バブールレーン   作:ペニーボイス

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気違いアカゴの決闘

 

 

 

 

 

 

「ミ〜ニ〜ミ〜ニ〜♪私のミ〜ニ〜♪」

 

 

 …どうしよう。

 ビス叔母さんひいては我々の命運を左右しかねない作戦の直前…いや、もう既に実行中だってのにルイスママが私を手放そうとしない。

 確かにエーミール氏拉致作戦はユニオンの協力がデカかったけど、その見返り以上に手放そうとしない。

 

 ザラママは面白くなさそうな顔して腕組みながらこっち見てるし、ピッピは敵意丸出しだし、ダンケはハイパワー拳銃の整備を始めたし、ベルは舌打ちしながらルイスの周りをクルクル回ってやがる…人工衛星かお前は。

 

 ま、いつも通りなんだけどね。

 なんだけど、何でこのタイミングで始めたんだお前らは。

 

 あとね、何度も言うけどね、ルイスママ。

 貴女は私を殺したいんですか?

 そんなね。

 バッカデカいお胸で私を挟んでね。

 挙げ句の果てに両腕でホールドしてね。

 息できないじゃん?

 できないこたぁないけど、呼吸が苦しいじゃん?

 もう、絶望的なまでの腕力でご自身の香りとか柔らかさとか体温とかを強制しすぎじゃないかい?

 

 

「ミニは私の息子♪ラッキールーの息子♪だからミニ・ルー♪」

 

 うんうん、ありがとうルイスママ。

 だけどちょっとだけ落ち着こうか?

 ちゃんと周りは見えているのかな?

 ねえ?

 見えてる?

 クライシスなのは地中海情勢だけで十分なんですよ。

 お願いですからあなた方同士で勝手にクライシス始めないでください頼むから。

 だから、ここは少し他のママにも譲って…

 

「いや!」

 ギュムゥゥゥウウウ

 

 ふげえええぇぇ…

 

「ミニは私の!私だけのミニ・ルー!!」

 

 

 更に抱え込む圧を加えてくるルイスママ。

 私はミンチになろうかとしているのだが、しかし、原因はルイスママのアツ過ぎる抱擁だけではない。

 ザラママが手始めに、ルイスママへの反乱の狼煙を上げた。

 

 

「いい加減にしなさい、このッ、色ボケユニアン!ピッコリーノは私の幼なじみなの!」

 

「…だから何?法律上、この子の親権は私が持っているのよ?」

 

「!?」

 

「うふふ…その様子だと、貴女も加わりたいようね……共同親権保有者に。

 

 

 うわ、でた。

 また1人謎の闇組織に引きずり込もうとしてるよこのアメリカママは。

 しかもまた法的手段に訴える気してるし。

 もうやり方からしてラッキー・ルーじゃないよね、もうここまで来たらイリーガ・ルーだよね色々と。

 

 

 

「他の皆もよく聞いた方が良いわ…今年こそ、ミニのクリスマスプレゼントはこの私よ!誰にも否定させるつもりはないわ!もし邪魔立てするなら…」

 

 

 ルイスママがパチンと指を鳴らす。

 次の瞬間、今まで5人の母親と1人の赤ん坊しかいなかった部屋にスーツ姿の男達が入り込んで来た。

 

 

デ●●●ーから借りて来た弁護団よ!世界最強の弁護士達と戦って勝てると言うのなら、かかって来なさい!!」

 

 

 やめろおおおおおお!!

 なんだってそんな問題発言すんのよ!!

 軽く危機だよ!!

 このSSの危機だよ、ここまで来たら!!

 デ●●●ーからリアル弁護団来たらどうしてくれんのよルイスママ。

 オイラ(作者)ただの一般人だからね!?

 世界最強の弁護団出てくる間も無く木っ端微塵なんだよ!?

 つーかどっからそんなコネ引っ張ってきたのよおおおおお!?

 

 

「ああ、そう言えばミニは"初めまして"だったわね。この人はね、私のハー●ード時代の同級生なの。」

 

「ハハッ!僕●●キー、よろしくね☆」

 

 

 おい。

 

 

「セントルイスもお久しぶり☆」

 

「ええ、お久しぶりね。●●ーちゃんはお元気?」

 

「ウンッお陰様で元気だよ☆」

 

 

 某社のネズミっぽくて仕方のない弁護士とルイスママは和気あいあいとしていたが、私としては当然戦慄モノだった。

 他のママ達も流石にドン引きしている。

 ピッピは白い顔を更に青白くさせて「…ルイス、あなたなんて事…」つってるし、ザラは口をパクパクさせてるし、ダンケはハイパワーのスライド落っことしたし、ベルは人工衛星周回をやめて座り込んでいる。

 こうして、ザラママによる反乱…ザラの乱はあっけなく幕を閉じたのだった。

 

 

「………わ、分かったわ、ルイス。私もあなたの軍門に降りる…だから」

 

「あら。話の分かる娘で助かるわ、ザラ。あなたの賢明さに免じて、特別に共同親権者入りを許してあげる♪…ありがとう、●●キー。また何かあったらお願いね。」

 

「ハハッ!任せてよ☆」

 

「…さて!ミニ・ルーに関する法的優位性も再確認された事だし…とりあえず一安心ってところかしら。」

 

 どこが安心なんだy

 

 ギュムゥゥゥウウウ

 

 ふげえええええ!!

 

 

「もう!ミニったら、そんなにママのことキライなの!?」

 

 そそそそんなワケナイジャナイデスカー!

 

「……気持ちがこもってないわね、そんな風に育てた覚えはないのに……こうなったら、再教育よ!是が非でもミニを『真のセントルイス級』にするから覚悟して!」

 

 え、ナニソレどういう意味

 

「ミニがちゃんと自分の事を『あ、僕はセントルイス級だからルイスママの保護を受けないと』って思うようになるまで、私の一部として過ごしてもらうって事!!」

 

 ルイスママの一部???

 

「これから毎日毎時間毎分毎秒、365日24時間私から1ミリたりとも離れちゃダメ!

 

 ………え?…なんて?

 

「離れちゃダメ!!!」

 ギュムゥゥゥウウウ

 

 ふげえええええ!!

 分かりました分かりました!!

 安心です安心です安心です!!!

 ワーイワーイウレシイナー!!!!

 

 

 

 

 骨とか脊椎まで粉々になるんじゃないかという凄まじい抱擁から解放されたのは、私とルイスの近くにあった電話機がけたたましい着信音を上げた時だった。

 

 

「ミニ♪はい、お電話よ♪」

 

 あ、ありがとう、ルイスママ。

 ふへぇ、か、貸してくだせえ…

 ………はい、もしもし、こちらセントルイスファミリア。

 

『サディア国防大臣だ。貴官の言う通り、現時刻をもって第二作戦が実行された。…世界大戦にならない保障はあるのかね?』

 

 ………ええ。

 

『なら良いのだが…ともかく、我々は予定通り行動する。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒスパニア首都

 

 

 

 

 

 

 セントルイスファミリアとかいう赤ん坊がセントルイスにミンチにされかけていた頃、ヒスパニア首都の金融街では3件の爆弾テロが立て続けに発生した。

 被害に遭ったのはいずれも欧州で名高い銀行であり、更に言えばヒスパニアにとっては重要な債権者だった。

 そして、その事実はフランシス元帥に途方もなく差し迫った決断を強いたのである。

 

 反政府組織による連続爆破テロ。

 その標的となったのは、『鉄血中央銀行』、『サディア銀行』、『ヴィシア・アイリス統一金庫』である。

 言うまでもなく、ヒスパニア政府にとっては最悪の事態だった。

 

 

 

「元帥!アイリス陸軍の戦車師団が国境を越えています!目的は"自国民と自国財産の保護"だと主張しています!」

 

「サディア帝国海軍の船団の出航が確認されました!進路をジブラルタル海峡へと向けております!…目的はアイリスと同じです。」

 

「見え透いた言い訳を並べよって!…ついに連中もボロを出したというわけか。」

 

 

 爆弾テロと各国政府の対応があまりにも早かった事で、フランシス元帥はこの連続テロ自体がヒスパニアの債権者諸国…或いはビスマルク…によって仕組まれた物だと判断できた。

 人道支援や財産保護を建前に、元帥の政治体制を崩さんとしているのである。

 建前が建前だけにタチが悪い。

 

 

 ホルタ会談以来、ヒスパニアはサディアとアイリスそれに鉄血とは紛いなりにも同盟関係にあり、その条項には『同盟国内でのテロ攻撃に際しての自国民保護に関する協定』が含まれていた。

 現にアイリスとサディアの金融機関と国民がテロ攻撃の脅威に遭っているわけだから、アイリスとサディアの主張には正統性がある。

 もし元帥の軍がアイリスやサディアの軍に攻撃を加えれば、ヒスパニアの主張はどの国にも認められず、元帥は孤立し、不満分子の行動が活性化するだろう。

 

 よって、ヒスパニア軍による迎撃は自殺行為なのだ。

 

 

 

 本来なら元帥は激昂するところなのだが、今回ばかりは違った。

 狡猾な彼は、反政府分子による爆破テロと近隣諸国の軍事介入という未曾有の危機を"新しいパートナー"を推し量るための材料として考えていたのだ。

 

 ヒスパニア政府のトップであるフランシス元帥直々の命令で、ロイヤルのある邸宅とのホットラインが用意される。

 副官が接続と暗号化に問題がない事を確認すると、元帥はまるでひったくるように彼から受話器を奪った。

 

 

「…ロルトシート卿、ニュースはご覧になりましたか?」

 

『見るまでもない。こちら側は全てを把握している。なぁに、そちら側が心配するような事は何一つない。万事任せておきたまえ。』

 

「ならば安心です。」

 

『…まあ、それはそれとして…そちら側は未だにビスマルクと手を切っていないらしいな』

 

「!…そ、それは」

 

『まあ良い、コレでハッキリするだろう。遅かれ早かれ、そちら側はビスマルクと手を切る事になる。それでは、準備をしておきたまえ。』

 

 

 フランシス元帥としては、ロルトシートのクソ野郎共に頼らざるを得ないという現状自体が胸糞悪い物だった。

 だがしかし、今回ばかりは頼らざるを得ない。

 ロルトシートが何をする気かは知らないが、彼が元帥杖を持ち続ける為には、あの"いけすかない"連中に任せるしかなかった。

 

 それに、もしロルトシートが有効な手立てを打てるとすれば、連中が素晴らしいパートナーであるという裏付けにもなる。

 どちらにせよ、フランシス元帥は利益を得られるように立ち回るつもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジブラルタル海峡

 

 

 

 

 

 

 ロイヤル本土から電報を受け取ったウォースパイトは急ぎ足で"女王陛下"の元へ向かう。

 彼女自身電報の中身を読んだし、その重要さのせいで彼女らしくもなく鳥肌を浮かべている。

 歴戦の騎士を戦慄させる内容が、その電報には記されていたのだ。

 

 

「陛下、マクドネル首相より電報です。」

 

「…読み上げなさい」

 

『ヒスパニアに対する複数の軍事行動を確認。特に、サディア海軍がヒスパニア側海峡への上陸を試みている模様。協定の範囲内とはいえ戦争勃発の可能性高しと判断。貴艦隊はこの事態に介入し、サディア海軍を阻止せよ。』との事です。」

 

「………そう。いよいよ始まったのね。」

 

 

 この日、ウォースパイトはクイーン・エリザベスの横顔に、今までで初めて、少しの憂いを見た。 

 だが、"女王陛下"が弱みを見せたのはその0.5秒にも満たない間だけだった。

 彼女は意を決したように振り返ると、配下の"下僕"達に声を張り上げる。

 

 

「さあ、ついてきなさい!!女王の艦隊の威力、見せつけてやるわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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