バブールレーン   作:ペニーボイス

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びそくぜんしん、を見て我慢できなかった。
今は反省している。


ラスト・サイズ・オブ・マッマ

 

 

 

 

 

艤装の撃ち合いに打ち勝ったのはピッピマッマ。

 よって勝者たるピッピは幸せ満開な笑顔で私をツークシュピッツェに挟んでいる。

 そして私といえば、いつだかルイスのそれでそうなったように、身体中に染み付いてるんじゃないかと思うほどのピッピ臭に辟易していた。

 まあ、決して臭いとかじゃないんだけどね。

 でも24時間365日あの女性特有の甘ったるい匂いが自分からしてたら嫌になってくるじゃん?

 

 

「♪2人で小さなおもちゃ屋さんに行きましょう そこで99個の戦艦ティルピッツのプラモデルを買うの」

 

 ピッピ?

 やめて?

 なんだって君たちは毎回毎回版権を害しかねない曲を歌おうとするんだい?

 99個のプラモデル買ってどうすんの?

 アレか?

 それを海に浮かべた時、北方連合軍のソフトウェアにバグが発生して緊急事態にでもなるのかい?

 やめてくれ、ピッピママ。

 第三次世界大戦になっちまう。

 

「坊や〜♪坊や〜♪私の坊や〜♪」

 

 

 ダメだこりゃ。

 喜びに満ち溢れているピッピは大きな大きなお胸をたゆんたゆん揺らしながら踊り狂う。

 挟まれている私は軽く乗り物酔い。

 いやホント勘弁してくださいと思っていた時に、それは起こった。

 

 

 パッツンッ!!!!

 

 

 私は唐突にゼロ・グラビティなるものを味わうことになる。

 ふわっとしたかと思うと、私自身の自重は重力に忠実で、ピッピの谷間から滑り落ちかけてしまう。

 全神経が生存本能に刺激された結果、私は極自然に、そして反射的に両腕を広げて自身の落下を防ごうとする。

 よってピッピのお胸を上方から掴んでしまう形となった。

 

 

「キャッ!…もう!坊やのエッチィ!」

 

 ベタだなぁ。

 とりあえず、何が起きたのか状況を確認してもらってもよろしくて?

 

「えっ………あっ………下着が…壊れちゃった」

 

 

 

 

 

 

 

 あんな大はしゃぎするからだろうが。

 

 私がピッピの谷間からミッション・イ●・ポッシブルするハメになったそもそもの理由は、ピッピの下着の破損であった。

 あのバカでかい大きな大きなお胸を下方から支える要因が欠如した事により、私はピッピにセクハラを強いられたのである。

 なんてこったい。

 

 まあ、そういうわけで私とマッマ達は今デパートへ向かっているいやおかしくねえ?

 予備の下着とか持ってねえの?

 つーかなんで他のマッマ達も一緒なのよ?

 

 

「実は…坊や…私の下着、さっきので最後だったの。最近、成長期みたいに胸が大きくなり続けてて………♡」

 

 ピッピ、最後のハートマークは余計でしかない。

 そしてさりげなくダンケから下着を借りるんじゃねえ。

 ダンケもダンケで「これが最後の一本」とか言うんじゃねえ。

 最後の弾倉だからよく狙って撃ちなさい的な雰囲気で貸すんじゃねえ。

 

 

「実を言うとね、ミニ・ルー。私達も段々と胸が大きくなっちゃって…」

 

「きっと…毎日、Mon chouの事を想っているからね…」

 

「下着のサイズが合わなくなってしまった以上、私達も新しい下着を買わなければなりません。」

 

 

 待って、意味分かんない。

 なんでアンタらの胸の更なる巨大化がナチュラルに私のせいにされなきゃならんのか分からんし、そもそもただでさえバカデケえ胸がさらに大きくなるというのも理解できん。

 

 なんでそんな思春期の女の子感全開なわけ?

 なんで規格外の成長をさも当然の事かのようにカミングアウトできるわけ?

 一体何処を目指そうと言うんだい?

 その凶器なんじゃないのかと言いたくなる見事なお胸をさらに大きくして何をしようって言うんだ?ん?

 

 

 マッマ達は私の内心など気にも留めずに鉄血28号に乗り込み、デパートへ向かい、エレベーターに乗って、そして下着売り場へと進んでいく。

 放っておけば間違いなく何の違和感もないかのように下着売り場へ向かう事間違いなしなので、私はピッピの谷間で激しく自己主張する事にした。

 予備の下着も過去に壊してしまっていたらしいピッピがダンケの下着を借りていたおかげで両サイドからの圧が凄く、中々に気づいてもらえなかったものの、随分と泣き叫んだお陰でどうにか気づいてもらう。

 あーもー、ホント疲れる。

 

 私はピッピの谷間から降ろしてもらい、デパートの大理石の床で這い這いしながら彼女達に尋ねる。

 

 

 

 ちょっと待とうか貴女達。

 私も一緒に連れてく気か?

 

「ええ、もちろん。忘れたわけじゃないでしょうけど、坊やは私達から離れたらどうなっちゃうか分かるでしょう?」

 

 そりゃそうだけどさ、こういう時の『歩けるくん1号』じゃなかったっけ?

 いくら赤ん坊の姿とはいえ、中身はおっさんな私をそれでも女の園のクソど真ん中へエスコートしようというのか?

 どこまで一緒に行かなきゃいけないんだ、まさか更衣室の中にまで私を持ち込むわけじゃなかろうな?

 

「確かに…坊やの教育にも良くないかもしれない…」

 

「うふふ、流石ミニ・ルー!こういう日の為に、『歩けるくん1号』を改良していた甲斐があったわ♪」

 

 おお!さっすがルイス!

 

「名付けて、『歩けるくんMk3.block17』!

 1号よりも更に行動範囲が広がっただけじゃなく、耐久性も従来品より大幅アップ!」

 

 すっごおおおい!発明が得意なフレンズなんだね!

 

「何より、この新開発の吸収缶には………」

 

 

 ここまできて、ルイスが顔を赤らめる。

 私も愚か者ではない。

 人間とは過去から学ぶ生き物なのだ。

 自然に後退り、五感をフル活用して退路を探す。

 あれ、おかしいぞ。

 退路がない。

 

 

「………私の腋の下の匂い、谷間の匂い、脚の匂い…それから…私のi」

 

 逃げルウウウ!!!

 

「ダメよ!被りなさい!!!」

 

 

 ルイスマッマはまるで走り回る五歳児にそうするように私を抱え上げ、その美しい白い腕からは想像もつかないような腕力で『歩けるくんMk3.block17』を私に被せた。

 

 まあ、どのみち退路はない。

 

 私の行く手を塞ぐ母親達は、赤ん坊の目線から見れば万里の長城にすら見えたのだから。

 あのさ、君たち本当にこういう時だけは団結するんだよね。

 北大西洋条約機構を彷彿とさせる団結の強さだわ。

 昨夜艤装で撃ち合ってたとは到底思えない。

 

 

『歩けるくんMk3.block17』は言いようのないくらい香りのサプリメントでしかなかったし、それはもはや一種の催涙ガスとでも言うことができる。

 私は3度ほどむせたし、しばらく息ができなかったが、しかし、3分ほどするとどうにか呼吸を取り戻すことができた。

 モンすっげえルイス臭だぁ。

 

 

「それじゃあ、坊や♪私達は更衣室で下着を試着してるから、大人しくしてるのよ?」

 

 

 かつて旺盛だった私の闘争心も、『歩けるくん以下略』のお陰で今では萎えきっている。

 もう既にどこかへ逃げるというような発想は最早ない。

 だが、どうにも、その後に起こった惨劇は、私の想像の範囲を遥かに超えるものだった。

 

 

 

 パッツンッ!!!

 

パッツンッ!!!

 

パッツンッ!!!

 

 

 

「きゃあ!また弾けた!」パッツンッ!!!

 

「何よコレ!全然大きくな」パッツンッ!!!

 

「ベルゥ〜!?もう一つ大きなサイズを」パッツンッ!!!

 

「無理です、ルイス!それが一番大きな」パッツンッ!!!

 

 

 マッマ達が下着売り場へと前進し、いくつか商品を手にとって、その後更衣室へ入っていったのを見た後。

 惨劇はその時に始まってしまったのだ。

 私はとても無力だった。

 仕方がない。

 もうどうする事もできはしない。

 

 

 一体誰が悪いのだろうか?

 

 勝手に巨大な双丘を更に更に大きくしていったマッマ達だろうか?

 それとも彼女達の母性とやらを掻き立ててしまった私自身だろうか?

 或いは、彼女達のような"スーパーサイズ"を想定していなかったメーカーだろうか?

 

 

 

 マッマ達は顔を真っ赤にして、次から次に商品を更衣室に持ち込んでいる。

 その度にパッツンッ!!!というもの悲しい音が響き、その後にはマッマの悲鳴が続く。

 まるで衣類の大虐殺。

 何度でも言うが、私はどうする事も出来ないほどには無力だった。

 

 

 …あ〜あ。

 全部でいくらするんだろうか。

 クレジットカード持って来といて良かったよ。

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