バブールレーン   作:ペニーボイス

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「飛べるヒヨコなんざ見たことねえ。」

----------ジャン以下略


紅のヒヨコ

 

 

 

 

 

プリンツ・オイゲンの言いつけでは、私はペンを持つ事はおろか艦隊強化の為のアレコレを考えることさえ許されないと言われたが、日数決まってる以上そうもいかん。

 

マジで勘弁してください。

 

あと9日しかないじゃん、そんな言いつけ守ってたら、日中マッマ達にあやされながら決戦の時まで花びらの枚数数えるぐらいしかできないじゃん。

 

 

 

まあ、思いつく事と言えば認識覚醒を進めることぐらいしか思い当たらないし今から猛特訓でもしない限りはどうにもならんというか。

とはいえ、猛特訓を詰め込む気なんてさらさらないし。

もう自然体で行ってもらった方がむしろいいよ、それは。

 

 

既に認識覚醒MAXのピッピ、ベル、ルイスはともかく、ダンケルクはまだ第2段階だからMAX到達させたいところ。

 

でも無理をさせるのは避けるべき行為であり、本来であれば数週間前から段階的にやるべき事をサボっていたのは私の方なので、彼女には程々の…肩慣らしぐらいの緩やかなメニューでゆったり出来得る限りの強化を行ってもらう事にした。

 

 

それでもダンケルクにはショックだったようだ。

 

彼女はせっかく作ってくれたパンケーキを皿ごと落っことし、信じられないとでも言うような顔でこちらを見ている。

 

いや、本当にごめんね、今更強化とかって言われても困る

 

「そんな…Mon chouと一緒にいる時間が減るなんて……」

 

そっちか〜い。

あと、ピッピ、ベル、ルイスはドヤ顔すんのやめんか〜い。

 

「…………認められない!Mon chou!認められないわ!大体、今あなた考える事さえ禁じられているハズ!その命令は無効よ!」

 

 

そう来ますか。

命令が無効とか言っちゃいますか。

 

まあ、プリンツ・オイゲンの言葉を額面通り受け取るとそうなんだろうけどさ。

そんな事言ったら本当に決戦まで何も出来ないじゃん?

取り得る手段でできるだけの事を負担を最小限にしてやらせようと思ったら、やっぱ考えるしかないじゃん?

 

ダンケルク、頼むよぉ〜、君の開幕RPG大火力を強化できたらものすごく心強いんだよぉ〜。

 

 

「嫌なものはイィィィヤァァァアアア!!」

 

そうか、そこまで拒絶するのか…

 

 

「はぁぁぁ、仕方ないわね。ダンケルクには参謀役をやってもらってはどうかしら?」

 

おや、ピッピ。どうしたどうした。

ダンケルクに私を明け渡すのかい?

いや、自分で言うなっつー話なんだが、いっつもあんたら取り合いしてんじゃん。

 

「坊や、私だって可愛いあなたを抱えていたいわ。でも、クソ野郎を倒す為だもの。」

 

「…ご主人様、私もその案に賛成致します。私の煙幕があれば、きっとご主人様の選択肢も広がるハズ。」

 

「仕方ないわねぇ。ダンケルク、一つ貸しよぉ?」

 

 

おお、皆様本当にありがとうございます!!

束の間、ダンケルクは後ろめたいような顔をしていたが、やがて私を抱えて宣言する。

 

 

「みんな!私にMon chouを預けてくれてありがとう!責任を持ってしっかり補佐して、危険からは守るわ!」

 

 

 

 

マッマ達の団結と協力を中心に、まずは演習艦隊の構成から決まり始めてきた。

 

旗艦はピッピママ。

これは全員異議なし。

そしてピッピママの能力を最大限活かす為に、残りの後衛2名は空母を配置する事が決まった。

 

さあ、誰にしよう。

 

 

 

いつの間にか右手を挙げてセクシーポーズ決めてるシャ●ン・ストーンがいるけど、見なかったことにしたい。

おい、来んな、こっち来んな。

集中させて?ね?

魅惑のポージングで集中力削ってくるスタイルやめてもらえませんか?

『輝きの舞踏会』の悪用は法律で禁止されていますってCM知らないんですか?

 

 

「うふふ、指揮官様。私の『装甲空母』があれば、前衛艦隊を守れますわ。」

 

分かった、分かった、イラストリアス。

後衛の左翼は任せるから、右手を下ろしてフェロモン剥き出しの腋の下を閉じてくれ。

また変なフェチに目覚めそうになるじゃないかまったく!

 

さて、もう一人は…

 

 

「是非、この間の礼をさせてくれ、ボス」

 

おおっ、グラツェンとヒヨコパイロットさん達。

 

「ボスのお陰でミサにも行けたし、安息日も確保された。何か役に立ちたい。」

 

「卿はこいつらの名前をまだ知らないな。こいつはルーデル、こっちはハルトマン。両方とも優秀なパイロットだ。腕は保証する」

 

 

ん?ちょっと待って、今なんて言った?

 

「こいつはJu87パイロットのルーデル、こっちはBf109乗りのハルトマン。」

 

はい?

マジで?

 

もう、即採用。

"不死鳥"と"黒い悪魔"が揃い踏みしてんだよ?

そりゃあ、ピッピの右翼任せたくなるわ。

 

特にルーデルいたら何も怖かねえよ。

T34中戦車の大群来ても怖かねえよ。

ソ連海軍が誇る戦艦マラー相手でも怖かねえよ。

つーか戦艦沈める急降下爆撃機のパイロットヤバくない?

そもそもあんたら空軍じゃないの?

いつから海軍所属になったの?

なんでヒヨコになったの?

 

アレかな?

ある日飛行機で空飛んでたら積乱雲の中に入って行っちゃって、出てきた時にはヒヨコになってた…とか?

「飛ばねえヒヨコはただのヒヨコだ」とか?

 

あ、はい、ごめんなさい。

細かい事はもう言いません。

よろしくお願いします。

 

 

 

「前衛2人は私とルイスで決まりですね。もう一人はいかが致しますか、ご主人様。」

 

うーん、そうだなぁ〜。

誰にしよう。

色々と思い当たるKANSENがいるけど、前衛要員は割と多いので中々決められない。

本格的に悩み始めた時に、鋭い、攻めるような声が飛んできた。

 

「よっぽど死にたいの?指揮官。」

 

 

ゲェッ、関羽…じゃなかった、プリンツ・オイゲン。

 

額から脂汗が滴るのを感じる。

すっげえジワッつって湧いてきた。

いかん、見つかった。

こりゃあ叱られる。

たぶん、プリンツ・オイゲンのことだからネチネチと遠回しに痛いところを容赦なく串刺しにしながら怒られる。

長時間、長期間。

 

 

「ふふっ、冗談よ。ドキッとした?」

 

ほっ、冗談で良かったよ本当に。

 

「ふふっ、そう…ところで、私のスキル『破られぬ盾』があれば、ベルの煙幕と併せて効果的な防御が構築できるんじゃないかしら?」

 

ほほう、なるほど。

でも、あまり構ってあげられてないシカゴとかシュロップシャーとかも視野に入れたいんだよね。

あの子達も優秀だから。

 

「シカゴやシュロップシャーとも相談の上よ。あの娘達は指揮官との付き合いが長いから、ドクトリンもよく理解してたわ。その上で私のスキルを優先してくれた。」

 

 

そうか、シカゴ、シュロップシャー。

ケッコンしてたのにあまり関わってなかったけど、そんなところまで気を回してくれてたとは。

 

思い返せば、2人ともアズールレーンやり出した頃に来てくれた。

私のやり方を充分に理解しているから、プリンツ・オイゲンの背中を押してくれたのだ。

後で2人にはお礼をしないとね。

 

 

 

さて、艦隊の編成も決まったことだし、次は装備をぶへぁっ!?

 

 

プリンツ・オイゲンお前もか。

お前まで『挟む』を覚えたのか。

どこで、とは言わないが。

なにを、とは言わないが。

お前まで覚えてしまったのか。

 

 

「今日はここまで。まだあと9日もあるじゃない。慌てる必要はないはずよ?」

 

いやさあ、心の余裕的な何かを持ちたいじゃん?

だから早めに色々準備して、早めに安心したいと言うかね。

 

「坊や、気持ちは分からなくないけど、今日はプリンツ・オイゲンの言う通り、もう休むべきよ。本来は絶対安静にしておかないといけないのに。」

 

もうおっちゃん大丈夫だから。

そんなに心配しなくとも、今から格闘技やるわけじゃないんだから。

 

「いけません、ご主人様。休みましょう。」

 

いやだってまだ午後4じ

 

「死・ぬ・わ・よ?」

 

結構自分でも気に入ってるでしょ、それ。

とにかく、プリンツオイゲンが私を挟む力を強めたおかげで、呼吸困難が加速する。

 

はい、分かりました。

もうお休みしますので。

ですからどうか力を緩めてください、息ができなくて、このままじゃ永遠にお休みです…

 

 

 

 

10分後、私はベビーカーに乗せられていた。

ベビーカーに乗っていた。

本当にベビーカーだった。

 

ほら、あの、よく春の公園とかで見かけるお母さん達が使ってるあの標準的なベビーカーを大人サイズにしたものだった。

ピッピママによれば、鉄血の技術力の賜物らしい。

 

いや、技術力ってさ。

なんでドイツ人っていつもそうなんだよ。

第一次大戦ん時、戦車に対抗するために主力小銃を設計そのまんまに大口径化した対戦車兵器作ったりとかさあ。

おっさんをベビーカーに乗せられなかったら、普通は「ベビーカーに成人男性を乗せるべきではない」って方向に話が進むはずなんだけどさあ。

なんだって貴女達は「成人男性を乗せられるベビーカーを開発する」って方向に話進めんのよ。

何でもかんでも技術力で何とかしようとするし、何とかするから恐ろしいんだけどね。

 

 

それにしても、もう、絵面がヤバすぎる。

 

向こうにいるロングアイランドがこっちガン見してるもん。

明らかに信じられねえって顔してるもん。

 

「…子羊が第二の封印を解いた時、第ニの獣が現れた。私は見た。それは…赤い馬だった…」

 

 

おや、何か変なスイッチが入ってないかい?

もう何となく分かったけど、バトル●ィールドには飽きてファーク●イ5をやり出したんだろう。

今にも「私はあなた達の父、あなた達は私の息子だ」とか言い出しそうな雰囲気諸に出してるもん。

そろそろ「収穫」でも始めるんじゃないか、あいつ。

 

 

 

ファー●ーと化したロングアイランドにガン見されながらも、私たちは私室にたどり着いた。

 

私はようやくベビーカーから降ろされて、テレビの前に座らされた。

スイッチを入れると、スピーカーからはモーツァルトが流れ、画面にはオモチャやら人形やらがクルクル回ったり走り回ったりする映像が流れる。

 

いや、これさあ。

よく通販とかで売ってる「観ると将来頭が良くなる」系ビデオじゃん。

 

どうやら私は、息子どころかガチの赤ん坊として認識され始めているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府の娯楽室では、2人のKANSENがかなり小型のカメラで内部の様子を記録していた。

 

2人とも自分達が何をしているのかは良く分かっている。

施設の写真をなぜ取るのか、写真が何に使われるのかも。

 

それは自らの良心に従ったものとは到底言えないし、むしろ唾棄されるべきものとなるはずだ。

 

しかし、2人に選択肢はない。

 

この写真は裏切りの象徴として捉えられる事になるかもしれないが、それでもやらなければならない理由があるのだ。

 

2人は娯楽室での写真を撮り終えると、次の目標へと向かった。

 

それは食堂だった。

 

 

 

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