仮面ライダービルド ~Stars and flowers~ 作:アルクトス
ここのところは受験勉強等々、毎日死に物狂いですが息抜きに買いてた分が溜まりましたので、ここで一気に投下させていただきます。
多分、この先は向こう三か月は音信不通となりますが……まぁ、失踪はしません(多分)
喰われた。
少女はいとも容易く、喰われ、そして呑み込まれた。
「しずく――――っ!!」
芽吹の絶叫が響き渡る。
戦兎と万丈が救出の為に急ぐ。
「くっそぉぉぉ!!」
「間に合えっ!!」
吼える――と、突如と銃声が鳴り響いた。
「なっ!?」
銃声は成りかけの内部から発せられている。戦兎の驚きはそのためだ。
鳴り響く銃声とともに、成りかけの身体が内から弾ける。
「んだよ!? アレ……」
さらに、成りかけの身体が内部より裂かれる。
そしてその裂け目から、銃剣を携えた少女が肉を掻き分けるようにして飛び出す。
「だあああああ!」
しずくだった。
安堵の息を吐く、戦兎らだがどうにもしずくの様子がおかしい。
「うらああああああ!! このデカブツが、なますにしてやるぁぁぁっ!!」
普段の様子と打って変わり、吼えるしずく。
成りかけに飛びかかると、銃剣を容赦なく化け物の巨体に突き刺し、引き金を引く。そしてそのまま、剣を横に薙ぐ。
それを、幾度と繰り返す――突き刺し、撃ち、引き裂く。
化け物は、あっという間にしずくによって打ち倒され、その姿を天に還した。
「ダ……誰デスカ、アレ?」
文字通りの蹂躙を見せたしずくに、雀は恐怖を隠さずガタガタと震えた。
◆◆◆◆
壁外調査が終わった。
犠牲者はなく、重傷を負う者もなく、結果だけを見れば十分なものだった。
とはいえ、少女たちの精神ダメージを考慮した上でみると、如何ともしがたいのが事実で、戦兎と万丈はみんなの様子を見るために少女たちの多くが集まる食堂に顔を出した。
その中の一つのテーブル。雀としずく、二人の座するテーブルを見ると、どうやら怯えながらも雀がしずくに話しかけようとしている様子だった。
「なんだよ、ガン飛ばしてきやがって!」
しばらく見ていると、戦兎の視線に気がついたか、しずくが眼光鋭く睨み返してくる。
「……ああ、悪い」
そう返すと、戦兎は万丈を引っ張り食堂を出る。
「なんだよ、アレ……メッチャ怖ェ」
万丈がそう漏らす。
無理もない。あの静かな少女が、あんなドスの利いた声を出すとは誰も思わない。
「――桐生さん、万丈さん」
平坦な声が二人を呼ぶ。
振り返れば、そこにいたのは防人の少女らの世話係であるらしい仮面を付けた感情の読めない女性の神官。
「報告は、また後日のはずでは?」
戦兎らには防人たちとは別で任務毎に報告が義務付けられたりしているが、それは書類上のことで期限も二日後だ。
「……いえ、お二方に伝えておきたいことがありまして」
声の調子から同年代、のはずなのだが畏まった口調なのは戦兎らが防人の支援者だからだろうか。
女性神官は一拍置くと、語り始めた。
「あれは山伏しずくのもう一つの人格です」
「……二重人格」
「おん?」
頷く戦兎と、首を傾げる万丈。
女性神官は早々に万丈に対しての説明を放棄し、戦兎に向けての説明を始める。
「はい。本来の山伏さんは自我さえ希薄に思えるような静かな性格ですが、その内側に別の人格を宿しています。粗暴で、荒々しく、そして強い。普段の彼女とは正反対です。追い詰められたりした拍子に、それが出てくるようですね」
「彼女が『九』の番号を与えられているのはそういう訳か……」
防人は強さ順で番号の若さが決まるらしい。
一から八が指揮官で、それ以下の三十二までがそれぞれ銃剣隊と護盾隊となる。
九というのは、指揮官を除いた最上位の強さということだ。
「あの状態の山伏さんは、個人としての戦闘能力は突出していますから。恐らく、筋力等の条件が同じならば楠さんすらも凌駕するほどに」
「でも、防人に必要な連携が全くできない……と?」
今回全員が無事に生き延びれたのは、間違いなくもう一人のしずくによる功績が大きい。彼女がいなければ、最低でも何人もの負傷者を出していただろう。
しかし、彼女は成りかけ個体を倒した後は好き勝手に、隊長である芽吹の指示も効かずに好き勝手に星屑たちと戦っていた。
その様子は、まるで――
「……少し、彼女と話してみますよ」
「よろしくお願いします」
最後にそう告げると、女性神官はその場を立ち去った。
残ったのは、どう話しかけたものかと悩む戦兎と、変わらず首を傾げる万丈の姿。
「なんだよ、お前、怯えたツラしやがって!」
「ひぃ! し、シズク様、お許しを~!」
戦兎が食堂に戻ると、二人はまだやり取りを続けていた。
雀なりにシズクとコミュニケーションを取ろうとしているのだろうか。
「……今、いいかな?」
そこに割り入る形で、戦兎は声を掛けた。
「あ、俺か?」
睨むしずく。億すことなく、戦兎は真っすぐその目を見据える。
「ああ、君だ」
しずくは暫し考える様子を見せるが、すぐに考えを決したのか答えた。
「……いいぜ、ここじゃ話せないことか?」
「そうだな……屋上にでも行こうか」
「わかった」
そうして、立ち上がったしずくを伴い、戦兎はゴールドタワー屋上へと向かう。
潮風靡くゴールドタワーの屋上。
秋深まる中、空は赤く染まり、少し肌寒くあるので手短に済ませようと戦兎があれこれと考える中、しずくの方が先に問うてきた。
「で、俺に話って、一体何の用だ?」
「そうだな……」
「決めてなかったのかよ!」
そういうわけではなかったのだが、戦兎はぼやきつつも会話を切り出した。
「……そうだな。君は勇者の同輩だったんだろ? 彼女たちのことを聞いてもいいかな?」
「勇者……? どういうことだ?」
「それは――」
問われ、戦兎はどう説明しているかと言い淀んでいると、しずくがやがて納得したように手を上げた。
「いや、言わなくていい。あの野郎……楠のことだろ?」
存外、彼女は鋭い方のようだ。
「…………」
戦兎は無言でもって肯定を示すと、しずくはぽつぽつと語りだした。
「アイツは、ただのガキだ。他人の芝生を眺めてヨダレ垂らしてるガキだよ」
吐き捨てるように言い切るしずくに、戦兎は問う。
「その心は?」
すると、しずくはどこか遠く……憧憬のような表情を見せる。
「俺は二年前、隣のクラスだったけどよ。勇者ってやつを間近で見てた。その一人が死んだ姿だって見てきた」
「っ!?」
死――その言葉に、戦兎は思わず反応するが、そこは自重する。
「っても、俺はあいつらが勇者として戦ってるところは見ちゃいねぇ。何やってるかも知らなかったしな。俺が知ってるのは、普段の学校での姿だけだ」
しずくは笑う。
「あいつら変な奴だったからな。隣のクラスの俺でも知ってるくらいだ」
昔を懐かしむような、小さな笑いだ。
「鷲尾須美って奴がいた。クソ真面目で、色々不器用な奴だったが、ダチ思いなのは見てて分かった」
しずくは笑う。遠くを見つめて――
「乃木園子って奴がいた。マイペースでずっと寝てるくせに、本気を出せば何でもできちまう奴だった。本気になんのは、ダチに関してのことだったがな」
しずくは微笑む。その眼に影を落としながら――
「……三ノ輪銀って奴がいた。コイツは落ち着きがねえトラブルメーカーって感じだったが、他人やダチのことをよく気遣ってる奴だった」
しずくは息を呑む。まるで感情を収めるように――
「コイツが、逝っちまった勇者だよ。今ならわかる。多分……他の二人を守って、死んじまったんだ」
語るしずくの、その眼は悲しみに満ちていた。
「気さくで明るくて誰とでも仲良くなれて、ダチ思いで家族思いで……昔しずくが声掛けに行った時も、ダチみたいに話してくれた」
語るしずくの、その声は嬉しさに溢れていた。
「全員……ただ、ほんのちょっと気高い精神を持ってるだけの普通の子どもだった」
空を見上げ、しずくは誇るように言った。
「カッコよかった」
しずくは今一度笑う。
「尊かった……」
ふと、しずくの手元を見るとその手は強く握り込まれていた。
「俺の……いや、俺たちの憧れだった」
憧れを語る、そんなしずくに戦兎も思わず笑む。
「……そうか」
その笑みから顔を逸らすように、しずくは戦兎に言う。
「アンタも、多分同じタイプだな」
「……それは、嬉しい評価だな」
思わぬ高評価に眉を上げる戦兎。
と、しずくはにやりと悪い笑みを浮かべる。
「で、俺に勇者のことを話させて、アンタは楠に何する気だ?」
本当に彼女は聡い。こちらは胸の内などほとんど明かしていないのに。
だがそれ以上に――戦兎は微笑みかけながら、しずくにふと語り掛けた。
「……君は善い人だな。悪ぶりつつも、そうやって人の心配をする」
しずくの語りには、どこか棘はあるものの全てに何かを想う裏がある。
「俺が? 善い人とか、気持ち悪いこと言うなよ」
当たりの強い、拒絶を求めるしずくの声。
「じゃあ、君は何を基準に善悪を決める?」
対して戦兎の切り返し、しずくには意味が解らない。
「あ?」
何故、今そんなことを聞く――言葉にせずとも、それをしずくは態度に込めた。
「問いが難しかったか……。じゃあこうだ、君は悪は誰にとっての敵になる思う?」
そんな戦兎の問い直しにも、やはりしずくには意味が解らない。
「んだよ、いきなり……そりゃ正義じゃねーの?」
口にするのも恥ずかしいような、俗にいう子供向けの作品で語られる様な陳腐な答え。とは言え、唯一解はこれであろう――そう、吐き捨てるようにしずくは答えた。対して、やはり戦兎は微笑む。
「違うな。正義は善の概念じゃない。正しくは悪は善にとっての敵だ」
達観したような表情だ。だが……その意味は解らない。
しずくは、即座に反じた。
「同じだろ、正義も善も」
ただ言い方の違いだ。だが、戦兎も即座に反じてくる。
「いや違う。正義は善でもあり悪だ」
「……は?」
根本から否定をされ、しずくは顔を歪める。
対し戦兎は、ふと夕日の方に顔を向けると語りだす。
「正義は、それを成そうとする者によって善悪が決まる。だから、たとえ正しい行いをしても、それが犠牲を求めるっていうなら論外だし、悪行でも誰か一人でも救っていれば……救われた人にとっては正義だ」
そう、悪なる行為で救われる者もいる。例えば、記憶を無くし路頭に迷うしかなかった戦兎へエボルトはその名前を付け、一時を家族のように過ごしたこと。
奴の真意は自らの力の回復で、その為に散々と利用されたが、その点だけ戦兎はエボルトに感謝していた。
「…………」
しずくは何も言葉を返せなくなった。
なるほど、戦兎の考えはわかった――だが、それを今問う理由はやはり解らない。
そこでしずくは早々に思案を捨てると、改めて戦兎へ向き直る。すると、戦兎の方もそれに気づいたかしずくへと向き直る。そして――
「君は、結果的に防人の皆を助けた。誰も近寄らせず、自分の手で」
決定的な言葉を告げた。無自覚に思っていた、しずく当人にすら自覚のない思考を言い当てた。
「……アイツらがいたところで、足手纏いの邪魔にしかならないからな」
動揺に、思わずと早口となり言い返すしずくだが、笑む戦兎によってそれは流される。
「それは嘘だ。君は暴れまわることで結果的に皆を遠ざけた。邪険にするってなら突き飛ばすなりしてもおかしくないだろうに」
断言だ。思考を許されず、しずくは言葉を紡げなくなる。
「っ……それは」
言い淀んだところで、戦兎はさらに微笑んだ。
「ほら、善い人だ」
最早反論も返すこともできず、しずくはただ舌打つ。
「チッ……俺を褒め殺して、なにさせたいんだよ」
嫌味交じりに放った言葉だったが、どうやら戦兎には実際に何やらしずくに頼みごとがある様子。
「強情になってる隊長様に一発かましてもらえないかな~……と」
「ふーん」
先ほどまでは見事に言葉で自分を翻弄していたというのに、途端に歯切れの悪くなる戦兎に、思わずしずくはニヤリと笑みを零す。
「ダメか?」
その笑みをどう解釈したか、窺うようにしずくに尋ねる戦兎。
だが、既にしずくの中では答えは決まっている。
「いいぜ、一度あいつの鼻を明かしてやりたかったんだ」
「……利害の一致だな」
呆れたように返してくる戦兎。
対してしずくは、先ほどよりも深くニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「ま、何も言わなくても楠なら俺に絡んできただろ? あいつ、集団行動大好きなお利口さんだからな」
「違いない」
互いに苦笑して、その後は二人して靡く潮風に寒い寒いとタワー内に戻っていくのであった。
ゆゆゆい28話はホント衝撃的でしたね……正しく「それ以上言うな!」状態でしたが、これから勇者部はどうなるのか!?
まあ、まじめに言うと多分勇者部内で争いが起こって……千景と雪花は戻りたくない派閥になりそう。杏とか須美とかも、もしかしたら……。
それと、当の本人である銀とかタマっちとかは帰還側だと思う。