バブールレーン   作:ペニーボイス

101 / 172
ピッピ「私〜がツイてるぜぇ〜」

指揮官「ツキ過ぎ」


Ⅲ章 パイレーツ・オブ・ロイヤリアン
バブ・ストーリー


 

 

 ベルファストからの定時連絡に支障はなく、作戦はまるで順調のように思える。

 あの銀髪爆乳パーフェクトメイドお姉さんの手にかかれば、護送なんて任務は案外楽勝なのかもしれない。

 通常無線機による記録に残る通信と、暗号無線機による記録には残らない通信のそのどちらもが、現時点では異常のない事を私に伝えていた。

 

 

 順調と言うのなら、それ以上に素晴らしい事はない。

 接敵なし、交戦なし、損害なしのパーフェクトな結果なら、私が嫌な顔をする理由は何一つないのだから。

 ただ、どうにも心配で仕方ない。

 

 あまりにも()調()()()()()()()()()()()

 第4艦隊"フジヤマ"からの連絡は異常なし、第5艦隊"マンハッタン"も異常なし、周囲の他鎮守府や他の商船の通信・航行状態にも異常はなし。

 いや、どうにもおかしい。

 

 自分で言うのが一番おかしいのかもしれないが、この作戦は本来存在しない不具合を必然的に生起させる前提で物事が進んでいるのだ。

 何か偶発的な失陥がない方が疑い深い。

 ロバート・フォン・ピッピベルケルク=セントルイスファミリアとかいう赤ん坊が、叔母の注文に答えるために進行させている作戦において、何一つの障害がない事などあり得るのだろうか?

 

 

 

「考えすぎじゃないかしら、坊や?」

 

 

 ピッピマッマが黒下着ガーターベルトという、お前は指揮官執務室をストリップクラブか何かにでもしたいのかと言いたくなる格好で私にそう言った。

 もう色々と突っ込みを入れたい要素しかないが、私としては本質的に規則違反の作戦に集中したいので、もう無視をする。

 

 無視されたのが腹立たしかったのか寂しかったのか。

 ピッピはなっげえポールを一本持ってきて、執務室の中央部分に設置し始めた。

 どうやらバーレスクでも始める気らしい。

 

 

 それでも私は、やはり目の前で行われている改装工事など気にも止めずに考えていた。

 ダンケが対抗してマイクロビキニ着てきたけどなんの反応もできない。

 とにかく、この作戦は不確定要素の塊なのである。

 ベルマッマに5分という短間隔で連絡をし続けるように命じてはいるものの、最早ずっと

 無線の送信スイッチを入れっぱなしにして欲しいレベルで心配なのだ。

 

 

「ねえ、ミニ・ルー?少し息抜きでもしない?あなたさっきからずっとそんな顔だし…」

 

 …………………

 

「ミニ・ルー?ねえ、聞いてるの?」

 

 …………………

 

「…聞こえてないみたいね」

 

「ぐすっ、坊やぁ、私とっても寂しいわぁ」

 

「Mon chou〜?帰ってきてぇ〜?」

 

「ダメね。思考の沼にどハマりしてるみたい。…はぁぁぁ。本当は使いたくなかったけど。」

 

 

 私を谷間に挟むルイスが、どこからか自身の1/16フィギュアを取り出した。

 胸元を大きく開いたカウガールの衣装を着て、右手にルイス軽機関銃を持つルイスマッマのフィギュアである。

 ルイスマッマはフィギュアを私に近づけて、フィギュアの背中にあるボタンに指をかける。

 

 

「は〜い、ミニ・ル〜?」

 

 ポチっ

 

 『私のブーツに(ベルギーの)ガラガラヘビ〜(ルイス軽機関銃)

 

 キャッ♪キャッ♪

 おっと、いかん。本能で反応してしまった。

 つーか、その明らかな版権違反フィギュアはなんなんだこの野郎。

 

「ミニ・ルー?一人で考え込まないで、少しは私達にも相談して?」

 

「そうよ、Mon chou。ベルファストが心配なのは分かるけど…」

 

「坊やがそんな顔で考え込んでると、私達も坊やの事が心配になってしまうでしょう?」

 

 あ〜、ごめんね、マッマ。

 つい…その…考え込んじゃってて。

 ………あんたらの格好に突っ込み入れてった方がいい?

 

「少し頭をほぐしてみましょうか。ねえ、坊や。あなたの心配の原因は、なぁに?海軍の規則に抵触すること?それとも貨物船の乗組員やビス姉さんの利益?」

 

 突っ込みの話はスルーかよ。

 …んっとね、両方かな。

 

 

 

 欲張りなように見えるだろうが、本当にその両方を心配している。

 

 まず、ビスマルク叔母さんの貨物船の方だが、勿論倫理的な問題から心配でもある。

 つまり決して緊急事態に陥らせたくはないのだ。

 あの艦長や乗組員を危険に晒したくはない。

 さらに言えば、私は家族を大切にしたいタイプの人間なのだ。

 ピッピとガチの血縁者になったからかどうかは知らないが、ビス叔母さんが悲しんでる顔を絶対に見たくない。

 叔母さんは私を頼ってくれたのだ。

 期待には必ず答えたいし、約束を守る甥でありたい。

 

 

「姉さんの方なら心配いらないわ。例え万が一この護送作戦が上手くいかなかったとしても、姉さんは坊やを責めたりはしない。失望もしない。これだけは絶対に約束できる。そもそも無理を頼んだのは姉さんの方よ?それは姉さんが一番よく分かってる。」

 

 ありがとう、ピッピ…そう言ってもらえると気がラクになるよ。

 

「嘘おっしゃい、Mon chou!顔に書いてあるわ!」

 

「ミニ・ルー。もう一つのあなたの懸念を当ててあげましょう。規則に抵触すること自体は、正直あまり恐れていないんじゃないの?」

 

 ギクッ

 

「あなたが心配しているのは、この作戦を私達だけで遂行しなければならないこと。つまり…外部のバックアップが得られないということ。だからあんな顔をして、少しでも悪い要素がありはしないかと考え込んでる…」

 

 て、テレキネシス系の読心術かよ…

 

「あぁ…なるほど…。本当に優しい子ね、坊や。」

 

「でも、Mon chou?ベルファストや重桜艦の強さはあなたも知っているでしょう?そんな心配しなくても、絶対に無事で帰ってくるわ!」

 

 何故だろう。

 すっげえ死亡フラグに聞こえた気がする。

 

「もぅっ!ミニ・ルー!考えすぎ!第一、援護の"マンハッタン"も待機してるでしょ!それに…」

 

『ご主人様!!』

 

 

 

 唐突に暗号無線機から張り詰めた声が聞こえる。

 間違いなくベルマッマの声で、無線の受話器を取った私の鼓動はバ●・ライトイヤー並みだった。

 えっと、その、つまり…あわや無限の彼方にさあ行くところだったのである。

 

 

『高速艇が2隻こちらへ接近中!どこから来たのかは分かりませんが、予めこちらの位置を知っていたように思えます!』

 

 了解した!交戦準備!

 

『了解!』

 

 ピッピ!"マンハッタン"を現場に急行させて!

 

「分かった」

 

 ダンケは"あいつら"にも連絡を!

 

「で、でも、Mon chou?少し焦り過ぎじゃないかしら?」

 

 なあ、ダンケマッマ。

 沿岸部から貨物船へ至る航路の間には"マンハッタン"がいたハズだよね?

 

「そうね」

 

 なのにワシントン(旗艦)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…!?すぐに準備させるわ!!」

 

 

 ピッピとダンケがストリッパーみたいな格好のまま執務室から飛び出していく。

 正直まともな服に着替えて欲しかったが、今は寸分を惜しむべき時なのだ。

 

 

 私は目の前の海図に目を戻し、ルイスが海図上のコマを動かす様を見る。

 正体不明の高速艇2隻は、どうやら貨物船と"フジヤマ"の南西側に回り込んで迫りつつあるらしい。

 ベルの続報を聞く限り、無駄のない機敏な機動を披露しているらしかった。

 ほぼ間違いなく海賊どもだろう。

 

 あわよくば"フジヤマ"を見て逃げ出して欲しかったのだが、そうはならなかった。

 しばらくして、ベルマッマの、本当に焦った叫びに近い声が私の期待をかき消した。

 

 

『ロケット砲!!!高速艇からロケット砲の攻撃!!!!!』

 

 ベル!?

 

『くっ!…大丈夫です、ご主人様!外れました!貨物船も我々も無事です!交戦許可をいただけますか!?』

 

 ああ、ぶっ殺せ!!

 交戦規定(ROE)は『セイレーン向け(皆殺し)』だ!!

 慈悲も残すな!!後悔させてやれ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2隻の高速艇は、ほぼ同時に無反動砲を発射したのだが、照準がお粗末そのもので明後日の方向へと飛んでいく。

 ただし、貨物船と護衛艦隊に脅威を感じさせるには十分で、攻撃者の思惑通り、KANSEN達は高速艇へ攻撃を始めた。

 まず火を吹いたのはベルファスト、高雄、愛宕の前衛艦隊の火砲である。

 ところが高速で航行する上に的の小さな高速艇は、砲弾の間をすり抜けるように逃げていく。

 

 

「クソっ!ふざけた真似を!ここは拙者が…」

 

「どうか落ち着いてください!深追いは禁物、我々前衛艦隊の分離が連中の狙いのようです!」

 

「本当に鬱陶しい高速艇だことッ!」

 

 

 

 高速艇はミニ●駆のようにクルクルと高速で離脱、その後最接近してもう一度無反動砲を射撃する。

 

 

「ハッ!私達にそんな砲が当たるとでも!?ベルファスト!高雄ちゃんに斬り込んでもらいましょう!私達は平気でも、貨物船なら危ないかもしれない!」

 

「…ッ、確かに民間の貨物船なら、当たりどころによっては…」

 

「なら、参るッ!」

 

 ガチンッ、ドゴオオオオッ!!

 

「なっ!?き、機雷だと!?」

 

 

 ベルファストが決断を迷う間に、高雄が前衛艦隊から離脱して高速艇を追おうとしたが、あの忌々しい高速艇はどうやら浮遊機雷をいくつか撒き散らしたようで、高雄はそれにかかってしまう。

 

 

「大丈夫!?高雄ちゃん!?」

 

「心配ない!ただのかすり傷だ!」

 

「皆さま、各個の判断で動いては敵の思う壺です!ここは貨物船の安全を優先しましょう!」

 

「断続的な砲撃を浴びせれば、連中も距離を取るしかない!愛宕、行くぞ!」

 

 

 前衛3名の砲撃の結果、高速艇2隻は、前衛の思う通りに離脱していったが、その間際に前衛とは少し距離を置いている後衛艦隊・天城の叫び声が無線に流れる。

 

 

『こちら後衛!南東方向から新たな高速艇の接近を確認!少なくとも2隻います!』

 

「このタイミングで!?」

 

『ベルファスト、赤城と加賀が航空機で援護します!その間に貨物船を守りつつ退避させた方がよろしいかと!』

 

「………ご主人様、こちら"フジヤマ"!敵の増援を確認!航空爆撃に伴い、貨物船を北方向へ移動させます!」

 

『了解した!今"マンハッタン"がそちらへ急行中!それまで連中に接近を許すな!』

 

「仰せの通りに!」

 

 

 

 

 高速艇は確かに厄介な存在ではあったものの、対処できないものではない。

 だが、ベルファスト率いる第4艦隊が更に厄介な事態に直面するのは、まだ先の事であった。




気がついたら100話超えとるやないか〜い!

皆々様のおかげさまで頭のおかしなサイコスートリーを3つ作ることができました、本当にありがとうございます。
オモチャをオペして怖い目にあった男の子が書いたような怪文章ではありますが、お楽しみいただければ幸いです。

どうぞこれからもよろしくお願いします
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。