土曜日の朝は最悪だった、とだけ言っておきたい。
結局あの後、ダンケルクのカシスオレンジ・イン・ザ・哺乳瓶☆は留まることを知らず、酒に大変WEEKな私に何本もの哺乳瓶を当て込んだ。
その間にもダンケルク自身は何本ものワインを空けていたし、ピッピはタガが外れたようにビール飲みまくり、ルイスはバーボンを5本空け、ベルはスコッチにより壊れたグー●ル翻訳になってしまった。
結果、土曜日の朝はマッマ達と仲良く揃ってトイレに駆け込み、オボエエすることとなってしまったのである。
まず、私がオボエエして、マッマがオボエエして、目の前の長身白人美女達から飛び出るグロテスクなオボエエをみてまた私がオボエエして、マッマが釣られてオボエエする。
こんな地獄絵図で土曜日の午前中を丸々潰してしまったのだ。
オボエエしまくった結果、その後は5人揃って歯を磨き、5人揃ってパジャマを着替え、5人揃ってまた寝ることとなった。
これぞ休日の無題遣いといったところか。
対照的に日曜日は朝8時にキチンと(?)起きて、サンデー●ーニングを見ながら、裸エプロンという暴挙に出たセントルイスの朝食を食べるぐらいには有効活用できた。
喝ッ!!セントルイスに喝ッだッ!!
朝っぱらから何しょんねん。
「あやしんぐタイム半減されてるからアピールしたくって」じゃないでしょうが。
貴女常日頃からどれだけサキュバス臭撒き散らしてると思ってんのよそっちは充分にアピールされてんのよその方面はイラストリアス1人でいっぱいいっぱいなのよ。
他のマッマも真似しな〜い、やめなさ〜い。
ピッピママに至ってはサイズ合うエプロンないからってミシンとか取り出すのやめなさ〜い。
そんなこんなでその後もマッマ達とだぁだぁばぶばぶ楽しくやってたらもう月曜日ですよこんチクショウ!!!
演習の準備なんもしてねえよっ!!
辛うじて地図と対抗パターン一覧に目を通して宿泊用品集積したぐらい?
それでさえダンケルクから大慌てで止められて、
「ダメ!ダメダメダメ!Mon chou!明日の列車の中で教えるから、今はダメ!大人しくあやされなさい!!!」
と止められる始末。
大人しくあやされろって何なの?
つーか、列車も3時間しかないんだし、あんな揺れ動く車両の中で書類なんか読んだらまたオボエエするよ?
朝っぱらからオボエエするよ?
そして、今朝。
ダンケルクと私は列車で移動、ピッピ達艦隊メンバーは海上移動という事でピッピママを始めとしてルイスママ、ベルママ、プリンツオイゲン、イラストリアス、グラーフ・ツェッペリンと順番に強烈なハグと真空パックされた下着をプレゼントされた。
いや、困るし。
6名分の下着って結構馬鹿にならないのよ?
スーツケースもう一つ増えたじゃないのよ。
手荷物検査あったら私一発アウトじゃないのよ。
そもそもあなた方と私が離れる時間はたった3時間のはずなのにそんなものすごく重々しい告別式みたいなことはいい加減にやめてもらいたいと言いますか。
「うっ、ひぐっ、坊や、どうか無事にっ、えぐっ、また会いましょうねっ」
泣くな、ピッピ。泣くな。
泣けるようなことは微塵もない。
おっさんが、マニア垂涎モノのSL機関車に揺られて3時間移動するだけ。
またすぐに会えるから。
赤紙か何かが届いたわけじゃないんだからさ。
さて、そろそろ行かねば列車に遅れる。
しかしながら、外にはマクド●ルドやらケンタッ●ーやらあるくせに、列車がSLってどういうことやねんという思いは若干あるが、兎にも角にも列車に乗らねば始まらない。
列車の発車時刻が迫る中、私は否が応でも出発せねばならなかった。
しかし、私が駅に向けて最初の一歩を踏み出した瞬間に、ピッピママに呼び止められた。
「坊やっ!待って!坊やっ!最後にハグをっ!」
志村●んか、私は。
マッマ達から一歩離れるたびに(主にピッピママから)呼び止められてハグされて、それじゃあ行ってくるねってまた離れたらまた呼び止められてハグされて、もう行かなきゃ列車に遅れるんだよじゃあねってまた離れたらまた呼び止められてハグされて…ええいっ!!
列車に乗ったのはギリギリになってしまった。
今は快心の母親面したダンケルクとともに、列車の一等客席で持参の朝食を摂っている。
ピッピママお手製のハムと、ベルママが例の牛さんの牛乳から作ったチーズ、それをダンケママお手製のパン・ド・ミに挟んで梱包する作業をルイスママがしてくれた。
ご丁寧に手紙まで付いてる。
『愛しい愛しい指揮官くん。3時間もの間離れるのは辛いけど、このお弁当を食べながら私たちの事を想ってくれるととても嬉しく思います。あなたに勝利を。---セントルイス。
p.s. このサンドウィッチのチーズはヘレナが飼っている牛さんの牛乳をベルが丁寧に加工して作ってくれました。牛さんは相変わらず元気です。もぉ♪もぉ♪』
可愛っ!
何なの最後の『もぉ♪もぉ♪』って。
セントルイスが両手の人差し指でツノ作って笑顔で「もぉ♪もぉ♪」言ってる様子がバチクソイージーに想像できんだけど。
「Mon chou!!!」
はい、なんでしょうダンケルクさん。
私、そんなにニヘラっとでもしておりましたでしょうか?
「まったくもう…まだ対抗パターンの説明の途中よ?」
ああ、それはすまん、ダンケルク。
ついつい手紙を読み込んでいてしまったが、そうだね、私が教えて教えてマッママッマ言ったんだもんね、申し訳ない。
「本当にもう…それでね、Mon chou。敵の行動パターンは奇襲を主軸に構えてくると思うわ。ティルピッツ達なら大丈夫でしょうけど、不意を突かれると何が起きるか分からないから、やはり注意しないとね。」
うぅん、やっぱり奇襲大好きマンかぁ。
ちなみに私はする方もされる方も奇襲大嫌いマンなんだけど、そうなるとこちらには即応力が要求されることになる。
ただ、即応力に頼らない解決方法が考えつかないわけでもない。
例えば、敵のいそうな区画に重火力をぶち込んで待ち伏せを台無しにするとか。
第二次世界大戦中のアフリカで、ドイツ人は相当苦労して"悪魔の園"と呼ばれる凝った対戦車陣地を作ったが、イギリス人は入念な準備砲撃で全てを吹き飛ばしてしまった。
要するに、物量こそがジャスティス。
せっかく入念に待ち伏せたりしても、濃密な砲弾の前には無力でしかないのだ。
これはあくまで持論だが、私は軍事というものに"面白み"なるものを求める将校は士官をやめるべきであるし、間違っても指揮を執ってはならないと思っている。
最高の軍事作戦とは、最小の兵力で最大の戦果を得ることではない。
敵の数十倍もの物量・人員・装備を持ってしてひたすらに殴り続けるのがベストなのである。
そこには創意工夫なるものは存在しない。
ただただ勝てる条件を揃えて暴力を振るうのみ。
私はそれこそが順当且つ真の軍事作戦だと思っている。
「うんうん。でもね、Mon chou。演習では編制が指定されるし、最終的には旗艦が現場で指揮して、貴方は大きな方針を決めるだけって事になるから…難しいわねぇ」
それな。
編成が決まっている以上は、誠に遺憾ながら質も求められなければならない。
結局、現場のティルピッツ頼りにならざるを得ない部分もあるし。
まあ、ピッピならなんとかなるだろう。
若干どころか、指揮官としてあるまじき程の楽観視だったが、実際にはそんなに楽観でもなかったりしたのは、その日の午後のお話。