…。
自己紹介から15分後。
どうせなら昼食を食べながら話そうという私の提案に渋々同意したフラウィの許可を得て、私たちは(恐らく)私や母が落ちたであろう花畑に来ていた。もちろん、ランチの提案をしたとき何言ってんだこいつと無言でドン引かれたが。
私お手製のサンドイッチとぶどうジュースをお供にフラウィと私の認識の食い違いを確認しあった結果、彼はどうやら母さん…というよりも、『
らしい、というのは、彼が持つ各ルートの記憶が所々欠けていたから。知識として知ってることはあったけれども、やはり終盤でとる自分の行動は覚えていないようだった。エンディングのこと、ソウルを吸収したこと、元の姿に戻ったこと。それらは何も覚えていなかった。
どういう行動をすればどのルートに行けるか。フリスクという名前。もしかしてフリスクはキャラなんじゃないかってこと。何故その知識を自分が持っているかということには特に違和感を持ったことはなく、私に指摘されて初めて気づいたと言わんばかりの反応だった。
巷でジェノサイドステップと呼ばれるあのおかしな挙動も見かけたことはあれど原理もわかっていなかった、とかなんとか。
そこで少し、この世界における【ニンゲン】の情報を見直してみようということになった。
まず≪フリスク≫。平和主義を貫き通した時に初めて明かされる名前で、一般的に青のシャツにピンクの横縞が二つ入ったシャツを着た、性別不明の子供…プレイヤーが操作できる主人公のことを指す。
山に登った理由は不明。ゲーム中で彼または彼女のセリフはないが、作中においてキャラクターたちがフリスクの発言に返答するような話し方をしたり、エピローグでフリスクは優しく思いやりのある人物だと主張する場面もある。
次に『最初のニンゲン』、通称≪キャラ≫。フリスクとよく似た容姿の、緑に黄色の横縞のシャツを着た笑顔が可愛らしい性別不明の子供。
スペルはCharaで、英語で読むとチャーラ、カーラとも。
『落ちたニンゲンに名前を付ける』とき。「Chara」、或いは「キャラ」と入力した場合、確認時に「ほんとうの なまえ。」と表示される他、何らかの手段でセーブデータから名前を空欄に変えた場合も、名前は自動的にキャラへと変更されるということが明らかになっている。
"
アズリエル曰く、人間を憎んでいて、あまりいい性格ではなかったらしい。真の研究所のビデオを見た限り、頭はいいようだ。
その他の【ニンゲン】は伝承でバリアを作ったとされる魔術師…魔法使いか?彼らか、或いはキャラのあとに地底に落ちてきた人たちくらいしかいないだろう。
キャラが虐殺に関わると知ったフラウィは愕然としたが、それ以前にどうしてそんなことを、とも思ったらしい。
私とフラウィは他にも齟齬はないかと惜しみなく情報を出し合い、照らし合わせ続け、ある一つの結論に辿り着いた。
まず何がおかしいって、モンスターたちは全員、Pルートに行くまで一度たりともフリスクの名前を呼ばず、【ニンゲン】と呼んでいる。
おかしいだろ、普通に考えて子供が頑なにあそこまで名前を名乗らないなんてあるか?子供って現代感覚では一般的に思考が幼かったり単純なものなのに。
もし万が一本人が記憶喪失で自分の名前を知らなかったにしろ、キャラの親友とされるアズリエル…もといフラウィと別れた直後に、地下中のモンスターがフリスクという名前を知ってるのはまずおかしい。
作者に特に意図はなかったのだろうと言われればもうそこまでだが、
『君の名前はなに?』
『今では自分以外のみんなは名前を知っている』
『まぶしい光が窓の外で光り、牧場のカタツムリが消えた』
『その光が家に入ろうとしてきたから、ブラインドを閉めた』
『そうして気が付いたら、みんながフリスクという名前を知っていた』
…。
……。
………。
いや、謎でしかない。なんだこれ。なんだこれは。どういうことだ本当にわからない。
フラウィに考察材料が足りないから自分の記憶を戻す方法はないのかと問われたけどそれは最後の交渉手段だから後回しにした。
他にも何故キャラが自分のものではない体で復活できたのか、いせき…というかもしや私が座ってるこの花畑の真下か?キモチワルッ…に遺体を埋めたからなのではないか、フリスクはそもそも落ちてきた人間なのかと議論したが、結局仮説しか浮かばなかった。
閑話休題。
「…で?本当に一体何をしに来たんだよ。別に僕とこうやってお喋りするために来たんじゃないんだろ?
みんなと仲良くなって偽りのハッピーエンドでも謳歌するの?それともモンスターを皆殺しして塵まみれの世界にしに来たの?」
花畑の上に広げられた薄緑のレジャーシートに乗って、完全に呆れ切った声でそう言いつつもそもそとハムチーズレタスサンドイッチを食べるフラウィ。
警戒心が解けたようで何より。無事目的を果たせた私は口に残ったサンドイッチを喉に流し込むように、ずごごご、と音を立ててぶどうジュースを飲んで口を開いた。
「自己紹介の時にも言ったけど、母さんの遺言でここに来たんだよ。地下のモンスターたちを地上に出してあげてほしいんだって。」
「ふうん。…え、まって。遺言ってことはアイツ死んだの?」
「そ。溜め込んでた悩み事が日ごと膨れ上がって、長年の睡眠不足と急速に進んでった食欲低下、あとはストレスでぽっくりね。」
水筒から持ちやすい金の花がプリントされたマグカップにぶどうジュースを注いで一口飲み進め、フラウィにも「どうぞ」と勧める。
イビト山に来る少し前にカリフォルニアで買ったのだ。ワインもおいしい、高級ジュースも最高。やはりアメリカはジャンクでいい。ジャンク過ぎて吐き気がするところもあるが、たまには野菜なしのゴッテリピザも食べたくなる。
「そう…いやそんなことはどうでもよくて!!」
「ァ”ン?」
「セーブは?ロードは!?リセットは!!?」
「うわうるせ、てかしーっ、しーーっ!!」
私の勢いに押されて少したじろぐフラウィをハンドジェスターを続けることで黙らせて辺りを見回し、……気配が全くないことを確認してからはあ、と安堵の息を吐きだした。
何故私がこのいせきの管理人…トリエルに見つからないよう隠れているかというと、純粋に話がしづらいからだ。それ以外の理由もまあないことはないが、今はどうでもいいことだ。
サンドイッチやジュースに気を付けてから足を雑に組みなおしてあぐらをかき、フラウィに向き直る。
「その権利は多分実子の私たちに継がれたんじゃないかなあ。たぶん。いやまぁ、私は一度も死んだことないからそこらへんよくわかんないんだけども。セーブポイントとかセーブ画面とか、生きてて一回も見たことないし。」
「……私
「あーまあ、そこは今から説明するよ。じゃあ、姿勢楽にして聞いてね。
今まで誰にも教えたことのない、これまでの経緯を話すから、さ。」
*Our story…なんてな.お前らもゆっくり聞いてけよ."前回"ではちゃんと話してないわけだからさ.
*
***
*****
*******
さて、まずどこから話すかな…。
あ、やっぱり『むかしむかしあるところに』って始めたがいい?…い~…らなそぉ、だね、うん。ごめんごめん。
ずっとふざけないと、なんか調子でなくて。
ンンっ。
……まず前提として、この世界は元々ゲームだ。そんで母さん…フリスクは、基本的にこの世界の主人公とされる。…仮にしておこうか、さっきの仮説が無意味になっちゃうから。後でノートに書き込んでおくよ。
ゲームがあるからには、もちろんそのゲームを遊ぶためのプレイヤーがいる。
プレイヤーの操り人形でしかないフリスクは、キャラと一緒に数えきれないくらいこの世界を繰り返した。
Nルートから始まり、Pルート、そこからGルート。そこから
でまあ、如何せん時間の感覚なくなるまでやってたらしい。
ああ、らしいって言うのは、私も本当に母さんから聞いただけで何も知らないから。
母さん、嘘つける人でもないから疑ってるわけじゃないんだけど、時間の感覚がなくなるまでやってたってことはちょっと思考が麻痺するんだよね。スマホいじりすぎたときみたいな感じ?
だからそこで記憶を改変されてても不思議じゃないってこと。
うん?…あー。私も、なんでキャラも繰り返してたのかなーと思ってたんだけど、たぶんあれじゃないかな。このゲームの中における『最初のニンゲン』としての役目を終えたから。そんで、死後に物語としての地下世界からは弾き出されて、別のどこかに飛ばされた。W.D.ガスターがいるような、どこでもなくてどこでもある、みたいなどこかにね。
続けるね。
あるとき、いつも通り誰かもわからないプレイヤーがGルートの2週目をしたとき。キャラの話の真っ最中でプレイヤーが突然退場…んー、たぶんエラーでパソコンがクラッシュしたとか、ブルースクリーンが出たとかかな…して、二人は本音で話せる場ができて、話し合いをしてたんだって。
そこでキャラと大喧嘩…や、君の話聞いた感じだとキャラの性格的に鬱憤が爆発したのかな。
それで世界をやり直すやり直さないの話をしてヒートアップしそうになった時、6つあるうちのとは全然違う、バグを起こしたような青緑のタマシイが二人の間に割って入るように現れたんだとか。
フリスクは咄嗟にそれを押し付けるようにして、それを対価に世界をやり直すことを選択して…
……気が付いたら、5歳の子供の姿で大穴の淵に立ってた。
プレイヤーとの繋がりを一切感じない。
体が自由に動く。
一度も見たことのない木々の緑、大きな洞窟、底のない大穴。
背には、どこまでも広がる青空。
本人曰く、それを見て、自分は何かとんでもない過ちを犯したんじゃないか。モンスターたちを傷つけるような選択をしてしまったんじゃないか。
そう考えたら怖くてたまらなくなって、山を降りたんだって。
地上に出た後の話云々は母さんも知らないから、当然イビト山の外になんて行ったことない。かと言って山から離れるのも怖くて、そのまま山の周辺を夜までウロウロさまよってたらお巡りさん…あ~、こっちで言う
その人たちに保護されて、孤児院にいくことになった。
孤児院、…はさすがにわかる?そうそう、保護者がいない子供たちを引き取ってくれる施設。それでいいよ。
母さん戸籍も何もなかったからめっちゃ怪しまれたけど、記憶喪失で乗り切ったらしいんだよね~。ある意味すげーわ。
うん?なんでこんなにノリが軽いかって?疲れたんだよー、重い空気じゃやってらんないんだって。
おっと、続き続き。
フリスクが孤児院に入って数ヶ月。
そんなあるときに、日本住まいのとある夫婦が宝くじ当てた記念にイビト山周辺の町を訪れた。
奥さんが子供を授かることができない体質でね。田舎でのんびり観光するついでに孤児院があるって聞いて、ちょっと見に行ったんだ。
そこで、夫妻は当時モンスターのことばかりを気にして、部屋の隅で落ち込んでたフリスクを見つけたんだ。
自分が落ち込んでても、誰かの迷惑になると思ったらそれを押し殺して笑うフリスクを見て、夫妻は一も二もなく彼女を引き取った。
たまたまフリスクが日本語を喋れたのもあったけどね。日本語というか、色んな言葉を喋れたらしいけど…まぁ、そこはどうでもいいか。
こういう経緯があって、フリスク…母さんは、日本にやってきた。
名前もフリスクから
植物のことを勉強するために大学にだって行ったんだよ?…まあ、それもずっと地下のことを引きずってたからなんだろうけど。
あ~……胸糞悪い話、人間ってどっちかっていうといい人がいることのほうが少ないんだわ。いや、私たちが住んでたところは馬鹿みたいにお人好しが多かったけどさ?
…それでも、悪い奴だっているんだわ。この犯罪はモンスターの中ではないんだろうけども、私たちが産まれたのはそのせいっていうか……。
…わかんないか。
とりあえず、母さんが私たちを産んだのは19歳とだけ言っとくよ。
…ここらで休憩入れようか。今のはまぁ、いい話じゃなかったから。
あ、大丈夫だよ!ここからは重い話なんてないから!!
*今考えると、俺たちが産まれた経緯はこんなに重いのに、誰も悪口言ったり噂をしなかったのは異常だったんだなぁ.
作者のかげちゃです。
物語のセリフやらナレーションやら、あちこちに伏線貼りまくってて文章がおかしくなってないか不安になってまいりました。
回収できるといいな…
次回は回想の続きに入るんですが、実は皆様にお願いがあります。
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、骨ギャグの募集です。
何分作者が骨ギャグを考えるのが苦手でして…(汗)
強制とかではないので、思いついたらそっとコメントしていただけたらなと…思います…<(_ _)>
これ書いてるの深夜の2時半なので、文章がおかしかったり誤字してた場合は優しく教えてもらえたらなと…
では、おやすみなさい…( ˇωˇ )
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少女と花の仮説①
"Human"について。
*単刀直入に言うと、フリスク、キャラとは別に、
*もちろん、この人物はゲーム内には登場することがない、概念的な存在だ。私とフラウィが考えるに、この存在に人格はないだろう。
*プレイヤーが操作する、プレイヤーが名付けた名前を持った、器。
*主人公としてゲーム内を行動して回る、プレイヤーの依り代、或いは化身。
*ストーリーの展開とプレイヤーの選択肢、起こした行動によってはフリスクの器にもキャラの器にもなる存在。
*キャラであれば、旅の中で溜め込んだLOVEが。
*フリスクであれば、旅の中で生まれた夢と希望、モンスターたちとの間に芽生えた友情が。
*どちらの器にせよ、自我を育てるための要素を集める器らしきものなのにはあまり変わりはないだろう。
(↑仮説だからってなんでもアリにするなよお前。あとなんだこの気取った書き方)
(↑失礼な!)
*私の母は、最初から自我があったと言っていた。
*自分がゲームのキャラクターだと自覚したうえで、最初に行ったのがNルート→Pルートで、リセットされたときに初めて自分の行動が制限されていることに気づいたのだという。
*つまり、Pルートに辿り着くまでは、自分がプレイヤーに操られていることにははっきりと気づけなかったということだ。(そこに違和感を感じている様子もなかった。)
*考察材料が足りない。次の仮説まで、これはお蔵入りにしておこう。