重桜
首都トーキョー
ベルマッマのコネクションは恐ろしい。
彼女の根回しと調整により、ロイヤル海軍少将たる私の鎮守府を、あろうことか鉄血公国情報部長がお留守番するという前代未聞な大事態を可能としてしまったのだ。
もうコネクションとかそういうレベルの問題じゃない気しかしないし、ベルマッマにはお礼を言うべきか言わないでおくべきか判断がつかん。
ただ、おかげでビス叔母さんはアイザッツ・グルッペンを動かして海賊どもを狩れるし、私や4大マッマ不在の鎮守府への心配も薄まった。
そう考えると……感謝すべきなのかな?
ベルマッマにはお礼を言ったけど、お礼としてあやされる(今更ながら表現が随分おかしい)ことはできなかった。
何故なら…………
おい、誰だピッピに特注の鋼鉄製ブラジャーなんか売った奴。
ただでさえ蒸し暑いのに、ピッピの谷間で…それも鋼鉄製ブラジャーでガッチンガッチンにかしめられてるせいでクッソ暑苦しい。
その鋼鉄製ブラジャーも鋼鉄製ブラジャーで、無駄に便利(?)機能がついてるもんだから嫌になる。
2つ以上の個体を結合すると、2人が私を挟めるようになってやがっており、そのおかげで私は今ピッピとルイスの挟み撃ちにあっていた。
重桜の成●国際空港に着いてからずっとコレである。
「坊や?私の胸の居心地は良い?」
「ティルピッツ?ミニ・ルーは私の胸の方が居心地良いに決まってるじゃない。」
「あぁ、暑さでやられてしまったのね。可哀想なセントルイス。」
「口の利き方には気をつけた方がいいわ、ティルピッツ。真にミニの親権を持つのはこの私…ラッキールーなのよ?」
「ユニオンのカンガルー風情が吹かないで頂戴。坊やと私の絆は、海軍の規則なんかじゃ否定できない。まあ貴女は規則に縋らないと保てないほどの絆しかないんでしょうけど!」
「なッ!ちょっと!今のは許せないわティルピッツ!取り消しなさい!」
「取り消しません!」
「ティルピッツなんか大っ嫌い!」
「セントルイスの分からず屋!」
「死ね!」
「生きる!」
「死ね死ね死ね死ね!」
「生きる生きる生きる生きる!」
私からすればどちらも暑さでやられてるようにしか見えない。
お前らバルジの戦いしたいなら頼むから私を解放してからにしてくれませんかね?
そんな男子中学生みたいな言い争いしてる暇があったら貴女方の赤ん坊に少しばかり目を向けてくださいませんか?
暑さと熱気で熱中症まっしぐらでしょうが。
「はい、Mo〜n chou♪スポーツドリンクよ?」
おお、ありがとうダンケママ。
ピッピとルイス、春のめざめ作戦が終わるまでダンケルクに私を渡してくれないかな?
「死ね死ね死ね死ね!」
「生きる生きる生きる生きる!」
「2人とも口喧嘩に夢中にみたいね。…じゃ、chouはもらうわねぇ〜。」
ダンケが2人の谷間からそっと私を引き抜いて自身の谷間に挟み込む。
ピッピもルイスも口論に夢中で気づかない当たりが可愛いというか何というか。
とにかく、私は口論中の2人よりかはトレビアンなフレンチマッマに救出されたおかげで(さっきからダンケに百年戦争ばりの睨みを利かせてるベルが若干の不安材料ではあるものの)当面の危機を回避することができたのだ。
私はダンケママの谷間から、天城さんに向き合った。
天城さんも天城さんで「ふぅ、これでようやく本題に入れますわね」的オーラを醸し出している。
その向こう側に、「いーなー、お姉さんもアレやってみたい」って顔をした愛宕お母さんがいるけど気にしない。
気にしたくもない。てかいつかされそうで怖いつーか近い将来絶対される(確信)。
「さて、今回重桜に来ていただいた理由をご説明致しましょう。」
はい。
「シャム王国と重桜の間柄については…おそらく改めてご説明するまでもないでしょう。」
一瞬イオ●でオフ会開いたのにだれも来なかった可哀想な実況マンの顔が思い浮かんだが、すぐに頭から追い出す。
「我々は伝統的な友好国であり、その友好関係は無論現在でも保たれています。」
…早い話、その友好国に第三勢力が干渉しているんでしょ?
「そうです。先週から、ロイヤル領マラヤン半島の独立過激派が王国への越境攻撃を行っています。」
はい?
独立派ゲリラが越境攻撃?
目的は?
「それが分かれば苦労は致しません!…ただ」
ただ?
「ロイヤルMI5から提供された情報によると、マラヤン独立派は最近になって新たなスポンサーを得たようです。…何かご存知ありませんか?」
MI5とは久しく縁を切っててね。
そう言われても心当たりがあるかといえば…あるわ。
天城さん、ひょっとしてロルトシート家の方々と悶着起こしたりした?
「ロルトシート家……いえ、聞き覚えはありません。あっ、存じないというわけではありませんが、少なくともシャム王国とマラヤン半島でその名は上がっていませんわ。」
うーん、どうもきな臭いな。
MI5時代、マラヤン半島関係の資料は一度だけ目を通した事がある。
三年前、MI5はそこで『ハウスクリーン作戦』という作戦を実行した。
当時はアズールレーンとレッドアクシズが熾烈な戦いをしていた最中だ。
重桜陸軍は
目的は勿論、航空機製造に欠かせないゴム資源。
ロイヤル側としてもゴムは死活問題ゆえにこの半島を死守する必要があったものの、欧州で鉄血を相手にしていたロイヤルには余裕がなかった。
だからMI5は、現地人を訓練して武装ゲリラに仕立て上げた。
『半島の独立』を報酬とした結果、現地人達の協力を得る事に成功。
重桜陸軍はゆっくりとだが確実に半島から押し出されるようになる。
しかし、ロイヤル側はこの地域のコントロールを失う気など毛頭なかったのだ。
MI5は現地人ゲリラの信用を得ていたある工作員にゲリラ部隊を集結させ、また重桜陸軍も引きつけさせた上でKANSENの艦砲射撃により一網打尽にした。
これが『ハウスクリーン作戦』である。
なんてこったい。
第一、その『ハウスクリーン作戦』の類いまれなる"戦果"により、独立派ゲリラはその殆どが木っ端微塵にされたハズである。
にも関わらず、冷戦さえも終結した今になって再び活動を活性化させるという事自体考えにくい。
復活した事だけでも驚きを隠せないし、その上越境攻撃までしてるとなればもうワケワカメ。
つーかロイヤルでニュースになってないのはなんでや?
「それは恐らく、ロイヤル領ではあまり活動していないからでしょう。」
え、待って意味わかんない。
なんでロイヤルから独立したがってるくせにロイヤル相手には何もやんないの?
本当に何がしたいの??
「…とにかく、現地に行くしかないでしょう。この季節では辛いものもあるかもしれませんが…」
え、待って聞いてた話と違う。
重桜でアレコレすんじゃないの?
アレコレカレコレ工作すんじゃないの?
なんでこのクソ蒸し暑い季節に東南アジア行こうとしてんの、ピッピ溶けちゃうよそれ。
「私も現地へ行く必要は、まだないと思う。まだしばらく様子を伺ってからでも遅くはないと思うわ。坊やの熱中症も心配だし。」
心配してくれるんだね、ありがとうピッピ。
でも心配するなら心配するで心配してそうな行動、しよっか?
なんで今度はダンケと鋼鉄製ブラしたのかな?
クソ蒸し暑いじゃん?
まったクソ蒸し暑いじゃん?
「ブラジャナイヨ、大胸筋矯正サポーターダヨ(裏声」
ピッピ?
「…だって坊やあやしてないとどうにかなりそうなの!」
「黙って見てれば、ティルピッツ!chouをあやしたいのは皆んな一緒なのよ!?順番くらい守って!」
「いやですぅ〜」
「なあッ!このジャガイモ女!いい加減に…」
『臨時ニュースです!シャム王国の東、アイリス領大越にて武装集団が蜂起しました!』
あわやマジノ要塞攻略戦という時にニュースの音声がダンケとピッピの間に割って入り、
普仏戦争はどうにか回避された。
しかし、ニュース自体はあまりにも衝撃的かつ不可解でしかない。
ただでさえごちゃごちゃな現在の東南アジアを、まだごちゃごちゃしたいかのような報道がニュースで流れている。
「ご覧ください!あなたが迷っている間にも、重桜のみならずアイリスやロイヤルまで危機に瀕しています!」
「…Mon chou!お願い!アイリスは大越を手放すわけにはいかないわ!せっかくヴィシアとの統合に向けたプログラムが進んでいるのに、隙を突かれたとなれば再び対立に至る可能性がある!そうなったらこれまでの努力も台無しなの!」
「ご主人様、祖国の危機です。どうか懸命なご判断を…あといい加減あやさせてくださいベル☆ベル心からのお願いにございます。」
ピッピ?ベルにも私をあやさせてあげて?(相変わらず表現がおかしい。)
ダンケとベルの為なら仕方ないか…。
………暑いとこ苦手なんだけどなぁ。
ちょっと忙しくなるんで今週来週は更新遅れるかもしれませぬ。