな」
「よぉ、雄二。代表にはなれたんだよな?」
「この通りだ」
西村先生が渡していた封筒から紙を取り出し、こちらに見せる。
『坂本雄二……Fクラス代表』
「すでに康太を動かしてる」
「手際がいいな」
「情報の速さと正確さは最優先事項だからな」
本当、康太がいてくれて助かるよ。
「雄二、お前の方は大丈夫だろうな?」
「心配するな。お前に指摘されてから怠ってねえよ」
「それならいいが……」
雄二が躓いたら全てが無駄になるからな。
「……戻った」
「きゃっ」
康太、気配もなく背後から現れたから美波が驚いてるぞ。
「速かったな」
「……これぐらいは簡単」
その簡単に集めてくれた情報が重要なんだけどな。
「土屋って、忍者みたいよね」
確かに本職の人って言われても納得するぐらいの気配の消しようだな。その技術を磨いた理由があれだけどね。
さて、調べ物の結果はと……
「雄二、あの三人は同じクラスなんだよな」
「ああ、間違いない」
……よし、これでいくか。
「雄二、ルートは確定したぞ」
「目的地にはたどり着けるんだよな」
「難所はあるが、俺たちならば必ず突破できる」
「決行は今日でいいよな」
「もちろん、俺たちに待つという選択肢はない」
戦争は始まっているんだからな。