~ 凱斗 SIDE ~
『うおぉーー!』
Dクラス代表、平賀源二が戦死したことにより試召戦争は終結し、Fクラスの生徒から雄叫びのような勝鬨があがった。
「お疲れさま」
「ああ、美波もお疲れ。まぁ、これからだけどな」
「それでもひとまずはお疲れよ」
「そうだな」
パンッ!
何回も交わしてきた美波とのハイタッチが格別に思えた。
「おお、坂本だ」
「さすがは神童と呼ばれた男だ」
「坂本万歳!」
雄二が皆の声援に応えながら歩いてきた。
「ご苦労だったな、二人とも」
「作戦を立てた本人がしくじれないからな。最後は少しだけヒヤッとしたがな」
「そうそう。瑞希のタイミングがバッチリだったからよかったわ」
「私は作戦通りに動いただけですから……」
「その作戦通りに全教科の補充試験を高得点で素早く終えたんだ。代表として礼を言う」
「姫路だからこそ、できた作戦だからな」
「そうね。瑞希のおかげよ」
「……」
俺たちが褒めちぎったせいか、姫路は顔を赤くしてうつむいてしまった。
「はぁ、今になって姫路さんが振り分け試験で途中退室した話を思い出したよ」
先ほどまで項垂れていた平賀が立ち上がり、ヨタヨタと歩み寄ってきた。
「あの……さっきはすいません……」
「これは戦争なんだから謝らなくていいよ。姫路さんのことを忘れていた時点で、僕らの敗けだよ」
「しかし、こちらの黒田と島田を追い詰めた手際は見事だと聞いている」
「追い詰めただけで、その後はどうなっていたかはわからないよ。さて、本題に入ろうか」
平賀の表情が厳しく引き締まった。
「まず、教室の交換は明日でいいかな」
「いや、その必要はない」
「えっ?」
「FクラスはDクラスと教室の交換をしない」
雄二の一言でDクラスだけではなくFクラスも騒然となった。
「坂本、普通の設備を手に入れられるんだぞ」
「苦労して勝ったのにそれはないぜ」
須川と溝口の言葉は作戦の全容を知らないFクラス全体の声だろう。
「俺たちの目標はあくまでもAクラスだ」
「それはそうだけど……もったいなくないか?」
「須川たちの言いたいことは分かるが、これもAクラス戦への布石だ」
「……明日きちんと説明してくれよ」
「すまんな。それと明日と明後日で総合科目のテストをするから準備だけは怠るなよ」
「わかった。みんなにも伝えておく」
俺と雄二と美波と姫路さんを残してFクラスの面々は教室に戻っていった。
「坂本、どういうことだ?」
「そうだな……場所を変えよう」
もう少しで下校時刻になり、この渡り廊下は沢山の生徒が行き交うことになるから当然だな。
「わかった。Dクラスの教室でいいか?」
「ああ、問題ない」
☆ ☆ ☆
Dクラスの生徒が見守る中でFクラスとDクラスの戦後対談は始まった。
「それでは話してもらおうか」
「ああ、わかった。今回の戦争の目的はFクラスとDクラスの同盟だ」
雄二の言葉にDクラスの各所から批判の声が漏れだした。
「戦争を仕掛けておきながら同盟を結びたいとは、おかしな話だね」
「そう思われても仕方ない。しかし、格下のFクラスが格上のDクラスに正面から同盟を申し込んだら、どうしていた?」
「たぶん、断っていたね」
「そうだ、普通は断られる。だからFクラスが脅威であり、敵に回したくないと思わせる必要があった」
「それで戦争をしかけてFクラスの実力を見せたということか……」
「そういうことだ。因みに、まだ見せていないカードが何枚かある」
「あれで全力ではないだと……確かに、敵に回したくないね」
「ならば、答えは決まったな」
「敵に回したくないが……どうしてウチと同盟をするのか、教えてくれないか?」
ほぉ、一筋縄ではいかないか……。
「雄二、そこからは俺が説明してもいいか?」
「そうだな。Fクラスの軍師に任せるとするか。平賀、それでいいか?」
「納得のいく説明が得られるなら構わないよ」
「わかった。それではまずこいつを見てくれ」
俺は一枚の紙を取り出した。
『 Aクラス……霧島翔子
Bクラス……根本恭二
Cクラス……小山友香
Dクラス……平賀源二
Eクラス……中林宏美
Fクラス……坂本雄二 』
「これは……各クラスの代表者か?」
「そうだ。Fクラスの目標はAクラスだが、他のクラスの対応も考える必要がある。しかし、誰がどこにいて、どんなクラスなのかを把握することは不可能だ。そこで、各クラスの代表だけを調べたというわけだ」
「ちょっと待て、代表者を調べるのも難しいのではないのか?」
「そういったことが得意な奴がいるんでな」
「なるほど。カードの中の一枚ということか……」
「それで目標のAクラスと、Fクラスと大差がないEクラスを除いたB、C、Dについて考える必要があった。ここで重要なのが代表者だ。平賀、Bクラス代表の根本のことは知っているか?」
「卑怯者のことかな?」
「そうだ」
根本恭二……目的のためなら手段を選ばず、カンニング、脅迫、一服盛るなど悪い話しか聞こえてこない男だ。
「そんな奴が代表のクラスとは手を組めない。残ったのはCとDだが、Fクラスが同盟を結ぶには戦争で勝つことが必要だ。そうなると勝てる可能性があるのはDクラスだ。だからDクラスとの同盟を目指して戦争を仕掛けた」
「経緯は分かったけど、それではこの同盟を消去法で決めたように聞こえるね」
「結果的にはそうだが、実際に戦ってDクラスと代表の平賀源二は素晴らしく、同盟するべき相手だということがわかった」
「それは買い被りすぎだ。このクラスには君や島田さん、姫路さんみたいな飛び抜けた人はいないし、俺は坂本みたいな代表ではない」
「飛び抜けた人はいないが、クラス一丸となって取り組む団結力はある。そして平賀には冷静さがある。その冷静さがあったからこそ、クラスをまとめ上げ、最後の見事な総攻撃ができたと俺は見ている」
「そこまで言われると、悪い気はしないね。最後にFクラスがこの同盟を結ぶ意味を教えてくれないか?」
「Fクラスの最終目標はAクラスだが、その前にBクラスを叩く。Dクラスの同盟とBクラスを叩くことでCとEは容易に動けなくなるだろう」
「それで万全な状態でAクラス戦に挑めるということか……皆、Fクラスからの同盟を了承したいけど、いいかな?」
「代表が決めたならいいよ」
「坂本と黒田は信用して大丈夫そうだしね」
「クラスの設備が落ちないし、文句ないよ」
「Dクラス代表平賀源二、Fクラスからの同盟の申し出を了承する」
こうしてFクラスとDクラスの同盟が成立した。
☆ ☆ ☆
「と、言うわけでFクラスとDクラスの同盟が成立した」
「へぇー、そうなったんだ」
「それで次の相手はBクラスなのじゃな?」
「ああ、そうだ」
Fクラスに戻ると教室に残っていたのは明久と秀吉だけだった。
ちょうどいいので、先程の同盟の件と今後に予定を話しておいた。
「それはそうと、アキと木下の補充試験はどうなったのよ?」
美波が問いかけると二人は少しだけばつが悪い顔をした。
「どうした?まさか全然できてなかったとか言わないよな?」
「いやー、さすがに全科目はできなくてね。現代国語と日本史と英語しかできなかったよ」
「わしもじっくりと解いていたら、現代国語と古典と日本史しかできなかったのじゃ」
「何だ、そんなことか。最初から全教科は期待してねえよ」
「ああ、姫路みたいに高得点で素早くできる人なんて、滅多にいないからな」
明日と明後日を使って総合科目の補充試験をするし、問題はまったくない。
「それでそのできた教科の点数は?」
「うん、これだよ」
明久と秀吉から点数が書かれた紙を受け取って確認する。
「……これはなかなか」
「明久君と秀吉君、凄く頑張ってますね」
「ほぉ、悪くないんじゃないか?」
「そうね。これならウチらの負担が軽くなりそうね」
「ああ、これなら作戦がやりやすくなるな」
「皆にそこまで言われるとは思わなかったよ」
「勉強してきてよかったのじゃ」
「他の教科も期待してるから、明日と明後日の試験は頑張れよ」
「うん、頑張るよ」
「全力でいくのじゃ」
さて、どういった作戦を立てようかな。
平賀が別人に感じるかもしれないけど、二次作品だからです。