仮面ライダービルド ~Stars and flowers~   作:アルクトス

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戦闘シーンは苦手だから飛ばします(迫真)


なんか、お外は台風で大変なことになってるけど、引きこもりだから関係ないよね(停電なんて知らない)


コンビは語らう

「さあ、授業を始めようか」

 

 男――桐生戦兎が、そう言って教壇に立つと、教室の中を探るように視線を送る。

 

「起立」

 

 視線に促された、今日の日直担当である少女の号令に従い、教室内少し減って二十九名の少女全員が立ち上がる。

 

「気をつけ、礼」

 

「「お願いしまーす」」

 

 揃う声が上ずっているのは、新任であり教壇に立つ彼への興味所以か。 

 そんな防人の仲間たちの軽率な思考に呆れつつも、芽吹も興味が無いわけではないのではないので、耳だけは傾けておく。

 

「……ねえ、誰から行く?」

 

 そんな小声でのやり取りが教室のあちらこちらで行われる。

 だが、機会をうかがう少女たちの声を掻き消すように、今まで誰も触れなかった存在。教室の背後から低く叫ぶ声が戦兎を糾弾した。

 

「おい! なんで俺がこっち側なんだよ!!」

 

 男――万丈龍我は、同輩の仲間であるはずの戦兎にガラ悪く突っかかるが、彼自体は慣れたものなのか淡々と返す。

 

「今更かよ、突っ込むならもっと早くしないよ」

 

「タイミングの話じゃねェだろ! なんで俺も生徒側なんだよ!!」

 

 確かに、それは皆が気にしていたこと。

 防人の全員が言い合う二人の会話に耳を澄ませる。

 

「だってお前バカじゃん……」

 

「せめて筋肉付けろ!」

 

 と、万丈が反論するが、まるで意味が解らない。

 

「今は関係ないでしょうが! ……文句があるなら、この問題解いてみなさいよ」

 

 戦兎がさらさらと黒板にチョークで記すのは、物理の問題か。

 教科書等を見ずに記すあたり、彼は物理が得意なようだ。

 

「はッ! よゆーだぜ……ェェ……」

 

 対して最初こそ威勢よく声を張った万丈だが、次第に声の勢いが無くなっていく。

 その様子に戦兎は呆れたように一つ息を吐くと、くるりとこちらに向き直り、言った。

 

バカ(万丈)がこんな感じなので、分かる人いますか」

 

 挙手を募る戦兎。

 渋る周りを余所に芽吹が手をあげようとしたその時、それよりも早く通る声が教室内に響く。

 

「はい」

 

「それじゃあ……弥勒さん、答えをどうぞ」

 

 手を挙げたのは、三年生の弥勒夕海子だ。

 

「――ですわ」

 

 スラスラと計算式を述べていき、答えを導き出す夕海子。

 周囲から「すごい」と声が上がるが、今出された問題は中学三年相当の基礎問題だ。それ相応に勉学に励んでいれば、一年生は無理かもしれないが、二年生ならば解ける程度の。

 

「正解、流石三年生」

 

 とは言え、夕海子のようにスラスラと解けるわけではないが。

 戦兎に褒められた夕海子は、着席する際に芽吹の方を見て得意げな顔をする。

 

「万丈、これ……中学生レベルの問題な」

 

「…………」

 

「何か言うことは?」

 

「……席戻ります」

 

「素直でよろしい」

 

 二人の方は漫才のようなやり取りを済ませると、万丈の方は若干不満げに席に戻り、戦兎はパンと手を叩き、皆の空気を入れ替えると、今一度宣言した。

 

「さあ、改めて……授業を始めようか」

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 その日の夜。

 戦兎は『大赦』という組織に与えられた自室にて、一人ごちていた。

 

「あぁ……人に教えるって、結構疲れるもんだな」

 

「こっちはお前に宿題出されて、それ解くのに苦労してんだけどな」

 

 言って、机にだれる万丈。「解ける気がしねェ……」と弱気な声が漏れる。

 

「ったく、教えてやるから……」

 

 ――そこ中学二年生レベルなんだけどな……。

 言わないでやるのが優しさだろうと、内心に留めておく戦兎だった。

 

 

 

 

 

 数十分後。

 

「あァ~解けた……」

 

 普段使わぬ頭を酷使した万丈はオーバーヒート気味に倒れ込む。

 

「…………」

 

 そんな万丈を余所に、考え込む戦兎。

 

「ん、どした戦兎?」

 

 それに気づいた万丈が気遣わし気に問うのだが、変わらず戦兎の方は苦い顔だ。

 

「……今の俺たちの装備の確認をしてた」

 

「装備?」

 

「エボルトとの闘いでエネルギーを消耗したり、故障したりしたアイテムが多いからな」

 

 と、戦兎が掲げるのはクローズマグマナックルだ。

 

「ああ、マグマナックル……」

 

「エボルトとの二度の決戦で無茶したせいで、内部の構造自体がオーバーヒートしたからな。ついでにスパークリングやハザードトリガ―、フルフルボトルもエネルギーのリチャージが必要で、当分は使用不可」

 

 つまりは強化フォームが全て、ということになる。

 それを聞いた万丈も、戦兎同じく苦い顔だ。

 

「ジーニアスは?」

 

「あれはクローズビルドに変身した時に内部のエネルギーを使い切って、完全に使えなくなった」

 

 望みの綱も完全に断ち切られ、二人して軽く頭を抱える。

 

「マジかよ……」

 

「しかもここには設備が無いから、当分は初期装備でいくしかない」

 

 だが、初期装備と言っても戦兎は六十のフルボトルを操るビルド三十のベストマッチフォームを、万丈はグレートクローズの力が残されているだけ、幾分かましか。

 

「まあ、今は装備云々よりも、俺たちの現状把握――つまりはこの世界についての知識が必要だ」

 

 沈んだ雰囲気を変えるべく、戦兎は話題を変えた。

 世界にやって来て以来、改めての現状把握は必要なプロセスだ。

 

「ああ、でも外がヤベェことになってる以外はあんまり変わんなさそうだけどな」

 

 万丈の答えはバカっぽい単純明快だが、それ故に的を得た発言だ。

 戦兎はそれに頷くように、言葉を返す。

 

「……今、この世界の暦は神世紀三百年だ」

 

「三百……?」

 

 流石に言葉が少ないか、戦兎の発言の意図が分からずに万丈は首を傾げる。

 ので、戦兎は自分の頭の整理も兼ねて、万丈に改めて言葉を連ねる。

 

「暦が切り替わったのが、二〇一九年らしい。……つまり、西暦に直せば今は二三一九年ってことになる」

 

「メッチャ未来じゃねーか」

 

「そう、未来なんだ。だが、文明レベルは俺たちの世界と大差がない」

 

 この世界に来て数日だが、触れた文明機器――スマートフォン、TV、その他の家電等含めて、戦兎たちの住む時代の二〇一八年と差は無かった。

 

「それが、悪いことなのかよ?」

 

 聞いてくる万丈に、戦兎は人間のある真理を説く。

 

「文明ってのは、常に発展するものだ。人々の間に競争という意識があるからな」

 

「良く解んねェ……」

 

 更に首を傾げる万丈に、戦兎はため息交じりに言葉を砕いた。

 

「お前にも解り易く言うと、俺たちの世界での三百年前は?」

 

「一七一八年か?」

 

「そう、十八世紀だ。十八世紀というと、ヨーロッパでは産業革命が起きた。電気技術が大きく発展した。日本で言うなら徳川吉宗が活躍したころだ」

 

「徳川……吉宗?」

 

 マジかよ、徳川家将軍で家康、綱吉、吉宗、慶喜は必須じゃないのか……。

 流石の戦兎もあまりの万丈の学のなさに辟易としつつも、解りやすい例を探る。

 

「もっとわかりやすく言えば、『暴れん坊将軍』だ」

 

「あ、時代劇だ」

 

「つまり、そんな時代から競争を繰り返して、俺たちの時代まできたんだ」

 

「おお……、なんとなくわかった」

 

 ここまで噛み砕いてようやく何となくか。万丈との普段の会話は何も考えずに気兼ねなくできるのに、解説ごととなると途端に頭を回さねばならなくなる。

 疲労感を覚えながらも、戦兎は纏めるための言葉を考える。

 

「三百年も経てば、技術は確実に進歩するはずだ。だがこの世界にはそれがない。……つまり競争が無いんだ」

 

「ほーん……」

 

 理解してるのかしていないのか、万丈は間抜けな声を上げるが、気にせず戦兎は続けた。

 

「人間の生存本能は競争によるものも大きい。だが安定して生を与えられるのなら、競争なんか生まれない」

 

「お、おう……」

 

「そしてこの世界に生を与えているのが、この世界で信仰の対象となっている『神樹』」

 

「あぁ、真珠な真珠……綺麗だよな」

 

 ――絶対漢字違うだろ。

 

「神樹な、神の樹って書いて神樹な。日本に根付く土地神たちの集合体らしい」

 

「バカか、神様なんているわけねェだろ」

 

 当然のことのように万丈が返す。

 お前が言うな、と戦兎は呆れ顔でまた返す。

 

「それ言ったら万丈、お前……自分が地球外生命体の遺伝子持ってるの忘れてないか」

 

「あ」

 

 どうやら当人である万丈はすっかり忘れていたらしい。

 脳内で組み立てられている台本の、三十二話相当のところで悩んでたのはいったいなんだったのだと、戦兎。

 

「少し前まで、いないとされていた地球外生命体が存在して、俺たちと戦ったんだ。神という存在が実在してもおかしくない。……というか、俺たちは実際それを見てる」

 

「マジかよ」

 

「一つ、神樹に力を与えられた防人と呼ばれる少女たち……並びに勇者という存在。二つ、あの地獄のような外とこの平和な内とを隔絶する不可思議な結界。三つ、神樹を信仰しその恩恵を受ける大赦という組織」

 

「はァ……三つね」

 

 生返事の万丈。

 もういいや、と戦兎は構わずにどんどん続ける。

 

「ここまで揃えば、神樹が実際に存在しているという証左になる」

 

「なるほど。んで、それで?」

 

 ここから話を膨らませようと思う戦兎だが、見事に話を理解していない万丈には話しても無駄と悟る。

 

「……単に俺たちの現状把握が済んだってだけだ」

 

 諦めて、遂に話をたたむ戦兎。

 

「おう」

 

「俺たちの世界に帰る方法もわからなければ、誰がどうして俺たちをこの世界に呼んだのかもわからない」

 

「まぁ、帰ったって住む場所ねェけどな」

 

 真顔のマジレスだった。

 

「それを言うんじゃないよ……」

 

「でも、実際そうじゃねェか」

 

 ――家なしの救世主。

 そんな肩書の二人。この世界では手厚く歓迎されているが、そうでなかった時を考えると……。

 

「兎に角! ……また、この世界で俺たちが戦う理由ができちまった」

 

 ふと表情を引き締める戦兎。

 思い浮かべるのは、先ほど名前の挙がった防人の少女たち。

 

「……だな」

 

 万丈も、暗い表情で頷く。

 

「あんな年端もいかない女の子たちが戦っているのを黙って見過ごすことはできない。……俺たちが守るんだ」

 

 教室で触れ合った、まだあどけない少女たち。

 戦兎は思う。そんな子たちが戦いを強要される世界なんて間違っている。それでも、彼女たちが居なければ世界が終わってしまうというなら、俺たちができる限りのサポートをしよう。

 大赦とは、そういう契約になっている。

 

「その為に、一緒に戦ってくれ……万丈!」

 

「おう!」




く、九月中の投稿……ギリギリ間に合ったぜ(ほぼ十月)
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