「そろそろ、私をお腹の中に入れる習慣をやめてくれないか?」
土曜日の午前8時。
せっかくの休日の初っ端を台無しにされたその後で。
私はティルピッツにダンケルク、セントルイスにベルファスト、それにザラと一緒に住んでいるアパートのリビングで彼女達にそう切り出す。
ルイスの後、ザラに入り、その後はピッピ、ダンケ、そしてベルのお腹の中にぶち込まれた。
率直に言って唯一の救いはどうやってぶち込まれたかまでは覚えていないこと。
もしそれを覚えていたら、私は到底耐えられない。
しかしマッマ達の方は私の発言に早くも耐えられなくなったようで、ピッピは朝刊を開いたまま凍りつき、ルイスとベルは顔を見合わせ、ダンケとザラは朝食の盛大なパンケーキを持った皿を落っことす。
「そんな…坊や、私たちの事、嫌いになっちゃったの?」
「ピッピ、そういう話じゃないんだ。だが、その、こういう行為は…その、何というか色々と疲れる。」
ショックを受けたママン達の中で最も立ち直りの早かったのはルイスママ。
彼女の頭脳の明晰さと決断の早さには定評がある。
彼女は私の座るソファの近くまでくると、その隣に腰掛けた。
「ミニ・ルー…またその話ね。ミニ・ルーは私たちの人生の水平線を照らす、太陽の王子様なのよ?」
「…生命を支配する……そんな事をするのは…思い上がりを生むものだ。」
「支配なんかじゃないわ!私達は坊やとのより深い絆をめざしているのよ!?」
ピッピが一歩進み出て反論する。
私は面をくらったが、それでもキッパリと彼女達に告げた。
「これを読んで下さってる皆様もそうは思うまい!」
「……そんな…まだ通報されたわけじゃないのに………」
ダンケが悲しそうな顔をするが、こちとらそんな顔をする理由がわからない。
いやいやいや、ヤバいだろ普通に考えて。
人のことを母胎に押し込んでひり出すってそんなポンポンとやっていいもんじゃないからね?
そんなダンケの言葉を聞いて、ルイスがしんみりとした口調で語り出す。
「…うん………必ずしも強盗が悪いとは、キリスト様も言わなかったわ」
………おろ?
あれ?あれ、ちょっと待って、ルイス?
何か…おかしくない?
「ヘレナのLive2Dより、ミニ・ルーの回収に漕ぎ出すことが幸せの秩序じゃないかしら?」
「ち……秩序?」
「セイレーンだって!饅頭達のボートやロケットに合わせて回収中の設計図から余燼が飛び出して来る様は圧巻で、まるで自律戦闘なのよ、それは!私が総天然色のグレイゴーストや艦隊総ディエゴを許さないことくらい、北方連合じゃ常識なんだよッ!!」
「………………ル、ルイスママ?」
「………今こそ春節に向かって凱旋するわ!純欄たる大宝と包子は半仙戯を潜り、友好度を同じくする月餅と桂花陳酒は先鋒を司りなさい!秘伝冷却水を気にするPOWの輩は、ポケット戦艦の進む航路にさながら図鑑となって憚ることはないわ!思い知って!寮舎コインたちの心臓を!さぁ!このイベントこそ内なる嚮導艦が決めた遥かなる開発艦!…進んで!集って!私こそが、指揮官様!うっふふふふふふふ!」
♪胸にエナジー
ケミカルの泡立ち
ハイヤーや古タイヤや
血や肉の通りを行き〜
直後に全速力で駆け出し始めるルイスとそれを全速力で追いかけるベル。
ルイスがぶっ壊れた理由は一つしか見当たらない。
私が彼女のお腹の中に入ることを拒絶したからであろう。
その結果彼女は"アレがリバティー、ユートピアのパロディー"になってしまったのだ。
…………マジかよ、発狂しそうなのはこっちの方なんだが。
……………………………………………
「ごめんなさい、ミニ・ルー。取り乱してしまったわ。」
「ううううん、良いんだけどね、ルイスママン。…そこまでショック受けるような要求だったかな?」
「受けるような内容だったわよ!何を言ってるの、Mon chou!?」
アレ待って、ダンケの言いようからしてひょっとして私の信ずる常識の方がおかしいのか?
いやそんなわけはなかろう。
あのさ、君たちどうやってるのかは知らないけど、既に成人を(2度も)迎えた男を母体の中にテレポーテーションさせるって道義的な問題ありまくりだからね?
するっぽいね、でも私は改めないし改めるべきじゃないと思うんだ。
ただしこの理屈はもう既に彼女達に通用するレベルを超えてなさそうなので、別の切り口からも攻め込んでみる。
「なあ…あの………皆んな、少し落ち着いてほしい。私自身もキツいものはあるんだが…その……マッマ達だってキツいでしょう、こんなコト毎日やってたら。」
「いいえ」
「まったく」
「ミニのためなら何度だってできるわ♪」
「ご主人様…やはりお疲れのようですね。」
「1人で溜め込むのは良くないわ。」
何で君たちこういう時だけ全会一致なの?
明らかにキツいでしょうよ。
そこは認めましょうよ。
貴女方の神聖なるその母胎が包み込むには、成人男性はあまりに荷が重いのは明らかでしょうよ。
「でも…そうね、坊やが肉体的にキツいのなら、私たちも考えないといけないわ。」
ティルピッピが少しだけ目を充血させて鼻声でそう言った。
精神的にツラいのは気合いでどうにかさせて肉体的にキツいのは少々緩めてやろうって私は貴女様のペットか何かでしょうか?
その譲歩すら涙を禁じ得ないんですか?
もうちょいすんなりとこの世の法則を受け入れちゃくれませんかね、私はぜひそうして欲しい。
「致し方ありません。ご主人様を癒すために始めたこの習慣が、ご主人様の肉体的疲労を増してしまうならば改善する必要がございます。」
別に中止しても良いと思うよ、ベルベル。
「なら、こうしない?1人ずつ日替わりでピッコリーノをママポーテーションさせるの。」
ママポーテーションって何それ初めて聞いたわ。
いつのまにそんな慣用句作ってたの、貴女達。
なんだろう…さも一般常識かのように語るのやめてもらって良いですか?
「少し寂しいけど…仕方ないわね」
ダンケママン、それってあなたの感想ですよね?
私の感想も考慮してください。
「そうね。ミニ・ルーのためにも理性的に考えないと。」
こんなのを理性だと思ってるルイスママに驚いたんだよね。
「よし!そうと決まれば、まずは私から坊やを母胎で保護するわ!鉄血最新鋭戦艦ティルピッピ☆として当然の権利よね?」
「ちょっと!Mon chouにも決める権利があるはずよ!だから次のマッマは私」
「どの口で言ってるのかしら、ダンケルク?ミニ・ルーは既にセントルイス級軽巡洋艦の3番艦、ミニ・セントルイスとしての艦歴を始めているのよ!ここはラッキー・ルーが」
「皆さま!ご主人様はお疲れのはずです。ここはご主人様の忠実な従者たるベルファストの忠実なる母胎で優雅な羊水ティータイム」
「私のことも忘れないでもらえるかしら?サディアを代表するザラの母胎、ピッコリーノもきっと味わいたいはず!」
「クッ!坊やを巡るライバルが多すぎるわ!あなた達がいるのも考えものね!…仕方ない、ここは正々堂々勝負しましょう!」
「はい、Mon chou!まずアイリス代表やさやさあまあまダンケママのお腹の中でたっぷりあやしてあげるからね!」
「あ、あのさ。ダンケママ?」
「なぁに?」
「そもそも今日はもうマッマ達全員1人ずつ私を母胎の中に押し込んでる訳じゃんか?」
「ええ、そうだけど…きっとMon chouも、私のお腹の中でもう一度あやされて、癒されたいでしょう?」
「いや、あの…こういう風に言いたくはないけど、そのために死に物狂いのジャンケンで順番決めたんだし明日からでもウソウソウソウソゴメンゴメンゴメンゴメン泣かないで泣かないで泣かないで…ふはぁ…………わぁい!ダンケママのお腹の中楽しみだなぁ☆」
「うっふふふ!嬉しいわ、Mon chou!それじゃあママポーテーション第一日目担当、ダンケマッマの…アイリス式あやしんぐダンケをしっかりと楽しんでちょうだい♪」