EDF5×FGO AD.2022 地球防衛軍INカルデア   作:放仮ごdz

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約一年。お待たせしました!先日、九月一日に誕生日を迎えた放仮ごです。本当は誕生日記念に投稿したかったけど余裕で間に合わなかったよ…インドの異聞帯まで進んだので、前回もちょっとだけ編集しておきました。

銀の人との最終決戦。EDF&カルデアVSプライマーの総力戦です。よければどうぞ、見て行ってください。


後篇 人理を守る最後の壁

 マザーシップ11を撃墜し勝利を確信していたエアレイダー、藤丸立香率いるEDF隊員達の前に降り立った絶望。

 

 金の装飾をところどころに付けている、全身銀色の人の様なそれは他のエイリアンとは違い、何も装備していない人型のナニカ。中空に浮かぶそれは後光すら差していて、オペレーターの言う「神」だとも納得できる圧倒的な存在感だった。

 

 最初は本部の命令で拘束を試みるも、抵抗したため攻撃を開始したのだが・・・銀の人は自由自在に空を舞い、手から光弾やレーザーを繰り出してきたかと思えば、光の環から通常と重装甲それぞれのコスモノーツを大量に召喚。さらにはその迎撃に駆られたEDF隊員たちに向けて光を纏い突撃し、炎を纏った足でストンプしたかと思えば、背中の金の環からノーモーションでプラズマ弾が放たれる。予想もできない多才な攻撃に殲滅されて行くEDF隊員達。

 

 

『なんだ!?奴はなにをしている!?何か武器を持っているのか!?』

 

「あの兵器は一体なんだ・・・!?」

 

『これまで遭遇して来たエイリアンは、全て武装していました。しかし、この巨人は武器を持っていません』

 

『光を操り、空を舞う。まさに、伝説の通りです・・・アレが神です・・・!』

 

『神か・・・だとしてもエイリアンの神だ。地球には必要ない!』

 

『コマンドシップに搭乗していた事から、王や皇帝に相当する支配者・・・あるいは軍の司令官。重要人物だと思われます。どちらにせよ、プライマーにとって致命的な打撃となるでしょう。コマンドシップによる消耗もありますが、撃墜してください!』

 

 

 本部の総司令や戦略情報部の女少佐、その部下のオペレーター等に通信であれこれ言われるが、立香には現場で共に戦う隊員たちのぼやきさえ頭に入っていなかった。常識はずれの戦いを繰り広げてきた彼の記憶と照らし合わせても、正体不明の得体のしれない存在。考えることは今まで、仲間たちがしてきた。自分は信じる通りに動いて来ただけ。だからこそ、分からなかった。

 非武装の敵から放たれる圧倒的な攻撃の数々。超能力(サイコキネシス)と思われる、万能であるとしか思えないその姿はまるで・・・

 

 

「魔術、師・・・?」

 

「危ない!ムァスター!」

 

 

次々と殺されて行く隊員たちの姿に、放心していた立香に向けて放たれた光弾を盾を手に受け止めるレオニダス。しかし出力が違うのだと言わんばかりにあっさりと吹き飛ばし、杭と矢を放って攻撃していたヴラド三世と俵藤太も簡単に薙ぎ払われる。ブーディカが必死に隊員たちを守り、ヒロインXとランスロットが剣を手に立ち向かうもまるで歯が立たず、炎を纏ったストンプで吹き飛ばされる。英霊ですら圧倒するそんな相手に、臆してしまう立香。

 

 

「・・・クソッ、兵力を整える事やら兵糧の事で頭がいっぱいで人選を誤ったか?少しでも、火力の高いサーヴァントを召喚するべきだった・・・でも、今更そんなこと言ってられない!撤退は出来ない!レオニダス、ブーディカさん!頼む、全力で守ってくれ!」

 

「「おう!」」

 

 

プライマーの元締めとも言えるその存在は、圧倒的な強さで地球など敵ではないと言わんばかりにEDFと英霊達を一蹴し腕を組んで見下していた。

 

 

「クソッ、堅い装甲ならバルジレーザーで・・・!」

 

 

立香が誘導装置を取り出し照準である赤いレーザーを銀の人に向けるも、要請した衛星レーザーが発射するべくロックオンする前に自由自在に空を移動する銀の人から照準レーザーが外れてしまい、ならばと地面に向けて照射して起動、直後にレーザーをずらして当てるという今まで機動力の高い敵に対して行ってきた荒業で対抗するも放たれた衛星レーザーは掠りもしない。レンジャーやら直接戦える兵科なら戦いようはあるのだろうが、基本支援要請するしかないエアレイダーではあまりに分が悪かった。

 

 

「駄目だ、速過ぎて当たらない!」

 

 

空軍に敵の位置を知らせるビーコンガンも掠りもせず、手も足も出ない立香。サーヴァントたちと違い戦士ではない自分では、ろくに当てることも出来ない。ランスロットたちや軍曹たちに任せるしかない、と歯噛みする。

 

 

 

 

 

 

さらには残るマザーシップもこの場に集結しつつあり、全滅を覚悟せざるを得ない状況。しかし、この最悪の状況下で少佐が発動した「オペレーションオメガ」は、立香には許容できない物だった。

 

もう戦える戦力はいない。そのため全ての人類、つまり素人同然である民間人をEDFの兵士として全戦力を投入し、世界中のマザーシップを搖動して足止めする。もちろん用意できる装備など無い。全人類を捨て駒にする。正真正銘最後の作戦だ。そんな少佐の通信に怒りをぶつけるのは、民間人を決して見捨てず、軍人として守る事を信条とする軍曹だ。

 

 

「何の装備も無い民間人に戦えと言うのか!?」

 

『時間稼ぎにはなります!』

 

「全員が死ぬぞ!神風を祈って僅かな生存者を犠牲にするのか!?」

 

「それだけは駄目だ!俺達が戦って来たのは、戦えない人達を守るためだ!」

 

「「「「「「「「誰もいない地球を守ってなんになる!」」」」」」」」

 

 

その時、軍曹と立香、そしてサーヴァント六騎の叫びが合致した。思いは一つ。

 

 

『ど、どんな…どんなに犠牲を払おうと、この行為にはそれだけの意味が…我々は勝たねばならないのです!』

 

「少佐!貴女に初めて物申しますが、俺の尊敬する看護師が言っていたんだ!失われた命より、救われる命の方が多くなったとき、螺旋の闘争はいつか必ず終わるのだと!救われる命すら無くなったら、それでこそこの星は終わりなんだ!過去に生きた人達が繋いできた全てが無駄になるんだ!異聞帯を滅ぼしてまでこの世界を取り戻した意味がなくなる!そうなったら俺は、みんなに顔向けが出来ない!」

 

「藤丸、無茶だ!」

 

 

そう言って、手にしたビーコンガンを手に、銀の人に向けて突撃する立香。咄嗟にそれを止めようとする軍曹だったが、コスモノーツの放って来たレーザーを目の前に出て防いだ筋肉…レオニダスに制止された。さらに二筋の流星がミサイルを斬り捨て、謎のヒロインⅩもその場に降り立った。

 

 

「ご安心なされよ、軍曹殿。彼は我らがマスターです。マスターとは第一に、生き残ることが必須ですからね。特に足は私直々に鍛えさせていただきました」

 

「ええ、我々のマスターは特に目が良くてですね!それに悪運もいい!あの程度の弾幕じゃマスターには届きませんよ」

 

 

そう言う両者の信頼を一身に受け止め、走る立香。降り注ぐ光弾を跳躍して避けるも余波を受けて転がり、それでも立ち上がって銃口を頭上に浮かぶ銀の人へと向けた。

 

 

「俺はどうなったっていい、生きてさえいれば何でもできる!当たらないなら、近づくしかないだろ!」

 

 

そう言って、一回転して振り下ろしてきた炎を纏ったストンプを、横っ飛びで回避しながらビーコン弾を発射。

 

 

『こちらDE-202、目標に攻撃開始する。エアレイダー、藤丸立香。君の頭上には我々が居る事を忘れるな!』

 

「ああ、忘れてないさ!いつもありがとう!俺達なら、奴を倒せるはずなんだ!」

 

 

銀の人の胸部に付けられたビーコンの要請を受け、上空に飛来したガンシップから放たれたロケット砲が銀の人の胸部に炸裂。巨体をよろめかせて倒れそうになるも、空中で踏ん張り再び腕組みして立香を見下ろす銀の人に、立香はヘルメットの下で不敵に笑んで振り返る。例え見えなくても、仲間が安心できるような声色で、藤丸立香は高らかに声を上げるのだ。

 

 

「それに、奴は俺の知っているような神じゃない。太古の昔に人類に文明を授けた張本人?だからどうした。この惑星は、都市は、ウルクを始めとした人類、地球人が何千年もかけて築きあげてきた文明だ!俺達人間は奴らの家畜なんかじゃない!あいつは魔術師もどきの、邪悪な侵略者だ。ドレイク船長も言っていた。弾が当たる、血が出るなら殺せる!そうだろ、みんな!」

 

「「「「「「おう!!」」」」」」

 

 

背中の環を変形させて高速で移動してきた銀の人の巨体による突進を、それ以上の高速で空を駆ける馬車に乗ってきたブーディカに回収され、難を逃れる立香。その周りには、頼れるサーヴァントたちがいた。

 

 

「ブーディカさんとレオニダスはこのまま防御に専念して、皆を守って!ヴラドはそのままコスモノーツの迎撃を!」

 

「お姉さんにまっかせて!」

 

「行くぞ、異星人!これがスパルタだぁああああああっ!」

 

「よかろう。串刺しの時間だ、我が領土のみならず地球に土足で乗り込んできた侵略者共よ!」

 

 

飛び降りた立香の指示で三者三様に動き出すブーディカ、レオニダス、ヴラド三世。EDFの兵士たちと共にコスモノーツを駆逐していき、ブーディカの戦車から飛び降りた立香は側に控える俵藤太、ランスロット、ヒロインⅩと共に銀の人へと突き進んだ。

 

 

「藤太さん、ランスロット、ヒロインⅩは俺と一緒にあの神もどきを叩くぞ!」

 

「よし!」

 

「お任せを!」

 

「行きますよ、マスター!掴まって下さい!」

 

「頼んだ、Ⅹ!」

 

 

機動力がまるでないエアレイダーを補うべく、二振りの約束された勝利の剣(エクスカリバー)から噴き出るエネルギーをジェットエンジン代わりにして空を飛ぶヒロインⅩに掴まる立香。銀の人の放つ光弾を避けて高速で駆け抜けた。

 

 

「俺達もいくぞ、藤丸!」

 

「お前こそ奴らにとっての死神だ、小僧」

 

「我ら遊撃部隊ストーム!お前についていくぞ!」

 

 

すると軍曹が率いているレンジャー部隊ストーム2、精鋭のフェンサーのみで構成されたグリムリーパー隊ストーム3、ウィングダイバーのみのスプリガン隊ストーム4と、立香…エアレイダーのストーム1をリーダーとした遊撃部隊ストームが集まり、サーヴァント共に銀の人へと立ち向かう。

 

 

 

「スプリガン隊を…なめるなあ!」

 

「ここがお前の死に場所だ…!」

 

 

スターダストキャノンを連射して銀の人の正面を削りながら上空へ舞い上がるスプリガン隊長に続いてスプリガン隊が上空からレーザー兵器を一斉掃射し、グリムリーパー隊長のブラストホールスピア二撃目が炸裂。

二発ごとに威力が上がる性質のフェンサー用の武器は銀の人の腹部を貫通して見せ、続けざまにグリムリーパー隊が盾を手にして防御しながら一斉に突撃して次々と攻撃を浴びせる。

体勢が崩れた所にレンジャー部隊の弾幕と共に銀の人の動きを抑圧、さらに軍曹が専用武器であるレーザー砲、ブレイザーを放って銀の人の左足を破壊することに成功する。

 

EDF最高戦力の連携攻撃に銀のメッキが剥がれ落ちるどころか片足まで失って余裕を持てなくなった銀の人は両掌を下に向けて光線やプラズマ弾を放つも、もとより高機動力のフェンサー&ウィングダイバーどころか、ろくな機動性を持たないレンジャー部隊にさえ見切られ、避けられてそちらにくぎ付けになったところに、軍曹が叫んだ。

 

 

「今だ、ストーム1!」

 

「ああ軍曹!藤太さん、宝具を!」

 

「では、やるか!南無八幡大菩薩……願わくば、この矢を届け給え!」

 

 

立香の指示と共に、俵藤太は愛用する五人張りの強弓を力のかぎり引き絞り、銀の人へと狙いを付けて彼の宝具八幡祈願・大妖射貫(なむはちまんだいぼさつ・このやにかごを)を解き放つ。放たれた矢は龍の幻影を纏って空を駆け、軍曹たちを薙ぎ払おうとしていた銀の人の炎を纏ったストンプと激突、弾いて押し返して見せ、EDF隊員の歓声が上がった。

 

 

「ランスロット!」

 

「あの()の生きる地球(ほし)は奪わせん!――――最果てに至れ。限界を超えよ。彼方の王よ、この光をご覧あれ!縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)!」

 

 

続けて跳躍したランスロットの、愛剣無毀なる湖光(アロンダイト)に過負荷を与えて籠められた魔力を漏出した、湖の様な青い光を纏った斬撃が銀の人の左腕を両断。大ダメージに聞き取れない絶叫を上げる銀の人。さらに駄目押しだと言わんばかりに謎のヒロインⅩに掴まった立香が飛来した。

 

 

「ヒロインⅩ!ぶちかませ!」

 

「星光の剣よ。赤とか白とか黒とか、あと銀とか消し去るべし!ミンナニハナイショダヨ!無銘勝利剣(エックス・カリバー)!」

 

 

謎のヒロインⅩが二振りの約束された勝利の剣(エクスカリバー)による斬撃の連撃を銀の人の胴体に炸裂させる、その直前に。立香自身は銀の人に謎のヒロインⅩが接近したのと同時に、その眼前に跳躍。手にしたリムペットガンから放たれた小型榴弾を銀の人の頭部に炸裂させ、さらに起爆。胴体に斬撃の嵐を、頭部に爆撃を浴びた銀の人は空中でダウンし、その動きを止めた。

 

 

「セイバーに遭えばセイバーを斬る。神に遭えば神を斬る。主にセイバーばっかり増やす神を!こいつがその神だったら万々歳です!」

 

「…それはないんじゃないかなあ。でも、これなら…決戦前にトランクで召喚しておいた最後の一騎が来る前に、倒せたんじゃ…」

 

「おっとマスター。そいつはフラグという奴ですよ!」

 

 

謎のヒロインⅩに受け止められて地面に着地し、一息ついていた立香。しかしその前で、銀の人は再び動き出して失ったはずの四肢が再生、背中の環を絵にかく太陽の様な形状にすると光り輝き始め、銀の人はさらに上空に浮遊。そして、絶望が飛来する。

 

 

「巨人が光り輝いている!?これは…」

 

『藤丸さん!逃げてください!はるか上空、宇宙から高速で飛来する物体を大量に感知しました!神の…本当の姿です!』

 

「隕石だって!?」

 

 

銀の人を中心として、宇宙から飛来して市街地に降り注ぐ数えきれない数の隕石(メテオ)。超能力で引き寄せたであろうそれは、サイズはそれほどでもないが、重力による加速と摩擦による熱を帯びたそれの威力は絶大で。EDF隊員が、ストーム隊が、サーヴァントたちが、なす術もなく吹き飛ばされていく。藤丸立香は隕石という死そのものに対しても、驚きはすれど臆さない。なにせ魔弾…これ以上の巨大隕石と相対した時すらあったのだから。

 

 

「あのサイズなら…ヒロインⅩ、頼む!」

 

「そうですね!こうなったらなりふり構っていられません!約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!

 

 

かつて、特異点となった新宿に藤丸立香を標的に撃ち込まれた超巨大な隕石(最後の魔弾)を破壊したのは、正義の味方の残骸と、反転した黒い騎士王の聖剣。謎のヒロインⅩはその聖剣を二振りも扱える。

黄金に輝く聖剣から上空に振り放たれた極光が大量の隕石を消し去るも、すぐに補充され先程以上の隕石が飛来。立香は咄嗟に跳躍して逃れ、同じく空中に逃れた謎のヒロインⅩは二撃目である黒い聖剣をまるでバットの様に頭上に振るった。

 

 

「セイバーホームラン!約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!…これでも駄目ですか。マスター、もっと魔力を!」

 

「ごめん、もう俺の魔力も…少佐からもらった電気を変換した魔力も、底をついて…」

 

「なんですと!?ぐはあ!」

 

 

再び隕石群を薙ぎ払い、それでも降ってくるそれらに謎のヒロインⅩの要求に、立香は首を振ると、それに気を取られていたヒロインⅩに銀の人の炎のストンプが炸裂、吹き飛ばされてしまう。

多大な魔力を消費する宝具を連発したのだ。現在もレオニダスとブーディカが防御宝具を展開していて、特に魔力消費の大きい聖剣を連発するほどの余力はもうなかった。さらに召喚される重武装のコスモノーツの大軍。銀の人の親衛隊であろうそれは、ほぼ壊滅状態のEDFとサーヴァントたちの蹂躙を始める。既にエイリアンを迎え撃つ戦力は底をついているが、それでもと戦うEDF。それに応える様にサーヴァントたちも奮起する。

 

 

『途方もないエネルギーを生み出す超存在…生物の域を超えています…!』

 

「ああ少佐、アレはもうサーヴァントの宝具級だ…あんなの、もうどうしようも…」

 

『これだけの犠牲を払ったのに…英霊達でもどうしようもないなんて、みんなは一体何のために…!』

 

 

オペレーターの悲痛の声に何も言えなくなる立香。ビーコンガンを撃っては見るも、先ほどより高所に移動した銀の人には当たらない。ビークル要請として、あの高さに対抗できて質量の伴う攻撃で大ダメージを与えられるだろうギガンティックアンローダー・バルガを呼び寄せた物の、あのスピードじゃ拳を当てる事すら敵わないだろう。さらに銀の人が掌から光弾の雨を降らせ、隕石から逃れ続ける人間を駆逐する。まさしく万事休す。

 

 

『奴は疲れと言う物を知らないのか!?コマンドシップを破壊したところで、奴を倒せなければ意味がない!』

 

『思考を物理的なエネルギーに変換できるということは、理論的に尽きることのない力を持っていることになります。魔力に限りがあるストーム1のサーヴァントたちとは真逆の存在です。もし逃したら…全ての犠牲が無駄になります!なんとか!何とかしてください!』

 

「奴のパワーは無限という事か…でも、血は出ているんだ。不死身という訳じゃない筈だ。あんな神様より恐ろしい、それこそ世界を幾度も破壊し創世した神を俺は知っている…それに比べれば!何より、七つの世界を犠牲にして取り返したこの世界を、失わせてなるものか!」

 

『そうは言うが藤丸…もう戦える戦力はない、我々は壊滅した…!いくらストーム1でも、あの化け物相手に何ができる…』

 

『投入可能な戦力無し…チェックメイトです。受け入れるしか…』

 

「まだだ、まだ俺達がいる!諦めたら何にもならないぞ!こんなピンチなんて何度もあったんだ、これぐらい…何とかして見せる!」

 

「そうだねマイ・ロード。やっぱり君は英雄の器だ。この私が保証しよう!」

 

「え…?」

 

 

そこに現れたのは、この戦場に似つかわしくないラフな服装をした優男。Camelot&Coという霊衣を身に着けたその男は、列記とした立香のサーヴァントであり、「冠位(グランド)」の魔術師(キャスター)。生粋のキングメーカー、花の魔術師マーリンであった。

 

 

「やあマスター。久しぶりだね。高みの見物していたらいきなり呼ばれたものだから、急いで徒歩で来たとも!私の出番かな?やぁ、こいつは手強そうだ」

 

「道理で召喚してから来るのに時間がかかったわけか…というかなんて格好で来てるんだマーリン!?」

 

「まあまあ。ちょっとバカンスをね。まずは立て直しをしよう。無限のエネルギーが何だとも。君にはこの私がついているじゃないか!星の内海、物見の(うてな)。楽園の端から君に聞かせよう……君たちの物語は祝福に満ちていると。罪無き者のみ通るがいい――永久に閉ざされた理想郷(ガーデン・オブ・アヴァロン)

 

 

詠唱と共にその宝具が発動、戦場である半壊した街にマーリンを起点に花畑が咲き誇り、その花弁を受けたEDF兵士たちの傷が癒えていく。サーヴァントたちも魔力が回復し、重装コスモノーツを押し返し始めた。

 

 

『これが話に聞いたグランドクラスのサーヴァントの力…これほどとは。これならば勝機があります!』

 

『そうだ少佐、これまでも絶望を打ち砕いてきた彼に全てを賭けよう。もはや、我々にできることは祈る事だけだ…ストーム1。まさか人類そのものを背負わせる事になるとは…!』

 

「大丈夫です本部!また背負えばいいだけだ!」

 

 

無線で託されると同時に、ちょうど落下してきたバルガに乗り込もうとする立香に声がかけられる。隕石で吹き飛ばされたものの、マーリンの登場で何とか回復して駆けつけた軍曹だった。

 

 

「藤丸。お前は誰よりも強く、勇敢だ。やるべきことは分かるな?」

 

「ああ軍曹。決まっている。EDFの皆や英霊達…この星に生きた命に代表し、奴等に一発喰らわせる!」

 

「ああそうだ。行って来い!ストーム1!」

 

 

軍曹に背中を叩かれて後押しされ、バルガに搭乗して起動する立香。彼のサーヴァントには、メカエリチャンと言うちょっと特殊なサーヴァントがいる。その時に培った操縦技術(仮)をフルに使い、さらにランスロットがバルガの肩に飛び乗り騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)で宝具化。普段鈍重な動きしかできないバルガを走らせ、コスモノーツを押しのけて銀の人に接近して拳を叩きつけようとするも、落下位置を調整された隕石に邪魔をされ、プラズマ弾の高速連射を受けて背中から転倒してしまった。さらに隕石が集中して降り注いできて大ダメージで黒煙が燻り出すバルガ。

 

 

「くそっ…隕石が邪魔だ!このままじゃあいつを一発も殴ることなくバルガの装甲が削られて終わる…!」

 

「マスター!隕石は私とランスロットでできるだけ斬り捨てます。藤太さんも出来る限り援護してくださるそうです!」

 

「マスターは奴を倒すことだけに集中を!」

 

 

追撃とばかりに落ちてきた隕石を、約束された勝利の剣(エクスカリバー)で薙ぎ払いつつ空を駆けてきたヒロインⅩと、バルガの肩で無毀なる湖光(アロンダイト)を振るって隕石を切り刻むランスロット、地上から龍の幻影を纏った矢を放ち隕石を撃ち抜き爆散させる藤太のサポートを受けつつ、背中のブースターを噴射させて立ち上がり、両拳を掲げて回転させるバルガ。

 

 

「俺はみんなを信じる、行くぞ!終わらせる!」

 

 

それを見て銀の人は分かりやすく後退し、隕石を滝の様にバルガ目掛けて落下させてきた。英霊達ですら対処できない物量で落とす気なのだろう。しかし隕石はバルガには当たることなく擦り抜け、困惑する銀の人へ距離を詰めるバルガに、それを行ったマーリンがバルガの後方で笑みを浮かべる。

 

 

「残念。それは私のスキル「幻術」だ。ふむ、さすがは生粋の降臨者(フォーリナー)と言ったところか。一筋縄ではいかないね。だが、私から見れば君は既に彼らの英雄だとも。だから駄目押しだ。キミに全チップを賭けよう。頼むぞ~?」

 

 

するとマーリンのスキル「英雄作成」が立香を後押しし、速度の上がったバルガの拳が、咄嗟に銀の人が防御に使おうとしたのか落ちてきたバルガほどもある巨大な隕石を真正面から打ち砕き、銀の人の胴体を捉えた。

 

 

「!!!!?!?!!?!!?」

 

 

聞きなれない絶叫を上げ、銀メッキを散らしながら紫色の体液を吹き出しつつ、両手両足がもがれて吹き飛ぶ銀の人。さらにバルガは距離を詰めて追撃。およそ機械仕掛けから繰り出されたとは思えないキレのある拳が銀の人の顔面に突き刺さり、さらに猛ラッシュを銀の人に叩き続ける。

 

 

「マルタさん直伝…ヤコブ神拳ッ、だあ!!」

 

 

強攻撃(バスター)の連打、連打、連打。隕石がバルガに落ち続けるもサーヴァントたちに迎撃され、重装コスモノーツを召喚してもやはりサーヴァントたちとEDFに瞬く間に対処され、銀の人は再生する暇もなく環からプラズマ弾を連射してせめてもの抵抗を試みているが、まるで効果がなさず殴り続けられる。砂塵と花弁が舞い、紫の体液が飛び散り、あまりにも無茶な動きでバルガから黒煙が燻り、火花が散る。

 

 

『ストーム1!』

 

『神が、苦しんでいます!終わらせてください!この悲劇を!』

 

『『『EDFの誇りにかけて!!』』』

 

『『『名誉にかけて!!』』』

 

『やれ!ストーム1!』

 

 

「うおぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 

徐々に、徐々にスピードが落ち始めるバルガの拳。銀の人のボディも赤熱し始め、どちらも限界だと分かる。そして、環から放たれたプラズマ弾がバルガを撃ち抜き、ついに大破。しかして英雄は倒れず、全身全霊でコックピットから飛び出した。何とか右腕だけ再生させて、立香に向けて掌をかざし緑のレーザーを放つ銀の人。しかしそれを、どこからともなく投擲されてきたラウンドシールドで防がれ、立香はその盾に乗ってさらに跳躍した。

 

 

「今の盾は…?」

 

「ムァスタァアアアアッ!これをッッ!」

 

「使え!藤丸ッ!!」

 

 

そこに目掛けて、地上からレオニダスが投擲して立香の手に握られたのは、軍曹のブレイザー。立香は自身の窮地を救ってくれた盾のことはひとまず忘れて、眼前に迫る銀人へと銃口を向けた。

 

 

「オオオォォーーーーーーッッ!」

 

 

横から手が迫ってくるが、関係ない。軍曹から、EDFのみんなから、サーヴァント達から託された、地球の命運を背負ったこの引き金を引いて、長きにわたる戦いを終わらせる。人類最後のマスターとして、守って見せた地球を再び取り返す!

 

 

「 E ! D ! F ッッ !! 」

 

 

そして、銀の人の顔面に激突。両足を踏ん張って銃口を突き付け、言い慣れた掛け声と共に、プライマー打倒を掲げて開発された兵器が火を噴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やったぞーーーーーー!!』

 

 

『人類は勝ったーーーーーー!!』

 

 

『聞いたか!?』

 

 

『なんてこった!』

 

 

『ハハッ、やりやがった!』

 

 

『『『『EDFッ!EDFッ!』』』』

 

 

 

 

 

 

「…俺の勝ちだ、侵略者」

 

 

歓声を聞いて、半壊したヘルメットの下で一人笑みを浮かべて黄昏る立香に、駆け寄る仲間たち。零距離から頭部を撃ち抜かれた銀の人は、赤熱した身体を崩壊させて地面に崩れ落ち。人類は宇宙からの侵略者相手に勝利したのだった。

 

 

人類最後のマスター、後に英雄と呼ばれる男…藤丸立香の手によって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…先輩は、私が守ります。間に合って、よかった」

 

「まったく。もうデミサーヴァントでもないのに、素の筋力であれを投げちゃうんだから君は。そうだ、これからトランクを回収しに行くけどせっかくだ。君も会ってくるかい?」

 

「で、ではお言葉に甘えて…」

 

「数年ぶりの生立香君だ、堪能するといいさ。マシュ」




藤丸立香はいつだって何にだって屈しない。英雄ストーム1となった藤丸立香と、そんな彼について行くストームチームの皆とサーヴァントたちでした。軍曹は特に好きなキャラなので出番マシマシです。

満を持して徒歩で登場、花の魔術師マーリン。最後のキャスター枠です。本当は「彼」を召喚しようと思っていたけどネタバレが過ぎるのでやめました。壊滅状態になったEDFを建て直しさせている陰の立役者です。

EDFの最大戦力の連携、宝具ラッシュ、超強化バルガの連続パンチと悲惨な目に遭った銀の人。隕石を降らすってだけで宝具級だと思っています。フォーリナーって言うサーヴァントのクラスである前作の侵略者の呼び名でマーリンが呼んでるのは皮肉です。

とどめはバルガが大破してからのブレイザー。某天元突破ロボアニメをイメージしました。いわゆる「熱い」戦いが表現できたと思っています。


そして最後の彼女達。もう片方の宝具で颯爽と潜航してきました。現在彼女がどうなっているかは明かさない方向で一つ。原作もハッピーエンドに終わると信じてる。

そんなわけでいかがだったでしょうか。この短編は今回で最後ですが、楽しんでいただけていたら幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などをいただけたら嬉しいです。感想をいただければいただけるほど他の小説の執筆速度が上がります。むしろ感想くださいお願いします。

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