今年もいろいろあったな……
~ 重晴 SIDE ~
「この映像だけでは……」
「でも可能性はあるわね」
「優子、重春くん、何しているの?」
パソコンの画面を見ながら優子と話し合っていると、工藤さんと霧島さんが来ました。
「先日のFクラスとDクラスの試召戦争の映像を見ていたんですよ」
文月学園のHPでは宣伝目的で試験召喚戦争のダイジェスト映像を見ることができます。
「何か面白いものでも写っていたの?」
「面白いものはないですけど、戦力の分析ができますよ」
「戦力の分析って、Fクラスで注意するのは黒田くんと島田さん姫路さんの三人だけだよね?」
「今回の戦争ではその三人だけど、秀吉や明久君が出てきていないのよね」
「優子の双子の弟と、観察処分者の吉井くんのことだよね」
「そうよ。二人とも振り分け試験をきちんと受けていたらCクラス以上のはずよ」
「へぇー、吉井くんって観察処分者だから勉強ができないと思っていたよ」
「僕が明久と秀吉に勉強を教えていたんですよ。でも、教えていたのは振り分け試験直前までですから、二人の今の学力がどの程度かはわからないんですよ」
「そうなんだ。でも、黒田くんと島田さんの点数でAクラスの驚異というのは言い過ぎじゃないのかな?」
確かにDクラス戦での点数ならば驚異にはなりません。
しかし、僕の情報と食い違っているんですよね。
「……二人とも手加減をしている」
「えっ、そうなの!?」
「霧島さんは二人のことを知っているんですか?」
「……私の友達」
意外なつながりですね。
「そういった点も含めて、Fクラスの次の戦いを注視した方が良さそうですね」
「次って、Fクラスはまたどこかと戦争するの?」
「恐らくはBクラスです。Dクラスとの同盟でCとEの動きを牽制してBクラスに勝ち、万全な状態で僕たちAクラスに挑んでくると思います」
「そこで秀吉と明久君も出てくるはずだから、Fクラスの全力が見れるわ」
「それは楽しみだね」
本当に楽しみです。
明久と秀吉の頑張りがわかるんですから。
~ 雄二 SIDE ~
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
俺たちは屋上で昼食を食べ始めた。
「明久君、この卵焼きでお願いします」
「どれどれ……」
「……どうでしょうか?」
「うん。塩加減もちょうどよくて美味しいよ」
「よかったです」
「明久は料理が得意なのか?」
「うん、そうだよ」
「へぇー、意外ね」
「凱斗と島田は明久の料理を食べたことがないのじゃな。明久の料理は物凄く美味いのじゃ」
「……料理はプロ並み」
明久の料理はお世辞抜きで美味しいく、明久の家で遊ぶときの楽しみの一つとなっている。
「よかったら食べてみる?」
「では、卵焼きを……」
「ウチはから揚げを……」
「お、美味しい。今まで食べた卵焼きの中でトップクラスだな」
「こんなに美味しいなんて……女としてのプライドが……」
唐揚げは明久がこだわっている料理の一つだからな。
ショックを受けるのは分かるが、並の女子では太刀打ちできないと思うぞ。
「それで、どうして姫路は明久から料理を教えてもらっているんだ?」
「ええと……ちょっと、色々ありまして……」
そう言いながら姫路は目をそらし、
「あの時は大変だったよね……」
「そうじゃな……」
明久と秀吉は遠くを見ている。
おいおい、お前らに何があったんだ。
そんないつも通りに他愛もない話をしながら昼飯を食べていき、話の内容が試召戦争になったときだ。
「Bクラスへの宣戦布告は俺が行く」
凱斗がそう言った。
「凱斗がか……」
「Bクラス代表は根本だ。他の奴だと補充試験に影響が出る」
俺たちFクラスはBクラス戦に向けて、全教科の補充試験を受けている。
宣戦布告の使者が酷いことになるのは分かっている。
しかも、卑怯者の根本が代表となると、使者になった奴が残りの科目の補充試験を受けられないどころか、戦争に参加できないかもしれない。
その可能性を回避するならば、凱斗が行くというのはありだが……。
「わかった。お前に頼んだ」
「では早速いってこよう」
凱斗は屋上から出ていった。
「ねぇ、雄二。一人で大丈夫なの?」
「雄二と同じくガタイはいいのじゃが、一人だと心配じゃの」
「まぁ、大丈夫だ」
190cm近くの身長と無駄な脂肪がない体つきに、ドイツとのハーフゆえに堀の深い精悍な顔つきという見た目の迫力だけでも襲われる心配はない。
それに――
「そうね。凱斗は強いから、何事もなく帰ってくるわよ」
島田と俺は凱斗が強いことを知っている。
~ OTHER SIDE ~
根本恭二、文月学園で一番評判が悪いと言っても過言ではない生徒である。
そんな男がBクラスの代表になった。
それは根本にとって好都合だった。
他の誰かが代表にだったら、そいつを脅して権力を得る。
その手間が省けたからだ。
しかし、Bクラスの他の生徒にとっては恐怖でしかなかった。
逆らうことはできず、意見を言うことすらもできないからだ。
結果、Bクラスは根本の独裁になろうとしていた。
そこに一人の生徒がきた。
「失礼する。Bクラスの代表はいるか?」
その生徒は大きな体で堂々と教室に入ってきた。
「俺がこのクラスの代表の根本だ」
「君がこのクラスの代表か。俺はFクラスの黒田凱斗だ」
「お前が黒田凱斗か……Fクラスが何の用だ?」
「FクラスはBクラスに宣戦布告をする。開戦は明日の午後からだ」
「そうかそれはご苦労だな。だがお前はここでリタイアだ」
その言葉を合図に根本の指示で四名の生徒が襲いかかろうとした。
「Nicht bewegen!(動くな!)」
凱斗の強く激しい一喝に誰も動けなかった。
「失礼。ドイツ語が出てしまったが、きちんと通じたようだ」
Bクラスの生徒は凱斗の言葉を理解したのではなく、凱斗が一喝と同時に発した気迫に圧されて動くことができなかったのだ。
「用件は伝えた。これで失礼する」
凱斗が教室を出ると同時にBクラスの生徒は一息ついた。
「代表、すみません」
「まぁ、いい」
根本は凱斗の名に覚えがあった。
長身、ドイツ人とのハーフ、帰国子女、女子からの人気や教師からの評価も高く、根本の気に入らないリストに入っていた。
そんな奴はFクラスの奴らと一緒に徹底的に潰して屈服させればいいと、根本は思った。
来年もマイペースで頑張ります。