バブールレーン   作:ペニーボイス

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視点ぐるぐるしてごめんなさい


カブ$カブ大作戦

 

 

 

 

 どうしよう、ピッピが全くもって私を手放そうとしない。

 どれくらい手放そうとしないかと言うと、『手放さないと出られない部屋』とかに入れられても手放さないくらいに手放そうとしない。

 例によってあの馬鹿デカいお胸に私を挟み、真っ白な柔肌と香りと温かみを途轍もない強制力で強いてくる。

 

 いつだかルイスが私の親権を手に入れて、こちらの体臭までルイス臭にする程私を独占していたことがあったが、ピッピのそれはルイスのそれより容赦がない。

 そもそもピッピのお胸はルイスのアパラチアよりも大きいという事を考慮すれば、それは私の置かれている過酷な環境を想像する助けになってくれるのではなかろうか。

 ルイスの時は、まだ頭を胸の間から出せていた。

 今ではそれすらできないのである。

 

 

「うんん…坊や、おはよう。それとも…まだ…眠っているのかしら…?」

 

 

 ピッピは今きっと、朝日を浴びて爽やかな朝のお目覚めをしているのだろう。

 だが私に朝日の光など届きはしない。

 私は監獄の中の囚人、または拉致された人質。

 田中●子の艶かしい声で起きているかどうか確認されたところで…返事のしようもない。

 

 

「………んん…おはよう、ティル。ロブ君はまだ寝てる?」

 

「おはよう、姉さん。ええ、まだ寝てるみたい。ラインハルト君はどうかしら?」

 

「ウチのラインハルトもよく寝ているわ。」

 

 

 なんとなくでしかないが、我が親愛なる従兄弟もビス叔母さんの胸の間で異質な朝を迎えているような気がした。

 ついにリアルな血縁関係に至ってしまった我が兄弟よ、お前とはいつか自由を得るための闘争を共に戦い抜く関係となるだろう。

 例え最後に待つのが敗北であろうと…

 

 

「起きて、坊や。」

 ギュムッ

 

 フゲエッ!?

 

 

 ピッピが軽く谷間を左右から押すだけで、私の脳は一気にスリーピーモードから通常モードへと移行する。

 仕方ないもん、生命の危機なんだもん。

 このまま二度寝なんかしたら確実に天に召されそうなんだもん。

 

 

「起きて、ラインハルト」

 ギュムッ

 

「フゲエッ!?」

 

 

 どうやらラインハルトも私と同じ憂き目に遭っているようだ。

 お互い苦労が多いなあ。

 もし、また元のサイズに戻れる事があったなら、その時は従兄弟と2人だけで飲みにでも行きたい。

 

 

「おはよう坊や♪手荒な起こし方をしてごめんなさい。でも、今日は大切な用事があるでしょう?」

 

「ラインハルトも!私達はロブ君にお願いしている立場なのよ?なのに寝坊なんてしたら会わせる顔がないでしょう?」

 

「ふぁい、ビスマッマ。」

 

 

 ピッピマッマァとビス叔母さんが言う"大切な用事"とは、叔母さんお抱えの特殊部隊『アイザッツ・グルッペン』の上陸援護である。

 

 海上援護の方は、もうすでに我が第二艦隊が実行中で、昨日の内にノーフォーク沿岸まで接近中らしい。

 私がスヤスヤ眠っている間にも、シリアスやジャンパールが働いてくれたおかげで特に問題なく入港出来そうだ。

 一度だけ小型艇が数艇姿を見せたらしいが…接近する前に逃げ出した。

 まあねぇ、フル艤装フル艦隊みりゃああのクソ海賊団どもも流石に考えを改めるでしょうよ。

 

 

 私はピッピマッマァと共に毎朝恒例の儀式・朝シャンを済ませたが、その間にアイザッツ・グルッペンは無事に入港した。

 彼らはこちらの警備部隊に迎えられ、現在鎮守府へ移動中とのこと。

 私は万全を期すために車列に無駄に過剰な警備を施していたが、その甲斐あってビス叔母さんの特殊部隊が攻撃を受けることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

 

 

 ロルトシート家当主は、スーツに着替えたビスマルクの兵隊を満載した客船が入港したと知らされても、さほど関心を示さなかった。

 彼の関心ごとはもっと別な事にある。

 だから、海賊共が中古の魚雷艇が4隻"増えただけ"で襲撃を試みるような愚か者で無かったことに多少なりとも安心していた。

 

 

「海賊の馬鹿どもにしては賢明な判断をした。正直…あちら側がこちら側の企図を妨げるんじゃないかとヒヤヒヤしてたからね。」

 

「フレデリック、私としては笑い事じゃ済まないよ。」

 

「そう弱気になるな、エイミール。君にとってこれは…寧ろ追い風だぞ?ビスマルクは優秀な機動性のある部隊の1つを最前線から引き抜いた。地の利はこちらにあるし、アイザッツ・グルッペンは海賊相手に手こずる事になるだろう。」

 

「………なるほど、つまり………そうかそうか、君はつまりそういう奴だったんだな?

 

「テンプレやめれ。」

 

「すまん、つい。…つまり、君が言いたいのは、ビスマルクは大陸側の選択肢を1つ失ったと言いたいんだな?」

 

「その通りさ、エイミール。我々の主戦場はあくまで"大陸側"だ。庭先で乱痴気騒ぎを起こす気はないよ。」

 

 

 今日、フレデリック・フォン・ロルトシートは珍しくもファーストネームで呼び合う仲の人物と会話を楽しんでいる。

 その人物とは彼の弟・エイミールで、大陸側におけるロルトシートの顔とでも言うべき人物だ。

 セントルイスファミリアがロイヤルにおけるビスマルクの窓口となりつつあるように、ロルトシート家も大陸側にエイミールという窓口を持っているのである。

 

 

「まあなんにせよ…エイミール、我々の計画は始動する。準備は完了、用意は万全。ゴロツキ共とも話は付いてる。」

 

「…なあ、フレデリック?」

 

「どうした?」

 

「その…こんな大金をかける価値のある相手か?北連の連中も馬鹿じゃないし、ビスマルクが動く可能性だってある。」

 

「任せておけ、エイミール。ビスマルクは北連へは行けないよ。そんな事をしたら、プーシロフとの関係性が明らかになる。書記長が鉄血財界の大物と組んでいると知れたら、突き上げどころじゃ済まなくなるだろう。」

 

「彼女の妹、ティルピッツもそうなるか。だが…だとすれば…"彼"の方もそう易々とは出入り出来ないだろう?」

 

「"彼"の方なら安心していい。肩書きが使える。プーシロフの後進も、祖国を滅ぼす戦火から救った"彼"の事は冷遇できんしな。」

 

「なるほど、全て折り込み済みか。だが、そこまでして」

 

()()()()()()()なんだ、エイミール。ビスマルクの戦略において、恐らく"彼"は重要なポジションにいる。早いうちに消してしまった方が無難さ。」

 

「ロバート・フォン・ピッピベルケルク=セントルイスファミリア…可哀想な赤ん坊だ。」

 

「彼は赤ん坊じゃない…まあ、いい。その話は今度にしよう。さて、そろそろ時間だな。エイミール、今日は忙しくなるぞ?」

 

 

 

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

 

 

 

「ミーシャ!ミーシャ、ミーシャ!!大変です!」

 

 

 すっげえ顔色の悪いアイザッツ・グルッペンの方々を出迎えていた時、アヴマッマがすっげえ顔色を悪くして駆け寄ってきた。

 まあ、たわわに実る豊かな双丘がブルンブルン揺れてたからか、アイザッツ・グルッペンの方々の顔色が若干良くなった気がする。

 …あー、アイザッツ・グルッペンと言っても、こちらの世界のアイザッツ・グルッペンはホロコーストとは関係していない。

 彼らはアズールレーンとの戦争中にはパルチザン狩りに精を出していたし、顔色が悪かったのは船旅に慣れていないからだ。

 いわば、対ゲリラ戦のプロフェッショナル。

 スガ●カオのオープニングテーマ付きで番組が取れる程度には活躍してくださる事だろう。

 

 それはともかく。

 

 いつもは冷静で、にこやかぁにドス黒い陰謀を考えてそうなアヴマッマが本当に青い顔をしていたから、私としては面食らった。

 もはや、「え?アヴマッマってこういう顔すんの?」ってレベル。

 その焦りの原因は想像したくもないが。

 

 

「ミーシャ、本当に大変です!一緒に北連に来てください!」

 

 いや、アヴマッマ?

 そんな隣のアパートまで来てください感覚で言われてもさあ。

 

「本当に大変なんです、ミーシャ!」

 

「落ち着きなさい、アヴローラ。坊やに、何があったのかちゃんと説明して?」

 

「はぁ…はぁ…ミーシャ、ロルトシートが動きました…」

 

 oops…

 

「ウクラニア(史実のウクライナ)です!ロルトシート傘下の投資会社が、ウクラニア・ガスプロム(パイプライン管理会社)の買収に動き出しました!」

 

 ぬわにぃ!?やっちまったなぁ!!!

 

「…坊やに何の関係があるの?」

 

 ピッピ、頼むよ…。

 ウクラニア・ガスプロムは北連から大陸側の各国に向けて伸びるパイプラインを管理してる。

 そんな会社を取られたらどうなるか…

 

「っ!?」

 

 北連にとって、天然ガスと石油は主力輸出品目だ。

 つまりパイプラインは生命線。

 そして、その喪失はプーシロフの失脚を招きかねない。

 更に言えば、パイプラインの先にいる鉄血の経済さえ締め上げる事ができる。

 

「ロブ君、飛行機を貸してもらえるかしら?」

 

「ダメです!ビスマルク、貴女が北連へ向かえば現書記長が追い込まれます!」

 

「クッ…なるほど、だからロブ君なのね?」

 

「はい。ミーシャなら海軍少将として北連海軍への視察に招待できます!現地で貴女と緊密に連絡を取りつつ、事態に対処するにはミーシャが適任なんです!プーシロフとベニヤもそれを望んでいます!」

 

「坊や…すごく辛いけど…鉄血の為なら仕方ないわね…」

 

「すぐに出発します!荷物は準備しました!さあ、ミーシャ、行きますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 北方連合は社会主義国家だったが、ウクラニアはそうではなかった。

 だからロルトシートはウクラニア・ガスプロムを狙えたわけだが…しかし、引っかかる点もある。

 

 いざとなれば、北連は軍隊を送り込んででもパイプラインの確保に乗り出す事だろう。

 北連は国際的な非難を受け、プーシロフはまた突き上げを食らうだろうが、パイプラインのコントロールを失うよりは断然マシなハズ。

 

 つまり、ロルトシート家は、殆ど勝ち目のない賭けに打って出たわけだ。

 一つの大国の国家生命を脅かすなんて、いくら大財閥とはいえ正気の沙汰ではない。

 長い歴史を持つ名家が、大きな損害も想像できずに破れかぶれの買収を試みるとは到底思えない。

 

 

 ロルトシート家には間違いなく別の狙いがある。

 そして、アヴマッマにも別の狙いがある。

 

 

「ふぅぅぅ…ミーシャ、これでしばらくは2人きりですね♪」

 

 

 北連航空のツポレフ機のファーストクラスでアヴマッマにそう言われた時、私は少しばかり悪寒を感じた。

 …どうやら、今度はおはようからおやすみまでアヴマッマらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




にわかな上に設定が甘くてごめんなさい許してくださいなんでもしますからあら何でもするって言いましたねミーシャいやアヴマッマ、スタップスタップスタァァァアアアプ!!!
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