バブールレーン   作:ペニーボイス

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タチャンカ

 ロンドン郊外

 幹線道路

 

 

 

 

 

 

 

 

 幸いな事に、現在ロイヤルには自己批判をしなければならないと言う法はないし、そういった法ができる気配もない。

 だから私は、自身がいかに変態チックな事をしていてもそれを許す事ができる。

 今私は、アイリスで撃破された後回収されて新しい車体に載せ替えられた人工知能『プリン』の運転する『鉄血29号』の後部座席でルイスマッマの腋の下の匂いを存分に味わっていた

 

 

 

 ママママだいちゅきでちゅぅ!

 

「まあ嬉しい!頑張ってあなたを産んだ甲斐があったわ♪」

 

 ママママ〜ルイチュママぁ〜

 

「坊や?最近セントルイスばかりにママり過ぎじゃないかしら?…ピッピママの腋の下、味わってみない?」

 

 わ〜い!ピッピママだいちゅきでちゅぅ!

 ママママ〜、ピッピママぁ!

 

「ちょっ!?ティルピッツ!?私のミニ・ルーを誘惑しないで!!」

 

「あら、誘惑したのはあなたの方でしょう!それにあなたがあんな無理やりな使い方をしたから、あの装置も壊れちゃったじゃない!」

 

「そのおかげでミニ・ルーはミニ☆ラッキー☆ルーに戻ったのよ!あなたなんて親鶏みたいにミニの事を抱えてただけでしょう!」

 

「うっ」

 

「…ほぉら、ミニ?私のスーパーラッキーゼリー、美味しいでちゅあかぁ?」

 

 

 ピッピママを論破したルイスママは、今度は白桃のゼリーを取り出して(どこからとはあえて言わない)私に食べさせる。

 その、あまぁいあまぁいゼリーを食べながら、私はピッピとルイスの両方のママの匂いをクンカクンカしていた

 まるで変態じゃん!←何を今更。

 

 

 もちろん、ママ達の匂いをクンカクンカしていたのには理由がある。

 こんな変態行為に走ったのは、いや、走らざるを得なかったのはチャパエフのせいだ。

 あの軽騎兵が自分の事を私のママだと言い出したもんだから、同じ北連出身の既ママであるアヴマッマとの喧嘩が始まった。

 2人とも私を引っ張ったり、抱き込んだり。

 あわや窒息というところで、私はどうにか逃げ出したが………

 

 

 

「こら!戻りなさいミーシャ!」

 

「私の事はママと認めてくれないの、サーシャ!?」

 

 誰がミハイルや誰がアレクサンドルや!

(本来ミーシャはミハイル、サーシャはアレクサンドルの愛称)

 ふざけんな!あんたらと一緒にいたら死んじまう!

 この手に今こそじゆゴファッ!!

 

 

 

 

 元のサイズに戻ったのはいいのだが、残念ながら"ママの匂い嗅いでないと死ぬ病気"はまるで治っていなかった。

 その後大慌てのルイスママに抱きつかれたおかげで吐血は治ったものの、赤ちゃんだった頃に比べて格別のダメージが残ったのである

 だがここでは終わらない。

 

 ルイスママのママママしい抱擁の後も尚、彼女から少しでも離れると…なんというか…ライフポイントが削られていく感覚に襲われた

 つまり、簡単な話、症状は悪化したのである。

 ヴェスタルさん曰く、「症状の再発が病状を悪化させたのかもしれません」らしい。

 

 

 とんでもねえなおい!

 

 と思ったのは束の間。

 次の瞬間には、あろうことかルイスマッマが私の顔面をあのクソクソクソクソエロい腋の下と一体化させやがった

「どんな絵面だよ」だって?

 想像しないほうがいい。

 おかげで吐血自体は収まって気分も良くなったものの、人間としての大切なナニカを失ってしまった気がする。

 すると今度は人間としての大切なナニカなんてどうでも良くなってママにオギャる事しか考えられなくなったのであります私は悪くない。

 

 

 

 さてさて。

 ママ2人にオギャりながらどこへ向かっているのかと言うと、旧ウィルソン鎮守府である。

 私は本日付けでその鎮守府と、そこで行われている研究開発の指揮をも取ることになっていた。

 他のママ達は海路旧ウィルソン鎮守府へ向かっていて、私が到着するまでの間に引き継ぎの準備を整える手筈だ。

 私の計画は順調で、このままいけば来週には完成の域に達するだろう。

 ママだけに…

 

 

 しかし、人生そんなに単純にはいかないものだ。

 

 

 鉄血29号に搭載された人工知能が、まるで音声だけで味覚を刺激するような甘ぁい声で警告を告げる。

 

 

『後方から2台のピックアップトラック!武装した人員を乗せているわ!』

 

「この期に及んで海賊団!?もぉっ!どれだけ諦めが悪いの!プリン、ミニ・ルーの威光を思い知らせてあげて!」

 

『言われなくても』

 

 

 鉄血29号のトランクが開き、中からはアップグレードされた武装…30mm機関砲の砲身が現れる。

 だが、その機関砲が榴弾を放ち、にべもなく敵の車両に命中させた時、私は信じられないものを見た。

 その敵車両は到底30mm榴弾では考えられない大爆発を起こし、周囲の車をも焔の中に包んだのだ。

 

 

カミカゼ仕様!?…クソ、なんて事!プリン!サンルーフを開けなさい!坊やはルイスにしっかり捕まってて!」

 

「あ〜↑私のミニ・ルー↑」

 

 いや、ルイスママ、そんな場合じゃ

 

『敵の車両増加!…くっ!私だけじゃ対処困難!』

 

「任せなさい、プリン!貴女は他のルートと脱出路の策定を!」

 

 

 ピッピママが座席の後ろからMG42を取り出して猛射を喰らわせる。

 私の両耳はルイスママのものすごく大きな双丘に挟まれていたものの、しかし独特の銃声をしっかり聞き取ることができた。

 だが、それでもピッピが焦っている様子が伺える。

 どうやら、敵の数は次々と増え続けているらしい。

 ルイスママの身体にしっかりとしがみついた私は彼女が冷や汗をかいているのをしっかりと感じ取ったし、ピッピママもプリンもいつもの余裕ある態度ではなくなっている。

 

 

 緊迫した状況が続く中、私は自然とホルスターに手を伸ばす。

 なんだってカミカゼチックな爆弾魔が、私目掛けて接近してくると言うのだから無理もない。

 だが、ルイスママは私がホルスターに収まるPPKを取り出す事を許してはくれなかった。

 彼女はにこやかな笑顔のまま、凄まじい力を用いて、私の手にロングマガジンのついたM1903"ハンマーレス"を握らせようとしてくる

 

 このタイミングでか?

 このタイミングでか、ルイスママ?

 そんなさあ、こんな非常事態に使用する拳銃とか拘ってる場合じゃないじゃん?

 

 しかしルイスママは執拗にその拳銃の使用を強いてくる。

 あまりの血気迫る様子に逆らえるはずもなく。

 私は仕方なくその銃を握った。

 

 

「ミニ?その"ハンマーレス"はフルオート仕様よ?反動には気をつけて。…プリン、サイドウィンドウを開けてくれない?」

 

『了解。せいぜい接近戦の準備をする事ね。連中は本気よ。』

 

 

 タイヤの鳴る音がして、私は今空いたばかりのサイドウィンドウの方を見る。

 顎髭の凄いピックアップトラックの運転手がこちらを見ながら、グイグイと距離を縮めていた。

 私は手に入れたばかりのマシンピストルを両手で保持し、ありったけの弾丸を叩き込む。

 ありがたいことに、銃の性能ゆえか弾丸が顎髭野郎に命中したらしい。

 ピックアップトラックは鉄血29号から離脱してから、大爆発を起こした。

 

 

「ひゅ〜!さすが私のミニ!」

 

 ルイスマッマ!

 こちらの援護に回せる部隊を呼んで

 

「もう呼んであるわ。そろそろ着く頃だと思うけど…」

 

「♪ああ、ロストフのタチャンカよ、俺たちの誇りよ。麗しのロストフ娘よ。タチャンカは四輪の車輪で駆け抜ける」

 

 

 

 唐突に北連軍歌が聴こえてきて、私は先程顎髭野郎の頭を吹き飛ばした方とは別の方のサイドウィンドウを見る。

 ()()()()()だ。

 あの、レイン●ー・●ックスに出てくるマシンガンナーではない。

 四輪の車輪を持つ古めかしい荷車に、これまた古めかしいマクシム重機関銃を1廷載せたタチャンカである。

 その荷車を引くのは馬ではなく、あるKANSENの艤装だったが、しかし、一頭で引くにはあまりにも颯爽としたスピードで駆けていた。

 北連軍歌を意気揚々と歌うのはその艤装の御者で、彼女は歌いながら、更には手綱も操りながら、ナガンリボルバーを取り出して後方から迫ってきた別のピックアップの運転席に射撃を命中させる。

 

 

騎兵隊参上!…ユニオン風に言うとこうなるのかしら。とにかく、助けに来たわよ、私のサーシャ♪」

 

おやおや。性懲りもなく母親宣言ですか。あなたは本当に可愛らしいですね、チャパチ。

 

「ヒィッ」

 

「さて、私のミーシャ♪残存は私とチャパチに任せてください!ミーシャはとにかく鎮守府へ!」

 

 わかった、ありがとうアヴママ、チャパママ。

 

「わっ♪サーシャがついにママって呼んで」

 

チャパチ?

 

「ヒィッ」

 

 

 

 北連ママ2人に敵残存の対処を任せた我々は、急いで目的地へと向かうことができる。

 アヴドルドとチャパチならきっと任せても大丈夫。

 だから私は次の課題に取り組まなければならない。

 

 

 ルイスマッマ!

 ダンケマッマとベルマッマに電話を!

 

「はい、ミニ・ルー」

 

 ありがとう。

 もしもし、ダンケ?ベル?そっちの準備は大丈夫?

 

『準備万端バッチコイよ、Mon chou。今すぐにでも出立できるわ!』

 

『詰め込みは完了です、ご主人様。出航を早める理由も考えております。襲撃されたのは寧ろ幸運だったかもしれません。理由付けがより容易になりました。』

 

『沿岸にはザラとポーラに…』

 

 ん?今なんて?

 何でポーラがいんのよ?

 

『………あの娘もchouの事を息子だって…』

 

 ま た か よ。

 ここに来てまた性懲りもなくママ増やすんじゃねえよ。

 …まぁいいや。

 

『とにかく、ザラとポーラには沿岸を見張らせているけど、今のところ異常はないそうよ。』

 

 分かった。

 そちらへ着き次第すぐに出航しよう。

 ビス叔母さんには連絡をつけておいてくれ。

 

『鉄血艦隊は既に待ち合わせ場所に展開しています。ご主人様、どうか気を抜かずにご無事で。』

 

 ありがとうベルマッマ。

 

 

 

 私の計画が成功すれば、ママ達はきっと安泰でいられるだろう。

 ビス叔母さんの憂いも、ママ達の安全保障も、そして人類とKANSENの"共存"も確約されると私は信じていた。

 だからこそ、私は"アレ"を確実にビス叔母さんの手に渡さねばならない。

 

 しかし、それにしても気になるのは海賊共の動きだ。

 何故このタイミングであんなやぶれかぶれもいいところな襲撃をしてきたのか。

 …もしかすると私の計画に感づいた?

 いいや、考えすぎだろう。

 ロルトシートとMI5はもう手を引いて静観の構えを見せている。

 今更海賊をけしかけたところで、ママ達に囲まれた私相手にできることなぞたかが知れているのだ。

 世界最強の財閥と諜報組織の所業には思えない。

 だとすると連中の目的は何だろうか?

 今のところ考えられるのは、連中の気が触れて()()()()()()()()()()U()K()()をやらかしたい気分になったといったところ。

 それ以外に考えられないし、思い当たる節もない。

 そんな考えに至るような現状に、彼らは追い込まれている。

 

 だが、私はどうしても不安を払拭しきれなかったし、そしてその不安は的中することとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの、カーリューさん…」

 

「………」

 

「旧ウィルソン鎮守府にいるセントルイスファミリア艦隊が出航準備に入りました…狙い通りに行っています。…犠牲となった彼らの」

 

「………ウザい

 

「えっ」

 

「ウザい、と言いました。思ってもいないことを善人ヅラして口にするのは、いい加減やめにしてはいかがでしょう?」

 

「………ご、ごめんなさい…」

 

「口を閉じていなさい。さもなくば黙らせます。」

 

 

 カーリューは威圧と殺気でユスティアを黙らせながらも、着々と出撃準備を進めていた。

 海賊の小娘なぞに構ってはいられない。

 彼女は崇高な使命を果たさんとした夫を貶め、殺した連中に復讐をしなければならないのだ。

 冷徹な頭脳は、彼女の復讐を成功させるための手順を万事心得ている。

 限られた手札の中から最良の戦果をもたらす術は、苦しくも輝かしい鎮守府時代に夫を支える上で身についていた。

 分析力や洞察力、敵の思考を、敵の視点に立って考える事もできる。

 それを教えてくれた夫は、もうこの世にいない。

 

 さあ、今度はこちらが教えてやろう。

 大切なモノを奪われる苦しみを。

 崇高な使命に泥を塗られる屈辱を。

 救い出そうとしたモノを、土足で踏みにじられ、蔑ろにされる怒りを。

 

 カーリューには分かる。

 敵が大切にしているモノも、崇高に思っている使命も、救い出そうとしているモノも。

 だが彼女はそのいずれをも台無しにしてやるつもりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




更新が遅れがちですいません許してください何もしないから(何もしないんかい
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