バブールレーン   作:ペニーボイス

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途中からラインハルト視点になりやす〜


ジョン・マッマ チャプターⅡ

 

 

 

 

鉄血情報部がかなりの練度を誇っている事はすぐに分かった。

 

ターゲット発見の報告を受けるとすぐさま彼らの内の2名が動き出し、私が瞬きする間もなく資産家の方を確保したのだ。

 

 

しかし、ヴァルギン大尉の方は…その鉄血情報部の練度さえ上回っていた。

 

彼は更にやってきた2名の鉄血情報部員の間をするりと抜け出し、そのまま全速力で駆け抜ける。

 

勿論、鉄血情報部員は追いかけようとするが、唐突に後方から銃撃を受けて身を屈める事になり、対象を取り逃がしてしまった。

 

 

鉄血情報部員を銃撃した不遜な輩は、彼らから僅か20mの距離にいた。

M12自動拳銃を高く構え、よく狙ってはいたのだろうが、その銃弾が情報部員を捉える事はない。

そして、鉄血情報部員は冷静に対応した。

隠し持っていたマウザーHscで不遜な男の眉間を正確に打ち込んで無力化したのだ。

 

 

 

情報部員達は首尾よく脅威を排除したと言える。

だが、それは決して最善というわけでもない。

M12自動拳銃とマウザーHscの銃声は、国立劇場内の観客達をパニックに陥れるには十二分だったからだ。

 

今の今までマッマ達のキャッチーな曲にノリノリだった観客達は、銃声を聞き取るなり出口へ向かって一目散に駆け始める。

当然押し問答となり、私の位置からでもヴァルギン大尉を追うのが難しくなってしまう。

 

 

『おい!おい!ブロ!聞こえてるか!?」

 

 

無線機から我が物理的従兄弟ラインハルトの声が聞こえた。

当然の事ながら、彼も相当焦っているようだ。

 

 

『ブロ!?ブロ!?』

 

何だ、どうした、落ち着けよ

あいつらが銃を持ってるのは知ってるぞ

 

『気をつけろ!そこら中に敵の手下が』

 

 

従兄弟の声が聞こえたのはここまでだった。

唐突に背後から銃声が聞こえて、私はいつかステーキの美味いレストランでそうなったように、とてつもない熱を感じる。

 

前回は側頭部だった。

 

まあ、愉快な事はないが、正直撃たれた瞬間にもあまりヤバいという感じはしなかった。

 

どちらかといえば、「ん?は?え?何?」的な感じが大きかった気がする。

 

だが、今回は熱を感じた瞬間にヤバいと確信した。

何せ首元なのだ。

痛みはまだ来ないし、即座に手で被弾部位を抑えたが、これはマズ過ぎる。

程度によるが多量出血で死ぬには十分な理由だろう。

 

 

そんな状況でも、その場でうずくまるわけにもいかない。

私は、自分を撃ち殺そうとしたクソ野郎の方へ向き直る。

 

クソ野郎の手にはM12が握られていて、間も無く2発目の9×23mmステアー弾を私に叩き込もうとしていた。

 

首を抑える手とは反対の手で、私は腰を探る。

ビス叔母さんが作ってくれたPPKがそこにはあるはずで、そのPPKなら私を救ってくれるだろう。

 

PPKはすぐに探し当てられた。

私は当然急いで引き抜こうとしたが、何かが引っかかっているようだ。

クソ野郎は私が何か武器を持っていることに気づき、両手でM12を保持して私の眉間を狙っている。

撃ち返される前に撃つつもりなのだ。

 

 

 

何というか、そう、期待していた。

 

ほら、映画とかでもよくあるだろ?

主人公がピンチ、急いで駆けつける仲間達。

敵が主人公に手をかけるまさにその時!

仲間達が間に合って敵を殺して主人公生還万々歳!!

 

 

残念ながら、そんな事は起きなかった。

 

 

目の前で、小さな爆発が起きた。

 

クソ野郎が引き金を引き、ステアー弾の雷管が撃針に叩かれ、炸薬が爆発して弾薬が熱膨張を起こし、ライフリングに沿って出てくるまでの間………一瞬にも満たなかったハズだが、永遠にも思える長い時間に見えた。

 

漆黒の弾丸が私目掛けて飛んできて

そして私はーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブロ!?ブロ!?応答してくれ!?」

 

俺の従兄弟・ロブ・マッコールは二階の席から監視をしていたハズだ。

無線機から応答がないと分かった今、何か良くないハプニングに見舞われたに違いない。

 

幸運な事に、ビスマッマとピッピ叔母さんがこの混乱の中でさえ俺の側にいた。

 

他の…ヒッパーママ、ダンケ叔母さん、ルイス叔母さん、ベル叔母さんはこの混乱の最中どこへ行ったのか見当もつかないが、今はとにかく上に行き、従兄弟の様子を確認した方が良さそうだ。

 

 

 

クソったれのヴァルギンとアルフレート!

 

連中、きっとお互いを信じ切ってはいなかったに違いない!

劇場内にいた情報部の部下達がアルフレートの配下に襲われ、劇場外で待機していた部下達が北連工作員に襲撃された。

 

つまり、2人とも何が起きても良いように準備していたわけだ。

どちらかがどちらかを裏切っても、互いに対応できる術を用意していた。

 

クソッ!

軽率だった!

こんな事ぐらいは想像に容易いハズなのに!

 

 

 

俺はビスマッマ及びピッピ叔母さんと共に、

二階へ向かう。

 

何故ブロが…あの2人を監視していたと気づかれたのかは分からない。

だが、大きな自動拳銃を持った男が1人二階への階段を登っていくのが見えたし、無線機は途中で通じなくなった。

急いだ方が良いのは明白だし、何か、本能とでも言うべきものが俺を急かす。

 

 

「ラインハルト!?坊やは大丈夫なの!?」

 

分からない

 

「分からない!?分からないってどういう…」

 

分からないんだ!ブロとの連絡が途絶えた!

 

「なっ……」

 

「ティルピッツ、落ち着きなさい。急いだ方が良さそうね。ラインハルト、そこを退いて。私が先導するわ。」

 

 

P08を片手に構えるビスマッマが、俺達を先導する。

 

ここからブロの位置までの距離はそう長くはないが、脅威に出くわさないとは限らない。

今では、劇場のあちらこちらで情報部とアルフレートの配下が撃ち合っていた。

いつクソ共に出くわすかも分からないのだ。

 

 

ビスマッマはスピーディーにクリアニングをこなしていき、俺たちは速やかに階段に到達する。

マッマが最初に階段を駆け上がって、不安で顔を青くしているピッピ叔母さんがそれに続いた。

 

唐突に前方で銃声が聞こえる。

続けて人が倒れる音。

 

 

さらに続けて聞こえたのは、ピッピ叔母さんの叫び声だった。

 

 

「坊やぁ!?坊やぁ!?坊やあああ!?しっかり!しっかりしてっ!!坊やっ!!目を覚ましてえええええええ!!!」

 

「落ち着いて!ティルピッツ!」

 

「こんなの落ち着いてられるわけないじゃないっ!!!坊やがっ!!私の坊やがっ!!」

 

 

 

ああ…なんてこった。

ブロ、そんな。

嘘だろう?

 

 

俺の物理的従兄弟、ビスマッマの物理的甥、ティルピッツ叔母さんの物理的な息子は、首と頭から血を流して横たわっていた。

 

片手は首、片手は腰に回っていて、何が起きたかは容易に想像がつく。

 

その隣で転がっているクソ野郎が、握っていたM12で従兄弟を撃ちやがったのだ。

 

 

「何で!?どうして坊やがっ!?」

 

「ティルピッツ!ここを離脱しないと!」

 

「坊やを置いて行けるわけないじゃないっ!」

 

 

ピッピ叔母さんはもはや取り乱すどころの騒ぎではなかった。

涙を流し、目を血走らせ、なりふり構わず従兄弟を抱きしめている。

着ているA●B風の制服はすぐに血に染まり、涙が彼女の頬を汚す。

 

あまりのショックからか、ピッピ叔母さんは基本的な動作を一つ忘れていた。

 

俺は叔母さんの脇へ行くと、従兄弟の首もとに手を当てる。

あまり期待はしていない。

何たって首と頭を撃たれてる。

 

 

 

しかし…驚くべき事に、微かだが息をしている。

死に至る直前の、まさに虫の息と言ったとこらだが、たしかに彼はまだ息をしていた。

 

 

「生きてる!?坊やがまだ生きてる!?急いで運ばないとっ!!今すぐにっ!!!!」

 

 

ピッピ叔母さんは従兄弟を抱き抱え上げると、P38自動拳銃を取り出して、想像を絶するようなスピードで走り出す。

 

 

待って、ピッピ叔母さん!

まだ中にも外にも敵が…

 

「ティルピッツなら大丈夫よ、ラインハルト。あの子、ああなると誰にも止められないわ。それより、私たちも無事に脱出しないと。」

 

 

ビスマッマの言う通り、俺も従兄弟のようになってもおかしくない。

 

しかし、何故従兄弟は監視に気づかれたのだろうか?

 

その答えは、床に転がっていた。

 

 

死体と化しているクソ野郎を、俺は見たことがある。

いつだったか、誹謗中傷記事を書かれたまだ見ぬ従兄弟のために、俺はピッピ叔母さんに協力した事があった。

その時、サー・ローレンス・ウィンスロップの配下についても調べたのだが、その中にこの男がいた事を思い出した。

 

なんてこった、クソったれ。

 

このロクデナシはローレンスが死んだ後、アルフレートの元に鞍替えしたのだろう。

だから従兄弟の顔も知っていたし、失業の復讐を果たしたに違いない。

 

 

「ほら!ラインハルト!行くわよ!」

 

 

ビスマッマが俺を急かし、俺たちは出口へ向かう。

まだまだ劇場内の混乱は収まっているとは到底言えず、ビスマッマはP08を高く構えて先導してくれる。

 

 

 

ダダァン!

 

「ふんっ!はぁッ!ふんっ!」

 

ドカッ、バキッ

 

「せいやぁあっ!」

 

ダァン!

 

 

こういう時にいうのもなんだけど、アレだよね、ジョン・●ィックっぽいよね、クリアニングの仕方が。

 

なんかお馴染みのEDMが聞こえてきそうだし。

 

 

唐突に出くわした敵をダブルタップで撃ち殺したり、関節技を掛けながら撃ち殺したり、更に弾切れとなったP08を投げ捨てて、敵のM12を持って反撃したりとかしてるのを見て、俺はそんな感想を抱いた。

 

 

なんかね、無事に出口まで着けたのはいいんだけどさ。

 

途中で真っ二つに引き裂かれた敵とか、明らかにビスマッマとは違うタイプのヤベエ奴通った跡とか見えまくってたんだけど、気にしない方が良いんだろうか?

 

気にしない方が良いんだろう。

 

一つ気をつけておかなければならないとすれば、俺のビスマッマだって下手したらピッピ叔母さんみたいな過保護☆バーサーカーになりかねないって事だろうか。

 

 

 

ピッピ叔母さんはずっと先に病院へ向かったようで、ダンケ叔母さんルイス叔母さんベル叔母さんとは劇場の外で合流できた。

 

ビスマッマが気を回して、まだ従兄弟が撃たれた事は隠しておく。

今取り乱されるよりかは、離脱した後、ブロの元へ運んだ方が良いだろう。

 

ヒッパーマッマが車で迎えに来て、俺たちはそれに飛び乗った。

 

 

どうか生きていてくれ、ブロ。

さもないと、目の前の母性の塊3つが弾けちまうぞ。

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