バブールレーン   作:ペニーボイス

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「全てのプロレタリアート文学に謝れ」

----------ジャ以下略


怒りの砂糖

『KANSEN協定』

 

と、いう物があるらしい。

KANSENが特別な力を持つが故に、ユニオン、ロイヤル、鉄血、そして重桜間で結ばれた彼女達の取り扱いについての協定だ。

 

以下はその内の一文である。

 

"指揮官はKANSENが鎮守府に配属される時、その出自が他勢力の物であっても、他の自勢力圏出身のKANSENと同等に扱われなければならない。もし、成されていない事が明白に確認された場合、そのKANSENの出自国は、当事国及び当該指揮官に対し、勧告、戒告、KANSENの送還並びに損害賠償を請求できるものとする"

 

 

つまり、例えば私がピッピママだけを邪険に扱った場合、私は鉄血公国から仲裁所を通してまず勧告を受け、次に戒告を言い渡され、やがてはピッピママを国に返して莫大な賠償金を払わなければならなくなる。

 

この協定はアズールレーン創設時に作られたものだが、大国が袂を分けてなお、その効力は発揮されているようだ。

 

理由は簡単。

 

アズールレーンとレッドアクシズが対立した時、それぞれの勢力の鎮守府にはお互いのKANSENが既にその一員として溶け込んでしまっていたからだ。

 

指揮官とケッコンしていたり、或いは信条によって、KANSENは例え配属されている鎮守府が出身国の交戦国であっても、その鎮守府への残留を望む場合が多々あった。

 

さらにいえば強制帰還という手段は、どちらの勢力にとっても都合が悪かった。

どちらの勢力も対立勢力出身のKANSENを主力に用いている鎮守府が少なくなかったのだ。

 

どちらにせよ、交戦相手に自国のKANSENがいる以上、保護に理由付けが成されていなければならない。

言うなればKANSENのジュネーブ条約と言ったところか。

ただ、第二次大戦時のそれよりは確実に守られているし、外交的な材料にもされている。

 

 

 

テレビに映る鉄血海軍軍人は、普段アズールレーン側の些細なKANSEN協定義務違反(?)を大げさに取り上げてdisる事をその職務としていた。

つまり、スポークスマンだ。

私も今日初めて見たわけではない。

大抵、昼食をピッピママに食べさせられている時ニュースを見ると映っている。

 

「ロイヤルのなんとか鎮守府のケーニヒスベルクが無断外出をして受けた罰則に抗議する」

 

とか

 

「ユニオンのなんとか鎮守府でアドミラル・シュペーが下着を失くした事に抗議する」

 

とか

 

「先週なんとか鎮守府のデザートが適切に発注されておらず、カールスルーエがプディングを食べ損なったことに抗議する」

 

とか。

 

 

まあ、ユニオンやロイヤルにも似たような内容の抗議文を、アフマディネジャドかお前はってくらいの勢いで吐き出してる広報担当の軍人がいるから何も言えないのだが。

 

 

ただ、今日は単に「抗議する」と言うだけの内容ではなかった。

見るからに気難しそうな鉄血軍人の手には、ある地方紙が握られている。

彼はその新聞のある一面を開いて、カメラに示した。

 

 

「これは今朝、ロイヤルの一地方で発刊された新聞である。この新聞によると、ある指揮官が莫大な予算を使って娯楽設備の拡充や敷地の不正使用を行なっているようである。」

 

 

『それでは今日のお天気です。まず関東圏を中心に強い雨雲が』とか天気予報してそうなお姉さんの声で同時通訳されている鉄血軍人

の声明を聞いて、私は血の気が引くのを感じる。

 

いや、何が羨ましいねんや。

 

皮肉か?ひょっとして皮肉だったのか?

 

ただの一地方の新聞記事が、今では国際問題になりかけている事に私は絶望した。

 

「この指揮官は私利私欲の為に我が国のKANSENに使われるべき財源を流用している」とでも言われるんじゃなかろうか。

 

そうなれば終わりだ。

マッマ達は全員国に帰るか、ほかの鎮守府に移動させられる。

私はお払い箱。

演習どころか自己弁護をする暇さえなく、私は叩き出される。

あとはローレンスが笑い、マッマ達の誰かを引き取って手にかけるかもしれない。

 

 

幸いな事に、鉄血軍人が訴えたかった方向は、私が考えていた方向とは随分とベクトルが違った。

それはむしろ追い風だった。

 

 

「このような設備投資は、我が国の基準においては"通常"である。いや、通常以下とも取れる。我々は、これしきの設備投資が浪費と捉えられている時点で、ロイヤルにおける鉄血KANSENの取り扱いに疑いの目を向けざるを得ない。」

 

へ?

 

鉄血軍人は画面から消え、今度は場面が変わって、ユニオン海軍軍人が会見を行っていた。

 

「同盟国として、異常であると感想を述べたい。KANSENに対する設備はそれ相応の予算が伴ってしかるべきものであり、ユニオンの基準からしても当該鎮守府の違法性は全くもって皆無である。むしろ、5分の1の予算で組んでいる鎮守府に調査隊を派遣したい。」

 

また場面が変わり、続いてヴィシア・アイリスの代表がコメントを求められている。

こちらは前の2人とは違って、斜めに構えたアフマディネジャドという感じだった。

 

「ロイヤルには100の宗教があるのに、1つのソースしかない。娯楽という物を知らないのだろうか。そんな国に我が国のKANSENがいるのかと思うと涙が止まらない。」

 

という割には皮肉を込めた笑みを浮かべてるんですが。

 

ニュースキャスターが映し出された。

 

「一地方紙に記事に国際的な非難が浴びせられている、これは前代未聞の事態です。アズールレーン、レッドアクシズの陣営を問わずロイヤルにおけるKANSENの取り扱いが疑問視されており、この事態に対してロイヤル統合参謀本部議長は次のようにコメントしました。」

 

ウィ●ターズ総督が、E中隊を率いてブレクール砲塁を破壊した時よりも汗だくになっていた。

相当急にコメントを求められたに違いない。

 

「地方紙に取り上げられた鎮守府に、横領及び職権濫用の形跡は認められません。我々ロイヤルとしては、名誉を深く傷つけられた形となりました。デタラメな記事を書いた地方紙に、私は厳重な抗議をします。」

 

再びニュースキャスター。

 

「地方紙は今のところ、記事の出どころを明らかにしていません。海軍側は調査チームを派遣し、場合によっては名誉毀損の訴えを………」

 

 

 

 

とりあえず、良かった、のかな?

 

私の鎮守府の運用はどうやら国際的に見ても標準クラスと見られたらしい。

それは本当によかったんだが。

てか、薄々勘付いてたけど、私はロイヤル海軍軍人だったんだね。

 

それにしてもおかしいな。

普通、こんな一地方紙を鉄血やユニオン、ましてやヴィシア・アイリスのお偉方が読むだろうか?

私がこの記事に出会ってから、まだ4時間も経っていない。

あまりにも早すぎる。

 

 

う〜ん、何かおかおっとマッマさん達、いつから後ろに並んでたのよビックリするじゃないまったくもう。

 

あれ、怒ってます?

えいえい!怒った?

 

「勿論。」

 

「怒ってますよ」

 

「当然でしょ、指揮官くん。」

 

ピッピ、ベル、ルイスがにこやかな表情を浮かべつつも怒っている事を肯定した。

ごめんなさい、ポプ●ピピックやってる場合じゃなかったね。

ていうかダンケは?

 

 

「ご主人様、まずはティルピッツにお礼を。」

 

「彼女のお姉さんがいなかったら、指揮官くん本当に危なかったんだからね。」

 

 

も、申し訳ありません。

ひ、一つお伺いしたいんですがぁ、ビスマルクお姉さんが働きかけてくれたんですか?

 

 

「ええ。大きな山火事は、より大きな爆発で消すのよ。姉さんが電話を何本かかけて世界中を"爆発"させてくれたわ。」

 

プラ●ス大尉かぁ。

てか、ビスマルクさんどんだけ。

謎の女に輪をかけて謎なんですがそれは。

 

ま、まあ、ともかく、ご心配おかけして申し訳ありませんでしたぁぁぁあああ!!

 

 

「私は許しましょう、坊や。だが、ダンケが許すかな?」

 

あ、そうだ、ダンケは?

 

「あっちの部屋よ。」

 

「ご主人様、これは貴方にしかできません。くれぐれもっ!よろしくお願いします。」

 

 

は、はぃぃぃ。

 

 

 

 

 

 

ダンケルクは私の指揮官執務室の隣の部屋にいた。

その部屋はセーフティールーム兼仮眠室で、この鎮守府が非常事態に襲われた時以外は機能しない。

 

その部屋のシングルベッドの上で、ダンケルクは何故か『夏のスュクレ』を着てドーナツを貪り食べていた。

 

 

いや何故に?何故に期間限定衣装に着替えた?

いや、今はそんな事を気にしてられない!

彼女に謝らないと。

 

 

あ、あのぉ、ダンケルクさん、先程は大変申し訳なく…

 

「別に!Mon cho指揮官は私なんかより重桜の2人の方が大事なんでしょ!」

 

 

うわあああ、どうしよ、ものすごく可愛い。

 

怒ってて、わざと親近感を覚えさせないためにも『指揮官』って呼び名使うつもりだったのにいつもの癖で『Mon chou(私の坊や)』って言い間違えるというかほぼ言い終えちゃうところ慌てて変えるところとかもう尊過ぎて且つ可愛い。

 

ただ、間違っても口に出してはいけない。

 

 

そんなことはないよ、ダンケルク。

君がいなきゃ誰が毎朝のパンを作ってくれるの?

 

「そんなの買えばいいじゃない!もう知らない!Mon cho指揮官の事なんて、知らない!」

 

 

 

いかん、死ぬ。

尊死する。

既に涙声なのに無理して怒ってる感出してるとことかヤバすぎる。

また言い間違えたのも可愛いすぎる。

 

ダメだ、ダメだ、ダメだ!

お前は何を考えてるんだロブ・マッコール!

誰のせいで彼女が怒ってると思ってんだ!

萌えてる場合じゃねえだろうがっ!!!

 

そうだ、ロブ(私)、言ってやれ。

彼女に伝えるんだ!

どれだけ彼女が必要なのか、彼女がいないとどれだけ寂しいのか!

 

 

 

やっぱり、ダンケがいないと寂しいよ…

 

 

 

は?ロブ(私)、マジか。

お前、本当にイカれてんじゃねえのか我ながらっ!!

彼女に自分の思いをぶつけようとして出た言葉がそれだけかよっ!?

ホー●アローンで「家族がいないとやっぱり寂しいな」って気づいたガキじゃねえんだからさあ!!

 

 

「うっ、グスっ、なら、あの手紙を公表してよ!」

 

 

ダンケルクが本当に泣き出してしまった。

うわ、最低だよロブ(私)。

お前、彼女にどんだけ心配させたと思ってんだよ。

ベルファストにくれぐれも!よろしく言われたのにこのザマかよぉ!!!

 

 

 

「ぐずっ、なんてね。Mon chouが優しいのは知ってるわ。ひぐっ、ほらこっちに来て。」

 

突然、ダンケルクは泣き止んで、私に笑顔を見せてくれた。

彼女は私を隣に招く。

そしてハンカチで涙を拭き取りながら、私にドーナツをくれた。

 

 

「…本当に優し過ぎるのよ、あなたは。ぐずっ、ズビビビィィィイ!!あまりに優し過ぎて、周りが見えていない。」

 

ティッシュで鼻をかみながら、ダンケルクは私を後ろから抱え込む。

 

「あなたが居なくなって、誰も悲しまないとでも思うの?ティルピッツは?ベルファストは?セントルイスは?皆、あなたの為に一所懸命なのよ?」

 

 

あぁ、そうか。そうだね。

思い返してみれば、マッマ達はずっと私の心配をしてくれていた。

自殺未遂の時だって、風邪をひいた時だって、7mmモーゼル弾を撃たれた時だって。

 

ところが、私の方はといえば、あまりそれを顧みていたとは言えない事に気づかされる。

 

 

「Mon chou。もう少し自分を大切にしなさい。あなたの行動の一つ一つは、決してあなただけの問題ではないのよ。」

 

うん…ごめんね、ダンケルク。

 

「分かってくれたのなら良いの。でも、手紙は私が預かるわ。」

 

本当にごめん、ダンケルク!

でもそれはっ

 

「分かってるわ、Mon chou。すぐに公表したりはしない。でもこの切り札は私に持たせておいて。あなたが持っていては、きっと使うべき所で使えない。…もし、公表されて欲しくないなら、上手く立ち回って。良いわね?」

 

わ、分かった、頑張るよ。

 

「そうして。さて、Mon chouとも仲直りできた事だし!甘い物でも食べましょう?」

 

 

ダンケルクは機嫌を直してくれた…というよりかは私が諭されたのかな。

これからは少し気を使うようにしよう。

 

彼女が用意したスイーツの数々を食べながら、私はふと、後方から視線を感じる。

 

 

おっと、何も見なかったことにしよう。

 

ピッピ、ベル、ルイスが『おい、話がちげえぞダンケルク』的な形相でこっち見てたからね。

夏のスュクレ着たまま第三次世界大戦して欲しくないしね。

 

 

 

ふぅぅぅぅ。

まあ、ローレンスももう長くはないだろう。

ユニオン海軍の広報官は「5分の1の予算を組む鎮守府に調査隊を送りたい」と言っていた。

 

いくら名門貴族とはいえ、さすがに国際問題となっては手も足もでないだろう。

 

私が泥を被るまでもなかったのだ。

 

 

 

 

 

だが、後日、私はウィンスロップ家の貴族たる所以を知る事になる。

 

 

テメェ等しぶと過ぎんだろおおおおお!?

 

 

 

 

 

 

 

 




すいません、物凄くナチュラルに独自設定を突っ込んでしまいました。
申し訳ありません。

何というか、アズールレーンの鎮守府に鉄血艦がいるって事は何か保護される理由というか敵対勢力出身なのに易々と仲間になるのはアズールレーンとレッドアクシズの両方で通じる規定でもあるんじゃないかなぁと思ってぶち込んでしまった次第です。
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