バブールレーン   作:ペニーボイス

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足利尊氏ドン引き案件

 

 

 

 

共同親権の同意から3日後

指揮官執務室

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイスが私の主たる親権者として決まった後から、3日後の今こうしてルイスの谷間でガクブルしている瞬間まで、私はルイスから1mmたりとも離れていない。

 

ずっとルイス。

たまにピッピ、ダンケ、ベルにあやされたりもしたけど、いずれもルイスに何かしらの形で触れていた。

 

まあ、なんつーかなぁ…

言葉で表現すると、ルイスルイスルイスルイスだよね、本当に。

おはようからおやすみまでルイスだし。

おやすみからおはようまでルイスだし。

飯食う時も、風呂入る時も、寝る時もルイスと一緒。

入浴に至っては水着姿で一緒に入るっていう新手のソー●ランド。

なのにルイスが着替える時には私は目隠しをさせられて、ルイスは「教育に悪いから♪」とか言ってる始末。

あのさぁ、谷間に挟んで持ち運びしてる時点で色々と教育に悪くない?

お前の基準はなんなんだ?

 

 

 

さて、私は赤ん坊になってしまったのだが、どういうわけか乳歯は最初から生え揃っていて、ちゃんと言語も話す事ができた。

非常に奇異な存在であるわけだが、ルイスを始めマッマ達にしっかり自分の意思を話せるのはありがたい。

そして、私はトラウマによる震えがようやく収まりつつあったこの日、ルイスに自分の意思を伝えようとしていた。

 

 

 

なあ、ルイス、ちょっとばかしトイレに行かせてくれないかな?

 

「やり直し」

 

ねえ、ルイス、お願いだから、トイレにに行かせて?

 

「やり直し」

 

ルイスさん、お願いします、お手洗いに行かせてください。

 

「やり直し」

 

………マッマぁ、ぼくトイレ行きたぁい。

 

「は〜い、よく言えたわね〜!偉い子ねぇ〜、賢い子ねぇ〜。でも、次からママの事を呼ぶ時は、ちゃんとル・イ・ス・マ・ッ・マ♡って呼ぶのよぉ〜?」

 

 

 

クッソ疲れる。

履かせられてる紙おむつの中にぶったらしてやろうかとも思ったが、昨夜同じ事をやった結果ルイスを喜ばせる事になった経緯があるのでやめる事にした。

 

ちゃんと年相応(?)にやらかしちゃったのに、ルイスのヤツ「あ〜、お漏らししちゃったのぉ〜?大丈夫よ〜、オムツ変えてあげるからねぇ〜?」とか言って嬉々としてやがった。

何なの、あのポジティブさ加減は。

 

 

 

私は約86時間ぶりに自由の身となり、ルイスの谷間から這い出て、ピッピが作っておいてくれた『赤ちゃん用トイレAust.B』へ向かう。

何のことはない、ただのミニサイズトイレットである。

四つん這い歩行って案外体力使うもんなんだなあと思いつつも、私はそこへ向けて這い這いで進んだ。

 

しばらく進んだ後、ふと背後が気になって、私は振り返る。

 

そこには満面笑顔のルイスマッマがいて、私の後についてきていた。

 

 

「なぁに?指揮官くん?」

 

いや、なぁにってよぉ、こっちが何?って聞きたいところなんだけどよぉ。

 

「あら。私の赤ちゃんがおトイレに行くのよぉ?心配になって着いて行くのは、母親として当然の事じゃないかしら?」

 

マジ勘弁してくだせえ。

 

「ダ〜〜〜メッ!そんな事言うなら!」

 

 

ルイスマッマは私を摘み上げて、再び双丘の谷間へと引き戻す。

ちょっとぐらい目を離しても死にゃあせんからいい加減手離してくれ。

 

 

 

86時間ほぼぶっ通しで、私はルイスの谷間に入っていたのである。

どんな具合に入っていたかと言うと、小さな身体をルイスの谷間に納め、頭だけ谷間から出てる状態。

いくら赤ん坊の身体でも、そんな事してたら谷間からはみ出そうではあるが、幸いにと言うべきかルイスマッマのアパラチアが途方もなく大きいおかげで無事にすっぽりと収まっているのだ。

 

もうね、鼻腔の奥までルイス臭。

あの、甘〜い匂いがこびりついて取れなくなってしまった。

さっき這い這いしてた時だって、身体中からルイス臭だったし。

決して臭くはないんだけどね。

むしろすっげえいい匂いなんだけどね。

でも、犬みてえにマーキングされるのも困るのよね、ホントね。

ルイスの体臭って結構強くて、谷間でやらかした時でさえ、アンモニア臭が秒で負けちゃったぐらいだからさ。

下手すりゃ一生涯取れないかもね。

 

 

ルイスが一歩進むたびに、アパラチアが震度3くらいの揺れを起こす。

常に揺れ動いとるわけだから、最初の方は正直気持ち悪くなったりもした。

ところが…人間とは恐ろしい。

私は慣れてしまったのだ。

 

やがてトイレに到着すると、ルイスは私を谷間から取り出して、便器に正対させてから、紙オムツをズラした。

 

もうやだ、死にてえ。

私にはソッチ方面の趣味は決してないから、この瞬間が恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がない。

ルイスマッマに見られながら小用を足すのである。

ただ、オムツの中でやらかした後、ルイスマッマにオムツ交換された時の方が恥ずかしかったけど。

 

 

 

 

無事に小用を終えると、ルイスマッマはオムツを元の位置に戻し、私を再びグランドキャニオンへと運んだ。

元来た廊下を震度3くらいで戻っていき、震度4くらいで揺れながら執務室の机に座る。

 

言うまでもなく、その机は元私のデスクで、ルイスマッマは私の代わりに指揮官業務を行っているのだ。

 

 

 

『ルイスの親政』

 

少なくとも、私はそう呼んでいる。

この新しい鎮守府の指揮系統と政治体制は、ルイスが親権を握ってから僅か45分後には制定され、その15分後には効力を持っていた。

 

腹黒マッマ・セントルイスは、どうやらこういう時をてぐすね引いて待っていたようで、海軍規則の『疫病・療養・負傷又は死亡等の場合における指揮官不在時の代理に関する細則』を根拠に、鎮守府の指揮権までをも手中に収めたのである。

 

新しい体制では『親位継承権』なる物が制定され、それによればルイスは『筆頭親権保有者』となるらしい。

その次から、親位継承権第1位がピッピ、第2位はダンケ、第3位はベル、そして、第4位にはちゃっかりヘレナがランクインしていた。

今現在、この5名が私の権限を代行する権利を持つらしい。

ここまで来たら立派なクーデターだろうが。

 

ただ、最終的な決定に関して私の同意が必要になったり、私の命令の優先度がルイスより高かったりと、ちゃんと規則の捻じ曲げは行なっていないあたりはちゃんとしてる。

完全な『摂関政治』ではない分だけ、まだいいのかな…?

 

 

 

「坊や!私の坊や!私の可愛い可愛い坊や!ただいま!セントルイス、坊やを!」

 

「おかえりなさいティルピッツ。はい、どうぞ。」

 

 

ピッピママが執務室に入ってきて、ルイスママに私を要求する。

ルイスは私を谷間から取り出すと、ピッピに向かって放り投げた。

おい、ルイス、お前、後で覚えとけよこの野郎。

 

私はピッピに無事キャッチされ、今度はツークシュピッツェへ収納される。

ピッピの双丘はルイスのそれよりも大きく、私はあっという間に収まった。

何なのもう。

お前らは新手のカンガルーか何かか?

 

 

「坊や〜、坊や〜、私の坊や〜」

 

 

ピッピが戦艦特有の腕力でツークシュピッツェごと私を抱きしめるもんだから、私は押し潰されそうになる。

鼻腔の中ではルイス臭に対してピッピ臭がプロテスタントしているし、本日は湿度の高いツークシュピッツェから流れ出てくるアルペンザルツ岩塩の水溶液が否応なく口に入ってきた。

そっちの趣味もねえんだよ、ピッピぃ…。

 

 

 

「ティルピッツ!後でまた挟ませてあげるから、そろそろシャワーを浴びてきたら?」

 

私に決定権はないの、それ?

 

「…そうね。ごめんなさい、演習から帰ったばかりだがら…少し汗臭かったかしら…。」

 

無視しやがったなこの野郎共。

 

「シャワーを浴びたら、指揮官くんを挟みながらでいいからデブリーフィングをするわよ?」

 

「ええ、勿論。戦闘評価と分析をしないとね。ワシントンはいい相手だったわ。」

 

「それを聞けば彼女もきっと喜ぶわ♪」

 

 

 

ピッピはシャワーを浴びた後、再び執務室に戻ってきてルイスと一緒にデブリーフィングをしていた。

勿論、私をツークシュピッツェに挟みながら。

しばらくするとダンケマッマも各施設の補給整備業務を終えて帰ってきて、執務室に3人のマッマが揃う。

 

 

 

あれ?ベルマッマは?

 

「ああ、ベルファストならちょうど今演習中よ?」

 

 

ピッピはそう言って、私を挟んだまま執務机の後ろの窓へと向かう。

そこからは目の前の大海原が一望でき、演習の様子も見れるのだ。

 

ちょうど、今、その大海原ではベルファストとアヴローラが凄まじいまでの戦闘を繰り広げていて、その激しさは大勢の野次馬を招いていたほどだった。

 

 

 

「アヴローラも随分と気合が入っているようね。」

 

「ええ。ベルファストも真剣そのもの。」

 

「そうなるのも仕方ないわ。もし、この演習でアヴローラが勝ち進めば、彼女も共同親権者の仲間入り…指揮官くんを巡るライバルが増えるんだもの。」

 

あのね、君たちね、勝手に人をエサにする癖そろそろやめない?

 

「ふふふ。でも…彼女、坊やまでたどり着けるかしら。」

 

「ベルファストは我ら共同親権者の中でも最弱。」

 

「新参者に敗れるようじゃ、共同親権者の面汚しよ。」

 

 

 

 

 

マッマ達はそう言いつつも、怖い笑みを浮かべてベルとアヴローラの演習を見物している。

 

本当にさあ、君達さあ。

 

『共同親権者』って、何かの四天王なのかい??

 


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