バブールレーン   作:ペニーボイス

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「政治家、マフィア、警察組んだら最強つーのはわかるが、お前が入る要素があるのか?」


----------ジャン以下略


ホワイト・スキャンダル

 

 

 

 

保護していた2人のKANSENが置手紙を残して消息を絶ったことを知らされたのは、ピッピママの上で目を覚ました翌朝の事だった。

 

もう、ピッピママの上で目を覚ました事の理由については述べなくていいよね?

 

 

 

いつもならピッピママの隣で敷きダンケしているはずのダンケルクが、まるでス●ラーのゾンビみたいな真っ青な顔でこちらへやってくる。

 

手には朝刊が二紙。

嫌な予感しかしないぞぉ。

現役秘書艦が顔を真っ青にして、公に流通している新聞を持ってくるという時点で良いニュースではないだろうということは間違いないのだが。

 

 

「Mon chou!これを!」

 

新聞にはご丁寧に付箋紙が貼ってある。

私はその新聞を手に取って、気は進まなかったが付箋紙のあるページを開く。

 

 

『マッコール鎮守府、予算を激しく浪費』

 

『娯楽室にはマッサージチェア、ビリアード、ワインセラー、ホームシアターまで』

 

『鎮守府内で牛を飼育。敷地の不正流用か』

 

『食事は一流、出撃率は三流』

 

『我が国の財政の逼迫にも関わらず、国民の血税を浪費。使用予算はウィンスロップ子爵の5倍。割に合わぬ戦果。』

 

 

 

は?

 

何だこれは。

この鎮守府に報道を招き入れた覚えはないし、新聞の取材を受けたわけでもない。

だが、この朝刊には明らかに私の鎮守府にある娯楽室(寮舎とは別にコミュニケーションの場として設けていた)の写真が掲載されている。

 

食事の写真もたしかに私の鎮守府で提供されているもので、牛を飼いならすヘレナは多分この国中でも私の鎮守府ぐらいにしかいないだろう。

一体いつの間に撮りやがったんだ?

 

 

「こ、これを。あの2人組は行方不明…鎮守府内にはいないわ。」

 

ダンケルクから渡された置手紙。

かなりの達筆で書かれたその手紙には、私の名前と、差出人…高雄の名前が。

私は手紙を読む事にした。

 

 

 

"すまない。本当にすまない。これは裏切りであり、背信であり、武人としても、KANSENとしても、到底、許される事ではない。

 

マッコール殿を恨んだ覚えはない。むしろ感謝してもしきれないほどの恩がある。それを拙者の…あまりに身勝手な………本当にすまない。

 

拙者と赤城には、向こうに置いてきてしまった者がいる。放っては置けぬ。

指揮官殿は拙者達に憤慨していたが、この条件と共に帰還を許された。分かって欲しい、向こうの者をあのままにはして置けぬのだ。

 

身勝手だ。あまりにも身勝手だ!!許して欲しいなどと言うつもりはない。

…もし、マッコール殿が追い詰められたのならば…この手紙を公表して欲しい。

拙者達の事を考える必要はない。

拙者は最悪、向こうに置いてきた者に再び会い見えればそれで良いし、それは赤城も同じだ。

 

署名もしておく。

 

『拙者、サー・ローレンス・ウィンスロップ子爵指揮官指揮下の重巡・高雄は同所属KANSEN赤城と共に、マッコール指揮官鎮守府内で意図的に無許可で写真を撮影し、その名声を貶める事を充分に認識しながらサー・ローレンス指揮官に写真を渡した。尚、当方の見解ではマッコール指揮官鎮守府の予算編成及び支出は全くもって妥当だと判断することを認める』

 

(以下、高雄と赤城の署名と血判)

 

 

本当に、本当にすまない。

そしてありがとう。"

 

 

 

 

やりやがった…あのド畜生やりやがったな!!!

 

私は怒りのあまり怒鳴ってしまい、まだ目を覚ましたばかりのピッピを驚かせてしまった。

 

 

「坊や!坊や!落ち着いて!」

 

ピッピが必死に私を抱き抱えて落ち着かせる。

そのおかげで幾分かは冷静になった。

 

「手紙を公表しましょう。直ぐにでも。Mon chouが泥を被る事はないわ。」

 

いつもはセイロンを持ってきてくれるベルファストが、今日はルイボスを運んできてくれた。

私はそれを一口飲み、荒くなった呼吸を幾ばくか整えてから、ダンケルクの提案に首を振る。

公表したくは、ない。

 

 

「どうして!?こんな事をされたのに!?どうかしちゃったの、Mon chou!?」

 

ダンケルクが半泣きになっているのも珍しいが、それ以上に彼女達からしてみれば私の判断のほうが珍しい…と言うより奇妙なのだろう。

 

全員が目をまん丸にして、イカれたヤク中を見るかのような目で私を見つめている。

ピッピも、ダンケも、ベルも、それから天井から私を見つめているセントルイスも。

やあ、ルイス。

 

 

「失礼ながら、どういう事態が分かっていらっしゃるのですか、ご主人様!いくら地方紙とはいえ、このような記事を書かれれば、ご主人様の名誉は著しく傷つけられます!」

 

分かってる、分かってるが公表するわけにはいかん。

 

「どうしてなの!?指揮官くん!?高雄と赤城も覚悟の上だったはずよ!?卑劣な事をしてる自覚があったからこそ、こんな署名を残したハズ!遠慮する事はないじゃない!」

 

そうかもしれないが、私にはできない。

悪いのはあのクソッタレ貴族擬きであって、高雄と赤城じゃない!

 

 

高雄はまさに誇り高い武人といったイメージを受けるが、その誇り高い武人でも私に戸惑って欲しいと少しは思っていたに違いない。

 

でなければ、『もし、追い詰められたのならば』とは書かないはずだ。

何の心配もいらないなら、本当に…たぶん愛宕に再開するだけで良いなら、『迷わずに公表して欲しい』と書く。

 

想像になるが、おそらくこれは高雄が元の鎮守府に未練を持っているからだけではない。

誇り高い武人をも恐怖させ、引け腰にさせるほどの行いを、あのサー・ローレンス閣下がやらかしているに違いない。

 

 

「よく考えて、坊や。この手紙が公表されれば、海軍参謀本部もさすがに調査できるはずよ。そうすれば、いずれはクソ野朗の鎮守府にいるKANSEN達も解放される」

 

それはある。

それが一番賢明な策となるだろう。

 

こんな手紙が公表されれば、ウィンスロップ家もローレンスを見捨てざるを得ない。

総督もピッ●ブルも動きやすくなる。

 

例えウィンスロップシンパのMPが捜査を渋ったとはしても、いずれは真実が明るみになる。

驚くほどの低賃金と最貧国並みの福利厚生でKANSENをまるで奴隷のように扱ってきた事が公になるはずだ。

 

ただ、高雄と赤城はどうなるだろうか。

 

MPが捜査を渋る時間は、MP内部のウィンスロップシンパが高雄の裏切りをローレンスに伝え、怒り狂ったローレンスが彼女を無惨なやり方で始末するまでの時間を与えることだろう。

 

 

 

非常に、いや異常なまでの自分自身の甘さに私はヤキモキしていた。

 

私は指揮下のKANSENを誤射され、にも関わらず保護をし、手当を行わせ、食事を提供し、休暇を与えて、彼女達の望む物にはできるだけの努力をした。

決して…自惚れていたとかそんなのじゃないはずだ。

一時的とはいえ、解放された彼女達にできうる事をして与えうるものを与えたのだ。

 

しかし、彼女達は裏切った。

私が困難に直面するであろう事を充分に認識した上で、尚、裏切ったのだ。

 

だが、どういうわけか私には、彼女達を切り捨てるような決断が出来そうもない。

 

あの2人を切り捨てるだけで、私の名誉は保たれ、参謀本部は演習を待たずしてローレンスを排除し、ブラック鎮守府にいる全てのKANSENが解放される。

 

非常に優位な状況に持ち込める事は、確実だろう。

 

それにも関わらず、である。

 

 

 

「……Mon chou、今すぐにそれを渡しなさい…」

 

ふと声がして、私は顔を上げる。

 

凍りついた。

 

瞳に涙を浮かべるダンケルクが、マニューリン1873型リヴォルバーの大口径な銃口を私には向けているのだ。

 

 

「ダンケルク!?どういうつもり!?」

 

「こんなの耐えられないの、ティルピッツ!!!こんなの間違ってるッ!!!Mon chou、あなたが公表しないなら、私が公表する!!!2度は言わないわよ!今すぐにその手紙を渡しなさい!!!」

 

2度言っとるやないか〜い、と思ってしまった私は今年度全人類代表クラスのKY野朗だろう。

 

ダンケルクの気持ちは分かる。本当に心配してくれている。

よく見れば、マニューリンのリヴォルバーには弾丸が装填されていない。

もし、彼女が私ではなく、自分自身にも降りかかるかもしれない火の粉の方を怖れているのならば間違いなく実包が装填されているはずなのだ。

 

 

ごめん、ダンケルク。

この手紙は渡せない。

 

「本当に撃つわよ!脅しじゃないんだからね!!」

 

それでもできないんだ。

 

「もう知らないッ!!!」

 

チャキンッ

 

リヴォルバーのハンマーが空を叩いて、寂しい音を響かせる。

ダンケルクは泣き崩れ、リヴォルバーは床に落とされた。

 

「何故なの、Mon chou、どうしてぇ?」

 

むせび泣くダンケルク相手に、どういう言葉をかけるべきなのか、私には分からない。

とにかく、ありがとうとお礼を繰り返すだけしかできなかった。

本当に良いKANSEN達に恵まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『大手じゃなくて、地方紙で済んだ理由は何だと思う?』

 

電話越しとはいえ、ピッ●ブルの対応は視察の時とは全く異なる印象を私に与えた。

 

 

わかりません。想像さえつきませんよ。

 

『珍しい事でも何でもないからだ。残念ながら、当海軍では横領や職権濫用が後を絶たない。…君のところが横領をしていると言いたいわけじゃない。あの写真を見る限り、KANSENの為に随分と自腹を切ったようだが。』

 

ええ、まあ。たしかに痛い出費でしたが、買った甲斐はありました。

横領じゃない、と何故確信を?

 

『別に確信まで持ったわけじゃないが、横領ならマッサージチェアを5台も買わんだろ。

ワインセラーなら誰にも見られない秘密の地下室に作るし、ホームシアターは私室に設置する。』

 

ああ、なるほど。

 

『君の給料なら頑張れば買えるってとこだしな。独身貴族だし。…ともかく、そんな少し考えれば分かるような事でもネタのない地方紙は大騒ぎするんだ。大手の新聞社の方には根回しを済ませておいたし、私も記者会見を開く。』

 

すいません、お手数をかけさせてしまって。

本当にありがとうございます。

 

『高くつくぞ?冗談だ。まあ、新聞社は抑え込めても人の頭の中までは抑えられん。ローレンスの目的は地ならしだ。…まだ聞いてないだろうが、例の演習は公開演習になる。』

 

ええええええっ!?

 

『この記事で、観客となる一般人の何割かは色眼鏡で君を見るだろう。残念だが、それはどうにもならない。幸運を祈る、としか言えんな。…おっと、何事だ?……これは…おい、テレビを見たまえ。君が羨ましい。』

 

 

電話は切れた。

羨ましい?こんな状況なのに?

もうアウェイ感満載の会場に放り込まれる事が決まっているのに?

 

とりあえず、言われた通りにテレビをつけた。

 

 

 

海軍軍人が映っていた。

それも私の所属する海軍とは異なる。

鉄血公国の軍人だった。

 

そして、私はピッ●ブルの「羨ましい」の意味を知る事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 






ノースカロライナキタァァァアアア↑↑↑↑
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