バブールレーン   作:ペニーボイス

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エクスペンバブルス

 

 

 

 

ロイヤル首都ロンドン

鉄血公国大使館内

 

 

 

 

その女は褐色の鉄血公国大使から一通のパスポートを受け取った。

ごく自然に中身を見れば、髪型を変えた彼女自身の顔写真が貼ってある。

さらに、『鉄血公国・ケルン出身のアリーナ・フリードリヒ、21歳独身女性、鉄血公国外務省勤務。渡航目的は在北連鉄血公国大使付きの秘書に就任した為』という身分と理由が、鉄血公国外務省の印によって保証されていた。

 

 

「突然すまない。だが、"我々の真の目的"を果たすためには君が必要だ。」

 

「分かっています。報酬は提示額通りですね?」

 

「もちろんだ。本当にすまない、報酬はせめてもの詫びと受け取ってもらいたい。」

 

「誤解を招いているかもしれませんが、私が"コレ"をするのは報酬のためではありません」

 

「…?すまない、どういう事だろうか?」

 

「提示額通りで通るなら、そうしてもらいましょう。ただ、誤解して欲しくないので、これだけは言っておきます。私が北連へ戻るリスクを犯すのは…」

 

「何のためなんだ?」

 

「"ミーシャ"、あの子の為です。あの子の為にも『完全な終止符』を穿ちたいからです。」

 

「すまない、つまり…"必要以上の事はしない"ということで良いだろうか?」

 

「追加注文もなしです。お互い、決められた通りに決められたことをしましょう。」

 

「そうか、すまない、貴女を誤解していたようだ。そういう事なら心配しなくていい。レルゲン氏も必要以上を求めるような男ではない。」

 

「それを聞いて安心しました。では、この辺で。」

 

「貴女に神のご加護を。すまない、俺には祈る事しかできないようだ。」

 

 

褐色の大使を尻目に、女は踵を返して出口へ向かう。

出口には下北沢で追突されそうな黒塗りの高級車か止まっていて、彼女を目的地へ送り届ける態勢を整えていた。

 

アヴローラ。

何故彼女がそこまでの母性を持ってして、北連へ戻るという、このリスクの塊のような"任務"を引き受けるに至ったかは誰にも想像できないことだろう。

ただ一つ言えるとすれば、マッマ万歳。

マッマ堕としスキルが世界史を変えたことを知るには、私はあと少し待たねばならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウクラニア北部

北連領内まであと数時間の地点

 

 

 

 

 

 

 

 

シルベ●ター・ス●ローンとジェイ●ン・ス●イサムが傭兵をやってそうなBGMがどことなく聞こえてくる。

 

 

私は今、鉄血製のヘリコプター・ドラッヘに乗ってある装甲列車へと向かっていた。

 

右にはピッピ、左ダンケ。

真向かいにはルイス、その左にベル、右にはノーカロさんがそれぞれ座っている。

 

皆、手にはそれぞれの銃を持っていて、私はルイスから渡されたM1カービンを持っていた。

ピッピがMG42、ダンケはMP40、ルイスとノーカロさんはM1カービン、ベルはステンガンをそれぞれ抱えている。

 

ドラッヘ・ヘリコプターは私の乗る一機の他に、3機が同行していた。

それぞれにラインハルト達、鉄血公国空軍の降下猟兵、ロイヤルSFSの精鋭部隊が搭乗していて、作戦を順当に進めるための役割が決まっている。

 

え?なんだって?

チーム・ユニオンが乗ってない?

 

心配することは無い、彼女達は彼女達で別のアプローチを行う。

そしてそのアプローチが、この作戦を始める狼煙になるのだ。

 

 

 

悠然と飛ぶドラッヘの直上を四機のアンノウン・フライング・オブジェクトが高速で追い越して行く。

別にインデペンデ●ス・デイが始まるわけではない。

ユニオン独立記念日まであと半年はある。

 

このU.F.Oの正体こそ、チーム・ユニオンだった。

使用している装備は、いつかピッピを北極にまで運んだジェット・ママライカー。

アレ自体は別に欠陥品でも何でもなかったのだ。

ピッピのあまりに莫大な母性エネルギーこそが問題で、実際適度な母性を保つチーム・ユニオンの面々ならば問題なく使いこなすことができた。

彼女達はユニオン製の90mm高射砲を抱えている。

 

 

こんなデタラメな話があるか???

戦艦が生身で空を飛び、馬鹿でかい高射砲を持って高速で飛んでいるのである。

もう見ただけで自らの正気を疑うレベルだし、私が北連兵なら裸足で逃げ出すことだろう。

 

ただ、チーム・ユニオンは逃げ出す暇さえ与えなかった。

やがて大きな90mm高射砲の発射音が響き渡り、装甲列車の牽引車がド派手な火炎をあげるのを、私の乗るドラッヘからでも見ることができた。

 

さて、お仕事の時間だ。

給料分の仕事はしよう。

ん?なに?ター●ャ・デグレチ●フ?

そんな奴は知らん。

 

 

 

 

 

 

 

我々のドラッヘが装甲列車の元に到着する事には、当然北連兵達は戦闘態勢を整えていた。

37mm機関砲はもちろんのこと、格納式の四連装DSHK重機関銃も現れていて、こちらに砲口を向けている。

北連兵が急いで弾薬の装填と照準を行なったが、その涙ぐましい努力は一瞬でパァになった。

 

壊したがりのお年頃。

チーム・ユニオンの面々が、歓声をあげながら90mm高射砲を次々にぶっ放し、対空兵器を無力化してしまったからだ。

 

更には、マッマ達が猛烈な制圧射撃を加える。

4大マッマとノーカロさんは勿論、従兄弟のヘリからも、降下猟兵のヘリからも、SFSのヘリからも猛烈な射撃が加えられ、装甲列車の上部から上空警戒を行なっていた不運な北連兵達を一瞬で蜂の巣にしていった。

 

 

もうね。

本当に可哀想だったよ、見てて。

装甲列車から出てこれなくなってんだもん。

 

 

勿論、T34の砲塔を搭載した車両と、対空火器を搭載した車両は既に火だるまだったが、そこにヘレナが載っているわけがない。

37mm機関砲はオープントップだったし、DSHKの方はあの砲架だけで車両の殆どのスペースを奪うはずだ。

そして、T34砲塔の車両に、人質を監禁できるスペースなぞあるわけがない。

 

 

 

残るは車内の制圧。

 

やがて従兄弟達と降下猟兵のドラッヘが列車の前方、我々とSFSのドラッヘが後方に着陸する。

 

 

「手筈通りにやるわよ!エンタープライズ、準備はいい?」

 

「お任せください、お客様」

 

 

SFSのドラッヘに乗り込んでいたエンプラさんが、一人の鉄血降下猟兵少佐と共にヘリを降りる。

降下猟兵少佐、ベルベルトの装備はルガーのみ、エンプラさんは丸腰。

これで車内制圧の先頭を行くと言うんだからまさに正気の沙汰ではない。

 

 

さすがにこれはなかったかなぁ。

やっぱりやめた方がいいんじゃないかぁ。

エンプラさん怪我でもしたら大変だもんなぁ。

 

 

「誰も傷つけたくないんです!」

 

ドカッ!!バキッ!!

 

「もう誰も死なせたくない!!」

 

ズカッ!!ボカッ!!

 

「あんな事はもうしたくないのです!!!」

 

ドカッ!ドコッ!バキバキバキィ!

 

「き、貴様!…俺は貴様の顔を知っている…ライデンシャフトリヒデブッ!!」

 

 

すっげえ面白い断末魔と共に、ガル●リク帝国軍将校っぽいおっさんが装甲列車の最後尾車両から放り出される。

 

うん、完全なる杞憂だね。

 

ライデンシャフトリヒの戦●人形と化したヴァイオ●ット・エヴァー●ーデンもといエンタープライズは、愛を語りながらも容赦なく北連兵をしばいて行く。

 

ベルベルト少佐は「いや、俺何しに来たんだろう」って顔でボケっとしてるし、私もマッマ達も銃を持ってきた理由を見失いつつあった。

 

ま、まあ、ともかく。

車内制圧は順調だ。

 

私はエンプラさんに続き、一応M1カービン

を高く構えて装甲列車へ足を踏み入れる。

 

 

「坊や!忘れてないわよね!?ちゃんと守られて!!」

 

 

後ろからピッピの声が聞こえて、私は立ち止まった。

要するに、ピッピがエンプラさんの2番手を行くのだ。

私は3番手を行くダンケの後ろから、ルイスの谷間に後頭部を挟まれつつ列車の中を進む事になった。

 

いやあ、困ったなあ。

ヘレナちゃんから見たら私お姉ちゃんの胸を枕にしてる変態じゃん。

 

 

 

いいや、今は集中しよう。

ヘレナちゃんを見つけ出す。

そして、与えられた役割を果たすのだ。

 

待ってろよ、ヘレナ。

必ず救い出してやる。

この物理的な叔父さんを信じるんだ、ヘレナ。

あと少しだ、頑張れヘレナ!!

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