バブールレーン   作:ペニーボイス

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尋問官:思い出せ、マイソン!仕事帰りにコンビニに寄ったお前は、そこで5000円分のi●unesカードを手に入れた!

マイソン:違う!!

尋問官:違わない!!お前の任務は夕食の調達だったが、その夕食代はダイヤに変わっていた!…ベトナムで何があった、マイソン!!

マイソン:………ザラマッマのエロい水着が出ていた…我慢できなかった………














スレンダーマッマ

 

 

 

 

 

 前にもこういう事があったが、今回はより深刻だった。

 私はいつだかのように椅子に縛られているのだが、今回は前回のように歓迎されているとは微塵も思えん。

 私の向かい側には典型的な"くっ殺"表情のプリンツェフがいるし、私と彼女の間には筋骨隆々な元デルタフォースィーズと思わしき傭兵がいらっしゃる。

 

 私はぼやける視界をハッキリとさせるために、何度か長めのまばたきをした。

 その甲斐あってしばらくすると、今私が置かれている立場というものを認識できるようになってくる。

 

 

 

 

 

 追跡自体は上手くいっていた。

 鏑木大尉からの情報通り、『HCRI』と車体側面にデカデカと書かれた白い2台のSUVを追い続ける事に成功していたのだ。

 だが、"していた"という言葉の通り、我々の任務は失敗したのだった。

 

 鉄血28号は2台目のSUVから500mは距離を取っていた。

 そのSUVがハンドブレーキと類稀なるハンドル操作で180°ターンを披露し、鉄血28号に正対した時…私は悟らざるを得なかった。

 我々は追跡していたのではない、"誘い込まれていたのだ"と。

 鉄血28号は2台目のSUVの後部座席から射撃を受けてタイヤを撃ち抜かれ………その後の記憶はない。

 

 ただ、今の状況からして、鉄血28号は横転、私とプリンツェフは気を失い、そしてこの、よくわからないような部屋に閉じ込められたに違いなかった。

 

 

 

 

 

「おっ!目が覚めたか!よちよち良い子でちゅねえ…バル●〜哺乳瓶を持ってこい」

 

 

 監禁されているにも関わず、目の前のアラフィフ傭兵がそんなことを言うモンだから警戒心が一気に萎えてしまった。

 え?何その何事もなかったかのようなあやし技術は?

 何その…こう…前の妻とは色々あったから子供を持った事はなくて、でも欲しいと思った時期はあったからあやす練習はしてて、妻と離婚して数年経った今初めてその成果を示す時が来た的な反応は。

 

 筋骨隆々マンは私の拘束を解いて抱え上げ、CV石塚●昇な渋いボイスで私をあやし始めた。

 

 

「はいはい、よちよち〜」

 

「そこのおっさん?乳幼児を抱えながら喫煙なんて、頭沸いてるんじゃないの?」

 

「相変わらず口の悪い女だぜ、●ェキータ。」

 

「ほら、こっちに渡しなさい。その子が肺がんで死んでしまう前に。」

 

「畜生!!お前らまとめてぶっ殺してやる!!」

 

 

 聞いた事ないレベルの怨嗟の絶叫が聞こえ、何事かと見てみれば椅子に縛られたプリンツェフが凄まじい形相で怒号を上げていた。

 あ、あの、プリンツェフ?

 こんな状況でさ、他の人があやしたぐらいでそんな怒号あげなくても良くないかい?

 キャラ像完全崩壊キャラ像ポンペイ噴火させる必要はないんじゃないかな?

 

 

「そんなに叫ぶのがお好きなら、お好きなだけ叫ばせて差し上げますか?」

 

「やめとけバル●。ロコから指示されただろう?」

 

 

 片目眼帯巨乳筋骨隆々お姉さんがプリンツェフの喉元にナイフを押し当てたが、私を爆乳アホ毛お姉様に渡すアラフィフ傭兵が眼帯を制止する。

 

 

「ですが、情報を引き出すように指示されてもいます。」

 

「いきなり拷問から初めんじゃねえよ。ったく、ヤクザじゃねえんだからヨォ。…んで、そこの姐ちゃん。俺らを追ってた理由を教えてくれねえか?」

 

「………ロバート・フォン・ピッピベルケルク=セントルイスファミリア少将からの指示よ。彼は今ロンドンにいて、アンタ達が不正な武器輸出をロイヤル植民地の周辺で行なっているのではないかと疑っている。…さて、ロイヤル海軍へのアンタらの要求は何かしら?」

 

 

 デキる子!プリンツェフめっさデキる子!!

 イイネイイネ!!

 

 HCRIはまさかロイヤル海軍少将が赤ん坊だと知ってるはずもないし、さりげなくロイヤル政府が黙ってないわよ的なオーラ含ませるあたり本当にデキる子!!

 アラフィフ傭兵と眼帯巨乳と爆乳アホ毛が顔を見合わせたあたり、プリンツェフの圧が効いているに違いない!!

 

 

「どうかな?私はそうは思わない。」

 

 

 せっかくのプリンツェフのファインプレーを、ベルマッマと同じくらい頭から足先まで真っ白な美人さんがブチ壊した。

 なんてこった、ロコ・ヘチマティアルのご登場である。

 元ネタの人物からして、今一瞬でプリンツェフの嘘を見破ったに違いない。

 エイメン。

 

 

「少将、悪党である私から言われるのもシャクかもしれませんが…赤ん坊のフリはやめて、お話いただけますか?」

 

 あの、なんで知ってんすかね、私の事。

 

「私は世界を舞台に活動する武器商人です。情報はいつでも入ります。」

 

 な、なるほど。

 

「さて、少将。どうか少将からお答えいただきたい。貴方が我々を追うのは…なぜでしょう?」

 

 

 白白しいと思うところはあったが、少し違和感も感じた。

 確かにHCRIは世界最大規模の武器商かもしれないが、世界中に植民地や情報組織を持つロイヤル政府相手に喧嘩を売ったりしたくはないに違いない。

 そんな事をすれば商売どころじゃなくなるというのは、彼女自身よく分かっているハズだ。

 

 もし、HCRIがSL班からの情報の通り大越独立派やマラヤンの過激派分子に武器を売っているとすれば…この反応はおかしい。

 理由をこちらに尋ねるどころか隠したいのだから、私のような人間を捕まえたら即座に殺してしまう事だろう。

 だが、どういうわけか私は武器商人の私兵の1人に抱えられ、ビス叔母さん級アホ毛オッパイにあやされているのだ…哺乳瓶でミルクを飲ませられながら。

 

 

「貴方の同行者が嘘をついているのは分かっています。第一に、セントルイスファミリアはこの場にいる。……そして第2に、我々は独立派のゲリラ連中相手のショボい取引なんか踏んでいない。」

 

 !?

 

「………え?2つ目は嘘じゃない!?

 

 

 美人さんの観察眼は恐ろしいものがあるし、私は考えを察せられてしまった。

 ただ、この美人さんは私以上に驚いているようで、まるでなにかの彫刻のように身体を捻って頭を左右から抑えている。

 

 

「しまった〜〜〜!!ハメられた〜〜〜!!」

 

 ハメられた?

 

「僕の方から説明しますよ」

 

 

 後ろから声が聞こえて、アホ毛爆乳の肩越しにその方向を見る。

 そこにはルネサンスの彫刻並みのポージングを披露している妹さんと同じくらい真っ白なお兄さんがいた。

 

 

「初めまして。僕はジャスパー・ヘチマティアル。HCRIのアジア担当です。…今回はある理由から、妹に手伝ってもらっているのですが…」

 

 その理由とは?

 

「…僕達HCRIは5年も前から、ロイヤルやアイリスの依頼で武器・装備品をこの東南アジアへと運んできました。」

 

 植民地軍向けに、ですか?

 

「いいえ…最初は東煌統一政府相手に、です。東煌内戦に北東煌政府が勝利してしまうと、共産主義政権が"革命の輸出"を目論む可能性は否定できない。そうなれば東南アジアの植民地へと南下する可能性は大いにあります。」

 

 …だが、問題は既に統一政府がレッドアクシズと手を組んでいた事。

 共産主義政権は厄介だが、ファシストに塩を送るようなマネもできなかった。

 統一政府が重桜に煽られて南進しないとも限らない。

 

「ええ。ただ、レッドアクシズによる支援も充分とは言えなかった。統一政府側も北東煌政府側も、互いに膨大な数の小火器を必要としていた。レッドアクシズ側には余裕がなくとも、ロイヤルやアイリスはまだ余剰火器を充分に保有していましたから、統一政府としてはその火器を手に入れたかった。」

 

 そこであなた方の登場か。

 

「ロイヤル・アイリスと統一政府はユニオンのうかがい知れないところで密約を結びました。フリーランスの武器商人を通じて武器援助を行う代わりに、統一政府の勝利後には南進を実施しない確約をするという密約をね。」

 

 統一政府への武器援助が表沙汰になれば、ロイヤルやアイリスはユニオンへのメンツを失いかねない。

 アズールレーン内部での内紛を避けるために第三者を介した取引が望ましかった…

 もちろん、その第三者は見返りを要求した。

 何せアズールレーンとレッドアクシズの勢力の境目を超えて武器を運ぶとなればリスクも高い。

 冷戦前、東南アジアはロイヤルと重桜の主戦場だった。

 ただの運送業務で終わらせるあなた方じゃないでしょう?

 

「我々はアズールレーン側と協議して、見返りに内戦終了後の植民地軍関連の仕事の独占を約束させました。」

 

 ところが問題が起きた。

 

「東煌内戦後、余剰となった大量の中古火器が『ハウスクリーン作戦』で壊滅していたはずの独立派ゲリラへと流れた…死に損ないに過ぎなかった組織が一気に息を吹き返す結果に。」

 

 …あなた方は逆に儲かったんじゃないのか?

 植民地軍もゲリラを抑えるための武器が必要になるだろう。

 

「ふふふ〜ふ、ところが、そうはなりません。レッドアクシズの情報機関が進出してきて、我々の"取り分"を掻っさらい始めた。植民地軍は内部で分裂をし始め、中央政府から離脱した派閥は取引相手を変更したんです。」

 

 SL班!?

 

「その通り。東煌での余剰兵器の横流しも、独立派ゲリラの再組織に手を貸したのも、植民地軍内部の分裂を煽ったのも彼らです。何せ、彼らには資金源が必要ですからね。…東南アジアの地図を塗り替える気なんですから。」

 

 ………ま、まさかとは思うが…

 

「東南アジアの植民地が欧州から独立すれば、アジアにおけるパワーバランスは重桜向きになる。独立派ゲリラへの支援をしているなら尚更のこと。…SL班は元々重桜情報局の武闘派連中の集まりです。大越の北部軍、マラヤン半島の独立派のみならず…シャム王国に至っては国ごと丸め込んでいます。」

 

 重桜情報局の目的は、冷戦より前の時代へ遡る事!?

 正気の沙汰じゃない!!

 第一、重桜は冷戦前の戦いでユニオンとロイヤルに太刀打ちできないことを実感したはずだ!!

 太平洋では主戦力を喪失しかけ、東南アジアではハウスクリーン作戦のせいで駐屯部隊の殆どを失ったのだから!!

 

「情報局の目的ではなく、SL班の目的です。

 彼らは重桜政府の方針から逸脱し、完全に暴走している…と、言っても言葉だけでは信じられないでしょう。」

 

 

 

 ジャスパー氏は私達が大越まで来ることになった原因である、ある貨物船についての写真と資料を手渡した。

 それはカリブ海の島国の公認印が捺印された正規の書類であり印鑑の偽造が不可能である以上はこの書類が本物である事を示していた。

 

 その書類によれば、この貨物船の所有者はサディア帝国にある船舶会社であることが分かる。

 ほかの書類には、その船舶会社が実態のない会社であり、シャム王国中央銀行がその資金源となっている事が明らかにされていた。

 さらに言えば、このシャム王国中央銀行はロルトシート家の援助を受けていたのである。

 

 

 ハ メ ら れ た。

 

 

 あまりの衝撃に目眩がしたし、つい力が緩んで書類を落っことしてしまう。

 なんてこった!

 完全に鏑木の野郎に騙されていた!

 

 もう、重桜サイドの誰も信用できないし、それは天城マッマだって同じだ。

 重桜情報局の要である人物がSL班の暴走を知らないわけがない。

 北方連合での暗殺未遂と、今回の東南アジアでの任務、そして北部軍の攻撃を踏まえると、考えられる仮説がある。

 

 

 

 

 SL班こそロルトシートの支援を受ける団体であり、恐らく重桜情報局は止めるフリをしつつ裏では手を組んでいる。

 東南アジアでのパワーバランスを変えるために行動する彼らにとって、ロルトシートからの財源は武器密輸と併せて重要だ。

 そしてその"大蔵省"が私の殺害を依頼したに違いない。

 

 ここ東南アジアなら、北方連合の時とは違って私を援護する勢力は無いに等しいのだ。

 暗殺実行にはまさにうってつけ!

 大越北部軍の突然の攻勢もこれで説明がついてしまう。

 攻勢の混乱の最中なら、ロイヤル海軍の軍人が殺されても説明ができる。

 ロイヤル側も重桜を疑いはできるが責めることはできない。

 

 

 クッソ!!クッソ!!クッソ!!

 

 何故だ、クッソ!!

 こんちくしょう!!

 

 年甲斐もなく…いや、年相応に涙が溢れる。

 まさか、まさか天城マッマに裏切られているとは思わなかった。

 あんなに…あんなに協力し合ってきたのに…

 

 

 

「落ち着きなさいッ!!」

 

 

 プリンツェフが固く縛られていたであろう両手のロープを、根性で引きちぎって私の元へ駆け寄ってきた。

 彼女はそのままオッパイ傭兵から私をふんだくり、自身の豊満な谷間へと入れ込む。

 

 

「アンタを裏切ったクソ野郎は私が責任を持って始末する!アンタを泣かすようなクズは、文字通り屑にしてやるわ!」

 

 ひっ、グズっ、あ、ありがとうプリンツェフ。

 

「…大丈夫。アンタがどうであろうと、私はアンタを裏切ったりはしないわ。」

 

 プリンツェフかっこいいよ〜、グズっ、かっこいい系マッマぁ〜

 

「何故なら、私こそアンタのマッ」

 

「いいえ、プリンツェフ。私こそ坊やのママよ?」

 

 

 うおおおおい!?

 びっくりしたあ!!!

 

 なんよピッピママ。

 なんでこんなトコいんのよ、あんたらアイリス外人部隊の基地で置いてけぼりだったやないかい。

 なんでさも当然のようにここにいるわけ?

 

「坊やの匂いを追ってきたわ。」

 

 いや、こっわ。

 

 

 

 

 気づけば4大マッマが周りにいて、HCRIの傭兵の皆さん及び武器商人のお2人は伸びていらっしゃる。

 何だろう、この溢れ出るホラー都市伝説感は。

 あんたらスレンダーマ●か何かか?

 

 

「ええ、スレンダーママよ?」

 

 ピッピ?

 そんなドヤ顏で言われても、そんなワードは都市伝説感全くないしただただコミカルなだけだからね?

 第一、ピッピスレンダーじゃないじゃん?

 ダイナマイトじゃん?

 

「ミニ?こう言うのもアレだけど、天城たちが裏切ったかどうかはまだ分からないわ。」

 

「平静さを保ちましょう、ご主人様。SL班の裏切は確実ですが、重桜情報局まで裏切ったというのはご主人様の推測の域を出ない…違いますか?」

 

「Mon chou!アイリス植民地軍情報部の、信頼できる筋から連絡があったわ。SL班がこちらへ向かっているとの事よ。待ち伏せして、じっくりと聞き出してやりましょう!」

 

 

 本当にありがとう、マッマたち。

 ヒステリーを起こしたが、彼女達のおかげで早くも立ち直る事ができた。

 

 そうだ、天城マッマの件は私の推測にしか過ぎないのだ。

 真相究明はSL班を嬲って聞き出してからでも遅くない。

 

 

 ただ、これが本当に天城マッマの裏切りだった場合。

 私は立ち直れる自信がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

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