いやあ、まったく参ったね。
もしダンケルクが来てくれなかったら、延々とセントルイス主催の"ミサ"は続いていただろうから。
彼女には感謝しないとね。
え?何?ダンケルクが何をしたかって?
私の希望通りの事を言ってくれたよ。
「冗談にしても限度があるわ、指揮官」
ティルピッツからは凄い目で見られたけれど、どうにか解放され、「ぶっ飛んだサプライズ」で説明はつき、今はこうやって一息つけている。
ふぅー。
さて、どうしたものか。
まず状況を確かめるのが一番堅い手であろう。
執務室の資料をざっと読んだけど、ゲームと殆ど何も変わりない。
セイレーンが来ました、反撃しました、アズールレーンとアクシズで別れました、ずっとバトってます。
要するにそんな感じ。
鎮守府にいる艦娘もゲームと同じ。
寮舎でリフレッシュさせてる艦娘も同じ。
私が勝手に『上級主力候補生課程』とか名付けてる『上級自主訓練』にブッ込んでる艦娘も同じ。
私はこの鎮守府の指揮官で、海軍参謀本部の使い走りで、統合参謀本部議長からクソ野郎だと思われていることもわかった。
もういいですよ、クソ野郎で。
拗ねるよ?クソ野郎ならクソ野郎なりの扱いしないと拗ねるよ?
間違ってもここ一番って時に「責任重大な職務だお前しかいない」とか許さんからな?
さあて、とは言ったものの、何をすりゃええんじゃ。
委託完了までかなり時間あるっしょ。
とりあえず実際に見て回るかな。
ドックとか、売店とか、寮舎とか寮舎とか寮舎とか寮舎とか寮舎とか寮舎とか寮舎とか寮舎とか。
「私も着いていくわ」
「おうわっ!?」
いやちょっと勘弁してくださいよティルピッツ=サン貴女いつからそこにいたのよ驚くじゃない全くもうそんな怖い顔しないでよさっきのは謝るからさー。
てかなんでダンケルクもいるわけよ?
「秘書官だから」
あのね、秘書官ってパンツか何かみたいにずっとくっついてなきゃいけないわけじゃないんだからさ。
Where is my プライバシー?
いいじゃん視察ぐらい一人でこっそりこそこそやらせてよー。
「論外よ、指揮官。指揮官がまた拳銃を咥えたりなんかしたら、私…ようやく一人じゃないって思えたのに……」
え!着いて来てくれるの?やったあー!本当にありがとう!ティルピッツが一緒ならとっっっっっっても心強いなぁ!だからほら、泣く事なんてないんだよ!?ね!ね!!!
「そう言ってもらえると、嬉しいわ」
はぁぁぁぁ。今日一つの教訓を学んだ。
私は某少佐の声で泣きをかけられると弱い。
普段はまるで気にも留めない罪悪感が1万倍になって私を仕留めにかかってくるのだ。
無理、しんどい。
言わんこっちゃない。
lv100越えの戦艦2人と視察なんてやってみろ。
駆逐艦やら軽巡洋艦やらが逃げる逃げる。
そりゃオーラがやべえもん、オーラが。
ちょっと後ろ振り向くだけで確実に伝わってくるんだぜ?
「え?何?私達と殺りあうの?いいけど、ちゃんと遺書とか書いたの?」的な何かが。
リアンダーに至っては折角話しかけようとしてくれたのに、
「あっ、指揮官…………何でもないデスゥ」
とか言ってどっか行っちまったぞ。
ジャベリンかよ。
「甘えん坊で困りますぅ」とか言われたかったのに、台無しだよ。
とりあえずドックと、売店は見て回った。
売店には驚くような物はなかったけど、ドックはかなり驚いた。
ゲームでヒヨコさんが自爆ボートに乗ってくるのは知ってたけど、『グラーフ・ツェッペリン』のBf109Tに乗ってんのもヒヨコさんだとは思わんかったわ。
お前指とか無いのにどうやって操縦してんの?
どうやって機銃発射ボタンとか押してんの?
てか通信とかどうなってんの?
ちょうど飛行訓練やってたから、無線機の周波数を合わせて聞いてみた。
ワクワクしたさ、どんな通信してるんだろうって。
ヒヨコだからピヨピヨ言いながら連携とってたら可愛いなぁとか思いながら。
『Tower,Tower. This is RED 149. Redio check, how do you read?』
『RED 149,Your reading clear.』
『Thank you,Tower. RED 149 Over.』
は?
何これ、普通にカッコいいんだけど。
お前らそんな可愛い見た目してリー●ム・ニーソンとかキ●ヌ・リーヴスみたいな声で会話すんの?
トップ・●ンとかパール・●ーバーのリメイクお前らでやって良い?
『にくすべさん』ことグラーフ・ツェッペリンに訓練の邪魔だから帰れと追い出された。
グラツェンのケーチッ。
さて、ドックが終われば後はお楽しみ!
そう、寮舎!
風呂とか設置してるし、艦娘のあんなとこやこんなとこが見れたりしてな!
もちろん、戦艦2人が黙ってないかも知れないけど、偶然を装えばいける!いけるって!
私は激怒した。
必ずやかの暴虐なる王を打ち倒さなければならないと思った。
少し前まで寮舎は賑やかであった。
様々な種類の品々が並び、艦娘達は皆歌をうたったり踊りを踊って楽しんでいた。
なのに、今では誰もが押し黙っているではないか。
私は寮舎の1人(フォルバン改)に話を聞いた。
フォルバンは渋っていたが、やがて口を開いた。
「王は最近、一等コスパの高いカレーしか供給されませぬ。以前はコーラや天ぷらがありましたが、今では購入を停止されておるのです。壁紙も随分と変えられておらず、口を開く度に、こびりついた強烈なカレー臭が侵入して来ますゆえ、誰も歌や踊りをしなくなってしまったのでございます」
(中略)
艦娘達の友情を見た王(=私)は2人に近寄り、こう言った。
「諸君らの友情が、この私を改心させたのだ!これからは壁紙も定期的に替えよう!カレー以外も供給しよう!皆でこの寮舎を立て直そうではないか!」
寮舎は艦娘達の歓声に包まれたのであった。
視察を終えてすぐに、私は寮舎の改装を命じた。
本当にごめんね。
ウチあんまし出撃させることのない時は燃料をカレーに変えてたのと、カレーは一定時間プラスの経験値が入るからそれしか入れてなかったの思い出したわ。
たしかにあんな環境じゃキャッキャうふふできんわ。
たしかに『ホーネット』でさえスターゲイトパイでも良いからって要求してくるわ。
コーラと天ぷら腐る程あるのに全然入れてなかったもんね。
ゲームの画面上じゃ何もないけど、実際にやってたらあんな事になるのね。
ヨハネスブルグのスラム街みたくなるのね。
壁紙もずっっっと酒場にしてたからなぁ。
もうちょっと、明るく!健康で!文化的な!環境にしていこうか。
当面はロイヤル部屋で。
飽きたら…ローテーションして行こう。
そうこうやる内に時間は5時近く。
おい、確か寮舎改装の書類をやり始めたのは4時くらいだったよな。
なのに今までずっと側に立ってたティルピッツはなんなんだ?
1時間ずっと立ってなきゃいけない病気にでもかかっちまったのかよ。
良いんだよ自分の部屋に戻っても。
ほらそこにソファもあるでしょう、座りなさい。
もういっそのことソファに寝っ転がって寝てても何も言わないからさ。
「お断りよ、指揮官。私が寝たら…貴方その間に…」
もうしねえええええよ!!!!
疑い深いっ!!実に疑い深過ぎるだろおおおお!!!!
パイセンどおおおおすんすか!!!
寝る時どおおおおおすんすか!!!
一晩中起きてるつもりなんすか!?!?
謝りますぅぅぅ!!さっきのは謝りますからあああああああ!!!!
実際、今頭撃ったら元の世界に戻れるって言われてもぜってえええ戻んねえしぃぃぃ!!
こっちいた方がぜってえええ良いしぃぃ!!
つーかそんなこと言ったら一晩中お前に抱きついて寝るぞ!?
乳飲み子みたくだぁだぁばぶばぶ言いながらずううううううっと付いて回んぞ!!!
いいのかぁ!?
「え?私は別に構わないわよ?」
…………………
その一言は、革命であった。
おおよそ考えられる革命の中でも、殊更に革命的な革命であった。
この瞬間に、私は一つの極致へと達した。
赤ん坊に戻る。
それは恥でも何でもなかったのだ。
一度来た道を、少しばかり戻るだけである。
そこに、何の罪があるというのだろうか?
私はただ、戻るだけなのである。
アズールレーンの飛行機ってどうやって動いてんすかね?
ラジコン的な?
ヒヨコって書いちゃいましたけど、「いやそりゃねえよ」って方、誠に申し訳ありません。。。