バブールレーン   作:ペニーボイス

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番外編 幕間 赤ん坊のシェフ

 

 

 

 

 

「よいしょ!」

 

「はい!」

 

「よいしょ!」

 

「はい!」

 

「よいしょ!」

 

「はい!」

 

 

 

 ピッピママとビス叔母さんが、流石は姉妹といった感じで息ぴったりにお餅をついている。

 ハツモウデを終えた後始まった『令和元年度チキチキ誰が坊やをあやすか大海戦』は結局天城さんの

 

「まあまあ、皆んなでお餅をつくのはどうでしょう?」

 

 という神レベルの機転により早期終結に至った貴女はどれだけ素晴らしいんだ天城さん。

 

 

 よって、ピッピとビス叔母さんの他にも、多くのママやKANSEN達がお餅を作っている。

 お餅をつくママ達は勿論、それを頬張っている娘達も楽しそうで…なんだか見ているこちらまで楽しくなっていた。

 

 ………だけどね、ピッピママ?

 水を差すような事言いたくないんだけどさ。

 上裸に"さらし"はやめようぜピッピママ。

 重い杵で結構な時間やってるから汗かくのは分かるんだけどさ、少しばかりね、品位をね、持ってもらいたいの。

 除夜の鐘ってあるでしょう?

 アレってね、煩悩を取り払うための鐘だったと思うんだけどさ。

 取り払った先から煩悩フルマックスな服装はいかがなモノかと思うよ、流石に。

 ……ビス叔母さんもね。

 

 

「よいしょ!」

 

「………お疲れ様、ティルピッツ。こんなに動くのは久しぶりね。しばらくデスクワークが多かったから。」

 

「いい運動にもなったわ。…ルイス、次はあなたの番よ。坊やを渡してもらえるかしら?」

 

「ええ、今渡すから待ってて」

 

 

 ポチッ

 

 

『セントルイス級分離シーケンス開始』

 

 

 おいおいおいおいルイスママこの野郎、知らない間になんていう改造(?)してくれとんじゃこの野郎。

 何?シーケンスって、何?

 そもそもルイスママと一体化するって時点でワケワカメなのに、ある特定の操作すれば分離できるって事の他ワケワカメなんだけど?

 つーかさっきお前はどこを押したんだ?

 

 

「………はい、ティルピッツ。お待ちかねのミニ・ルーよ。」

 

「ありがとう、ルイス。」

 

 

 ピッピママはルイスから私を受け取り、汗で上気した白い柔肌に私を迎え入れる。

 

 

「少し、汗臭いかしら….姉さん、シャワーを浴びてきましょう。」

 

「ラインハルトはこのまま、ママの汗を感じていたいでしょう?」

 

「は?」

 

「姉さん、ラインハルト君が風邪をひいてしまうわよ?」

 

「……はぁ、このままラインハルトにママ成分を擦り込みたかったけど…そうね、風邪をひいたら大変ね。」

 

 

 しっかり聞こえたけど、私としては何も聞こえていないコトにしたかったし、実際何も聞こえなかったコトにした。

 だってさあ、耐えられる?

 耐えられないでしょう?

 どう頑張っても、無理でしょう?

 

 

「ふへへへへへへっ、ちびっ子達〜!お餅つきは楽しいかい〜?」

 

 

 新年早々何ということだろうか。

 私とピッピの目の前を、1人の不審者が通り過ぎていく。

 アークロイヤル。

 言わずと知れた不審者であり、駆逐艦の敵であり、公共の敵である。

 どうやらお餅つきをした後美味しそうにはふはふ食べている駆逐艦達を見て「はつじょっ」したらしい。

 

 

 ベルマッマ?

 

「はい、ご主人様」

 

 MP呼んどいて?

 

「既にお呼びしております。」

 

 流石ベル!

 

 

 直後に甲高いサイレンが鳴り響き、MPがやってきてアークロイヤルを地下牢へと押し込めるために彼女の両手に手錠をかける。

 新年早々警察沙汰とは…頼むから懲りてくれアークロイヤル。

 

 

 

「うおおおおおお!!!」

 バッチィィィイイイン!!!

 

 

 今度は何事…

 凄まじい雄叫びと、何かが爆発=シサンするかのような音。

 何事かと振り返ると、そこにいたのはチームユニオンの面々である。

 特注品と思わしき鋼鉄製の臼に炊き立ての餅米を入れ、トールハンマーみたいな杵を雄叫びと共に振り下ろしている。

 

 

「どけ!アタシがやるわ!!」

 

「頑張りなさい、ワシントン。最高記録はメリーランドの二回です!」

 

「フン!あたしの記録に勝てるといいなぁ。」

 

「ハッ!楽勝だぜ!!…ハァァァアアア、トリャアアアアア!!」

 バッチィィィイイイン!!

 

 

 ドラゴ●ボールよろしく気合を入れたワシントンはそのまま勢い良すぎるほどに杵を振り下ろす。

 壊したたがりのお年頃。

 当鎮守府名物クラスのデストロイヤー・ワシントン。

 驚くべき事に、彼女が杵を振り下ろした後、そこには立派なお餅が出来上がっていた。

 

 

「よっしゃあああ!ま、こんなモンだぜ!!」

 

 

 得意げなワシントン。

 あのね、君たち。

 餅つきってそういう競技でもなんでもないからね?

 

 

 

 

 

 

 ………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピッピと一緒にシャワーを浴びて帰ってきた頃には、ルイスがお餅をつき終わっていて、ダンケとベルが砂糖きな粉を用意していてくれた。

 湯気が立ち昇るほどの出来立てホヤホヤ加減からしても随分と美味しそうだし、私が席についてから少しした後には加賀さんが天城さんや赤城さんと一緒にお雑煮を持って来てくれる。

 例によって、お雑煮には私の大好物である牡蠣が入っている。

 

 

「きな粉餅も美味しそうですが、まずは加賀のお雑煮からお召し上がりになられてはどうでしょう?」

 

 うん、ありがとう赤城さん。

 それでは加賀さん、いただきます。

 

「ああ、我が子。しっかり食え。」

 

「!!…ご主人様!お待ちを!!」

 

 なんや、どうしたのベルマッマ。

 あの、食べる順番に関してはね、赤城さんの言う通り…違う?そうじゃない?

 

「ダンケルク、ご主人様。牡蠣をよくご覧ください。」

 

「何々?……どう見ても普通の牡蠣…!!」

 

「謀りましたね、赤城!!」

 

 

 おお。

 よく分からないが…どうやら、私の食事までもが何かしらの政治的材料にされたようだ。

 ふざけんじゃねえ。

 人の食事を何だと思ってやがるんだお前らは。

 

 何かしらのトラブルがあったようだが、天城さんの呆れきった表情を見る限り毒殺とかそんな不穏な類のモノではなさそうだ。

 

 

「chou!この牡蠣はアイリス産の高級種よ。通称『ブロン』。寄生虫被害のせいで数が激減して、今ではかなりの値が張っているの。」

 

 ………何か問題が?

 

「ご主人様。加賀のお雑煮には真牡蠣に混ざって『ブロン』が使用されています。つまり…」

 

 つまり?

 

「コレをchouが食べることは、重桜企業によるアイリス進出を、chouが許可したって事に」

 

 

 信●のシェフやめろおおおおお!!!

 もうやめろお前らあああああ!!!

 やめてくれよ本当にもう!!!

 たまには普通にご飯食べさせてよ!!!

 なんで信●のシェフ始めんのよ!!!

 なんで新年早々食事が信●のシェフになんのよ!!!

 

 

「ふっ、まさか勘づかれるとは…。だが、我が子。私の雑煮を目の前にして我慢はできまい?」

 

 ………なんつーか、食欲が失せ

 

「姉様と一緒に、一生懸命作ったんだ。素材選びから仕込み、調理まで。アイリスまで足を伸ばすのは大変だったが、我が子の為ならと手間隙をかけた。…だが、我が子が食せないと言うのであれば仕方あるまい。うっ、ぐすっ、残念だが」

 

 

 良心に訴えかけてくんじゃねえ!!

 信●のシェフ的な謀略仕掛けておきながら結局頼みの綱が政治的駆け引きとかそんなのじゃなくて良心の呵責かよ!?

 もうちょっと考えて!?

 信●のシェフやるなら信●のシェフやるでもうちょい考えてこういうのやって!?

 

 

「ああ、加賀…可哀想な子…。あのメイドのせいで…!?」

 

「うん?どうした、姉様?」

 

「………加賀、あのきな粉をみなさい。」

 

 今度はなんや。

 ダンケマッマの砂糖きな粉がどうしたんや。

 

「!?……おのれ!貴様らも謀ったな!?」

 

「あのきな粉の輝き…アレは北重桜産大豆のきな粉!それを我が子に食べさせると言うことは…」

 

「アイリス企業の重桜進出を、我が子が許すということっ!?」

 

 

 お前らもかよおおお!?

 お前らもかよベルダンケ!?

 え、何?何を思ってこういう事やらかしてくれたの!?

 つーかさ、言っとくけどね?

 僕ちん政治的権限なんてカケラも持っちゃいないからね!?

 何かを期待したのかもしれないけど、基本的に無駄だからね!?

 

 

 

 ダンケとベルと赤城&加賀が勝手に信●のシェフをやっていたにも関わらず、幸いな事にお雑煮ときな粉餅は熱を失っていなかった。

 

 私は盛大に溜息を吐き…そのせいできな粉が幾ばくか宙に舞ったが…手を合わせて合掌した。

 

 "いただきます。"

 

 

 私は無事にお雑煮ときな粉餅を平らげ、おかげで双方の謀略は引き分けに終わったのだった。

 

 

 

ふぅ。どうにかなったな。

 なんというか、こう、お正月くらいもう少し静かに過ごしたいモンだが。

 お餅も美味しかったし、しばらくはルイスマッマと…

はっ!いかんいかん!

 ルイスの一部分である事に慣れてしまっていた!

 マジでリアルなセントルイス級に至ってしまうところだった、アブナイアブナイ。

 

 自分自身で勝手に一喜一憂してた時、唐突に晴れ着ファストが私を抱え込み、その大きくはだけた胸元に私を押し込めた。

 

 

 「ご主人様、最近ファストしてませんよね?」

 

 

 ふはぁぁぁ。

 本来なら、彼女はこんなキャラじゃないハズなんだが…

 ベルファストはもう、私の内心を読み取るという作業をやめていた。

 

 

 「ご主人様。新年の元旦くらいはファストしていただきたいと思います。ご安心ください、ルイスに勝るとも劣らないリクライニング感をご提供させていただきますので。」

 

 

 リクライニング感って何?…………

 

 

 

 

 

 

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