バブールレーン   作:ペニーボイス

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WAになってあやす

 

 

 

 

 

 えええええええええ!?!?!?

 うっそおおおおおおんッ!?

 このタイミングでセイレーンって、あるぅ?

 

 海域異常ないって言ったじゃん!

 どっから湧き出てきたのよあのセイレーン艦隊!

 宇宙戦艦ヤ●トやエンペ●アル級ウォーシップみたくハイパーなんとかジャンプでもしてきたっつーのかよこの野郎!?

 

「落ち着いて、Mon chou!"マンハッタン"があと15分で到着するわ!」

 

 ダメだ、ダンケ!乗り込まれる!

 

「坊や!私の姉さんなら貨物船にも護衛の戦闘員を載せてるはず!」

 

 高速艇に乗ってる人数も分からない以上、それだけを頼りにもできないよ!

 ああ、クソッ、クソォッ!!!

 畜生畜生畜生畜生!!!!

 なんてザマなんだ、私とした事がッ!!!!

 

「落ち着いて、ミニ・ルー!」

 

 落ち着く!?

 これが落ち着いてられるか、ルイス!!

 貨物船だけじゃなく、ベル達だって危ないんだぞ!?

 あのクッソ忌々しいクッソ高速艇にクッソ撃ち込んでたから残弾もどれだけあるかわからない!!

 赤城や加賀も艦上機は爆装だろうから、雷装に変更するには時間がかかる!

 そんな中セイレーンの急降下爆撃機なんか来りゃ2度目のミッドウェーになっちまう!!

 ダメだダメだダメだダメだ、考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!!!

 

「ミニ・ルー………」

 

 ポチっ

 

『私のブーツにガラガラヘビィ〜』

 

 キャッ♪キャッ♪

 ルイスゥゥゥウウウ!?

 マジでやめてくれないかな!?

 人が必死こいて考えてこんでる時にウッ●ィ擬きの人形引っ張り出しt「皆んな!ラッキールー♪よ!」

 

「「「「ラッキールー♪」」」」×9

 

 

 私が抗議の声を張り上げた瞬間に、指揮官執務室に9人のセントルイス級セントルイス達が雪崩れ込んできた。

 ルイスマッマによって一糸乱れぬ統率を維持する彼女達は、そのまま私を取り囲む。

 そして私自身はルイスマッマによって抱え上げられ、9人のセントルイスのど真ん中に放り込まれる。

 

 放り投げられた私は輪になったセントルイス達の馬鹿テガいアパラチアの山々で作られたクッションによって受け止められた。

 その後ルイスマッマは流れるようにその輪に入り込み、歌を歌い始めたのである。

 

 

 

「オ〜・オ・オ〜、さぁ、輪になってあーやそー♪」

 

「「「ラ・ラ・ラ・ラ・ラ〜、すぐに分かるから〜♪」」」×9

 

 

 やめろおおおおおおおおッ!!!!

 輪になってあやされてる場合じゃないんだよ本当に!!!!

 ルイスマッマ!?

 ベルがピンチなんだよ!?

 そんなN●Kから全力で激怒されそうな歌を歌ってる場合じゃねえんだよおおおお!!!

 そんな場合じゃねえええんだよおおおおおおおおおおおおお!!!!!

 

 

「………いいえ、ミニ・ルー。そんな場合よ?」

 

 はいぃ?

 

「あなたは私達にあやされなきゃいけないの」

 

 ……ルイス、本当にマジでやめてくれ。

 こうしてる内にも貨物船は破滅へと刻一刻と迫りつつある。

 この作戦は私が自分の都合で初めたんだ。

 ビス叔母さんは数ある選択肢の中から私をえらんでくれた、期待してくれた。

 だから私が責任を持って…

 

「いい加減にしないさいっ!!!」

 

 パッチィィィン!

 ルイスマッマから唐突に平手打ちをくらう。

 私の身体が赤ん坊なことは十分に考えられた強度での打撃だったものの、普段そんなことをされないからか異様に痛く感じた。

 

 正直、ちょっと衝撃だった。

 

 ルイスマッマからの平手打ちも衝撃だったけど、ルイスが目から大粒の涙を流しているのは尚更衝撃的だった。

 彼女は顔を赤らめて、本格的に悲しんでいるようだ。

 何がそんなに悲しいのだろうか?

 今まで私に手を挙げなかったのに、いきなりこんな事をしたのは何故なのだろう?

 

 私が一人で勝手に困惑しているうちに、ルイスが口を開く。

 

 

「………いつからなの?ミニ・ルー?」

 

 ………え?

 

「思い出してみて。ウィンスロップの時も、北方連合の時も、あなたは私達を頼ってくれたじゃない…」

 

 ルイス…

 

「私達はあなたの母親なの。例えあなたがそう思っていなくても、事実は変わらない、変えさせないわ。私達は母親、あなたは息子。可愛い可愛い、私達の息子…!」

 

 

 ルイスは私を抱えて、強く抱きしめた。

 彼女の温かみ、香り、柔らかさが先ほどの平手打ちを忘れさせるかのように私を包み込む。

 

 

「母親は息子のためならなんだってしてあげるの。なのに、今回のミニ・ルーったら一人で抱え込んでばかりじゃない!もっと私達を頼って!」

 

 ………マッマ

 

「そう!マッマよ!マッマを頼るの!もっと、色んな事で!一人でパニックを起こすくらいなら私達に放り投げてくれてもいいじゃない!あなたで手に負えないなら、マッマがなんとかしてあげる!」

 

 

 

 目頭に熱いものを感じて、私は抵抗する事も出来ずに温かな水滴を頬に垂らしていた。

 こんな…こんな事があって良いのか。

 私を抱えて込む優しい女性は、本当に心の底から私のことを心配してくれたのだ。

 彼女はたっぷりの母性を持って、私の全てを受け入れてくれるのである。

 良きも悪しきも喜ばしきも悲しきも。

 

 

「落ち着いてくれたかしら?………ねえ、ミニ・ルー。少しは私達を頼る気になってくれた?」

 

 グスッ、ごめん。ルイスマッマ。

 

「良いのよ、気にしないで。いい?あなたが反省しなければいけないのは、一人でなにもかもやろうとした事。決して私達に迷惑をかけたとかじゃない。勘違いしてはダメ」

 

 

 

 頭が急速に冷えていくのを感じる。

 長時間の連続射撃で焼きついた機関銃の銃身が、ジュワッと音を立てて冷却されるような感じだった。

 どうやら私は勝手にヒートアップした挙句、大切な事を忘れてしまっていたようだ。

 以前物理的従兄弟に「1人で抱え込むな」なんて言っていたくせに。

 

 私は息を整え、心を落ち着かせると、ルイスマッマに相談することにした。

 

 

 ねえ、マッマ…どうすればいいと思う?

 

「…うふふ、ミニ・ルー♪やっと元に戻ってくれた♪手を挙げちゃってごめんなさいね………さて、ミニ・ルー。あなたは自分で思ってる以上に用意周到な人間のはずよ?」

 

 そうかなぁ。

 でも、もしそうならベルマッマもこんな事には…

 

「はい、マイナス思考禁止!()()()()()、あなたはちゃんと準備してたハズ。思い出してみて?」

 

 …………あ。

 やっべえええええええ!!

 急いで命令を出さないとッ!!

 

「大丈夫♪ティルピッツに指令を出してもらったわ♪」

 

「坊や、私もあなたの為に戦う。実戦でも、執務でも。だからこの程度の事、心配しなくてもいいわ。」

 

「Mon chouを悩ませてしまった私達も、少し反省しないといけないわね。もし辛かったり、耐えられなかったりしたら…」

 

 お腹の中?

 

「ざんね〜ん!胸の中でしたぁ〜!」

 

 んな勝ち誇った顔されても………

 とりあえず、"彼ら"への命令は大丈夫か。

 間に合ってくれる事を祈るしかない。

 あとできる事は…。

 ピッピ?

 第3艦隊『オタカル』の現在地は?

 

「とっくの昔に出港済みよ?」

 

 え、マヂ!?

 

「坊やのドクトリンを知らないとでも思ったの?物量で押すスタンスが坊やの最大の特徴…なら増援に増援をかけようとするのは容易に想像できるもの。」

 

 

 

 どうにも、物事の計画が狂うとパニクる悪癖が間々表に出てくるのが私の悪癖のようだった。

 だが、素晴らしきマッマ達は事前に全てを予測して行動してくれている。

 おかげで清々しいほどに抜け漏れの多い私のような人間の計画でも、どうにか進めることができるのだ。

 

 

 さて、と。

 

 出来得ることはした。

 あとできる事と言えば、ベルマッマとマンリッヘル艦長に精一杯のエールを送ることぐらいだろう。

 私は暗号無線機の受話器を手に取り、手短に済ますつもりの連絡を取った。

 

 

『ご主人様!こちらベルファストです!』

 

 ベルマッマ、あと少し頑張って!

 今は高速艇よりセイレーンへの対処に集中してほしい!

 貨物船の方には"その手のプロ"を派遣した!

 だから、ベル!

 君にはあと15分ほど持ちこたえてもらいた

 

『我が子おおおおおお!!!我々を忘れてもらっては困るなぁ!!!』

 

 …あ、うん、すまん、加賀さん。

 すまんけど、普通無線に割り込んでくる?

 このタイミングで?

 と、とにかく後15分耐えろ、増援が駆けつける!

 

『『『了解!』』』

 

『マンリッヘル艦長より伝言です。"元より高リスクの任務です、気を負うことはありません。ただ、可能なら援護をいただきたい"』

 

 急行中と伝えてくれ!

 …本当にすm

 

『謝らないでください、ご主人様!私もご主人様の母親です!息子のためなら、あと15分くらい耐えてみせます!!』

 

 

 

 

 

 

 "息子"との交信を終えたベルファストは、セイレーンの艦隊を見やりながら155mm砲の再装填を行う。

 敵が優勢なように思えるが、こちらにも勝る点がないわけではない。

 その内の一つを挙げるならば…彼女の狂気の母性を挙げたとしても、違和感はないのではないだろうか?

 

 

 母性ってそんな怖いもんだったっけ?

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