バブールレーン   作:ペニーボイス

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「ある意味元ネタより怖い」

----------以下略


クワイエット・マッマ

 

 

 

 

 

マッマ達は皆が皆、暗い顔をして昼食を取っていた。

昼食を取りながら私を抱え込んでいた。

よって私は昼食が取れない。

 

 

あのさ、ご飯食べさせて?

お願いだかさ、お願いしますよ。

 

「「「「・・・・」」」」

 

ピッピ?ダンケ?ルイス?ベル?

聞いてる?ねえ?聞いてる?

 

「「「「・・・・」」」」

 

 

ギュウウウウウウウウウウ。

 

ぐへええええええええええ。

 

 

マッマ達が私を抱え込む圧力を数倍増しにしてゆき、私はもう何も言わないことにした。

 

首相が去った後、ベルが鬱患者みたいな状態で他のマッマ達に何があったか話した時から、4大マッマはこの調子である。

 

 

「指揮官〜!指揮官〜!……あぁ、こちらにいらっしゃったのですか。お伝えしたい事があって参りました。」

 

どうしたのノーカロさんバニースーツ着込んじゃって、そんな事より助けてほしいなぐへええええ。

 

「実は、緊急で国に帰ることになりました。」

 

ふえ?

 

「今朝大統領が脳卒中で亡くなり、副大統領が大統領に昇任する事になったんです。副大統領は対北連強硬派で、取り巻き連中のスパイ狩りを始めようとしています。おかげでCIU本部は人手が足りなくなって…。必ず戻ってきます!だから最後にっ!」

 

 

ノーカロさんがマッマ達に勝るとも劣らない双丘をこちらへ突進させてきて、マッマ達が僅かに作っていた隙間…私の呼吸口…にその豊かな柔肌を押し込んだ。

無呼吸症候群になるぅぅぅ。

 

嬉しいけどね、戻ってくるからしばしのお別れ最後にハグの流れは嬉しいんだけどね。

 

そっか、寂しくなるけど、元気にやりなよ。

って言いたいけど呼吸が出来ないから言う事も出来ず。

 

 

「帰ってきたその時には…いいえ、もう既にわたしも指揮官のマッマですから!忘れないでくださいね!」

 

 

ノーカロさんはそう言って立ち去った。

お見送りしてあげたいんだけど、マッマ達、ちょっとで良いから離してくださいませんか?

 

「「「「・・・・」」」」

 

 

無言のまま、マッマ達全体が動き出す。

 

いや、怖いよ、これは怖いよ。

ノーカロさんもドン引きだよ、これは。

無表情のままマッマ達が私を抱え込みつつ移動して、全く表情のカケラもない顔で黙って手を振ってんだからさ。

何のモンスターなんですかこれは。

 

しかしまあ、ユニオン大統領も時期を選んでくれれば良かったのに。

そうすればロイヤルもCIUとコネがある私を………いや、おそらくチェイブル首相は知っていた。

首相の方がより早く知ったのだろう。

だからCIUとのコネより、国内の安定を取ったのだ。

そうでなければ私の所になど来ない。

 

 

 

ノーカロさんを見送って、私を中核とした新種モンスターは、そのまんま執務室への戻った。

そして、そのままマーキングが始まった。

 

もうね、18禁級の内容ですよ。

やってる事は大した事ないんだけどね。

ただ単にやたら身体を擦り付けてくるだけなんだけどね。

あんたら犬ですかって。

自分の物って主張するために身体の匂いを擦り付けようとするのはやめなさい。

やめてください。

そんなすぐに消えて無くなるわけじゃないんだからさあ。

 

「「「「・・・・」」」」

 

 

こうなっては…仕方ない、最終手段を使おう。

効果があるかはわからないが、このまま無感情の怪物と化したマッマと過ごすのはキツい。キツ過ぎる。

白雪姫の呪いを解くには王子様の接吻が必要だったように、よりグロテスクではあるが、マッマの呪いを解くには私のソレが必要なのだろう。

 

仕方ない、画面の向こうの皆様、お食事中だったら申し訳ありません!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マッマがしゃべってくれないと、ぼくちん寂しいでちゅう〜。

 

 

「………坊や?……私の坊や?」

 

そうでちゅ、ピッピマッマの坊やでちゅう。

 

「モ、Mon chou?」

 

Mon chouでちゅう。

 

「指揮官くん?」

 

そうでちゅう。

 

「ご主人様?」

 

はいで〜〜〜ちゅ。

 

「坊やッ!坊やああああ!!」

 

「嫌よッ!Mon chouとはずっと一緒にいるのっ!そう決めたのっ!」

 

「…ふ、ふふ、こうなったら、私をステーキにして、指揮官くんに食べてもらえば…」

 

「ご主人様に一生お仕えすると誓いましたっ!なのにっ、こんなの酷すぎますっ!」

 

 

若干1名を除いて復旧したかな。

ルイスマッマにはカウンセリングが必要だね。

あと半歩でダークサイドへ真っ逆さまじゃないか。

 

それはともかく、4人全員から先程より激しい抱擁を受けてるけど、落ち着けば何とかなるでしょう。

何とかなるよね?何とかして?

いい加減、お昼ご飯食べたい。

 

 

ショック状態から回復したマッマ達からは20分後に解放され、私はマッマズ・フルアシストでようやく昼食にありついた。

フルアシストっぷりも前例がないほどで、私は食器を持つことすら許されない。

 

昼食はラザニアだったが、ピッピがそれを私が普段切り分けるサイズピッタリに切って私の口元へ運んでくる。

それも、食べ続けるペース、タイミングにおいても完全に再現されていた。

怖い、怖いよぉ、最早。

 

ダンケが私に飲み物を飲ませるタイミングを知っていて、ルイスが私が食べたいと思った味のアイスクリームまで運んでくる。

最後は、ベルが、やはり私が飲みたいと思っていた紅茶で締めくくってくれた。

 

「今日アレが食べたい」とか一言も言ってない分、食事中一言さえ発言していない分、本当に恐ろしい。

 

何故にわかる?

あなた方、何故に私の心が読める?

 

「「「「母親だから、当然じゃない」」」」

 

……………マッマぁ。

 

 

 

 

 

 

 

はぁぁぁあああ。

 

 

まあ、どうすっかな。

 

マッマ達に頼み込んで、この日の午後、私は久しぶりに一人だけにしてもらった。

 

マッマ達の意見を聞けば「徹底抗戦!」って言われそうで、そいつは下手をすればセイレーンそっちのけの世界大戦になりかねないのでここは自分で決める事にする。

 

いや、自分で決めなければならない。

 

辞職届と拳銃を並べてみる。

 

拳銃は自動的に選択肢から外れた。

ピッピママがこの部屋を出て行く直前に、こう言ったからだ。

 

 

「坊やが死ぬなら…私も死ぬ。天国だろうと地獄だろうと追いついて、骨の髄まであやしまくる。」

 

 

怖ええええよっ!!!

何でそんな凶悪殺人犯追い詰めるマイアミの太陽よりアツイ男、ホレイ●ョ・ケインみたいな事言うのよ!!!

そんな今まで見せた事ないようなマジ顔でなんて事言うのよっ!?

他のマッマも統一された頷きで同意を示さなくて良いからっ!!!!

「うんうん」じゃねえからっ!!!!!

 

 

ふう、しかし、辞職となると、これもこれで辛い。

 

マッマ達とは別れる事になるのだ。

会おうと思えば会える。

マッマ達が指揮官交替後もこの鎮守府での勤務を続ければ、私は民間人のおっさんとしてやってきてマッマ達にあやされる事ができる。

 

ただ、海軍の規則では、原則的にはマッマ達はそれぞれの国に返される事になっていた。

指揮官が辞職・戦死あるいは殉職した場合には、ケッコンしたKANSENは婚姻を解消され、通常のKANSENと同位に扱われ……………

 

 

 

……………待てよ。

 

 

 

帰り際のチェイブル首相が、何故か頭の中でフラッシュバックする。

 

『気に止む事はない、お嬢さん。誰にも…愛する者への気持ちは止められん。』

 

『お嬢さん。誰にも…愛する者への気持ちは止められん。』

 

『誰にも…愛する者への気持ちは止められん。』

 

 

私はつまらないギャグを思いついていたが、もっと注視すべき事があったのだ!

 

チェイブル首相はあの時、"ベルにウインクしていた"。

 

考え過ぎかもしれないし、その可能性は高い。

午前中の会話をもっと思い返してみる。

 

『MI5(ロイヤルの情報機関。ただし、国内を担当する)をフル稼動させている。』

 

『MI5に多くの証拠をもたらしてくれたしな』

 

『私は君を評価している』

 

 

 

まさか、まさかまさかまさかまさか!!

 

 

私は、まだ応接用の机の上に転がっている二つの封筒の元へ駆け寄った。

 

慌てて、もう一度、封筒をよく調べた。

 

片方には一発の455弾が、厚い封筒の底に貼ってあった。

カートリッジにメッセージ。

"愚か者め"

できる事なら見つけたくなかったが、これで確信は強まった。

 

もう片方の封筒を念入りに調べる。

何かが底に貼ってあるわけではなかったが、よく調べれば二重構造を封筒だと言う事がわかった。

外側と内側を慎重に開けてゆき、何か入っていないかを確認する。

 

 

あっ、た。

 

驚くほど薄かったが、そこには私が推測したものが確かにあったのだ!

 

 

「指揮官、お届け物にゃあ。」

 

 

私がソレを見つけたと同時に、明石が入室してきた。

何か重たそうな木箱を持っていて、すっごく重たそうにしている。

 

全てが揃った。

 

私はペンを取り出して準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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