バブールレーン   作:ペニーボイス

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新UIアプデ開け

ワイ「え、何このメトロ●リス感」


Ⅰ章 ト モ ダ チ
ボナペティ


 

 

「あんた方は哀れみ深く慈悲深いという贅沢を自分に許せる。だが、わたしは軍人だ。国家元首としてチリ国民全体に責任を負っている。」

 ----アウグスト・ピノチェト(チリの軍人、政治家)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の眼前には、鉄血公国最大の港湾都市風タルタルステーキ…つまりはハンバーグが置かれていた。

 もちろん、私自身がその見るからに美味しそうな肉料理を食べることはできない。

 私ができるのは、"食べさせてもらう"ことのみ。

 今、私の右手に見えるナイフを取ろうとするだけで、マッマ達は半狂乱になること間違いなしなのだから。

 

 ピッピがナイフをハンバーグに入れて、ハンバーグが肉汁を皿にブチまけている間、私はテーブルの向かい側にいる従兄弟の様子を伺う。

 彼の目の前にも立派な鉄血公国最大の港湾都市風タルタルステーキがあるが、それを切り分けているのはビス叔母さんだ。

 従兄弟がふと顔を上げ、私と視線を合わせた。

 軽く挨拶のつもりでウインクしてみせるが、従兄弟は私を睨みつけただけだ。

 鋭い視線が語っている。

 "なんてモノに巻き込んでくれたんだお前は!"

 

 従兄弟の怒りも無理はない。

 だが、私に一体何ができようか。

 我が親愛なる兄弟・ラインハルトを見た目赤ん坊頭脳おっさんのボ●・ベイビーにしたいと言ったのは、今彼を自身の谷間に挟んで満面母親顔してるビス叔母さんなのだ。

 私に睨まれるような謂れはなく、それどころか個人的には寧ろ全力で同情して欲しい。

 ラインハルト、私は君よりよっぽど早くその状態になってしまったんだ。

 ここまでの孤軍奮闘な日々がどれだけ辛かったと思う?ん?

 1人じゃないだけ、まだマシだと思うぞ。

 

 

「ほ〜ら、ラインハルト♡今夜はあなたの大好きなハンバーグでちゅよぉ♡しっかり食べましょうね〜♡」

 

 

 ビス叔母さんもビス叔母さんで、とても数年前まで鉄血公国のKANSEN率いてアズールレーン側とドンパチしてたとは思えないほど母親エンジョイ勢してやがる。

 なんなんだこの違和感の無さは。

 まるで本当にラインハルトの事を自分の子供だと思っているかのような…なっちゃったもんねえ!

 ラインハルトのリアルなマッマになっちゃったもんねえ!

 

 気がつけば、私の口元にはハンバーグの一片が運ばれている。

 あー、ありがとうピッピ。

 そろそろこの「お前は老人ホームか?」と訴えたくなる過々々々保護っぷりにも慣れてきた自分自身が恐ろしい。

 

 

「まって!ミニ・ルー!」

 

 

 ハンバーグに齧り付こうとする私を止めたのはルイスママ。

 血相を変え、こちらの席に全力で駆けてくる。

 何か非常事態でもあったのかしらん?

 自然と身構えた私だったが、全くの杞憂でしかなかった。

 

 

「ふぅー、ふぅー…はい、どうぞ♡…ティル?ミニ・ルーのお口の中が火傷でもしちゃったらどうするの?」

 

「!…ええ、そうね、ルイス。次からは気をつけるわ。」

 

 

 別に気をつけなくてもいい。

 たかだか私のハンバーグふぅーふぅーする為だけにパールハーバーの第一報受け取った海軍の無線手みたいな動きしないでよ紛らわしい!

 ほら見ろ!

 テーブルの向かい側でも、ルイスマッマァに対抗心燃やしてグローセ叔母さんとビス叔母さんが"北風と太陽"してんだろうが!

 イソップ寓話の世界へようこそしてんだろうが!

 従兄弟のハンバーグが完全に熱を失いつつあるだろうが!

 ただの冷たいミートローフになりかけてるだろうが!!!

 

 従兄弟ラインハルトは冷めきったミンチの塊をモッサモッサとゆっくりと噛みながらこちらを睨んでいる。

 もうこの素晴らしき兄弟からの怒りの視線は避けられそうにないので、私はせめて視線を合わさずに済むよう、ビス叔母さんの方を向いて質問することにした。

 

 

 …叔母さん?

 

「「なぁに?」」

 

 失礼、ビス叔母さん?

 

「なぁに?」

 

 北連の油田を巡って、ロイヤル・ペトロリアム社と争うそうですね?

 

「もぉ!坊や!食事中にお仕事の話は」

 

「ティル、落ち着いて。貴女のルールに抵触するのは分かっているけど、ロブ君も私達の状況を知っておきたいと思うの。」

 

「………はぁ。わかったわ。」

 

「ありがとう、ティル。…それでね、甥っ子。あなたの質問には"まだ分からない"と返しておきましょう。ロイヤル・ペトロリアム社と戦うかどうかは相手の出方次第。」

 

 ははは、ビス叔母さん。

 貴女はいつかこう仰ったハズです。

 "嘘は嫌い"

 その言葉通りならば、貴女は今…自分自身を嫌っている。

 

「…さすがティルの坊やね。この程度じゃ騙されてくれないかぁ〜。仕方ないわ、白状しましょう。少なくとも私はこう思っている。"必ず争う事になる"」

 

 法廷の中でも、"外"でも。

 

「そうね。そして私達は悪役よ。()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ロイヤル国会では、席の前に2本の線が引かれている。

 いわゆる"ソードライン"とはこの線の事で、国会中に質問等をする者以外はこの線を超えてはならないそうだ。

 ビス叔母さんの比喩表現は面白かったが、それが意味している問題は表現ほど面白くはない。

 

 

「当ててあげるわ、ロブ君。私達が途方も無いような事を始めようとしていると気がついた。」

 

 …………

 

「図星ね?」

 

 …ロイヤル・ペトロリアム社の株主ならご存知ですよね、ビス叔母さん?

 

「もちろん。フレデリック・フォン・ロルトシート。」

 

 ロルトシート家と戦うおつもりなんですか?

 

「………意外だったかしら?」

 

 正直なところ、正気を疑うレベルです。

 

 

 

 ロルトシート家。

 鉄血にその由来を持つこの名家の歴史は、まだ中部ヨーロッパの覇権を鉄血とは違う国家が握っていた時代にまで遡る。

 大手銀行と君主の間の連絡役を務めた"初代"ロルトシートは君主から気に入られ、ロルトシートの銀行が国家御用達となったのだ。

 その後、アイリスのナショナリストが大陸封鎖を始めると密輸で莫大な利益をあげて今日の礎を築くと、各国の王族とも血縁関係を結び、世界に名だたる財閥への道を進んだ。

 

 私のステキな叔母さんが敵にしようとしているのは、世界中にネットワークを持つ、紛れもなく"世界最強"の大財閥なのである。

 

 

「そう身構えないで、ロブ君。私達はロルトシート家に手を引いてもらいたいだけ。」

 

 何故そこまで北連の油田にこだわるん…プーシロフか。

 

「…ティル。貴女の子、本当に鋭いわ。ロブ君の言う通り、プーシロフは農業政策の失敗で突き上げをされている。」

 

 大方、突き上げている連中は揃いも揃ってタカ派中のタカ派なんでしょう。

 

「まさにその通り。プーシロフの次席は爆弾みたいな男で、ユニオンを非難し、()()()()()()()を訴えている。」

 

 前書記長のように、また鉄血との国境沿いに戦車師団を送り込むでしょうな。

 

「分かってくれるかしら。これはただの経済的な争いではない。国家の安全保障に関わる問題でもあるの。」

 

 ………叔母さん、ロルトシートはきっと手を引きませんよ。

 それも、断固たる意志を持って拒否するでしょう。

 

「そうかもしれないけど、損失を体感させれば…」

 

 いいや、損失があろうがなかろうが、手は引かない。

 

「なぜそう思うの?」

 

 ロルトシートはヴィスカーの株も持っていて、セイレーンがやってきた時から今の今まで莫大な利益をあげています。彼らは戦争で巨額の富を稼いだハズ。そして、冷戦が短期間で終わり、セイレーンとの戦いもすぐに落ち着いてしまった今…ロルトシートは新しい戦争を求めている…

 

「!…つまり、ロルトシートの狙いは」

 

「ボナペティッ!!!!」

 

 ダンケが机の上にデッカいクイニーアマンをドカッと乗っけたせいで、話の腰は完全に折られてしまった。

 

 

「ビスマルク.久しぶり!Mon chouに状況

 を教えたい気持ちは分かるけど、今はディナー中なのよ!仕事の話だけで潰していい時間じゃないわ!!」

 

 

 何というか、ダンケがまさしく怒れるアイリス人になっていたので、ビス叔母さんも何も言い返そうとはしなかった。

 

 私ももちろんそうだったが…

 

 

 しかしまあ、気付きたくない事にまで気がついてしまった。

 血が流れると金が動く。

 北連とユニオンの間でおびただしい血が流れれば…一体いくら稼げるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 




ビス叔母さん増やすぞおおおおおおおお
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