----------某アイリス戦艦
このアズールレーンの世界は私にとっての電話というものを少しばかり楽しい物にしてくれた。
なんと言ってもKANSEN達とどこにいても電話ができる。
直接話せない時だって、いつでも連絡が取れ、そして邪険に扱われる事はあまりない。
もっとも、邪険に扱われるような時間帯や休日の日には電話をこちらからかける事はない、というのもあるだろうが。
まあ、本当に楽しかったよ。
最初の内は、ね。
マッマ達は私がトイレに行ったりなんだりで視界から消えると即座に電話を掛けてくる。
最初は『あぁ、ピッピ。今………手を洗ってる所なんだ。心配してくれてありがとう。今戻るよ』ぐらいで済んでいた。
今では『あぁ、ごめんピッピ!そうだね、トイレに行く時は教える約束だったもんね。でもエマージェンシーだったんだ分かってくれ。うんうん、ありがとうありがとう。うん、今から戻るからから泣き止んで?ほら泣き止んで?泣き止めい!!!』ぐらいの会話をしなければならない。
どうしてこうなった。
ピッピママ自身は『可愛い子には旅させよ』を日々実践しているらしいが、たしかにそうだなぁとは思う。
確かに、そう、確かにこの格言は旅に対して援助の制約を設けてはいない。
私の場合は例えるなら…
旅に出て、喉が乾くとミネラルウォーターがサプライドロップされる。
少し歩いてお腹が空くと、ビーフストロガノフがサプライドロップされる…デザート付きで。
調子が少し悪いと抗生物質やアスピリンがサプライドロップされ、地図を少し開いただけで最新式のGPS座標受信機がサプライドロップされ、スライムに出くわしただけでエルンスト・バル●マンが搭乗するパンテル戦車がサプライドロップされる。
最後はバル●マンが長砲身75mm砲弾を魔王の城にぶち込んで、私はLv.1のまま一国を統治することになるだろう。
ロールプレイングゲームとしてはブチ壊しだが、マッマ達からすれば私が困難を乗り越えて旅を成功させた事になるらしい。
まあ、ここまでの迷路のような長い前置きの中で何が言いたいかと、マッマ達は絵に描いたような過保護だった。
そしてその過保護は、今、私がノースカロライナに銃を向けているこのセーフティルームでも発揮された。
まず、ドアが破壊され、警戒兵キットを装備したピッピママ?がMG-42を腰だめに持って現れる。
アルディーティみたいになってるので確信を持って断言できないが、たぶんピッピママで間違い無いと思う。
次に天井からベルママとルイスママがロープ降下してきて、ベルママがリヴォルバーをノースカロライナの頭に突きつけた。
ルイスママは降下したついでに、ノースカロライナの着ている制服をずり下ろす。
何故そうしたのかはわからないが、おかげでノースカロライナが制服の下にバニースーツを着るという暴挙に出ていた事がよおうく分かった。
何してんのよ。
「キャッ」じゃないでしょ。
「キャッ」じゃ。
最後にダンケママがマシュ・キリエ●イトみたいな防弾盾を持ってスライディングしてきて私を守り、マッマ・フォーメーションが完成された。
ノースカロライナはおそらく45口径の引き金に力を加える間も無く…というより制服剥かれた瞬間45口径放り投げてたもんね。
まあ、45口径を使う間も無く制圧された。
「クッ、油断したわ…私を煮るなり焼くなり好きにしなさい!ただし、後悔する事になるわよ!」
バニースーツの"くっ殺"はなんか新鮮なものがあるね。
ノースカロライナは顔を真っ赤にしながら、そのたわわな双丘を両腕で隠そうと頑張っていたが、返って谷間が強調されていることに本人は気づいていない。
恥ずかしがるなら最初から着んなや。
なんで「私はデキるオンナ」みたいな態度で私を懐柔しに来たのにそんなもん着てんの?
頭おかしいの?
『私の坊やにNan¥*%#€☆÷$!!!』
アルディーティが何か怒鳴ったが、頭をすっぽり覆う鋼鉄製のヘッドギアの内側で反響しているようで何を言ったのかわからない。
ただ声からしてピッピママだという事が今一度確認された。
『坊や!keg#%☆*€!?$÷※〆#€!?』
続けてこちらを向いてまた何か言ったが、やはりわからない。
ピッピママ?
とりあえず脱いで?
とりあえずヘッドギア脱いで?
「…ぷはっ、坊や!怪我はない!?大丈夫!?」
うん、大丈夫大丈夫。
そんな事より対応早くない?
つーか早過ぎない?
PPK握ってからまだ30秒も経ってないんだけど、どうやったらそんなアルディーティフル装備装着して来れんの?
「き…きあいとこんじょぉ」
騙されんぞ。
「うっ…そ、その。こ、こんな事もあろうかと、セーフティルームに盗聴器を付けておいたの!」
そんなドヤ顔でフォー●アウトの金髪少年みたいなグッドサインとウインクされても困るんだけどさ。
なんとなぁく、それだけじゃない気しかしないんだけど、本当にそれだけ??
「っ!………そ、その…」
怒らないから正直に言って?
「坊やのシャツパンツ靴下制服革靴ベルトネクタイ眼鏡制帽階級章襟章勲章徽章職種章記念章首肩腰手足背中に、鉄血公国最新鋭の超超超小型盗聴器を付けてるわ…」
うん、わかった、怒らない。
技術の無駄遣いにも程があるし、いつの間に付けられたのかも分からないけど、特に腰とかどういうタイミングで付けられたのかすごく気になるけど、私は約束を守る男だからさ。
つーかもはや怒れない。
慣れてるし。
もう、マッマ達の過保護にも慣れてるし。
このぐらいはするだろうなと諦めがついてしまう自分自身にすら慣れてるし。
今までにもマッマ達が居なくなった隙に疲れてもねえのに「あ〜ちかれたでちゅ〜マッマのオッパでぱふぱふぱふぅ〜」とか特に何も考えずに変態丸出しの発言した直後にピッピだけ戻ってきて馬鹿でかい双丘に埋められた事が何回かあったけど、つまりそういう事なんだな。
てか毎回思うんだけどどっからその費用出てんのよ。
「鉄血公国宣伝省からよ!私の交渉力も中々のモノでしょ、坊や?」
ゲッペル●激おこ案件なのではそれは。
「まさか既に鉄血がそこまでしていたとは!?私達は遅れを取っているようね…」
ノースカロライナ、こういう遅れは別に取り戻さなくてもいいと思うよ?
寧ろ放置すべき案件では?
そしてピッピママ、ドヤ顔で勝ち誇るな。
何も誇れる要素はない。
セーフティルームに盗聴器仕掛けるまでで十分だから。
私の下着の一点一点にまで仕掛ける必要はまったくないから。
マッマ達のおかげでノースカロライナは拘束され、私は無事にセーフティルームから連れ出された。
私はピッピに抱えられながら執務室の指揮官席に座る。
目の前にある二席のソファの向かって右側には、相変わらず顔を真っ赤にして拘束されているノースカロライナ、しょげきった顔のセントルイスBが座っている。
反対側の向かって左のソファにはダンケ、ベル、ルイスが座っていた。
さぁて、私はどうするべきですかね、マッマさん達。
「最初に言っておきますけど、指揮官、CIUを敵に回すのは間違いよ?」
バニースーツ姿のおかげでまったく言葉の威圧感が伝わらないノースカロライナが、真っ赤な顔を私に向けて言い放つ。
「私もそう思うわ、坊や。実はさっき電報を受け取ったの。ユニオン調査隊の見解は、『ローレンス鎮守府に違法性はない』という事だったそうよ。ノースカロライナの話とも辻褄が合うわ。」
んー、だとすると北方連合の後ろ盾の件も正確な情報っぽいよな。
ピッピの言う通り、我々にも情報機関の支援が必要だ。
よし、君の提案を飲もう、ノースカロライナ。
「へ?…あ、ああ、そうですか!やはりCIUが見込んだ指揮官ですね!後悔はさせませ」
ただし!
「ただ…し?」
私を密室に連れ込んで拳銃突きつけたんだ、ただで済むとは思ってはいまい?
「…え」
君には常時バニースーツでいてもらう。
「えっ!?ちょっ!?そんなぁ!!!結構恥ずかしいんですよこの服!!!!」
だからなんでそんなもん制服の下に着込んどんねんやお前は!ダメ!許さん!バニースーツで勤務なさい!文句があるならベルサイユにでも行ってこい!!!
「うぅ…わかりました。」
「ご主人様、セントルイスBのスパイ行為は例えユニオンの命令だとしても何かしらの罰則が必要です。」
「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」
うーん、とは言っても可哀想なんだよなぁ。
国の仕事してただけだしね、実際に何か脅されたわけでもないし。
「ご主人様!そんな甘々ではなりません!高雄と赤城が裏切った時も、ご主人様があまりに甘々だからダンケルクが怒ってしまったのをお忘れになられたのですか!?」
し、仕方ないなぁ。
でも肉体的な罰は絶対に与えたくないし、かといって精神的にも追い込みたくないし。
「それならご主人様、こういうのはどうでしょうか?『ご主人様あやすの一週間禁止』」
「そんな!?厳しすぎるわよぉ!!」
セントルイスBが本格的に泣き出してしまった。
そんな泣くことか?
寧ろ自分の事に専念できていいんじゃないの?
「一週間もあやせないなんて!私をっ、ぐすっ、殺す気なのっ!?」
そんな生死に関わるような問題かコレは?
ま、まあ、罰は罰だからね!
でも、情状酌量の余地を与えて5日間で手を打ってくれないかい、ベルマッマ?
「はあぁぁぁ、ご主人様がそうおっしゃるなら良いでしょう。」
「ズビビビィィィイッ!ありがとう、ぐすっ、指揮官くん。」
「ルイス(マッマ)も監督不届きの責任があるわ!『あやす時間半減』の罰を与えるべきよ、Mon chou!」
「わ、私は関係ないでしょぉ〜?」
「ご自身の配下にある部下を監督できていなかったのですよ、ルイス?貴女にも責任があります。」
「し、仕方ないわねぇ…ぐすっ、すごく辛いけど、甘んじて受け入れるわ」
ルイスマッマまで泣き出してしまった。
「厳しい罰ね…可哀想だけど、仕方ないわ…」
ふとピッピが顔を覆い隠しながらそんな事を言ったので、てっきり同情して泣いてるもんだと思って下から覗いた。
逆だった。
同情するフリだけして、顔の方は
「やった!私があやす時間増えたわラッキー!」みたいな顔をしていた。
もうほんとさあ、君達さぁ……………