残念ながら、私の懸念事項は一つ的中してしまった。
中東と北アフリカにいたハズの旧宗主国の情報源達は、「もうお前らと付き合う義理はねーぜバーカ」とでも言うかのようにことごとく機能不全を起こしていたのだ。
まあ、困った困った。
いやいや、勿論情報が入ってこない事も困ったんだけどさ。
絶望したルイスママがね、もう暴走どころじゃなくてね。
何しようとしたと思う?ねえ?
こちとらまだヴィーナーベルグにいんのよ、つまりまだ私は入院中なのよ、退院は明日だけど。
そんなまだ入院中のおっさん相手に、彼女何をしたと思う?
ヘレナの服着させようとしたんだよ?
信じられねえよ、もう。
私と入れ替わりで入院すべきだね、本心からそう思える。
心を落ち着ける治療をすべきだ。
そうそう、メンタルケア、メンタルケア。
あのね、ルイスの気持ちが分からないわけじゃないよ、そりゃあ。
なんたって妹連れ去られた上にアテが潰れたってんだから。
でもね、ルイス。
流石に精神衛生がヴィクトリア朝ロンドンとテムズ川じゃいかんでしょうよ。
ピッピとダンケとベルが全力で止めてくれなかったら、本当におっちゃんヘレナ服着るとこだったんだからね?
あのピッチピチのボディコンみたいな微エロ衣装着させられるところだったんだからね?
誰得?ねえ、誰得なの?
あのヘレナの衣装着てる見た目トム・ハ●クスのおっさんって誰得なの?
おい、おいおいおい。
ルイス、落ち着こう、なあ、落ち着こう。
正月衣装まで引っ張り出してくんな。
それヘレナちゃんの晴れ着でしょうが、こんなどうしようもねえおっちゃんに着させようとすんな。
ピッピ?ダンケ?ベル?止めたげて?
そしてルイス?
頼むから同格の軽巡1と格上の戦艦2のパワーを押しのけないで?
そんな鋼鉄の意思で私をヘレナちゃんにしようとしないで?
「ヴァァァァアアアンッ!!!」
…加賀さん?
わかる?わかってくれる?
一目見ただけでこの病室カオスオブカオスってわかるよね?
だから幼●戦記のマッドサイエンティストみたいな登場されても、それに何か返す余裕がないってのも分かって欲しいなぁ。
「せっかく驚かせようと思ったのになんでノーリアクションなんだよ寂しいな」みたいな顔しないで?察して?
「…まあ、いい、気を取り直して…我が子ぉ!良い知らせを持ってきたぞぉ!」
あの、ここ、病室…まあいいや。
いい知らせって?
「天城がシオニエルとナシをつけてくれた!中東方面でシオニエルの情報機関"組織"が使えるんだ!」
うぇえええっ!?
"組織"って、あの"組織"!?
戦争終わって15年間戦犯追い続けて南米で取っ捕まえたり、元ナチ将校に化けてエジプトのミサイル開発止めたり優位な情報吸い取り続けるとかしちゃう…すっごぉ〜い!諜報活動が得意なフレンズなんだね!と言わざるを得ないウルトラスペック追跡組織の!?
「そう!その"組織"だっ!…いやはや、凄いぞあの諜報組織は。依頼して3時間経ってないのにもう有力な情報が得られた!」
有力な情報!?
「ああ、『DC3輸送機で北アフリカのE国に降り立った北連語訛りのキツいイタレリ人の集団が、E国軍高官に出迎えられた』そうだ。」
ハレルヤ!!!!
私の予想は正しかったようだ。
連中がE国軍と連絡を取る理由はただ一つ。
我々が罠の中に飛び込んで来るのを待ちわびているのだ。
ふふ…
フフフフフフフフフッ!!
ハッハァ!そうはいかんぞ残念だったな!
レクタスキーのクソッタレは今頃待ちぼうけてるに違いない!
さあさあ博士殿、次は貴方が苦汁をなめる番だ!!
って言っても私も大して苦汁舐めたわけじゃないんだけどね…
「ロ〜ブロブ♪」
やあ、ノーカロさん。
どうしたのそんな「ま〜き●」的な感じでやってきて。
「情報提供ついでにお見舞いです…って、なぜジャップがこの病室に?」
「なんだユニ公、しばくぞゴラァ!」
はいはいはい、ステイステイステイ。
国は違えど皆マッマなんだから仲良ぉしましょう、仲良ぉ。
別に『私の病室に重桜兵が遊びに来たようです』とかしたいわけじゃないから、お願いします、仲良くしてくだせえ。
「な…ロブロブの頼みなら仕方ありません。」
「……我が子がそう言うなら」
それで、ノーカロさんの情報って?
「セヴァストポリ-モスクワ線で使用されている装甲列車の情報です。初めに言っておきますが…かなり骨ですよ、これは。」
ノーカロさんは私に一枚の写真を渡す。
そこには巨大な装甲列車が写っていたのだが、あまりの巨大さの為に全体すべてを写す事が出来ていない。
「牽引車は最新鋭の物、装甲も厚いのですが、もっとも警戒すべきは武装です」
武装…
「ええ、そう。まず、T34の砲塔を転用した砲台が前後の車両に。37mm機関砲が前から3両目の車両、マクシム機関銃でハリネズミのように武装しています。対空火器は格納式の物もあるでしょうし、予想ではこの列車の守備要員は一個中隊に登ります。」
一個中隊!?
「そうです。まさに動く要塞ですね。」
「ねえ、坊や。ヘレナちゃんを救出するなら、まずはこの装甲列車を止めなければならないわ。」
「その為には牽引車両を破壊するのが一番よ、Mon chou」
「指揮官くん?ヘレナ?しき、ヘレ、指揮官くん?」
「ご主人様。最適な人材をご存知のハズです。」
ルイス以外の貴重なご意見により、私は装甲列車を足止めする方法を思いつきつつあった。
そうだ、適任者がいたな、そういえば。
何でもかんでも吹っ飛ばそうとする"アイツら"なら最新鋭の牽引車両だろうと止められるハズだ。
ノーカロさん?
「分かってますよ、ロブロブ。ワシントン達も既に鉄血入りしています。ただ、こう言うのもアレなんですが…私達は車内の制圧には向いていませんよ?」
んん〜、確かにねえ。
あんたら、アレでしょ?
ドアに一々プラスチック爆弾取り付けなきゃ気が済まないし、部屋入る前は必ず手榴弾投げないと気が済まない感じでしょ?
マッマ達にも乗り込んでもらうとしても、助っ人は欲しいところ。
室内戦得意そうな人材…シェフィ?シリアス?
「何でしょうか、ゴミムシ」
「はい、英傑かつ高邁なるご主人様。」
あんたら接近戦得意よね?
「はいそうですね、それがどうしたんだよゴミムシ。」
「お任せください、輝けるモーン山地の明j」
んじゃあ、車内制圧を手伝ってもらうから。
細部はベルマッマに聞いてちょうだい。
…なんだよ、シェフィールド、その毒舌に構ってもらえなくて寂しいみたいな顔は。
すまんが今はあまり余裕がなくてな、また今度また今度。
オイオイオイ、泣くわアイツ。
ほぅ、ツンデレですか大したものですね。
さてと、シェフィとシリアスに加えてあと一人欲しいかなぁ。
もう目星は付いてんだけどね。
実際近接戦得意かどうかは分からんけど、列車内の制圧って時点で彼女しか浮かばない。
あー、えーと、このSSご覧になってる方でヴァイオ●ット・エヴァー●ーデンご覧になられてない方がいらっしゃいましたら、ぜひご視聴をおススメさせていただきたく存じます。
「あ〜、ちょっと涙腺緩ませてぇなぁ〜」と思ったら見るべきアニメです。
私のお気に入りは呑んだくれの作家んとこ行くエピソード。
子供どころか結婚すらしてないけど、泣いた。
アレは泣ける。
現実の私に全くもってシンクロできる部分なかったけど、泣ける。
もう、とにかく、なんというか、泣ける。
つーわけでエンタープライズさんに来ていただきましょう。
電話口で「もう誰も死なせたくないんです!」って言われそうだから、別に殺さなきゃいけないわけじゃないという要点を強調して話さなきゃね。
なんならギル●ルト少佐っぽい人連れて来ようか?
従兄弟に喋ればそれっぽい人出してきそうだし。
人が決まってくれば、作戦も決まってくる。
どうやって連中を襲撃して、どうやってヘレナを取り返すのか。
それ自体はそんなに難しい事じゃない。
ただ、どうにも大きな問題がある。
それは鉄血公国の国境線を超えなければならない事で、政治屋達が良い顔をするとは思えなかったし、"鉄のカーテン"の向こう側で政府の保護なしにハードネゴシエーションするのはあまりにもリスクが高い。
だが私は、仮に公認の許可が降りなくても推し進める気しかなかった。
そうするしかないのだ。
ヘレナの為にも、ルイスの為にも。
そして、私がヘレナちゃんのコスプレさせられない為にも。