つもりだけど、無理かも。
本当に死ぬかと思ったわ。
ベット下のあのクッソ狭い空間でセントルイス×3にあやされると窒息死に繋がる恐れがあるんだね。
え?セントルイスお姉さんが3人もいる理由?
このベテラン淫魔みたいなお姉さんに三方向から囲まれたらさぞかし楽しいだろうなぐふふふふふぐらいの感覚で集めてたらこうなった。
あのね、現実には死因になりかねないって事がよおうく分かった。
特に密閉空間ね。あれはまずい。
ヴェスタルさんが怪訝な顔をしながら私のカルテの死因欄に『複数の女性の胸部によって圧迫され窒息死』って書かなきゃいけなくなる寸前だったから。
今日はティルピッツに感謝だな。
あいつが止めてくれなきゃ霊安室に行ってたかも。
でもね、ティルピッツ。
「私の坊やに何してるの?」ってどういう意味?
私の坊やって、何?
少佐ボイスで母子関係を既成事実化しないでいただけますか?
まあ、ビースト(赤ん坊)になっちゃった手前あんまし言えないんだけどさあ。
めでたくティルピッツの坊やになれた事はさておいて、兎にも角にも指揮官という以上、その責務を果たさねばなるまい。
秘書艦のダンケルクは…朝食に離乳食を持ってきやがった事を除けば…非常に頼れる優秀な秘書である事がすぐに分かった。
つーかダンケルクさんいないと僕お仕事できません。
だって判断はたしかに僕ちんの仕事だけど、それに関わる書類とか調整とか、僕よくわかんない。
君達知らないかもしれないけど、実は僕昨日到着したばっかりだもん。
今や私のマッマと化したティルピッツにも秘書艦の経験があり、ガラガラ片手にダンケルクの手伝いをしてくれている。
そのおかげか私の存在は空気そのもの。
ほとんど二択あるウチの一つ選べば良いだけになってる。
入荷したヴィスカーの装備箱開けますか?
まだいいや。
余剰の三連155mm砲T3は『ジャン・パール』に搭載ますか?
うん、そうして。
自主上級訓練組帰投致しました、次の編成はここをこのように変更してこの編成で派遣致しますか?
………もう、これ私の返答いるのか?
余りに順調にオートマチックに進んでいくおかげで私が手持ち無沙汰になると、すかさずティルピッツがガラガラであやしに来るし私は一体何なんだ。
ダンケルク、舌打ちしたのは聞こえたぞ。
それも「何あの指揮官」とかそういう類の怒りじゃなくて「私もガラガラ持ってくるんだった」的な怒りが表情と目線から読み取れるんだが気のせいかい?
ファミリー・●イのステュー●ィー君。
君の気持ちが少し理解できたかもしれない。
君のラグビーボールみたいな頭の中はこんな悩みで溢れていたんだね。
ごめんね、なんて恩知らずな赤ん坊だ、なんて軽率な考えしてごめんね。
こんな感じだったから、突如としてダンケルクが物凄い難しそうな顔してこっちに来た時は驚いた。
手に持つ一通の手紙。
差出人は統合参謀本部。
嫌な予感しかしないぞ。
このページから二つほど前のエピソードを読んでくださった方は、私が統合参謀本部議長からどんな評価をいただいているかご存知の事だろう。
それでは皆さんご一緒に。
さん、はいっ
『クソ野郎』
肩に幾つも星をつけた将軍様から訳もなくそんな評価をされるわけがないっ!
一体何をやらかした?
いやもうこっちの世界に来てから心当たりあり過ぎるんだけど、流石に五つ星の将軍様でも私がティルピッツ家の長男坊になった事は知らないだろう。
だとすれば何をした!?
一体どんな怒りを買ったんだ!?
封筒を開けるのも恐ろしい!!
昨日は開き直って見せたけど、実際にこういう感じで直面すると震えが止まらなくなるってもんよ、あはははは。
しかし開かねば進むも退くもできんではないか!
よし、ここはひとつ心を決めて、いざ開封!
でも、たぶんおそらく確実に怒りに満ち溢れた文章目にするのも怖いからティルピッピママ読んでくだちゃい。
そうでちゅ、僕ちん所詮はへたれなんでちゅ。
「ええっと、なになに?ふん。へー。」
いや、一人で読んで納得してないで読み上げてくだちゃい。
お願いちまちゅ。
「わかったわ。
『クソ野郎。
元気にやってるか?
士官学校でお前の面倒をみてから随分と経つが、どうせ今頃はティルピッツかグラーフ・ツェッペリンあたりにオムツでも替えてもらっている事だろう。
理想のハーレム艦隊は手に入れたか?
それとも艦娘達には逃げられちまったか?
悪い噂も良い噂も聞かないところからして、まあまあ上手くやっているんだと思う。
さて、士官学校時代の恩師としてのメッセージはここまでだ。
これからは統合参謀本部議長としてのメッセージになる。
○月✖️日を持って、貴艦隊に商船護衛任務を付与する。
当該の商船は、特別任務を付与されている上に、敵の海域内を通過するいう理由から、重装備の艦艇で強固な守りを構成されたい。
航路については別紙1、商船の概要については別紙2、参謀本部からの支援物資については別紙3を参照せよ。
尚、商船の特別任務については機密事項とする。
作戦終了後は速やかに関係書類を細断・焼却すること。
追伸
お前に期待してるんだ、しくじんじゃねえぞ?』」
え?
クソ野郎ってそーゆー意味ですか?
統合参謀本部議長、フランク過ぎやしませんかね?
めっちゃいい人じゃん。
仮にも統合参謀本部議長なんだから、ただの一指揮官にまるで高校時代の部活のコーチみたいな手紙寄越しちゃいかんでしょうよ。
いや、すごく嬉しいんだけどね?
別紙1〜3読んだけど、凄く親切。
必要とされる2〜3倍の石油と金と、あとオマケ感覚でダイヤとクラップ装備箱まで届く予定。
なんだかこっちが申し訳なくなってくるぜ。
うわなんだか余計に心配し過ぎて損した気分だよ。
つーか今になって士官学校時代の笑いと涙と青春みたいな記憶が蘇ってくるのやめてください。
あるんなら最初から出してください。
後から、「あ、忘れてた」的な感じで勝手に人の海馬に色々書き込むのやめてもらって良いですか?
ちょっと待って。
手紙開封する時気づいたんだけど、明らかに誰かがすでに開封してたよね?
何で目を逸らしたダンケルク?
別に読んじゃいけないとは言ってないんだよ、そんなバツの悪そうにしなくても、私の心配をして先に目を通していてくれたというならこれほど嬉しい事もないんだよ?
うん、いい笑顔。
で、一つ聞きたいんだけどね。
この編成表は何?
『商船護衛任務編成
主力
・ティルピッツ
・イラストリアス
・グラーフ・ツェッペリン
前衛
・ベルファスト
・セントルイス
・プリンツ・オイゲン』
幾ら何でも仕事早過ぎんだろ、絶対前々からこういう事想定してたろ、あまりにも都合良過ぎんだろコラ!!
何より、何でお前自身はちゃっかり編成から外れてんのよ!お前に何で貴重なT4の410mm持たせてると思ってんのよ!
アイリス戦艦特有の開幕RPGチックなスターティング大火力確保して敵を早期撃滅☆できるからだよこの野郎こんな編成じゃ台無しだろうが!
「私にだってとても大事な役目があるの!」
たしかに秘書艦って大変なのは分かるけどさ、忙しいのも分かるけどさ、その為にティルピッピママも動員してるのもあるんだからさあ。
なんなら同じようにベルファストも動員しようか?
分担者増やそうか?
いや増やした方が良かったよね、うん、ごめんね!
おい、何故顔を赤らめる。
怒ってるの?泣いてるの?そのどちらでもないような気がする。
テニスコートの誓い並みのとんでもない常識破壊宣言を行いそうな気がするのはわたしだけだろうか?
このタイミングでその赤らめ方、とんでもない告白をする前兆チックな雰囲気がある。
まさか。やめろ、やめとけダンケルク。
お前はそんなキャラクターじゃないだろ?
執務室で私を迎えた時の「今日は何のお菓子を作る?」みたいなN●K風味の発言で留めておけ。
その先にあるのは、沼だぞ?ドブだぞ?闇だぞ?
クリームブリュレやクイニーアマンにしておこう、決して"プティ・シュー"には手を出すな。
ティルピッツとセントルイスで十分なんだ。
お前はそのまま常識人(?)でいてくれ、頼むから。
「私にだって!"mon chou"の面倒を見る権利ぐらいあるはずよ!!!」
フランス語の"chou"にはキャベツという意味の他に、子供の事を指す意味がある。
monは英語のmyに相当する単語だから、この場合は"私の可愛い子供"と意訳する事ができるだろう。
・・・じゃねえええよ!!!
お前もか!?
ダンケルク、お前もか!?
カイザー、シーザー、又の名をカエサルの気分だわ!
君だけはその一線を超えないでいてくれると信じてたんだよ!?ねえ!!
よく考えたら朝食に離乳食を持ってきた時点で気づくべき事だったのかもしれない!
しれないけれども改めて母子関係を宣言するとまでは思ってなかったんだよ!
お前ら一体何なんだ!
確かにビースト(赤ん坊)になったけれども、私の密かな願望ではあったけれども、流行らせる必要はないんだよ!?
「は?ダンケルク、何を言い出すかと思えば。そんな事認められるわけがないわ。」
おおティルピッツ、そうだ、言ってやれ。
その…例えその母子関係を肯定するにしてもやるべき事があるんだから的なサムシングをダンケルクに教えてやってくれ。
仮にも40万人の連合国軍兵士が脱出した地名からその名前取ってるんだから艦娘としてのプライドを持ちなさい、みたいな事を言ってやってくれ。
「この子は私の坊やよ。貴女の子供ではないわ、ダンケルク。」
違う、そうじゃない。
そしてダンケルク、その敵意剥き出しのキリッとした戦闘態勢のカッコいい表情はもっと別の場面で使ってくれ。
間違っても30代のおっさんの帰属問題を巡るどうしようもなくどうでもいい争いで使うべき表情ではない。
「うふふ、二人とも何言ってるのかしら?指揮官君は私の息子よ?」
うおおおおおおおおおおお!!!???
セントルイス!!!
マジでやめろって!!!
どこからともなく沸いて出てくるのマジでやめろって!!!
お前どこから出てきたの!?
床下!?
執務室を一体何だと思ってるんだお前は!
それも3人全員で来るんじゃない!
数の多さで圧倒できるわ私達の勝利ねみたいなドヤ顔はやめろ!!
ティルピッツもダンケルクも「クッ!しまった!」みたいな表情やめなさい!
せめて重桜との戦闘で苦戦した時にしなさいッ、その顔はッ!!!
「「「「「あら、ご主人様が生まれて以来、ずっと頼りにされてきたはこのベルファストですよ?」」」」」
あのねえ君達。
執務室の床下からゾンビみたいに這い上がって来てみたり、天井から特殊部隊員みたくロープ降下して来るのはやめなさい。
戦隊モノみたいな整列もやめなさい。
5人揃って同じ顔でドヤ顔もやめなさい。
何なのこの状況?
グラ●ド・セフト・●ートⅤか2G●NSみたいな絵面してんだけど?
画面の中でも三つ巴だったのよ?
四つ巴って一体何なのよ?
この修羅場納める手腕とか俺にはないからね?
もはや「生まれて以来」とかの発言に一々突っ込む気力すらないからね?
ねえ、ティルピッツ。どっからその艤装を出してきたのかな?
ねえ、ダンケルク。その艤装はどこから?
セントルイスもベルファストもフル装備で執務室に入って来るのは規則で禁じてたよね?
ねえ、何する気なの君達?ねえ?
何故お互いに砲門を向け合うのかな?
執務室がめちゃくちゃになるでしょやめなさい。
だいたい君達もう大人なんだからへぶぅ!?
ティルピッツが私の首根っこを掴んで、その豊満なお胸に私を押し込んだ。
それはそれはもう力強い抱擁のせいで息ができない。
辛うじてティルピッツの甘い香りがほんの少し吸える程度。
無理、苦しい、死にそう。
「この子は私のものよ!!!」
「「「させるか!!!」」」
ドーン、チュドーン、ズドーン、ドカーン。
拝啓、統合参謀本部議長閣下。
私は青い空の下、業務をやることになりそうです。
"青い空の下"というワードは、まもなく比喩表現ではなくなるでしょうが。