「つってもFPS要素は天井破壊ぐらいしかねえだろうが」
----------------ジャン・パール(アイリス戦艦)
「やめてぇぇぇえええ!!もうやめてよぉぉぉおおおおお!!そんな腐った豆なんか食えたもんじゃなッ、ふごふごふごふご、ぐえええええええっ!!」
「指揮官様ぁ〜、好き嫌いはいけませんよぉ〜」
「やめてッ!お願いッ!今までの事は誤っぐふえっぐへっぎゃああああああっ!!!」
朝っぱらから納豆食うだけでこの騒ぎかよ。
今、私は愛宕に抱えられながら、久々の純白の白米に納豆を掛け、凄まじいまでに出汁のうまさが効いてる味噌汁と、穴子の蒲焼、ほうれん草のお浸しと共に食べていた。
いやあ、うっまうっま。
もうグルメレポートに関しては語彙力が1945年のベルリンだから美味いぐらいしか言えない。
もうね、ホントね、美味しい。
満足げに食べる私を見て、この素晴らしきトラディショナル=アサゴハンを作った張本人は、渾身のドヤ顔をしていた。
「どうだ、マッコール?随分と美味そうに食べるが…そんなに美味いか?」
不味そうに見える?
「ふっ…いいや。まあ当たり前だな。白米は一等級のコシヒカリ、納豆は重桜大豆のみで作られ、味噌汁の出汁はこの手で全て用意した!」
今まで加賀さんには戦闘狂のイメージしかなかったけど、この度めでたくそのイメージが一新されました。
戦闘狂→板前に。
「穴子は丁寧に時間をかけてふっくら焼き上げた…分かるか?この技術と手間をかける意味が。強者のみに許される朝食、それが"加賀定食"なのだ!!」
別に強者でも何でもない見た目おっさん、中身幼児が貴女様ご自慢の加賀定食貪り食ってんだけどそれに関して何か思うとことかないの?
「何を言う!見ろ、この傷跡をっ!お前の艦隊による攻撃で負った傷だ。この加賀を航空攻撃によって行動不能に追い込んだ指揮官が弱者に分類されるわけがなかろう!さすが"我が子"!!!」
ええ〜とね、画面の前の紳士淑女の皆様。
私は仇敵の鎮守府でも我が子認定されました。
もう既にそういう認識で通ってます、はい。
なんかね、もうごくごく自然にナチュラルに息子扱いされてるんですけど、一応昨日の夜から話しましょうか?
昨日、私は久々のSUSHIをたらふく食べた後にお風呂に行きました、普通のお風呂でした、ムカデとか泥水とか入ってない普通のめちゃくちゃ綺麗なお風呂でした。
その後、赤城さんに寝室へ案内されたんですけどね、お部屋に入る前に赤城さんから
「マッコール様、以前は大変申し訳ありませんでした。私達へしてくださった事、与えてくださった物に対して…あるまじき裏切りを働いた事、後悔という言葉では表せません。このような言葉でお気持ちが安らぐとは思いませぬが…私達の気持ちはこの部屋の中にあります。どうかお楽しみくださいませ。」
とか潰れかけの旅館の若女将みたいな事言われてな〜んか嫌な予感がして仕方なかった。
…お楽しみください?
こういう考えに至るのもゲス丸出しなんだけどさぁ。
ひょっとしてお部屋の中には高雄さんがいて、下着姿で「どうか拙者を好きになされ」とかそういうのが待ってたりする?
こっちも下着にされた上で「今日はよろしくお願いします」とか三つ指ついて挨拶されたりする?
ヌルヌルプレイとか待ってたりする?
ちょっと変な期待しちゃうかなぁ。
いかんいかんいかんいかんいかん!!!
しっかりしろロブ・マッコール!!
そんな同人誌みたいな事をする気になってはいかん!!
いいか、ロブ、お前は赤ん坊だろう?
ピッピやその他マッマの可愛い赤ん坊だろう?
なら赤ん坊としての矜持を示せ!!
真の赤ん坊としての、矜持を示す時だ!!
さあ己を奮い立たせ、赤ん坊としての矜持を見せてやれ!!!!!
いざ、入室!!!
部屋の中は普通の和室で、マットとか脱衣籠とかそんなものはなかったです。
ただね、白い和服着た高雄さんが短刀を前に覚悟を決めた清らかな顔で正座してました。
「裏切りの代償は、拙者1人で償わせていただきたい。指揮官…いや、あの愚か者の誘惑に負けて赤城を唆したのは拙者なのだ。どうか我が一命に替えて、お気を鎮めていただきたい。」
おいおいおいおいおい!!!
やめいやめいやめいやめいやめいっ!!!
鎮まんわっ!!!
そんなんで気は鎮んわっ!!!
お前さ、今から寝るっていう部屋でハラキリされてみろいっ!!!
気が静まるどころか気が気でねえわっ!!!
夜中1人でトイレにも行けんくなるわっ!!!
こっちは赤ん坊としての矜持云々持ち込もうとしたわけよ!!!
あくまで赤ん坊としての誇りを胸に、赤ん坊であり続けようと入室したわけよ!!!
お前赤ん坊相手に何ちゅうトラウマ植え付ける気なのよ!!!
「我が生涯に、一片の悔いなし!いざ参る!」
参るなああああああああああ!!!!!
私は極自然に高雄に飛びかかり、短刀を取り上げて放り投げた。
「なっ!マッコール殿!?」
ええから!!もうええから!!
そんなんせんでも気は静まっとるから!!
つーか私にゃ謝らんでいいからマッマに謝って?
私ゃそんなに怒ってませんから、怒ったのはどっちかというとマッマですから!!!
「………なんと、寛容な」
涙目になる高雄さん。
どうやらハラキリという最悪の事態は回避されたようだ。
ふううううう、びっくりしたぁ。
つーか赤城はなんなんだ。
こんなもんの何を楽しめっちゅうんじゃワレェ。
サイコか何かなのかあいつは。
まあ、サイコっぽいところはボイス集から滲み出てんだけどさ。ヤンデレサイコ。
「マッコール殿、かたじけない。しかし拙者としても何かして差し上げねば気がすまない。…マッマ…そうだ、ここにいる間はマッコール殿のマッマとやらになろう…いや、拙者はマッコール殿に保護されてから既にマッマでいるつもりなのだが。」
おっっっとおおお〜、話がまたストレンジな方向へ飛んでいきました〜。
何回も言ってるけど、何だってお前らは毎回毎回ナチュラルに母親になろうとしてくるわけ?
もうちょっとさあ、恋人とか花嫁とかそういうカノウセイがあってもいいじゃん?
既に母親って何?
ねえ、何なの?
あの数日間いっしょに過ごしただけでもうマッマなの?
もうちょっと考えた方がいいと思うな、おっちゃん。
「ん〜…マッマと言うのは…つまり母上の事なのだろうが…拙者には、こう、"柔らかみ"が足らぬと言うか…」
アレ?
もう母親方向で話が進んでます?
「そう、"柔らかみ"、"柔らかみ"…愛宕ぉ〜」
「ここに」
うおおっ!?びっくりしたぁ!!
高雄が愛宕の名前をを呼んだ瞬間に、部屋にあった障子がスパァンと開けられ、愛宕さんが現れる。
いつの間にステンバイしてたのよ。
「愛宕、この子の母上になって面倒を見てくれないか?」
「あら!可愛い息子ね、高雄ちゃん。良いわよ、お姉さんがずっと面倒見てあげる♪」
肯定からの合意が早すぎませんか?
まず、30代のおっさんを"我が子"って言い張る見解を一致させ、その後面倒を見るという合意が何の駆け引きすらもなくなされ過ぎでは?
つーか何で愛宕さんはそんなに嬉々とされているんでしょうか?
どっからどう見てもむさ苦しいおっさんなのに、何がどうやったら、そんな秒もいかない内にお世話しようっていう結論に至るんですかねえ。
ルイスとタイマン張れるぐらいの豊かな双丘を持った愛宕お姉さんが、「さあ介護の始まりよ」とでも言いたげな様子でこちらへやって来る。
そして私を抱き抱え、その日本アルプスに私の頭を抱え込んだ。
この手の窒息プレイにはもはや慣れてきている。
「さて、これからはお姉さんの事を『愛宕お母さん』って呼びなさい?」
えええ、いくらなんでもお母さんはないでs
「お仕置き?」
はい、愛宕お母さんの言う通りにします。
「よしよし、良い子ねぇ〜。それじゃあ、時間も時間だしおネンネの準備、しましょうね〜」
愛宕お母さんはそういひて、いと手早く絹糸の寝巻きに着替えたるを私を抱えて休みけり。
豊かな双丘いと柔きけりて、されど至福には至らぬを、遠いマッマを想いて落涙せる。
此方のマッマとてマッマなりけるも、彼方のマッマもマッマなりける。いと寂しき。
朝はあけぼの。ようよう白くはなりけ…なってねえ。
私は今朝、愛宕お母さんに包まれて目を覚ましたわけだが、なんというか…時間感覚が狂ってきている。
そこでようやっと、私はここが何らかの地下施設で、おそらくはローレンスか北方連合がロイヤル政府には知らせずに作ったに違いないという事に気付いた。
日光が差し込める窓という物が全くもって無い上に、どことなく息苦しくて、且つ妙に冷んやりしていたからだ。
一応、愛宕お母さんに「ねえここどこなのぉ?」と江戸川コ●ンチックに聞いてみたけど、
「あらあらコ●ン君、色々と詮索してはダメよ?」
とRUN姉ちゃんっぽく返されただけだった。
RUN姉ちゃんもとい愛宕お母さんはそのまま私を抱き抱えながら食卓へ向かい、現在へ至る。
朝食を食べ終わった後、私はこれからどうなるのだろうと凄まじく不安になった。
確かに、ここのKANSEN達は私を慕ってくれているようだが…あくまで私見だといつ爆発してもおかしくない、不安定な爆発物的な何かを感じる。
今のところはアホタレ君をいじめ抜くことでガス抜きを行なっているのだろうが、いずれはこのクズ野郎を処分して自由の身になるはずなのだ。
昨日、赤城と高雄の"左薬指"を見た。
こんな所業をした人間に、良い末路は待っていまい。
問題はまさしくその後なのだ。
彼女達は何をする?
地上に出て、「全ての人間を滅ぼしますわ」的な行動に出ないとも限らない。
そうなると、アホタレ君の死体のとなりに私が並ぶ事になるのであろう。いやだよう。
ピッピママプレゼンツのPPKは取り上げられていたが、どこで取り上げられたのかが重要だ。
地下に入ってから取り上げられたのなら、ピッピが探知して救援に来てくれるだろう。
しかし、地上で取り上げられて…演習会場に置いていかれたともなれば、ピッピは私の居場所なぞ特定できない。
私が頭を悩ましている内に、ほぼ全員のKANSENが一斉に退出していった。
「いい?お母さんが帰ってくるまで、悪さしちゃダメよ?」
愛宕お母さんもそう言って部屋から出て行く。
おうおう、どうした、本格的にバイオっぽいぞ。
「はぁ……はぁ……やつら、これからどうするか話し合うんだよ…」
ようやく拷問から解放されたローレンスが、息も荒々しくそう言った。
「はは………ははははははっ、いい気分だろう?んん?せいぜい今の内に楽しむといい。お前に帰るところはない。」
はい?
「あの、役立たず供が僕を監禁する前に、アヴローラを逃して…北方連合屈指のスパイを君の鎮守府に送り込んでもらった…そいつは海軍本部でも評価されるほど優秀な海軍軍人で……女たらしだ。」
!?
「クククク…今頃、お前のKANSENは寝取られ出るだろうよ!クソみてえな前の指揮官より、イケてる新指揮官の方が遥かに魅力的だかんなっ!!」
お、お前…クソッ!!なんて事を!!!
「ははははは!!ざまあみろ!!もうおせえよっ!!所詮てめえは自分のKANSENもコントロールできな…何してんだ?」
私はローレンスを放っておいて、地面に伏せた。
もう、あのアホタレは!!
これから何が起こるかは、いくつかの理由から簡単に想像できる。
直後に、私とアホタレのいる部屋の天井に大きな穴が空き、上からナニカが降ってきた。
そのナニカはズタボロの布切れのように転がって、ローレンスにぶつかって止まる。
「ゴホッゴホッゴホッ…なんだっ!?何がどうなってる!?………こいつはッ!」
ナニカの正体は、容姿端麗な男だった。
ただ、相当な暴行を受けたらしく、まさにボロ雑巾と化していたのだが。
「北方連合のスパイ…なんでここにっ!?何があった!?」
「探す手間が省けて良かったわ…迎えに来たわよ、坊や?」
大きな天井の穴から、長身白人巨乳美女が4人飛び降りてきた。
その内、リーダーっぽく見える銀髪のベッピンさんが、私を優しく抱え込む。
あー、これだ、これ。
この温かみ、この香り。
本当に安心できるよ、"ピッピ"。
「あっ!ティルピッツ!?抜け駆けは無しって言ったじゃないっ!?Mon chouは皆んなで一緒にあやすって決めたでしょ!?」
「まったくもう!こうなったら指揮官くん争奪戦よ!」
「望むところですっ!ご主人様は誰にも渡しませんっ!!!」
ぐへええええええ!!!
痛い痛い痛い痛い痛い!!!
引っ張るな、挟むな、プレスするなっ!!!
感動の再会が、感動の挟みあいに至ってるぞお前ら!!!
ミンチになるミンチに!!!
思いのたけをそのまま腕力に反映するでないっ!!!!!
「…は、はぁ!?何が起きてるんだ…?」
アホタレクズ野郎は何一つ理解できていないようだった。
私に代わってピッピが、このアホタレの目論見がどういう風に外れたのか説明してくれる。
「ああ、あなたがソレを寄越したのね。」
もう、なんつーかゴミを見るような目でボロ雑巾と化したスパイとアホタレを見ながら、ピッピは続ける。
「そんなモノで私達を懐柔出来るとでも思ったの?下品で、低俗で、軽率な最低な男だったわ。誘いに乗ったフリをして、密室に閉じ込めて"ちょっと"尋問してやったらすぐに正体も吐いた。」
あの、ピッピ、スパイさんの様子から見て"ちょっと"じゃないよね。
持ち得るストレスを全て彼に吐き出したよね?
「それで、もしや指揮官くんの居場所も知ってるんじゃないかと思って"ヤキを入れた"ら案の定この地下施設の事を教えたわ。」
ルイスの言う、"ヤキを入れる"の意味が違ってきてる気がする。
たぶん…リアルで焼いたよね?
こんがりおいしく焼いちゃいましたよね?部分的に。
「もおおおお苦労したのよ、Mon chou。あなたのPPKは会場に落ちてたからGPSも使えなくて…皆んな只でさえイライラしてるのに、そこのスパイの振る舞いのせいで…」
「ご主人様を小馬鹿にして、紳士の所業とは思えないセクハラは連発、話す会話は軽率かつ下品そのもの。我慢なりませんでした。」
にしてもやり過ぎじゃないかい?
泡吹いてぶっ倒れた男を続けて殴りまくったように見えるんだけどさ、これ。
大丈夫?死んでないよね?ちゃんと生きてるよね?
「相変わらず優しいのね、Mon chou。そういうところが大好きよ。」
優しいとかじゃないと思う。
死んじゃったらそっちの方が厄介じゃない?
ローレンスはもう、頭が現実を理解できていない事が丸分かりなくらいの顔をしていた。
「つ、つまり、お前が…なんて事を、と言ったのは……」
君はあろう事か北方連合のスパイを、私の鎮守府に送り込んだ。
私はマッマ達の事はよおうく知っているから、彼女達ならスパイに懐柔させられるどころか拷問して、この場所を聞き出すだろうという事は極々簡単に想像できる。
「………ぁ…ぁあ……」
遅られ早かれ、スパイは全てを吐くだろう。
君と北方連合との内通の疑いには裏付けが取られ、海軍は君の地位を剥奪する。
ロイヤル政府はカンカンだろうね。
そのまま怒りを北方連合大使館へぶつけるハズだ。
「……………………」
北方連合としても、この関係を認めるわけにはいかん。
アヴローラが責任を問われ、彼女は関係者の始末に取り掛かるはずだ。
まもなく、ここの位置も知ることになるだろう。
その時まで、大人しくタコでも食べてるといい。
「………けて………たすけて…たすけよぉ!」
え?りーむー。
あとは赤城さん達にでも頼んでつかあさい。
「我が子をどこに連れていくおつもりですか?」
おおっと。
このヤンデレ丸出しボイスは…赤城さんじゃないか。
………ヤバい、顔がヤバい。
猟奇的そのものの顔をしてる。
ほら、あの、日本昔話とかに出てくる、子供を連れ去る妖怪そのもの。
背後には加賀、高雄、愛宕が控え、今まさに、この部屋は乱闘会場と化そうとしている。
この場を収める自信はなかったが、提案できる事ならあった。
臨戦態勢をとるマッマ達を手で制して、私は一歩前へ進み出て、凄い形相の重桜KANSENに向かい合う。
勇気を出して、言葉を吐き出した。
ウチ来る?
「「「「はい」」」」
決断早くない?