「溢れ出る駄作感」
----------ジャン・パー(以下略
「姉さんに頼んで、送って貰ったわ。これで鎮守府の守りは強化される。」
鎮守府のメインストリートを行進するⅣ号戦車H型、Ⅴ号戦車G型、Ⅵ号戦車"ティーゲル"および"ケーニヒスティーゲル"の車列を見て、私はその場から逃げ出したくなった。
数えきれない戦車の後ろからは、シュタールヘルムのドイツヒヨコが列を組んで行進してくる。
更には8tハーフトラックに牽引される重砲、軽榴弾砲、"魔の四連装"、Flak36まであった。
ちょっと待って、ピッピ。
対空砲に続き行進するヒヨコSSのそのまた後ろに、とんでもない車両がいる。
なんというか、Ⅳ号戦車の車体を前後に延長したかのような見た目だが、車体の上に載っているモノがヤバ過ぎるのだ。
報復兵器"V2"。
弾道ミサイルの原点、ロンドンをパニックに陥れた張本人。
明らかなオーバーテクノロジーだろうとは思うが、それが戦車の車体によって自走化されている。
おいこら待てや。
こらあかんやろ。
誰が「我が鎮守府を世界で10番目の核保有国にせよ」とか言ったんや。
誰が「瀬戸際外交して参謀本部から色々引き出すで」とか言ったんや。
TEL(移動式発射台)の恐ろしさ分かってやってる?
発射するまで位置が分かんないってそれ一番迷惑極まりないし、対策打ちづらい事この上ないんだからね?
もう鎮守府の防衛強化とかそんなレベルじゃないよ。
もうこれで軍事侵攻できるよ、ラインラント進駐くらいならソツなくこなせそうだよ。
私に一体何をさせたいんだピッピ。
私室に戻った後、セントルイスが仕掛けた洗脳装置の数々を運び出し、ふぅ、やっと一息つけるぜと思ったら「坊や、ちょっと来てもらえるかしら。きっと喜ぶと思うわ」って言われてホイホイついてきた結果がこれかよ。
私は何をすれば良い?
こちとらジャージ上下にサンダルっていうラフラフな格好なんだけどさ。
あれか?
手でも叩けば良いか?
手でも振れば良いのか?
「鎮守府防衛軍全将兵諸君に栄光あれ!」とか貴重な音声記録でも残せば良いのか?
ピッピママ、いくらなんでもやり過ぎだよこれは。
そもそもV2とか予防戦争ヤル気満々じゃん。
この弾道ミサイルどこに向ける気なの?
ねえ、どこに向けるの?
「勿論、あのクソ野郎の鎮守府とウィンスロップ本家、それから海軍参謀本部と、統合参謀本部…ついでに、ロンドン、パリ、モスクワ、それにワシントン。」
ついで、じゃない。
それは、ついでとは言わない。
せめて、ほかのマッマ達にも少しは気を使ってそういう事言ってくださいよ。
すぐ後ろにダンケルク、ベルファスト、セントルイスが並んでんのよ?
何で内乱の種振りまくのよ。
「Mon chouの安全のためなら、それも止むなしね。」
おいこらダンケルク。
ドイツ軍司令官でさえパリの破壊を諦めたんだぞ、総統命令に背いてまでこの街助けたんだぞ、そう易々と明け渡すんじゃない!
「ええ、首都ならいくらでも作り直せます。」
流石イギリス人!
流石チャーチルを産んだ国!
立ち直りが早すぎるっつーか立ち直る前提で話を進めるな!
「D.Cがないなら、ニューヨークを使えばいいじゃない!」
そうだね、その為にインターネット作ったんだもんね。
でもインターネットの軍事的有用性を確かめる為にニュークリア・ウォーをやらかす気かお前は。
「安心して坊や。ちゃんとベルリンも狙わせるわ。いざとなったら道連れよ!」
ピッピ、全く安心できない。
つーか何で肯定してんの、何でこの前代未聞の暴挙に賛同してんの。
貴女方、自分の国の首都と30代のしょげたおっさんを同列に扱う気なんですか?
『世界を終わらせたのは1発の銃弾だった』って某ゲームのキャッチコピーを地でいくようなことしてんのに、なんで賛同できるんですか?
貴女達、明日フォール●ウトの世界にブチ込まれるのを防ぐか、このクソみたいなおっさんと過ごすかどっちが重要?って聞かれた時なんて答えんのよ。
「「「「勿論、『坊や。』『Mon chou』『ご主人様』『指揮官くん』」」」」
血の繋がった親子(物理)になってからというもの、マッマ四名の過保護は最早保護とは言えないほどダイナミックな、エレガントな、とても攻撃的な物になった。
昔読んだ記憶があるのだが、ある戦前日本を代表する作家の小説で、こういうのがあった。
初めて恋心を抱いた綺麗な娘が、やがては
誰かと結婚して子供を産む。
子供をあやす母親を見て、主人公は嫉妬するでもなく祝うでもなく、恐怖心を抱いた。
"この娘は母親になったのだ。古代ローマの時代から、母親は息子の為に手段を選ばない。その恐ろしい母親というものに、この娘はなってしまったのだ!"
はい、もうそのまんまです。
息子の為になら弾道ミサイル取り寄せる母親がここにいます。
パリのパティシエが使う小麦粉をインターネットで取り寄せられる時代に、わざわざ小麦を臼で挽く母親もいます。
自分こそ真の母親だと主張したいが為に、莫大な金をかけて息子の部屋を洗脳部屋にしたり、あるいは、4人の分身従えてローテーションしながらあやす隙を狙い続けてる母親もいます。
もう母性溢れて良いですね、とかそういう話じゃ済みません。
国の安全保障<自分の息子(物理)なんだからFG●で言うところの狂化かかっちゃった状態です。
遥か遠くのローレンス殿、間違っても次なる刺客とか寄越さないように。
さすがにあんただって嫌だろう?
「世界を滅ぼす戦争を始めた張本人」とか言われんのは。
まあ、でもあのアホタレにそんな事を知る諜報力なんて期待は出来んだろうから、流石にV2ミサイルにはお帰りいただいた。
ピッピ説得すんのどんだけ大変だったか。
「坊や!?どういうつもりなの!?もしあのローレンスがまた貴方を狙いに来たら?もし海軍が貴方を裏切ったら?もし貴方を排除する国連決議案が通ったら!?」
ピッピ、アホタレの方はともかく後ろの2つはV2持ってた方が危ない。
鎮守府に弾道ミサイル持ち込むようなド派手な事しなかったら海軍はふつうにこっちに居てくれると思うし、国連(?)は私の事など気にも留めない。
もうそれは心配じゃなくて被害妄想だよ。
ていうかね、元々ね。
ビスマルクお姉さんは何なの?
自ら動いて照準つけるPPKとか12.7mm弾防ぐ防弾スーツとかで充分驚きなんだけどさ、妹の電話一本で陸軍師団を送り込むってどんだけの影響力よ。
ココ・ヘク●ティアルかよ。
「優秀な私兵もボディガードとしてよこしてくれたわ。」
ピッピが筋骨隆々なヒヨコ達を紹介する。
「左から、私兵隊長のレー●、"爆弾魔"ワ●リ、近接戦が得意なバル●、元砲兵マ●、スナイパーの」
はい、ストップ、スタァァァップ。
著作権の侵害でしかない私兵団にもお帰りいただく。
いいかい、ピッピ、ビスマルクお姉さんも私兵がいないと大変じゃん?
ドバイの警察署出て(………一歩も…動けない…)とかなったらどうすんの?
ね、でしょ?丁重に見送ってあげて?
まあ、V2と私兵いなくなったところで陸軍師団がそのままいるんだけどさ。
どうすんのよ、これ。
既に勝手に鎮守府の外柵沿いに沿って開拓始めてんだけどさ。
既に勝手に陸軍の駐屯地作ろうとしてんだけどさ。
ため息をつく私の後ろに、いつのまにか1人の男が立っていた。
黒いスーツに、グラサンの白人。
ピッ●ブルではないが、見たことはある。
ジャガイモのコンテナにM16突っ込んでそうなおっさんだ。
「この世界には5億人の過保護な母親がいる。ざっと12人に1人の計算だ。問題は…残りの母親をどうやって過保護にするか。」
いや、もういいっすから。
そんなに過保護な母親はいないと思うし、これ以上増えても困るっすから。
てか、あんた誰?
ロード・オブ・アフォー?