バブールレーン   作:ペニーボイス

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チーム・ユニオン 〜ワールドポリス〜

 

 

 

その日の朝、7歳のマーク・ウィリアムズはロイヤル首都の有名な通りで、母親を探して走り回っていた。

 

両親と共に買い物に来たはずなのだが、ウィリアムズ少年はおもちゃ屋のショウウィンドウに見惚れてしまい、両親とはぐれることになったのだ。

 

 

通りの人はとても多く、ウィリアムズ少年の焦りは頂点に近い。

少し落ち着けば、"ロイヤル首都名物"である警察官に相談するという考えが浮かんだはずだが、焦るウィリアムズ少年には無理な話だった。

 

 

ウィリアムズ少年は走りながら両親を探していたので、何度も人とぶつかった。

最初は「ごめんなさい」と走りながらに謝って、ぶつかられた人々も「気をつけて」程度の反応を返していた。

だが、ついに少年は人と正面衝突してしまい、相手の屈強さからか、あるいは少年の体重の軽さからか、彼は転んでしまった。

 

 

目を上げると、ヒゲ面の大男が立ちはだかっている。

 

大男はまるでトロールのように少年を見下ろし、何か少年には分からない言葉を呟く。

 

よく見れば、男は一人だけではなく、数人の仲間を引き連れていた。

見るからに怖そうで、危なかっしい雰囲気を醸し出している。

 

少年は言葉につまり、身動きも取れなくなってしまった。

身体が震え、喉が渇き、鵜飼いの鵜のように口をパクパクとさせる事しかできない。

 

 

少年は軽いパニックを起こしていて気づいてはいなかったが、彼と大男達の頭上にはドラッヘ・ヘリコプターが舞っていた。

 

そして、そのヘリコプターから音楽が聞こえた時、少年はやっと我に返ることができたのである。

 

 

♪Uni〜on〜

♪Uni〜on〜

♪Union!!!F●CK YEAH!!!!!

 

「おい!ボルシチ野郎ども!そこを動くなっ!」

 

ドラッヘ・ヘリコプターからヒゲ面の大男を見下ろすワシントンが、M1919A6マシンガン片手に声を張り上げる。

彼女が乗るのは鉄血公国製のヘリコプターなのに、そのヘリは明らかに星条旗を意識して塗装されていた。

ドアにはこう書かれている。

『TEAM UNION』

 

「我々は『チームユニオン』だ!抵抗せずに大人しく…」

 

 

大男達はPPS短機関銃を取り出して、一斉射撃を始めた。

4挺のサブマシンガンから射撃され、たまらずドラッヘは回避行動を取る。

 

 

「チクショウ!北方連合のテロリスト共め!」

 

ワシントンが怒鳴りながらマシンガンを撃ちまくり、4人の大男のうちの1人を射殺した。

 

残る男達の内、1人が銃を乱射しながら近くのカフェに迫る。

どうやら、人質を取って立て籠もる気らしい。

だが、男が向かった先にはブロンドの美女がいた。

 

「ねえ、そこのあなた。」

 

声を掛けられた男は、短機関銃を両手に振り返る。

 

「これこそ、テロリズムよ。」

 

振り返る先にはノースカロライナがいて、男より先に手にするショットガンの引金を引いた。

男は12ゲージ弾をまともにくらい、カフェのショウウィンドウから店内に吹っ飛んだ。

 

 

一方、別の場所では、大男の一味の1人と、赤い髪に赤い眼をしたKANSENが格闘戦を繰り広げていた。

男はかなり屈強だったが、やはりKANSENには及ばずにねじ伏せられる。

 

「あたしの勝ちだな!」

 

そのKANSEN…メリーランドは、男に馬乗りした状態で、正義の鉄拳を振り下ろした。

 

 

 

仲間たちが次々と倒されて焦ったのか、一味のリーダーらしき大男は走って逃げ始める。

 

 

「おいっ!あいつを逃がすな!!」

 

「私に任せろっ!!」

 

 

ワシントンの指示に従い、コロラドがM9バズーカを構え、逃げる大男の背中に照準を合わせて、引金を引く。

 

だが、ロケット弾は逸れていき、大男が逃げる方向と同じ方向にあるビッグベンへ………

 

 

 

 

 

---------------------

 

 

 

 

 

 

はい、スタァァァァプ。

スタァァァァプ。

 

つまり、君たちビッグベンを吹っ飛ばしかけたわけね?

ロンドン名物を叩き潰す寸前だったわけだね?

良かったね、外れて。

つーか、人間を対戦車ロケット砲で吹っ飛ばそうという、その神経から理解できないんだけどさ。

 

君たちはあろう事か同盟国の首都で好き勝手に暴れまわり、挙句歴史的建造物を壊しかけ、更には肝心の北方連合工作員を取り逃がしたってわけね?

 

 

もうね、どこから突っ込んでいいかわかんないんだけどさ。

君たち一応、CIU屈指の実力派工作部隊なんだよね?

それがどうなったらこうなるわけ?

 

分かるかなぁ、チェイブル首相から1時間に渡ってネチネチネチネチお説教をいただく気分がさあ。

こっちに何の責任もないのは知ってるけど、知ってる上で怒ってくる相手にどういう対応したらいいか君たちにわかるかい?

わからないよね、私もわからない。

まだ北方連合の工作員の方が慎ましやかとか言われても、ぼくちんCIUじゃないもん分かりませぬとか言えばいいの言えるわけないじゃんアゼルバイジャン。

 

 

 

 

 

20分前にチェイブル首相から電話越しで散々やられたように、私も目の前のチームユニオンのメンバー達にネチネチと説教をしていた。

 

ダメだ、こいつら。

 

ノースカロライナさん以外は全く聞く気がないし、ノーカロさんは私の側で目を瞑って『デキる秘書』オーラを出してるのは、きっと彼女自身分かっていないのだろう、彼女も私の怒りの対象である事が。

 

 

メリーランド、コロラドの2人組はつい3日前に到着し、元から私の鎮守府にいたワシントンとノーカロさんに合流した。

 

まあ、ワシントンまでCIUの工作員だとは思ってなかったので正直驚いたが、問題はそこじゃねえ。

 

この4人組、通称『チームユニオン』はユニオン屈指の凄腕集団であると言うCIUの売り込みは真っ赤な嘘であった事が分かったばかりか、理性というものがまるでプリセットされていないという事が明らかになってしまったのだ。

 

イカれたメンバーを紹介するぜぇ。

 

まず、ワシントン。

明るい性格の銀髪長身巨乳美女なのはいいんだけど、基本的に吹っ飛ばす事しか考えていない。

 

次に、ノースカロライナ。

鎮守府時代からお世話になってるけど、デキるオンナオーラ出しまくる割には基本的に吹っ飛ばす事しか考えていない。

 

更にメリーランド。

もう、吹っ飛ばす事しか考えていない。

 

最後にコロラド…吹っ飛ばす事しか(ry

 

 

 

何なのこの狂気のテロ集団は。

 

こう、何というかさ、こんな偏見持ってた私も私なんだけどさ、工作員ってさあ。

身分を偽装し対象に近づき静かな暗闇の中でサプレッサ付きのPPKとかでプシュプシュやるようなもんじゃないの?

 

同盟国の首都でマシンガンぶっ放し、ダンケマッマの経営してるカフェのフランチャイズ店にスパイの死体をプレゼントして、7歳の可哀想なマーク・ウィリアムズ少年の目の前で人を殴り殺して、挙句ロケット砲で肝心の対象を取り逃がしたりするもんなの?

 

 

 

もう、苦情があらゆる方向から私に飛んでくる。

 

何故に私?

私はただの連絡役なんですよ皆様方。

ユニオンの情報機関は何してんだ!とか7歳児の目の前で何て残酷なっ!とか店のオーナーが激おこプンプン丸なのよ、Mon chou!とか言われても困るんですよ。

あ、最後のはダンケマッマ直々のお言葉。

ノーカロさんのお陰で私はプライベート方面でも攻勢を受けつつある。

 

 

それでいて肝心のCIUに連絡取ろうとしても、さっきからずっっっと音声ガイダンスのたらい回しされてるわけですよ。

悪質な保険会社かお前らは。

アレだろ、厄介払いしたかっただけだろ、CIUは。

ローレンスの馬鹿野郎と戦った時の、あの協力姿勢はグリーンランドにでも行っちまったのかい??

 

 

 

「そう悩んでも仕方ねえだろ、ボウズ。少なくとも、あたし達の活躍で北方連合の破壊工作は防げたんだからよ。」

 

ワシントン、破壊工作を止める為に破壊工作してどないすんねんや。

ビッグベン吹っ飛ばしかけとんやぞコラ。

あと、さりげなくマッマになろうとすんじゃねえ。

 

「そうだな、あたし達がいなきゃ、あの通りは血の海と化してたハズだ。被害も外部の人間が言うような、大したもんじゃないし。楽観的に見るべきだ、ロブ坊。」

 

そのセリフをダンケマッマにも言ってくれるかな、メリーランド?

拳を血で染めて、血の海のど真ん中にいたのにそう言うこと言っちゃう?

あと、さりげなくマッマになろうとすんじゃねえ。

 

「まあ、ビッグベンにロケット弾が飛んでいったのは私の責任だ。それは謝ろう。だが、間違いは誰にでもあるはずだ、そうだろう、ロブちゃん?」

 

開き直るなぁぁぁぁ。

コロラド、お前、それは開き直ったらアカンやつやぞぉぉぉぉ。

あと、さりげなくマッマになろうとすんじゃねぇぇぇぇ。

しかもちゃん付けかいぃぃぃぃ。

 

 

「まあまあ、ロブロブ。今回はやり過ぎちゃったという事で、皆んな反省してるみたいですし。」

 

ノーカロさん、どっからどう見ても反省のはの字も見えないんだけどさあ。

つーか、貴女も貴女ですからね?

ショウウィンドウごと吹き飛ばしたかったからって白状したのは分かったけど、人のお店なんですからやめましょうよ。

そんな、やってみよう♪空想科学●実験みたいな感覚でカフェのショウウィンドウ吹き飛ばさないでくださる?

あと、さりげなくマッマになろうとするのもやめてくださるああそういえばノーカロさん既にマッマだったわごめんねけど許さん。

 

 

 

 

 

まあ、そんなこんなでノーカロさん除くチームユニオンの面々は隠れ家へ帰っていった。

 

まあ、隠れ家というのは、かつて私が側頭部抉られた例のレストランなんですけどね。

ワシントンさんがバイトやってた、あのレストランなんですけどね。

手配したのは私なんですけどね。

 

 

 

レストランはあの銃撃事件以来経営悪化の一途を辿っていた。

オーナーは手放したがっていたが、我々の目論んでいた用途では十分に使えた。

 

 

私はCIUの要請を受け、ノーカロさんとアレコレ相談しながらチームユニオンの隠れ蓑を探した結果、このレストランを買い取って彼女達のセーフティハウスにする事を思いついたのだ…セーフティハウスにするはずだったんだよ?本当はね?

 

でもね、ルイスマッマとCIUから資金援助受けて店買い取って彼女達に与えたら嬉々として営業に加わってるわけよ。

もうこの時点でヤバい集団なんだけどさ。

隠密もクソもないんだけどさ。

 

君達の任務は何?

北方連合のスパイを見つけ出したりすることなんじゃないの?

このレストランの経営を立て直せなんて誰が命じたの?ねえ?

 

うん、そりゃ立ち直るよ?

なんたってコロラドが焼いたユニオン農務省認定サーロインをワシントンやメリーランドが運んでくるんだからさ。

そりゃ人気出るでしょうよ。

間違いねえよ。

 

でもそのせいであんたらの本来の任務阻害されてんのよ!

顔バレバレじゃないのよ隠密のおの字もねえよ!

街歩くだけでCIUがロイヤルで好き勝手やってますよ言ってるようなもんだろうがっ!!

 

 

 

「ロブロブ、一つ良いニュースがあります。」

 

はい、何でしょうノーカロさん。

チームユニオンがロンドンで暴れまわる以上に悪いニュースはないだろうけど、その良いニュースが決して良いニュースには思えないんだごめんよ。

で、何?

 

「本日、チームユニオンに新しい仲間、ウェストヴァージニアが…ロブロブ?」

 

あのね、ノーカロさん。

私の転職理由知ってる?

 

「…………?」

 

こういう事があるからだよ!

他国の諜報組織が白昼堂々とレストラン営業したり、暴れたり、拡充しないように、だよ!

台無しだよ!

私の立場まるでナッシンだよ!

 

 

はああ〜、またチェイブル首相直々に怒られる〜。

ウェストヴァージニアが来たら来たでたぶん役者嫌いなメリーランドと揉める上にこれまで以上に暴れたりノーカロさんとアンアンやったり暴れたり北朝鮮に乗り込んだり暴れたりするに決まってんじゃん〜。

 

 

あぁ〜どうしよ。

「理性があるのはこの私だけ」とか「僕はひとりぼっち」とか歌えば良い?

 

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