今回はシリアス&胸糞注意です。
あと、独自設定もつぎ込んでしまいました。
フレデリッ●・フォーサイスの読みすぎ?
知らない名ですね………
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ロイヤル名門貴族の一員としてこの世に生を受けたにも関わらず、『僕』には"彼ら"と組む事に対する罪悪感などというものはなかった。
そんな事、微塵も考える必要はない。
気づいている人間は少ないが、新しい戦争がすぐ目の前にまで迫っているのだ。
それは本当の意味で新しい戦争になるだろう。
それはこれまでにない程の規模で巻き起こり、世界を二分し、どちらかがどちらかを倒すまで続くはずだ。
新たな時代では…往々にして言える事だが…自分自身の立ち位置に十二分に配慮しなければならない。
躊躇などしていられるだろうか?
例え"彼ら"が勝ったとしても、僕の身分は保障される。
裏切られないように保険も作った。
例え"彼ら"が負けたとしても僕はこちら側の名門貴族の出身だ。
どちらが倒れようと、僕が困る事はない。
全ては順調…のハズだった。
ところが、ある日、"彼ら"が連絡員を一人寄越してきた。
その連絡員の言うには、"彼ら"に対抗する勢力が既にロイヤルでも活動を活発化させているらしい。
とある鎮守府に、その対抗勢力の工作員が既に潜入済みであり、近いうちに僕らに拮抗し得るようになるだろう、と。
不安材料は排除しなければならない、と連絡員は言った。
僕の助力が得られるなら、"彼ら"は僕に秘密裏とはいえ肩書きを与えて、勝利した暁には身の安全どころか英雄として扱うということも。
その鎮守府について少し調べてみた。
いやはや、まるで軍事組織の体を成していない。
税金の無駄を絵に描いたような鎮守府がそこにはあった。
僕は無駄が嫌いなんだ。
僕は連絡員の提案を受け入れた。
手持ちのKANSENに、その鎮守府のKANSENを誤射させた。
その鎮守府の指揮官は、連絡員の言った通り僕の手持ちのKANSENを保護し、それによって僕は相手の行動まで掌握する事が出来るようになった。
誤算があった事は認めざるを得ない。
指揮官の方はともかく、配下のKANSENの方は予想以上に優秀だった。
特に"マッマ"という暗号名で呼ばれる、おそらくは高度に専門的な訓練を受けた警護チームは、僕の計算を何度狂わせたか分からない。
レストランではプロのスナイパーを使ったが初弾以外は全て防がれてしまったし、ウィンスロップ家が株を買っている地方紙を使って貶める計画は彼女達のコネクションによって潰されてしまったのだ。
潰されただけならまだ良かったろう。
地方紙の件は世界中で燃え上がり、逆に僕の首が締め付けられる後一歩までいくところだった。
今回は"彼ら"に助けられたし、あの指揮官の甘さにも助けられた。
"彼ら"はユニオン内部の細胞を使って、こちらに来る調査隊のリーダーを、より強欲な男に変えてくれた。
膨大なコストとリスクを背負ってくれた、その期待に応えられるようにしよう。
例の指揮官は、裏切られたにも関わらず、僕のKANSENが余計な知恵を働かせて残してきた内部告発を公表しなかった。
まったく。甘いにも程がある。
どういう事が書かれていたにせよ、利用すれば警護チームのコネを使うまでもなかったろうに。
僕の指示には従わず、その上余計な文書まで残置したKANSEN2体は勿論厳罰に処した。
何を考えていたのだろう?
僕が潜入させる目的で派遣しておきながら、帰ってきた時に何もせずただで受け入れてくれるとでも思ったのだろうか?
2体は簡単な心理テストに引っかかり、帰来報告に嘘があった事が明らかになった。
そして次の尋問で、文書の事を聞き出せた。
黙っていられるとでも思ったのなら馬鹿でしかない。
姉妹艦の存在は十分揺すりのネタになる。
そもそもそれが目的で帰来要請をしていたというのに。
2体の、左薬指の切断には最小限とはいえ麻酔を用いた。
僕にしては珍しく縫合と、治癒が済むまでの休養さえやった。
それでも2体は震えていた。
僕はもちろん、理由を知っていたが、同情する気も許してやる気もない。
ただ、2体が震えながら黙して涙を流している姿を見るのは…愉悦だったよ。
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「そう、例えて言うなら…」
Cold war?
「言い得て妙ですね。素晴らしい発想力ですよ、指揮官。」
ノースカロライナは少々驚いた顔をして、私の方を見た。
この、なんとも冴えない男が自らの想像を超えて的確な言葉を発するとは思っていなかったのだろう。
「意外と博識なようで大変結構です。彼女からの報告は少々不安を誘うような内容が含まれていましたから…ねえ、ルイス?」
残念ながら博識なわけではない。
私がここに来る前の世界では実際にその戦争が半世紀近く続いた。
知識でもなんでもない。
私は今、例のセーフティルームでノースカロライナと…セントルイスと3人きりでいた。
悠然とするノースカロライナとは反対に、セントルイスは涙を溢れさせながら震えていた。
「指揮官くん!本当に本当にごめんなさい!でも、私の国の任務だったの!裏切るつもりはなかった!」
セントルイスは"ルイスマッマ"ではなかった。
左薬指に指輪がついていない。
つまり、ルイスママとは別のセントルイスの内の1人。
まさかその1人に監視をされていたとは思わなかったが。
「密室でお話をしたのは正解でしたね。この部屋は防音処置がされていて、外まで音が届きませんし。」
ノースカロライナの右手にはサプレッサ付きの45口径が握られている。
銃口は勿論私の方を向いていて、「いつでもその気になれば」という主張を端的に表していた。
こんな事になるとは。
ノースカロライナが着任を報告して早々、私と2人で話がしたいと要求してきた時点で怪しむべきだったのだ。
私はあろうことか、彼女の「ユニオン政府からローレンスに関する極秘情報がある」というセリフにまんまと騙され、セーフティルームなら安全だろうとマッマ達を執務室に置いて彼女と2人きりになってしまった。
実際にはセーフティルームには先客のセントルイスBがいて、3人きりとなったわけだが。
さて、さてさて。
私に拳銃を突きつけて、君は何をしようとしているのだろうか?
私を殺すつもりなら、とっととやっているはずだし、密室で2人きりという選択は間違いでしかない。
外にはいつでも艤装を装着できる戦艦2人と軽巡2人がいるのに、艤装を持っていない彼女が到底敵うとは、彼女自身思っていないだろう。
何か提案がしたいんだね?
「ご名答です、指揮官。もう察しているでしょうが、私は偶然この鎮守府に配置されたわけではありません。」
それゃあね。前々からセントルイスBに私を監視させていたわけだし。
「私は表向きは貴方のKANSEN、でも実際は…アラバマに行ったことは?」
…なるほど。
だが、どうにもわからない。
"どうして私ごときに、『中央情報局』のお偉方が工作員を派遣するのか"
「やはりご存知でしたか。私たち『Central Intelligence of Union』…略称『CIU』はロイヤルと協調してはいますが、それでも配下のKANSEN或いは工作員を自由に行動させる為の拠点をロイヤルから提供されるわけではありません。」
つまり、この鎮守府を拠点にしたいと。
そういう事だな?
そして私が断れないことも知っている。
だから簡単に正体を教えたし、リスクがあるにも関わらず密室なんかに連れ込んだ。
「またご名答です。裏切った高雄や赤城さえ見逃がすような指揮官なら、配下にいるセントルイス達を見捨てるハズがない。それに…私達が彼女達をどういう待遇へ陥れるかも、恐らく想像がついている。」
クソッたれ共め…
目的はそれだけか?
それだけのために遥々海を渡ってこんな鎮守府へいらっしゃったわけか?
おうおうそうですか歓迎しますよようこそマッコール鎮守府へ地元のお茶はどうですかこの辺の海はきれいなんですよどうぞ気の済むまでお楽しみください楽しんだらとっとと帰れこの野郎!!
「誤解しないで下さい、指揮官。CIUは貴方の味方ですよ?」
味方?
「ええ、そうです。一つ、ユニオン政府がローレンスの鎮守府に派遣した『リプトン調査隊』はまもなく"異常なし"の報告書を本国へ送る事でしょう。」
異常ないわけないだろ。
KANSENを馬車馬のように扱い、自分の勲章の為に犠牲にするような奴だぞ?
「その通り、ですが報告書には間違いなくそうかかります。ここで二つ目、実はローレンスはある勢力の支援を受けている。」
段々と話が読めてきた。
最初に冷戦の話をしたのはそういうわけか。
この部屋に入るなり、ノースカロライナが拳銃を取り出しながら話し始めたのは『新しい時代』についての見識だった。
北方連合は重桜と鉄血がアズールレーンから脱退した後にアズールレーンに参加した。
これは、北方連合が人類の自然な進歩という陣営の思想に同調したというよりは、より実利的な理由から参加したことを意味する。
具体的に言うなれば、重桜との領海問題、鉄血との領土問題だ。
凍らぬ港の獲得と大陸国境線の安定は、北方連合が永年にわたり取り組んできた課題だったのだ。
それを一挙に解決する糸口が見つかった。
大義名分を掲げて目の上のタンコブを叩ける。
このチャンスを北方連合が逃すハズがない。
かの国からアズールレーンに提供されるKANSENは、今のところアヴローラを除いて確認されていない。
しかし、農業を犠牲にしてまで重工業を発展させた北方連合が、KANSENの建造さえできないとは到底考えられないし、それどころかユニオン並みの大量建造を行なっていてもおかしくはないのだ。
しばらくしてユニオンは、北方連合が重桜と海を挟んで反対側の軍港にKANSENを集結させているという情報を掴んだ。
後を追うように、鉄血公国国境に大量の戦車部隊が集結しているのも確認された。
いずれ鉄血公国と重桜が消耗した際に、漁夫の利を得ようとしていることは誰の目にも明らかで、それはことユニオンにおいては相当の脅威だった。
しかし、ユニオンの大統領の取り巻きには既に北方連合の細胞が入り込んでいた。
大統領はCIUから再三の警告を無視し、北方連合の不可解な軍事行動を黙殺している。
その警告の合間にも、北方連合はユニオンの同盟国であるロイヤルにまで食指を伸ばしているにも関わらず。
「そう、ローレンスは北方連合と繋がっています。そしてCIUは大統領の承認が得られない限り外交という手段を使えない。だから秘密裏にやるしかない。ご理解いただけましたか、指揮官?」
なんてこった。
どうやら私は知らず知らずにとんでもない沼にはまり込んでしまったようだ。
ノースカロライナは模範的なまでに警戒を絶やしていなかったが、私が悩むフリをしながらジャケットの内にあるPPKを握っていたことには気づかなかった。
もちろん、そのPPKに付いている警報装置の事も知らなかった。
ノースカロライナファンの皆様。ごめんなさい。