バブールレーン   作:ペニーボイス

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前回三人称だったのに、いきなり一人称で書くことにしました。
許してください何でもしますから(何でもするとは言ってない)


Ⅰ章 赤ちゃん・ダモン 〜数奇な転生〜
バック・トゥ・ザ・アズールレーン


正直な話をしよう。

私は元々、今この文章を読んでくださっている貴方と同じ"そちら側"の住人だった。

 

それはそれはもう、輝かしい毎日を送っていたさ。

言うなれば、最下層から2番目くらいに輝いた生活(つまり全く輝いてない)だ。

 

 

仕事はすこぶる順調(に溜まっていた)!

上司からの評価は最高(に悪かった)!!

そして意識高い系の雑誌記事になりそうな交友関係(は築けなかった)!!!

 

そんな私にも時として(この場合の"時として"は"常に"を指す)、娯楽を必要とするわけで、私はある物に熱中していた。

 

 

 

『アズールレーン』

 

 

 

言うなれば、第二次大戦中の艦艇を美少女化したキャラクターを育成してキャッキャうふふするゲーム!

 

ゲーム自体も面白かったが、キャラクターが大好きだった。

特にお気に召したのはティルピッツ、ダンケルク、セントルイス、そしてベルファスト!

彼女達にあやしてもらいたいと何度考えた事か!

 

 

しかし、所詮は画面の中。

現実に健全な資本主義社会の一員である以上は働いて稼がねばならぬ。

 

そういうわけで、私はその日も朝起きて、髭を剃り、顔を洗い、朝食を食べて、ログインボーナスを受け取ってから車に乗った。

 

クッッッソど田舎に住んでいる私は、自らの働く職場までの長い山道を、まだ子ブッシュが大統領をやっていた時代に作られた古い軽自動車で通勤しなければならなかったのだ。

 

当然、山道ゆえにトンネルが腐るほどある。

 

その日も、その腐るほどあるトンネルをいつも通り通ったはずだった。

 

 

 

 

 

何もなかった。

 

 

 

あまりにテンプレート的な交通事故も、突然の心臓発作も。

天寿をまっとうするにもあと60年はかかりそうだし、身体の中に居るであろう病原体は私を苦しめるまでには増殖していない。

 

だが、それは起こった。

 

 

 

 

 

 

トンネルを抜けると、そこは鎮守府だった。

 

 

 

 

たしかに聞こえは良いかもしれないよ?

 

あら指揮官様ご機嫌よう新しい水着を新調いたしましたのどうでしょう似合ってますかあら本当嬉しいですわキャッキャウフフ的なサムシングを想像した方もいるかもしれないが、実際その立場にいれば大混乱を起こす事だろう。

 

事実、私はそうだったのだ。

 

 

とりあえず車を止めて、まず思ったのは「どこだここ?」

 

次に「道間違えたかな?」

 

そして「会社に遅れる、電話しないと」

 

最後に「通じねえッ、ファッ●!!」

 

 

周りを見れば港だし!

どうやったら山ん中のトンネルからいきなり海に出んのよ!

知らない内に行政が勝手に新しい道路作っちゃいましたえへへ的な何か?工事現場すら見てねえぞ!

 

そもそもバックミラーを見ればトンネルは消えてるし!

一体どっから来たんだ私はッ!!

バック・トゥ・ザ・フュー●ャーみたくなってんだろうがっ!!!

 

つーかさっきバックミラーを見て気づいたけど老けてね?

確か20代前半だったはずなのに30過ぎくらいまで老けてねえか?

車も子ブッシュ時代の軽から、おそらく父ブッシュ時代よりも古い型に変わってるし!

 

あ、体型は変わってなかった。

昔から低身長で小肥りしてたもん。

 

 

 

「おい、ここで何をしている?」

 

突如として咎めるような声がサイドウィンドウを通して聞こえる。

 

いや、何してるって見りゃわかんだろ道に迷ってんだよ今まで何度も何度もやってきた通勤を見事にしくじって一人嘆いてんだようるせえな!

 

そう思いながら声のした方を向き、私は凍りついた。

 

真っ白な軍服に抜群のスタイルを包み、少し短めの銀髪を風になびかせて、明るい蒼の瞳でこちらを見ている。

 

 

 

ティルピッツやん。

 

「あら、指揮官じゃない。どうしたの?」

 

 

ようやく事情が読めてきた。

いかん、これはいかんぞ。

上司から、つぎの寝坊はないぞとあれだけ言われてりゃクビもあり得る。

良い夢には違いないんだけど早く目を覚まさなきゃね。

おやこんなところに拳銃が。丁度いい。

えっと、リヴォルヴァーだし、撃鉄を起こして引き金を起こせば良いのかな?

夢の中とはいえ痛いのは嫌だから一瞬で目の覚める方法にしよう。

2003年の『スターリング●ラード』に出てた赤軍将校みたいに口に咥えるか。え?誰ってフルシチョフに「軍法会議は嫌だろう?」とか言われてトカレフ渡されたあの可哀想なおっさんだよ、はいあーん。

 

 

「指揮官!?何してるの!?」

 

 

まあ、おったまげたね。

 

白い拳がまずサイドウィンドウを粉砕して拳銃を掴んだかと思うと、それを文字通り『握りつぶして』投げ捨てて、私の胸ぐら掴んで

サイドウィンドウから引き摺りだされりゃ無理もないと分かって欲しい。

 

まあ、それはともかく、

 

 

痛ってええええええええええええ!!!

 

これ夢じゃないネ、断言できるアルよ。

夢でこんなに痛てえはずはないもん!

だって、小学生の時サメのパニック映画見た後に寝て夢の中でジョー●に襲われたけどこんな痛みなかったもん!

まず第一に胸ぐらを掴む力がモノホンだもん!

嘘じゃないもん!トト●いたもん!

 

 

「指揮官ッ!あなたいったいどうしたっていうの!?」

 

 

胸ぐらを掴まれたままティルピッツの、驚きと悲しみの入り混じった表情と向かいあうと、やっぱりこれ夢じゃないねという確信が湧く。

 

「ひょっとして…私達のせい?」

 

おや?何かとんでもない方向へ話が飛んで行った気がするぞ?

泣くな、泣くんじゃないティルピッツ 。

誤解を深めるんじゃない。

大丈夫だから、そんなんじゃないから。

ただちょっと会社に遅れるかもって慌てただけだから、ね?

ね?だからとりあえず私を降ろそうか。

私よりもよほど身長の高いティルピッツに胸ぐら掴まれて持ち上げられてると気管が悲鳴を上げそうなんだ。

まあ、上げようにも上がらないんだけどね。

ははははは。

 

 

「ティルピッツ !?どうしたのですか!?」

 

ティルピッツの後ろからとんでもなく大きなお胸のメイドさんが走ってきた。

 

ベルファストやん。

 

あの豊かな双丘の揺れを生で観れるとは…

ここはヴァルハラかな?

それとも私は聖戦士として殉教でもしたのかな?

77人の処女って実は艦娘のことだったのかな?

でもウチの家はムスリムじゃあなかったし、聖戦士になった記憶もないんだけどね。

 

「し、指揮官が自殺を図って…」

 

「そんなっ!ご主人様!?考え直してください!」

 

いやだから、誤解のような誤解じゃないような………ん?

 

私はオリエンタル急行殺人事件とかで死体を見つけた時にショックのあまり口元を両手を覆っている公爵夫人と同じ反応をしているベルファストの手を見やる。

 

ケッコン指輪。

 

よく見れば私の胸ぐらを掴むティルピッツ の指にもケッコン指輪。

 

これマイ・スウィート・鎮守府じゃね?

うん、絶対そうだ、間違いない。

ベルファストがウエディングじゃないのは、まだ戦闘に出すことが間々あるからあのドレスじゃ動き辛いんじゃないのって勝手に妄想ぐふふしながら設定してたから。

 

OMG!(オー・マイ・ゴッド!)

本当に転生したってことかよ!

最も、現在の状況は最悪だけどな!

 

やがてベルファストが若干の怒りを込めた表情で、ティルピッツに吊し上げられる形となっている私の方へ歩み寄ってきた。

 

「ご主人様、少しお話しなければならないようですね。」

 

はい、します。

 

 

 

 

 

30分後、私は指揮官執務室で正座していた。

 

目の前では同じように座るベルファストと、最早半泣きのティルピッツがいる。

泣いてるティルピッツも珍しくて可愛いなあ。

 

「ご主人様、もし何か悩み事や、私達にご不満な点があるのであれば…ご自身を傷つける前にご相談されても良いのではありませんか?」

 

「い、いや、あの、あれはね…」

 

「うっ、ぐすっ、話してくれない、と言うことはやはり私達に不満があるのだろう。えぐっ、ひぐっ、ごめんなさい、指揮官。言ってくれ、何でも直ずがらッ」

 

言えない。

とても夢かと思って拳銃自殺で目覚めようとしてたなんて…言えない…

そもそも言える雰囲気でもねえ…

 

だれか来てくれ。だれか助けてくれ。

あらまあ指揮官酷い冗談ね的な明るさでこの場をどうにかしてくれ。

 

 

その時、執務室の扉が開いた。

ティルピッツやベルファストに勝るとも劣らないスタイルに蒼い長髪。

Oh,Hello,St.Louise!綴り字違ったらごめんね。

 

 

「あらどうしたの、ティルピッツ ?あなたが泣くなんて」

 

「実はッ、ずびび、指揮官がッ、拳銃自殺を図ってッ」

 

「あらまあ、うふふ。」

 

セントルイスの笑顔を見て希望が湧いた!

 

そうだ、セントルイス!そのまま来い!

もうこの際、酷い冗談ね指揮官やってもいい事と悪い事があるのよいい加減にしなさい的なサムシングでも何でもいい!

 

この状況をどうにかしてくれ!

 

だが、セントルイスが膝つき、まるで司祭のように穏やかな声で話し始めた時、私の希望は音を立てて崩壊した。

 

「いい?指揮官君。生命っていうのはね…」

 

 

だから違うんだってばああああ!!!!!

 

 

 

 

 

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