「───さて。」
目覚めて、10分は経っただろうか。
書き足した内容を何度か見直し、ノートを閉じた。疑問点もまとめ終えた。あとは本人…モンスター?たちに会って話を聞いてみるだけ。
手際よくペンケースとノートをポシェットの中にしまい込み、ボタンを留めておく。
布製のはずなのに、えらくずっしりとした重みのあるポシェットを肩から下げ、そのまますくっと立ち上がった。
「う、…かなり重いなこれ。
…まっ、可愛いからいっか。あ~私ってばホントセンスがいい。ソウマもそう思うでしょ?
え?そんなことより先に進めって?そんなあ。」
あんまりにもポシェット…もはや旅行バッグ?を重すぎて少しよろけたけど、ぱんぱん、と手でスカートの汚れを払ってから軽く体を伸ばし、手首足首をくるくる回した。
首も軽く回して、パキポキと音を鳴らしながら辺りを見回す。微かに流れてきた呆れと疑問の感情を読み取って、可愛い半身の考えを言い当てようと言葉を考える。
「何探してるかって、そりゃあ杖になるものに決まってるじゃん。地上にだってそうそうオッドアイなんていないんだし、こっちでだってきっと驚かれるよ。確かにソウマがいたら色々と見れるけど、ソウマ疲れちゃうじゃん。
ハイ?死んでるから疲れないって?だめでーす基本杖使って移動しまーす。」
───降原ユウキには、降原ソウマという、双子の弟がいる。
ミルクチョコの色をしたふわふわのやわらかい髪。癖っ毛は猫みたいで可愛くて、撫でるとくすぐったいと笑うような子。
真っ赤な瞳は私とおそろいで、目を開けるとルビーというよりレッドジルコンのようで息を飲んでしまうほどに綺麗な子。
ちょっぴりおばかで、ずっと優しくて、幼馴染にいつまでも告白できないような照れ屋さん。
鬼ごっこは誰よりも早くて、小さい頃はかくれんぼで私を見つけられなくて泣き出した弱虫くん。
私を庇って通り魔に刺されて死んだ、大間抜け。
ナイフを一気に抜いたせいで出血がひどくて死んだ、私の可愛い弟。
私を守るために通り魔を何度も刺した、私のバカな片割れ。
自分を死なせた原因とも言えるような姉を守るために、今際の際で人を殺した、頭でっかち。
動くこともできなかった私に。心も、まるで石みたいに動かなかった私に。ごめんと笑って逝った、私の大切な、…大切な半身。
降原ユウキには、双子の弟がいる。
タマシイのない、【ソウルレス】の姉を仕方ないと笑って。この地底まで着いてきて、お節介を焼くような。
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『あなたの親友』と名付けられたポップでかわいらしい、どこか間抜けな印象を持たせるBGMが暗い空間の中を流れる。
靴にしては硬すぎる、かつん、こつん、と地面を打つ枝の音が響いてくる。それを聞いた顔を持つ花は「はァ"ん?」と、少し(かなり)ガラの悪い声を出したが、すぐに花弁を揺らして咳払いをした。にぱっ☆なんて効果音がつきそうな…いわゆるマスコットのような、無害で無邪気な可愛らしい笑顔を浮かべた。
そして目の前に現れた……『
しかしまぁ、どうせ自分の目的には関係ない。
そう思った花は、笑顔でお決まりのセリフを言うために口を開いた。
「ハロー!僕はフラウィ!お花のフラ、」
「あれ。そのセリフ毎回言ってるの?わぁ~、もしかしてお約束?モンスター生……や、
「………は?」
顔を持った喋る花───フラウィは、怒りとか呆れとか以前に思った。
なんだこいつ。と。
ヒトが話してる真っ最中に好き勝手動き回ったり物理的な意味でどうやって動いてるのかもよくわからないわけわからん奇行だけならフリスクもしてたけど、なんだこの女は。と。
いやマジでなんなんだこいつ人の話遮ったくせにマジでどうでもよさそうな棒読みだし髪はいじるし急に座ってこっちに手を伸ばして…と顔を引き攣らせたあたりで、フラウィは彼女の手が何やらおかしいことに気づいた。
まるでゲームがバグを起こしたかのように、グリッチが起きていたのだ。
「おいおいおいこら何してんだよ引っ張るなバカ離せッ!!」
「あ?あ~そっか。とっととこれまでの経緯話したほうが楽かなって思って色々思い出させようと思ったけど、初対面の人間に掴みあげられたら常識的に無理だよね~。うはは、めんごめんご。」
「めんごとかじゃなくてとっとと離せよ常識とかじゃなくてマナーの問題だろ~~が!!!頭沸いてんの!!?バカなの!!?」
自身の茎(にあたる部位)を掴み、そのまま雑草をちぎる勢いで躊躇いもなく地面から引き抜いた少女。まぁ警戒心を抱かないわけもなく、彼女に対し警戒心を全開にするフラウィに、少女がカラカラと陽気に笑いながら話しかける。
「まぁ、ここまでは普通に冗談だよ。手荒な真似してごめんねー。
…でも、君みたいな手合いは流れを先に掴んだ方が話し合いにちゃんと応じてくれるでしょ?得体が知れないゴミ袋と似たようなもんなんだし。」
ス、と閉じられた赤い目を薄ら開いて笑う彼女に誰かの面影を見たのか、一瞬フラウィが押し黙る。
ピリピリと肌を刺す一触即発の空気を物ともせずに、少女はただ「自己紹介が必要だね」と笑った。
「ハウディ!私の名前は
杖がないと歩くことすらできないようなか弱ぁ~い女の子だから、
*冒険の始まりだ!…なんちゃって.
やっとここまでこれたけどフォロワーにこの女布教するたびにどんどん闇が深まる…(戦慄)