バブールレーン   作:ペニーボイス

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ビス叔母さんジッソオオオオオオオオオオ!!!
ジッソオオオオオオオオオオ!!
ジッソ、ジッソオオオオオオオオオオ!!
ピッピ1人ジャナイ!!
モウ1人ジャナイヨオオオオオオオオッ!!
ジッソオオオオオオオオオオ!!

(喜びのあまりメルトダウンしております、復旧までしばらくお待ち下さい)


三坊、並び立つ

 

 

 

 

 

ビス叔母さんは厳戒態勢をとる当鎮守府の飛行場にJu52輸送機で乗りつけてきた。

 ああ、いや、ビス叔母さんだけじゃない。

 我が親愛なる従兄弟・ラインハルト"一族"の皆さま総出でいらっしゃいやがった。

 なんなんだこの人たち。

 永住する気か?

 

 いくらアポイントメントもへったくれもないゲルマン人大移動をしてきたとしても、我が鎮守府に対し普段からご協力・ご支援頂いているビス叔母さん御一行に「帰れ」なんてとてもじゃないが言えはしない。

 だから私はピッピマッマァの谷間に挟まったまま、勇気を振り絞って話しかけんなオーラ全開のビス叔母さんにようこそおいでました的なサムシングを言おうとする。

 だが、ビス叔母さんはそれさえ遮ってきた。

 

 

「そんな事より、ロブ君。例の装置はどこ?

 

 あ、あの、ビス叔母さん?

 まずはお荷物の方をお預かり

 

装置はどこ?

 

 ビス叔母

 

「装置は、ど・こ?」

 

「ぼぼぼぼ坊や、まずは装置の元まで姉さんを案内した方がいいわ。」

 

 うううううん、そうだね、ピッピ。

 では、こちらになります。

 そうだ、他のお客様は…

 ああ、ありがとう、ルイス。

 今日ばかりは君が10人いることにこの上なく感謝したい。

 くれぐれも失礼のないようにご案内してくれ!

 うん、ありがとう!

 ………はぁぁぁ、疲れる。

 

 

 何が一番疲れるかって、見るからに不機嫌なビス叔母さんよ。

 もうね、雰囲気からしてマッキャベリもマッキャベリなのよ。

 ラインハルトを私と同じ状態にする為には手段選ぶ気全くないのよ。

 さっきからブンブン振り回してるルガーP08のアーテラリーモデルがどこまでも怖いのよ、冗談抜きで。

 

 トグルアクション方式自動拳銃を振り回しながら、ビス叔母さんは私及びピッピの案内に従って例の装置がある小部屋に向かう。

 扉を開けるとそこにはオレンジのツナギを着る明石と夕張がいて、既に装置のセッティングを終えていた。

 

 

「指揮官酷いにゃ!コピーを作れば特赦があるって言ってたにゃあ!明石は病気なんだにゃ釣りに行かないと治んないに」

 

黙れえええええええええッ!!!私達は皆んな病気なのッ!!あなたの病名は工作艦ッ!!そしてあなたがいないと私は私の大切なラインハルトをあやせないッ!!」

 

「ひえぇぇ!す、すぐにでも取りかかれるにゃ!」

 

 すまん、明石、本当にすまん。

 

「それじゃあ、ロブ君♪この装置借りるわね♪」

 

 

 ビス叔母さんは嬉々とした表情で谷間の間からラインハルト(ガチベイビィ)を取り出すと、そのまま哺乳瓶でミルクを与え、オムツを替えてから自身の前に座らせる。

 

 

「あ〜?アッ!アッ!きゃ〜」

 

「大丈夫よぉ〜、ラインハルト。すぐに終わりますからねぇ〜♪」

 

 

 ダメだ、とてもじゃないが直視していられない。

 明石と夕張が最終段階を施行している間に、私とピッピはそっと部屋から抜け出した。

 ビス叔母さんは装置を見て上機嫌に戻ったし、まあ、大丈夫でしょう。

 後は任せた、明石&夕張。

 

 2人の可哀想な工作艦を置き去りにした私とピッピはそのまま応接室へと向かう。

 ビス叔母さん来るっつってたけど、まさかあんな大人数でいらっしゃるとはカケラも思ってはいなかった。

 ラインハルトの物理的親戚一同…まもなくリアルな親戚一同となる…は中々の大きさを誇るハズの応接室を狭苦しい小部屋に変えていた。

 

 

「…突然押しかけて…その、悪かったわね」

 

 ああ、どうも、ヒッパー叔母さん、お久しぶりです。

 気にすることはありません。

 気に病む必要も…

 

「ビスマルクは指揮官が絡むといつも"ああ"なります。まったく…少しは周りに目を向けてもらいたいものです。」

 

「そ、そうだね〜…こっちの指揮官さんも優しい人で良かった!私はカールスルーエ!この娘はケーニヒスベルク!よろしくね!」

 

 こちらこそよろしく。

 ロバート・フォン・ピッピベルケルク=セントルイスファミリア一世です。

 クッソ長いのでロバートなりロブ君なりロブロブなりお好きなように呼んでください。

 

「お久しぶり、ボウヤ。」

 

 ああ、これはどうも、グローセ叔母さん。

 

「覚えててくれて嬉しいわ♪」

 

 クラップ社の筆頭株主を忘れるわけがないでしょう。

 フリッツX-Ⅱの効果は抜群でした、さすがクラップだ。

 

「うふふ、お役に立てて嬉しいわ。…それはそうと、ビスからはこちらにいる期間について…何か聞いてるかしら?」

 

 いいえ、特には。

 

「…そう。まあ、ビスもあんな感じなら無理もないかしら。今回の渡英目的、なんだか分かる?」

 

 

 私がMI5にいた頃、ビス叔母さんは少なくとも1度ロイヤルに来ている。

 あの時はラインハルトが自殺を考えていたようだから…どことなく察して追跡していたのだろう。

 ただ、今回ロイヤルに来た目的は…一つはついさっき見せつけられた。

 

 

「その通り。一つはラインハルト君を"あやす"為ね…」

 

 …ノーコメント

 

「そして、もう一つは…。ここからは重要な話よ?もう一つの目的、それは…ビジネス」

 

 スラム街再開発事業の陣頭指揮を執りに?

 鉄血からでも出来るでしょう?

 

「いいえ、そちらの方じゃない。半年前、ロイヤルの石油会社が北連東部で油田を発見した。」

 

 ええ、チェフメ油田ですね?

 

「新聞をちゃんと読んでいるのね。えらいえらい♪…ビスは今、そのチェフメ油田の開発に参入しようとしているの。」

 

 あれ?

 北方連合の技術では開発が困難で、結局ロイヤル・ペトロリアム社が開発権を獲得したのでは?

 

「まだ決定したわけではないわ。北方連合の現書記長プーシロフは農業政策の失敗で突き上げを食らってるけど、それは結局塩害でダメになった農地に、多額の費用を注ぎ込んでいたから。」

 

 つまり…ああ、そういうことですか。

 トウモロコシ畑の失敗をチェフメ油田で取り返したいが資金がない。

 だから鉄血財界と競合させて、開発費の低下を狙いたい。

 

「そういうこと。鉄血財界とロイヤル財界は両者ともこの油田に注目している…多少開発費をケチられても、もたらす利益の方が大きいから。」

 

 なら…尚更ビス叔母さん鉄血にいた方がいいんじゃ…

 

「ビスは"覚悟を決めた"と言ってたわ。ボウヤ、これは鉄血財界とロイヤル財界の全面戦争になりかねない。だから、ビスは先陣に立つことにしたんだと思う。」

 

 交渉の第一人者に?

 

「いいえ!とんでもない!ロイヤル財界を叩きのめすのよ!!」

 

 な ん で そ う な る ?

 

「それに、ロイヤル財界のロルトシート家は…」

 

「やっふぉぉぉおおおおお!!!!ラインハルトの進軍は誰にも止められないわあああああああああ!!!!!」

 

 

 グローセ叔母さんとの立ち話の真っ最中に、ビス叔母さんがラインハルトを抱えて乱入してきた。

 もう、ビス叔母さんの喜びようっつったら…なんつーかな、ベルリンの壁崩壊か?ってレベル。

 かたや抱えられるラインハルトの顔は青く、「…いっそのこと赤ん坊にしてくれ」とか言ってる始末。

 "こちらの世界へようこそ"、ラインハルト。

 残念ながら、"もう逃げられんぞ"?

 

 

「ラインハルトォ!ラインハルトォ!ラインハルトォォォオオオ!!!」

 

「ビス!?少しは落ち着きなさい!」

 

「何言ってんのよグローセ!!ラインハルトがラインハルトなのよ!?つまりラインハルトは私の大切なラインハルト!!やっほおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 いかん、頭痛がしてきた。

 私はサイコウにエンジョイなビス叔母さんと、可哀想な従兄弟を直視するにはあまりに精神的に疲れてしまい、応接室を出ることにする。

 ピッピに頼んで、とりあえずビス叔母さんが落ち着くまで執務室でゆっくりする事にしたのだ。

 

 ところがどっこい、何の気なしにテレビをつけたがばかりに、ゆっくりなんて言葉は明後日に行ってしまったのである。

 

 

 

『…俺の名はジョン・"ジャック"・フォースター。元ロイヤル海軍大佐。そして今は…罪なき犠牲者の代弁者。』

 

 

 おい。

 おいおい。

 おいおいおい。

 

 なんだこれ?

 いいや、ダンケ、そうじゃない。

 電波ジャックされてるってのは見りゃ分かる。

 …私が疲れすぎてるのかな?

 テレビの中で赤ん坊が喋ってるように見えるんだけど?

 気のせいだよね?

 ね?ね?ね?ね?ね?

 とりあえず、ノーカロさんに連絡してあのクソ忌々しい電波ジャックなんとかして?

 公共の電波で垂れ流していいもんじゃねえから。

 

 

『今からおよそ5時間前、スラム街が心なき者達に攻撃された。政府機関はセイレーンの攻撃だと発表し、マスメディアも同調している。』

 

 

 テレビの中の赤ん坊は、頭にキャベツを巻かれている事を除けば、まじめに話をしているようだ。

 カメラを方を鋭い眼光で睨みつけ、一言一言に重みを加えられるだけの風格さえ持っている。

 

 そんな彼を1人のKANSENが谷間に挟んでいた。

 紫っぽい長髪のメイド服。

 私はこのKANSENにも心当たりがある。

 カーリューの両サイドには他にも複数のKANSENと思わしき少女達がいたし、更にその後ろには武装した男達もいた。

 

 テロリストがこんな動画を垂れ流す時は大抵ロクな事が起きない。

 頼む、ノーカロさん、急いでくれ。

 

 

『この放送を見ている方々に告げたい…これは断じてセイレーンの攻撃などではないっ!!!』

 

 

 ノーカロさん、マジでハリハリハーリー。

 

 

『この攻撃は、一部の薄汚れた政府の人間によって行われた、史上稀に見る犯罪に他ならない!!我々には証拠があるッ!!これがその文書』

 

 

 フォースターと名乗る赤ん坊がカーリューっぽいKANSENというかカーリューに一枚の紙切れを取ってもらう最中に、電波ジャックによる酷い放送は途切れた。

 おおっ!流石はCIU!!

 ノーカロさんには後でスペシャルボーナスだな。

 

 

「それじゃあ、ロブロブ。あやさせてもらいますね♪」

 

 いたんかい。

 あー、ごめん、ピッピ、できる限り早く戻るからさ、ちょっとだけノーカロさんに譲ってくれるかい?

 うん、ありがとう。

 そして泣かないで?

 

 

 

 涙を浮かべるピッピはこの際脇に置いといて…いや、本当にごめんね…私はノーカロさんの谷間で考える。

 今や、私の抱える厄介ごとは一つではなくなってしまったのだ。

 

 一方では海賊との戦い。

 スラム街に最新鋭爆弾を投下して数万人をデリートしたというのに、肝心の連中はガッツリ生きてやがる。

 もう一方ではロイヤル財界と鉄血財界の対立。

 ビス叔母さんはリスクを犯してでもこちらにいらっしゃったわけだから、私が巻き込まれないわけがない。

 

 

 根拠というものは全くなかったが、私にはこの2つの厄介事が無関係だとは思えなかった。

 時期的にも、タイミング的にも。

 そして、この2つが関係しているとすれば。

 

 ………あーもー、嫌になっちゃう。

 

 

 もういっそ、誰か私を普通の赤ん坊に戻してくれ!!

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず、これで『バブ・ベイビー』編前半を終わりたいと思いますが、お付き合いくださビス叔母さんジッソオオオオオオオオオオ(復旧まで今しばらくお待ちください)
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