バブールレーン   作:ペニーボイス

134 / 172
ぶっ込みしてごめんなさいついカッとなってやった今は反省している


ぱーふぇくと・おーだー

 

 

 

 

 

 ロイヤル

 マニングトゥリー郊外

 

 

 

 

 

 

「フォイア!!」

 

 

 攻撃は2挺のMG42による一斉射撃から始まった。

 毎分1200発の猛烈な機銃掃射が、港町の郊外にあるボートハウスをギッタンギッタンに切り裂くと、続いて手榴弾が投げ込まれ、最後にシュタールヘルムを被った男達が突入していく。

 シュタールヘルムは例によってサブマシンガンを高く構え、建物の中へ次々と入る。

 彼らは9×19mmパラベラム弾仕様のMP34で武装し、この時代に考えられるものとしてはかなり高級な部類に属するその歩兵火器によって次々に海賊を始末していった。

 

 無論、海賊側から何らの抵抗もなかったわけではない。

 しかし、ステン短機関銃やトミーガンで武装して元MI5工作員から訓練されていたとしても…彼らはシュタールヘルム達にとって何らの障壁にさえなり得なかったのである。

 海賊達の大半は銃を構える前に、そして、その大半以外も引き金を引く前に殺された。

 数年に渡ってパルチザンを狩ってきたアイザッツ・グルッペンからすれば、海賊なぞただの的でしかなかった。

 

 

 

「クリア!クリア!」

 

「クリア!」

 

「クリア!」

 

 

 アイザッツ・グルッペンは15分しない内にボートハウスを制圧した。

 死体にした25人の海賊の他に脅威がないことを確認すると、この部隊の指揮官は次の指示を出す。

 

 

「イェーガー、ブービートラップがないか調べろ!連中の事だ、必ずどこかに何か仕掛けてやがるぞ!」

 

「ヤヴォール、中尉殿!」

 

「中尉殿!ビスマルク会長から通信です!」

 

「分かった、こっちへ寄越せ。」

 

 

 "中尉殿"が会長とお話しするのはこれが初めてではないが、しかし、彼は自然と背を正す。

 彼は鉄血随一の実業家相手に、良い知らせと悪い知らせの両方を報告しなければならない。

 故に、アイリスのパルチザン相手にドンパチやってた頃が懐かしく思える程度には気を張っているのだ。

 

 

『ご苦労様、中尉。』

 

「ありがとうございます、ビスマルク会長!標的は無事確保致しました!」

 

『…その前に聞いておかないといけない事があるわ。』

 

「……と、おっしゃいますと?」

 

『こちら側の死傷者数は?』

 

「誰一人として死傷しておりません!」

 

『そう………良かった、本当に』

 

 

 中尉は現役時代に上官の机の前で報告した時のような直立不動の姿勢を維持していたのだが、ビスマルク会長の…まるで上京した息子を想って電話をかけてきた母親感満載のしっとりとした母性溢れる声に軽く目眩を感じてふらついた。

 

 いかんいかん、正気を保たねば。

 

 鉄血公国情報部長ラインハルト・レルゲンをラインハルト・"フォン・ビスマルク"にしてからというもの、ビスマルク会長の一挙手一投足に抗しがたいバブみが溢れるようになっている。

 数年前、公国で全国民に対する演説を行い、アズールレーンとの明確な対立路線を宣言した凛々しき鉄血の指導者は何処へやら。

 今じゃエプロンを着けてキャベツを刻み、コロッケを揚げながら「ご飯よ〜」とか言ってててもまるで違和感がない。

 

 

「良い知らせは、我々に何の損害もなくこの建物を確保できた事でしょう。」

 

『悪い知らせは?』

 

()()()()()()()、会長。連中、一個小隊ほどの守備隊を残して消えました。フォースターも、ヘスティングス兄妹も、ジェンキンスも…それどころか装備や書類の類いも一切合切ありませんでした。」

 

『…私たちがボートハウスを特定する前に脱出したのね…了解、本当にご苦労様。あとはロイヤル官警に引き継ぎなさい。』

 

「了解しました。」

 

 

 

 

 

 

 中尉との電話を終えたビスマルクは、自身の息子に意見を求める。

 

 

「ねえ、どう思うラインハルト?」

 

「一昨日偵察した段階では活動の兆候が見られてた…連中が消え去ったのは少なくとも昨日になる。あまりにタイミングが良い。」

 

「ラインハルト…ママもそう思うわ。誰かが連中に情報を流してるとしか思えない。この場にいる誰かじゃないなら…」

 

「ロイヤルの警察か。或いはMI5。くそっ!こちらが動く時には連中に知らせなきゃならない!そういう取り決めの下、アイザッツ・グルッペンはロイヤルでの行動を許されてる!」

 

「でも、そのロイヤル官警が海賊と内通してるならアイザッツ・グルッペンを送り込んでも意味がない…何か別の手が必要ね」

 

 

 ビスマルクは物憂げな表情をしていたが、そのくせ赤ちゃん椅子に座るラインハルトの為にしっかりとガラガラを振っていたし、絵に描いたようなエプロンをしていたし、やがてコロッケを揚げ終わって「ご飯よ〜」とも言っていた。

 

 ちなみに、違和感はストライキ中のようだった…きっと黄色のベストでも着ているんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 東南アジア

 シャム王国

 

 

 

 

 

「は〜い、お母さんが食べさせてあげますからね〜♪あ〜ん♡」

 

 

 私は愛宕お母さんに抱き抱えられながら、加賀さんお手製のSUSHIを食べている。

 ちゃんとアカチャナイズドされて作られたと思しき小さめのSUSHIは、そのサイズに見合わない値段のするもので、使われているネタはわざわざ重桜から生で取り寄せられていた。

 

 ここはシャム王国首都にある、加賀さんプレゼンツ重桜料亭フランチャイズ店舗の一つで、政府要人のみならず財界人や成功者にも主に接待に使われる。

 ピッピ創業のM&M社…(株)マッマとママのママママカンパニーはこんなところまで触手を伸ばしていたのだ。

 ワールドワイドで過保護を展開させたいとしか思えないし、実際そうする気しかないのだろう。

 

 そのフランチャイズの厨房に押し入った加賀さんは、現地人スタッフにアレコレ教えながら私やマッマ達の為に腕を振るいまくっているナウである。

 わざわざこの為に現地法人のアポを取り、食材を発注し、下準備を進めてくれた辺りマッマというよりは久々に帰省する上京息子の為に気合い入れて準備してくれるおっかさんでしかない。

 アリガタウアリガタウ。

 ヲイシイヲスシヲアリガタウ。

 

 

 ただ…私とマッマ達がシャム王国とかいうイオ●でのオフ会に失敗しそうな国に来たからと言って、それだけでこのご馳走が用意されたわけではない。

 今、私が家族連れ…いや、現実に即せばマッマ連れか…には場違いとも思わしき高級重桜料亭で北重桜海産の大粒いくらを貪っているのは、目の前にいる重桜陸軍大尉とお話をする為である。

 

 その陸軍大尉…鏑木大尉は、シャム王国陸軍の軍事顧問として、冷戦が始まる前からこの地域にいる。

 よってこの国の周辺にいるゲリラの事はつつがなく知っていたし、その情報には途方も無い信憑性があった。

 唯一何か言っておくべき事があれば…そのベテラン軍事顧問でさえ、喋る赤ん坊を目にする機会は今までに一度もなかったらしい。

 加えて私を抱える愛宕お母さんの左隣にいるピッピママが、店内の優美な重桜音楽をかき消すような勢いでガラガラを振ってやがる。

 やめてくれ、ピッピ。

 大尉のお話がまるで耳に入らんではないですか。

 ピッピ、スタップ。

 スタップ。

 スタァァァプッ!

 ふぅ、ありがとうピッピ…泣くな、泣くんじゃない。

 そうそう、落ち着いて。

 …はあ、疲れる。

 

 

「…話してもいいですか?」

 

 あ、すいません、大尉。

 発作みたいなモンです、どうぞお気になさらず。

 

「では、短刀直入に。大越とマラヤンの双方のゲリラ活動に関わっている組織がいると言えば…信じますか?」

 

 ………ロルトシート家?

 

「かもしれませんし、そうでないかもしれない。」

 

 と、おっしゃいますと?

 

「先週、ある貨物船が大越北部の軍港に入港した事が判明しています。大越の北部軍は独立派寄り。つまり、何かしらの軍事物資ではなかったかと我々は推測しています。」

 

 貨物船が軍港に入港して1週間後に武装蜂起となれば、ほぼ間違いないでしょうな。

 

「その貨物船について色々と調べると、ある海運会社の名前が上がりました。…HCRI社をご存知ですか?」

 

 

 

 ……………は?

 

 

 なんでそういう事するの?

 なんでただでさえ闇鍋の闇鍋なのにそういう事するの?

 こちとら赤ん坊の頭で国家生命のかかったジェ●ガやらされてんのよ?

 軽く児童虐待なわけなのよ?

 なんで横から余計な棒ブスブス突っ込んでくんのよ?

 なんでそういう事すんのよ?

 泣くよ?

 もう、本当に、泣くよ?

 

 

 

「ジャスパー・ヘチマティアルとロコ・ヘチマティアルのヘチマティアル兄妹による海運会社で、軍事物資の売買、組織の訓練、軍事顧問の派遣など、その業務は多岐に渡ります。」

 

 

 

 やめて、もう本当にやめて。

 もう既に脳内で『ボーダー●ンド』とか流れてきてるから、もうやめて。

 具体的な歌詞まで聞こえてるからもう本当にやめろぉお!!!

 

 

 

「我々も天城さんから情報をいただきましたが…私の見解を述べるならば、ロルトシート家がHCRIの背後にいる。ロルトシートはあの会社の株を30%保有していますからね。…最悪の場合、HCRIとのハードネゴシエーションになる可能性が高い。」

 

 

 

 えええやだよ。

 だってあのヒト達化け物級だって知ってるモン。

 なんなの?

 45口径バスバス食らって生きてる上に翌日にはベッドの上で腹筋してるって、本当に何なの?やめて?

 

 

 

「まあ、そう心配なさらずに。いざとなれば、我々SL班も協力致します。」

 

 ………今、なんつった?

 

「うふふ、マッコール様。重桜のSL班は腕の立つ情報組織です。鏑木大尉のご助力がいただけるなら、我々も心強いですわ♪」

 

 

 いつのまにか愛宕お母さんの右隣にすわった天城さんがそう微笑んでるけど、私としては全く微笑めない。

 

 あのさ、本当になんでそういう事するの?

 なんでそんな圧倒的負けフラグ立てんの?

 私絶対インドネシアとか行かないからな?

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。