バブールレーン   作:ペニーボイス

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-誠に身勝手なお知らせ-


今までキャラクターを総称して『艦娘』表記していましたが、誠に今更ながらアズールレーンのキャラクターの呼称が『KANSEN』である事に気付きましたので、この話からKANSEN表記で書きたいと思います。

これからもどうぞよろしくお願いします。





向かいのヒットマン

 

 

 

 

『社会主義にいらっしゃい。一緒に"悪の枢軸"と戦おう!』

 

 

これは当時石油価格の上昇で調子に乗っていた某国のポピュリスト的大統領が、事もあろうかアメリカ大統領に向かって放った大して面白くもないジョークである。

 

私は社会主義国の出身ではないし、大衆迎合主義を崇拝しているわけでもない。

 

だが、認めよう。

先ほどの金髪女性がピッピのお姉さんと知った時、走り出すメルセデスを停車させ駆け下りて、彼女にこう言いたくなった。

 

「私の鎮守府にいらっしゃい。一緒に"赤の枢軸(レッドアクシズ)"と戦おう!」

 

 

 

 

「無理よ、坊や。姉さんは大陸版ですら実装されてないんだから。」

 

 

おいマジレスすんじゃねえ。

大体、ピッピのお姉さん謎の女過ぎるだろうが。

本家ですら実装されてないのに何であんな所で紳士服店開いてんのよ、何でSFテクノロジー極めて妹の過保護に貢献してんのよ。

 

 

「…やっぱり、姉さんの方が魅力的?」

 

いやいやいやいや、そうじゃない。

そうじゃないんだ、ピッピママ。

だからそんな寂しい顔をしないでください。

 

ただ、ビスマルクさんってピッピと同型艦だからひょっとしたらピッピの負担減らせるんじゃないかなあって思っただけなんだあ。

 

 

「優しいのね。心配しなくても、坊やの為なら日々の任務なんてどうって事ないわ。そもそも………坊やは普段から私達にそこまで負担がかかるような事はさせないじゃない。」

 

そうかな?指揮官業務とかほぼ君達に投げっぱなしなんだけど。

 

「Mon chou、流石に4人でやっていれば、大して負担じゃないの。それに、Mon chou、私たちの鎮守府の出撃率の低さの原因は貴方の方針よ?」

 

 

「ご主人様はモントゴメリー式のやり方が基本的な方針のようですからね。我15敵1の戦力・物資が揃わないと滅多に攻勢に出ませんし。それを戦闘のみならず恒常業務にも持ち込むぐらいですから。」

 

 

「他の鎮守府のKANSENからは批判的に捉えられる事も多いけど、そのおかげで私たち1人当たりの負担は小さくて済むわ。いくら幸運艦の私でも、いつまでも運に頼れるわけじゃない。堅実なやり方をしてくれる指揮官くんには感謝しないとね。」

 

 

 

マッマ達には高過ぎる評価されてるけど、それ、私が作戦立てんのめんどくさくて出撃させてないだけだから。

サボタージュしてるだけだから。

感謝されるような事は微塵もないから。

寧ろ「出撃させろやオラァア」的なワシントンチックなスタンスでもいいのよ?

加賀さんみたく勝利に異常な執着持ってみてもいいのよ?

 

指揮官業務の分担は何かダンケルク1人にやらせるの可哀想だしっていう『放り投げてる癖にふざけんなこの野郎』レベルの理由でしかない。

間違ってもモントゴメリーを意識しようとしたわけではない。

あんなに激しい性格でもなければ思慮深いわけでもない。

 

 

プリンス・オブ・ウェールズ通称PoWあたりがこれを知ったら、たぶん私は殴られる。

もう、タコ殴りにされる。

 

「限られた!!戦力で!!最大の!!戦果を!!得られる!!作戦を!!立てるのが!!貴様の仕事ダァァァァアアア!!」

 

つって一言毎に殴られる。

あ、最後のは右アッパーね。

 

 

 

 

「そろそろ次の目的地に到着します。…セントルイス、またココですか?」

 

「いいじゃない、美味しいんだから。指揮官くんもステーキ好きでしょう?」

 

 

うん、大好き。

呆れ顔のベルファストを見る限り、恐らくはセントルイスの行きつけの店なのだろう。

 

ピッピママとのショッピングが終わったのは11時を少し過ぎた頃。

午前中は外出証の交付に時間取られたし、そろそろ飯時かなぁと思ってた時に、セントルイスから昼食を取ろうと提案された。

まあ、いい感じにお腹もペコちゃんだったので、セントルイスの提案を認可する事に。

 

お店選びさえする暇なく、セントルイスがベルファストへ道案内を始めていた。

カーナビ付けろや。

これじゃどういう店行くか分かりゃへんやろうが。

 

 

到着したのは少々お高そうなレストラン。

ドレスコードが決まってるか、決まってないかギリギリのラインくらいの店。

まあ、セントルイス曰く「ドレスコード何それ美味しいの」らしいから今の服装でも大丈夫なんだろう。

 

到着したのは11時半を少しばかり過ぎた頃だったが、店は既に満席に近い状態だった。

ウェイター達が忙しそうに料理を運び、家族連れやカップルがステーキやらシュニッツェルやらにありついていた。

 

なんか、久々に一般ピーポーを見た気がする。

ピッ●ブルとその運転手を除いては、鎮守府で"普通の人間"を見る事はなかったからなぁ。

なんたって鎮守府スタッフ皆んなヒヨコなんだもん。

 

 

セントルイスはここの従業員と顔見知りらしく、片手を挙げて挨拶している。

従業員の方も、恐らくは常連と化しているセントルイスを見て笑顔を向け、空いているテーブル席に案内を始めた。

 

運良くテーブル席が1つ空いている。

それは窓側の席だったが、少々残念と言うべきか、片方の席は窓を背にするようになってしまう。

窓から外を一望できる側の席にはピッピとダンケルク。

窓を背にする側の席にはベルファストとセントルイスが座った。

 

 

私がテーブルを挟んで、独仏側に座るか英米側に座るかでまたもや第三次世界大戦が始まるところだったが、今回はピッピが英米側に譲歩したおかげで何とか助かった。

毎回毎回、そうであってくれれば尚助かるんだが。

譲り合いって大事だよ?

 

 

 

「ここのステーキはユニオン農務省が特別の認可を与えたビーフを使っているの。是非試してみて、指揮官くん!」

 

セントルイスが、チャイナドレスの時みたいな妖艶な笑みではなく、心の底から喜ぶかのような笑みを浮かべて横から私にメニュー表を渡した。

 

普段サキュバスか何かに近い雰囲気の女性にこんな純粋な笑顔をもたらすのだから、相当良い肉には違いない。

 

ピッピもダンケルクもベルファストもメニュー表を見て期待の色を浮かべている様子がありありと分かる。

 

 

会計は私が持とう。

 

ふと、考えついて、私は実行すると心に決めた。

 

普段からお世話してくれるし、あやしてくれるし、仕事もやってくれる。

だから何かお礼がしたい。

勿論、ここで食事を奢ったくらいで恩返しした気になるほど自惚れてはいない。

でも、悪いことでもないだろう?

 

 

皆が注文を決めて、私はウェイターを呼んだ。

ウェイターを呼んだつもりだったが、実際に来たのはウェイトレスだった。

そして、そのウェイトレスは…

 

 

「い、いらっしゃいませ、ご注文は……げっ!」

 

 

注文したいのはうさぎじゃない、ワシントン。

ただ、何を注文したいのか伝える前に、君が今ここで何をしているのかおじさんに教えてもらえるかな?

 

 

「ええっとぉ…バイトだよ、バイト!」

 

そんなに金銭的に困る事があるならおじさんに相談しなさいよ、貴女ついこの前来たばかりだし今日が初めての外出でしょうが何しとんねんトントントントンワシントンッ!?

 

 

「ち、違うんだ!指揮官!こ、これは」

 

なんだ、苦しゅうない、理由を申してみよ。

 

 

「これはッ、笑顔の練習なんだ!!!」

 

 

はい?

 

 

「あるKANSENから教えてもらってさ、『笑顔の練習がしたいなら接客系のバイトでもしてろにゃ』って。」

 

……そのKANSEN心当たりがあるぞ。

たぶん、口調的に、今頃は防波堤の上でメバルか何か狙ってるぞ。

 

 

……………

 

「ハックションッ!!…風邪かにゃあ?」

 

……………

 

 

 

「それでこの店に雇ってもらったんだ。どうだ、指揮官?ウェイトレスなアタシも可愛いだろ☆」

 

うん、可愛い可愛い(棒)。

それに良い笑顔だ。

 

「良い笑顔だと!?んにゃろ…じゃなかった、あ、ありがとうございますぅ」

 

 

…まあ、その調子で頑張ってくれ。

ところで、そろそろ注文しても良いかな?

 

「ああ、良いぜ!」

 

 

 

注文が終わって、料理が来るまでの間、マッマ達とは次に何処へ向かうか話し合った。

 

ダンケルクは最新のスイーツ、ベルファストはティーブティックと意見が分かれていたのだが、結局はティーブティックにカフェが併設されている事が分かり、更にはそのカフェにて最新スイーツが提供されていることも分かって話はまとまった。

 

一石二鳥だね。

 

後は他愛もないおしゃべりもして、冗談も飛ばし、ベルファストからテーブルマナーについて教えてもらいながらサーロインを待つ。

 

 

やがてはワシントンがサーロインやらリブやらを持ってきて、私達のテーブルに並べていく。

 

さあさあ、お待ちかねのステーキだ、食べようじゃないか。

ダンケルク、胡椒を取って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリンッ、という何かが割れたような音がして、直後に目の前のテーブルの白いクロスに赤い斑点が広がった。

 

あまりに唐突過ぎて、最初はウェイターか誰かがどこかに何かぶつけてソースか何かこぼしたのかと思った。

 

 

そんなに長い時間じゃなかった。

おそらく数秒だろう。

私は目の前のピッピとダンケルクを交互に見て、その目に驚きが映っていることを見て取った。

 

自分でも最初はよく分からなかったが、全身に張り巡らされた神経系が、徐々に何が起きているのか伝えつつある。

 

 

左側頭部、メガネのすぐ上が熱いというか痛いというか。

当初は猛烈な不快感、その後は段々と鋭い痛みに変わっていく。

 

私が左手を自らの側頭部に当てて、その手を自分の目で見て、真っ赤な液体に染まっているのを確認した時には、品の良いレストランが凄惨な状況に追い込まれていた。

 

 

嘘、だろ?

 

 

 

 

 

 

ダンケルクもピッピも目にも止まらぬ速さで動き出す。

どこに隠し持っていたのか到底わからない防弾盾を持ったダンケルクは私の背後に立ち、ピッピは私を抱え込んだ。

 

セントルイスはその大きな双丘の谷間からガバメントを2丁取り出し、窓の方向へ向けて早くも射撃を始めている。

 

ベルファストはいつのまにかトンプソンSMGを構えて、悲鳴を撒き散らしながら逃げる他の一般客の中から新たなる襲撃者が現れないか睨んでいた。

 

 

カウンターの方を見ればワシントンが重機関銃を抱えている。

警戒兵キットを発見。

 

「アタシの店にタマぶち込むタァいい度胸じゃねえええかァァァアアア!!!」

 

重機関銃の咆哮を聞きながら、私はピッピが素早く手当てしてくれているのを感じていた。

それでもしばらくはショックのせいかぼうっとしていて、ピッピママの声でやっと我に帰る。

ピッピの声は友軍誤射された時よりも焦っていた。

 

 

「坊や!?坊や!?聞こえてる!?すぐに脱出するわよ!!!」

 

 

 

 

 

 

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