ロイヤル
「イラストリアスお姉ちゃん…ユニコーン、何だか変な気分」
「うふふふ♪安心していいのよ、ユニコーン♪私がしっかりと"手ほどき"して差し上げますわ♪」
エマニエ●っぽくて仕方のないイラストリアスが、ユニコーンを抱え、頬を紅潮させている。
抱えられているユニコーンも顔を真っ赤にして、何やら両腿をモジモジさせていた。
偶然その光景を側から見る事になったウォースパイトからすれば、この光景は戦慄モノだった。
「こほん」
「アッ、アッ、こ、これはウォースパイト様!?ご、ご機嫌麗しゅう…」
「…まったく、鉄血との緊張状態だというのに間の抜けたことをする。今派遣した艦隊への鉄血の対応如何で戦争が始まるのだぞ」
「も、申し訳ありません……それにしても、やはり鉄血は…」
「あぁ…恐らく、アズールレーンを離脱した事から考えても…」
「無駄な争いをどうして…」
悲しげな顔をするイラストリアス。
だがそれは、鉄血との戦争勃発だけに起因するモノではない。
エマニエ●の妨害は、彼女にとってそれほど悲しい出来事だった。
凍海戦域
フッドはビスマルクのチカラを目の当たりにして絶句する。
艤装の威力からして、鉄血公国はとうとう禁忌にまで手を出したようだ。
「この力!…やはりあなた達は『あの力』を!」
「勘付いたのか…オイゲン、この海域から離脱する。」
「えぇ〜戦局は有利なのに、どうして?」
「秘密兵器がバレた以上、こちらが不利になる。命令に従って!」
「仕方ないわねぇ…子猫ちゃん達、また今度ね?」
フッド達と急速に距離を置いていくビスマルク。
その様子を見たフッドは、悲しげな顔で、鉄血KANSEN達に呼びかける。
「どうして…あの盟約を…。アズールレーンから離脱したのですか?」
「『忠誠こそ我が名誉』…力があるものだけが人類を救えるのよ。私達はただ違う選択をしただけ。あなた達に理解されるとは思わないわ、私達の行動の是非は未来の者に託すよ。………宿敵よ、ヴァルハラでまた会おう。」
ビスマルクは捨て台詞と共に、ロイヤル艦隊からの離脱速度を上げていった。
しかし、ビスマルクは、離脱をしながらも、1人考えに耽っている。
その間にも、指揮官との無線交信を繰り返しながら。
『こちらラインハルト。ビス、ロイヤルとの接触は無事にこなせたか?』
「無線交信では暗号文を使うべきよ、ラインハルト。…まぁ、今回は傍受の心配もないでしょうけど。」
『あっ、すまない…俺もまだまだ未熟者のようだな。許してk…おうわっ!シュペー!?今ビスと交信中だ!抱きつくな!!」
(……まったく、何度同じ事を繰り返せばいいのやら。)
ビスマルクは呆れていたが、それは彼女の指揮官に対してのみではない。
"全ては元に戻った"のだ。
まだウィンスロップ少佐はKANSEN達をこき使っているし、北方連合の政情は安定していないし、ロルトシート家は大陸側の窓口を確保している。
だが、そうであるべきなのだ。
(前回は良いところまで行ったのだけれど。…まったく、"奴ら"は
ビスマルクはやるべき"使命"を果たした。
後のことは
今度はどんな結末を迎えるか、まるで想像もつかない。
だがスタート地点はもう過ぎ去った。
さあ、始めよう。
…………………………………
「ご飯よおおおおお!!
今日は目覚まし時計ではなく、リアル母上の怒声とも取れる声に叩き起こされる。
私はオフトゥンの誘惑……いや、正確にはオフトゥンじゃないけど、リアルに誘惑してくるんだなコレが……を何とか避けながらも、私はそこから抜け出した。
「坊やぁ〜…もう少し私で眠っていてもいいんじゃない?」
母上に怒られりゅ。
「…ああ、そうね。お義母様に心配をかけてしまってもいけないし。」
「ミニ〜!お義母さんがそろそろ起きなさいって…ちょっと、ティルピッツ?いつまでもミニを引き止めるのは卑怯よ!」
「卑怯でも何でも、私はやりたいことをやるわ!それがカノジョたる者の権利なら尚更ね!」
馬鹿でかい胸のせいで、エプロンの胸元のロゴが左右に引っ張られ過ぎているルイスが私をお越しにくる。
お前ら、カノジョっていう割には母上の呼び方がなっていなさ過ぎだろ。
なんでリアル母上と義理の血縁関係になる前提で物事進めてんの?
なんでもう「私はこの子のお嫁さん兼マッマ♡になったから」的な気分でいんの?
再転生(おかえり)を果たした私だが、戻ってきた世界は何もかもが元の世界とは違う。
なんたって、去年の夏頃に一夫多妻制を認める法案が可決されていたし、私が通う事になっていた男女共学校も名前と校章以外全く別物だ。
もしかすると私は未だにセイレーンの鏡面海域にいるのかも知れないとすら思う。
「ご飯だっつってんだろ、はよ起きてこんかいいいいいいいいい!!!!」
だっども下の階から聞こえて来るリアル母上の怒声を聞く限り、無事に元の世界に戻ったんだなぁという実感が湧いて来る。
私は軽くため息を吐いて、ピッピの上から起き上がった。
ピッピも一緒に起き上がり、ルイスと3人で、私室を出て、家の階段を降りていく。
「あら、おはようMon chou」
「ピッコリーノはコーヒーがいい?それとも紅茶?オレンジジュースにする?」
マイ・スイート・ホームの食卓には、既にダンケとザラがいて、私達の為の朝食を拵えてくれていた。
食卓には既に普段着のプリンツェフとチャパエフもいて、プリンツェフは新聞片手にコーヒーを啜り、チャパエフはコーヒーにジンか何かを加えている。
朝っぱらからアイリッシュ・コーヒーかよ。
「●●もダンケルクさんを見習ってくれるといいんだけどねェ。」
「このくらいお手伝いして当然よ♪chouのお義母さんのお役に立てて嬉しいわ♪」
「ほら見ぃ!アンタと全然違うでしょうが!」
んな朝から高血圧にならんでも…
父さん達は?
「朝っぱらから出かけよるよ!弟と妹は学校の部活じゃあ!アンタは部活の練習とかないんね!?」
「労働基準法を遵守しとるんじゃ」
「アンタら学生じゃろうが!!」
「いや、先生の」
「………なる。」
母上のとの漫才を繰り広げている間にも、ダンケとザラは使用済みの食器を洗って片付けてしまっていた。
私もピッピとルイスと共に食卓を囲み、目の前のクロックムッシュに噛りつく。
「ほいじゃあ、行ってくるけん。出かける時は鍵掛けるんよ?」
私がクロックムッシュを食べ終わるまでに、母上はパートの仕事に向かい、家にいるのは私とマッマ達だけになる。
いや、マッマじゃない。
今では、ママ達は一応カノジョという事になっている。
ホームステイの………。
戻ってきた世界での、ピッピ達の位置付けは、ホームステイの留学生というものだった。
ホームステイし過ぎてんだけどね。
そもそも留学生という割にはそれぞれのお国に戻る気がカケラもない。
ピッピに"ご両親も心配なさるでしょう、たまにはお国に帰りなはれ"と言ってみたら、「…いないの。……私達の両親は…もう…」とかめっさくさ涙目で言われた。
すっごい罪悪感。
ともかく、彼女達はママになるまでお国に帰るつもりもないらしいし、それまではカノジョでいる気らしい。
よって私はピッピやルイスやダンケやベルやザラetcの双丘であやされ続けることができる。
朝食を食べ終わった後に、早速ルイスママがママりにママる。
「はい、ミニ・ルー。お待ちかねのラッキー・ルーよ♪今日は土曜日だから、一日中ずぅっとラッキー・ルーできるわね♪」
「ちょっとルイス?お皿洗いが終わったら私もピッコリーノするんだから、それまでには譲ってよ?」
「焦らなくてもいいじゃない、ザラ」
「サーシャをあやしたいのはザラやあなただけじゃないの。」
「あやす時間は当配分されないとね。」
チャパエフやプリンツェフも、ザラと共にあやす時間を求めているらしい。
私としては思春期真っ只中にこんなデッカい母性の塊達に囲まれるのは、貞操の概念に差し支えさえあるような気がしている。
何か気分転換でもしないとな…。
あ、そうだ!
ね、ねえ、皆んなでお散歩に行かない?
「あ!いいわね、ミニ・ルー!私もまだこの辺は土地勘がないし…それじゃあ、ベル、アヴ、ポーラのお掃除が終わったら、皆んなでお散歩に行きましょう!」
ようやく長い冬が終わり、春の暖かさが外を支配している。
幸いな事にこちらの世界ではパンデミックは起きていないし、緊急事態宣言も出されていない。
だから私は、9人もいるママ達に囲まれながらも散歩を楽しむことができた。
川に沿って、堤防沿いを歩いていく。
アスファルト舗装された道路の両端には桜が植えてあり、春の到来を伝えるように満開を迎えていた。
『3番んんんんん、サードどどどどど、ワシントンんんんんんん』
河川敷では野球の試合が行われている。
その少々寂れたグラウンドでは、ワシントン率いる『D.C.フライホークス』とボーグ率いる『シアトル・タコマーズ』の対戦が行われていた。
応援が飛び交ってたりはしていない。
観戦者は大勢いるが、応援スタイルはメジャーリーグ方式だった。
「アタシが決めてやるぜ、この試合!ここまで勝ち上がって来るまでに、アタシ達に敗れてきた、他のチームの思いも……」
スパンッ!
「スリーストライク、バッターアウト!」
「んなぁ!!」
んなぁじゃねえよ、んなぁじゃ。
そんな少年野球漫画みたいな事やっとるからやろうが。
ワシントンはど真ん中の直球を見逃して三振し、ピッチャーであるボーグはまた一つ奪三振を奪う。
どうやら試合はシアトル・タコマーズに優勢らしい。
タコマーズとフライホークスの試合の脇では、天城さんが赤城さんや加賀さんと共にお花見をしている。
天城さんと赤城さんは着物姿だが、加賀さんはOLみたいな服を着て赤城さんに泣きついていた。
「ぎいでぐだざいよ姉ざまっ!あの馬鹿部長っだら、わだじのぎがぐをマトモに見でぐれないんでずっ!!」
「まあ、可哀想な加賀!わたしがそのクソ部長の元に行って"説得"してあげましょう!」
「おやめなさい、赤城。加賀、そんな無茶苦茶な企画では相手にされなくても無理はありません。もう少し現実味を帯びた提案を…」
酔い潰れる重桜三姉妹のそのまた向こうでは、酪農家スタイルの服装をするヘレナとホノルルが牛さんを連れて散歩させている。
そのうちにヘレナがこちらに気づき、手を振ってくれた。
私が手を振り返すと、牛さんも私に気づいてくれたようで、舌をベロベロとさせる。
いやぁ…まさか鎮守府丸ごとこちらに転生してくるとはなぁ。
そんな微笑ましい(?)光景の数々を眺めながら歩いていると、もう幾分か歩いたようで、目の前に海が見えてくる。
そう、いつか、ルイスママの胎内で見た、あの光景だ。
私はふと立ち止まり、ママ達のいる背後を振り返る。
こちらが何を思ったのか筒抜けのようで、ルイスママが一歩私の方へ進み出た。
私も私で、とても公衆の面前ではやるべきではない愚行に走る。
ルイスママの柔らかで大きな母性に顔を埋めたのだ。
すかさず、対抗心を燃やしたピッピママが私の後頭部を双丘で包み込む。
安心できる、香りと暖かさ。
春の陽光に包まれて、とてもいい気持ち。
あぁ…これこそが……
おおよそ2年間、この怪文書にお付き合い下さった方々、本当にありがとうございました。
今度ばかりは本当にこれで終わりにしたいと思います。
長い間、本当にありがとうございました。
…と、言いつつもマッマ達に"会いたく"なって何か書くかもしれません。
その際は別建てでオムニバスチックなモノを投稿したいと思うので、生暖かい目でご覧下されば幸いです。
本当にありがとうございました。
皆様もマッマと共にありますように。