結局、あの後病院へ急行したにも関わらず、私の症状の原因は分からず終いだったし、しかし、一晩で私はすっかり回復してしまった。
憲兵隊までもが入って捜査に当たったものの、事件性のあるものも何一つ出ていない。
無論のこと、私自身入念な身体検査を受けた。
だが、どういうわけか、私の吐血にいたるような異常は何一つなかったらしい。
もう怖えよ本当によぉ。
人は科学的根拠を見つけられない時、往々にして非現実に走りやすい。
どうしても説明がつかない場合は『超常現象』という言葉に頼らざるを得ないのだ。
私の吐血に何の事由も見出せなかったマッマ達も、この説明不能な怪事件を考えた結果、ある事を思い出したのだった。
「「「「あ、この子の洗礼やってない」」」」
はい、というわけで私は今鎮守府内にある教会へと向かっております。
私はルイスの谷間に挟まれ、そして、ルイスはピッピ、ダンケ、ベル、プリンツェフ、アヴマッマに囲まれております。
何の集団なんでしょうかね。
とりあえず、すっごい厳かな雰囲気の行進ですね、はい。
いつの間にかプリンツェフが準共同親権者みたくなってるし、アヴマッマはドサクサに紛れ込んでる感MAXなんですけど気にしない気にしない。
やがて大きな教会の扉が見えてきて、マッマ達の内ベルマッマが少し先に出た。
彼女はドアノブを掴むとそれを丁寧に引き、
我々を教会の中へとエスコートする。
ありがとう、ベルマッマ。
しっかしまあ、こんなところに教会があったとは。
見た目からして厳かそうだし、実際今まで入ったこともない。
そもそも転生前はキリスト教徒でも何でもなかったから、教会の中のイメージって牧師さんとかがエイメンしてるぐらいしか
「内なる自分を解き放ちなさい!!」
「アワワワワワワワッ!!」
「アイェエエエ!!アイェエエエッ!!」
「天の声に耳を傾け、魂を解放するのです」
「アワワワワワワワッ!!」
「アイェエエエッ!!アイェエエエッ!!」
「躊躇うことなく事など無いのです!さぁッ!本来のあなたを曝け出しなさいっ!」
「アワワワワワワワッ!!」
「アイェエエエッ!!アイェエエエッ!!」
………うん、帰ろうよ、ルイスママ。
邪魔しちゃダメなヤツだよ、これ。
魂の解放とかしてるもん。
とてもじゃないけど洗礼とか出来そうな雰囲気でもないもん。
ヒヨコパイロットのルーデルさんとハルトマンさんが必死に魂解放しようとしてるもん。
グラーフ・ツェッペリンが聖書片手に声高らかに説法しながら髪とか振り乱してるもん。
きっと…プロテスタントの中でもプロテスタントな人々じゃないかな?
だから、一旦…落ち着くまで帰ろう。
「おおっ!卿よ!いらしたのですかっ!さあ、そこのあなた方っ!あなた方も躊躇う事はありません!」
「いや、あの、グラーフ?私たちはただ坊やの」
「ティルピッツ!!!躊躇う事はないと言っているでしょう!!!主に正しい道を示していただく為にもッ!!!さあッ!!!」
グラーフ・ツェッペリンって元々は「もし神がいるのなら」とか「神が答えてくれるか?」とか「憎んでいる、全てを」とか言ってる厨二くさい人物であった。
何がどう転んだか知らないが、前作シーズン2では敬虔な信者になり、そして今や過激派である。
説法がヒートアップしていき、段々と過激になっていくのがその証拠。
「教皇庁に天誅をっ!!主の名を騙る罪人共にはインフェルノこそ相応しいのですっ!!無神論者などもっての他!!奴らを許してはなりませんっ!!銃をその手に!!艤装を持ちなさい!!今こそ欲深き教皇庁と不信心者共に死の鉄槌を!!エイメン!!!」
「「エイメンッ!!!!!」」
すっげえ、IS●Sも真っ青だあ。
ここまで過激な事を言われたからか、恐らく宗派の違うダンケマッマが立ち上がり、抗議の声を張り上げる。
「なんて事言うの!?他の皆んなもいるから我慢してたけど、もう限界よッ!!"シスター"を呼んでおいて、本当に良かった!!」
「なにををををを!?さては教皇庁の駒か貴様あああああッ!!!うぅぅぅんッ、許せん!!!断じてゆるせ」
バァンッ!!!
あわやグラーフVSダンケの戦いが始まろうかと言うところで、先程我々が入ってきた扉が足蹴によってこじ開けられた。
あろう事か教会の扉にそんな事をしたその人物は、場違いなほど敬虔な衣装に身を包んではいたが、服装と態度がまるであっていない。
その人物…ジャンバールはシスターの服装こそしていたものの、咥えタバコならぬ咥えプルー●テックをして、バラ●イカみたいな顔で教会の中の人々を睨みつけ、そして生活指導の先生みたいな口調をしていた。
「おぅし、お前ら席に着けぇ。」
「オノレエエエエエエッ!!カトリックゥゥゥウウウッ!!!」
グラーフ・ツェッペリンがアンデ●セン神父みたいな声を張り上げて敵対心を丸出しにする。
案外、根は変わってないみたいだね。
あとアンデ●セン神父はどちらかというとカトリックの人なんだけどね。
「神の名を騙る偽善者を許すなぁッ!!2人とも、やっておしまいッ!!」
「「ウィ〜〜〜!!!」」
「んだコラッ、席つけッ!!」
ドカッ
「「ウィ〜〜〜!!!」」
ショッ●ーよろしくシスター・ジャンバールに飛びかかったパイロット2人は足蹴一振りで文字通り一蹴された。
可哀想な2人はそのまま長椅子まで吹っ飛ばされ、椅子に激突してそのまま伸びてしまう。
だがグラーフ・ツェッペリンはそれでも懲りないようだ。
「なかなかやるな。…では主の代理人として、我自らが鉄槌を下そう。」
教会全体に、ター●ャ・デ●●●ャフ少佐がなんたら術式を使う時のBGMが響く。
ドヤ顔のグラーフ・ツェッペリンが、どこからかデッカい銃を取り出して、聖書の言葉を口にし始めた。
まあ、銃と言ってもモンドラゴンとかではなく、ただの大きな象撃銃。
なんというか…『奇跡』じゃなくて、物理法則によって敵を撃ち倒さんとしてるあたりが鉄血艦でしかない。
「るせえ。」
チュドーーーーンッ
「にくすべッ!?」
グラーフ・ツェッペリンの抵抗も虚しく、ジャンバールは艤装の主砲を容赦なく撃ち出した。
結果、グラーフ・ツェッペリンも前途のパイロットと同じ位置まで吹っ飛ばされて伸びてしまったのである。
可哀想というか、自業自得というか。
「これで静かになったな。よぅし、お前ら。
今聖書の事を教科書って言った?
思いっきり、怒らせちゃいけないタイプの生活指導の先生じゃん。
プルー●テック咥えながら指導棒振り回してるあたりまんまそれじゃん。
3年何組なの、ねえ?
3年何組、何パチ先生なの、ねえ?
「はぁ〜、ったく。おい、そこ、3行目。」
「え、え?私!?」
「お前だっつってんだろ、さっさと読めぇ!」
「ええと…」
アヴローラが突然指名されて、彼女は慌てて聖書を読み始めた。
洗礼って、こういう意味の洗礼なの?
新しい文化による洗礼とかなの?
何でナチュラルに国語か何かの授業みたくなっててんの?
何で皆んな萎縮して意義が唱えられないみたくなってんの?
「…もうっ!やっぱりダメじゃない、ダンケルク!」
「なっ、ティルピッツ!?」
「坊やにはやっぱりプロテスタントの洗礼を受けさせるべきよ!」
「おいゴラ、お前今何つった?」
「大体、ジャンバール!貴女も坊やの洗礼する気あるの!?」
「んだ、テメ、どういう意味だコラ」
「はぁぁぁ、やはり、ここはロイヤル国教会にお願いするしかないようですね。」
「いいえ、ミーシャは私と一緒に東方正教会へ行くのです。」
「認められませんっ、そのような事っ!」
「だいたいロイヤルの国教会は…」
マッマ達の言い争いはいつも通り艤装の撃ち合いへと発展し、鎮守府の教会で三十年戦争が始まってしまった。
ガチでリアルな鉄血傭兵と思わしき戦車連隊とかも来てたり、イスカリ●テ1●とかいうよく分からない軍事組織をやってきて、前代未聞の内紛へと発展している。
ほっときゃマル●騎士団とか来そうなので、もうこの際放っとく事にした。
私がこの大惨事の傍観者となれたのは、実はルイスマッマのおかげである。
彼女は私を挟んだままそっと教会から抜け出して、同じ鎮守府内にある神社へと向かったのだ。
そこには巫女服姿の天城さんがスタンバっていて、私はお宮参りをする事になったのである。
しかし、まあ、ルイス。
あの混乱に加わらないでくれたのは本当にありがとう。
「うふふ♪どう致しまして♪」
でも、ルイスは…なんというか、そういう拘りとかはないの?
「…ねえ、指揮官くん。重桜のシントウって言うのはね、八百万の神様を崇めるらしいの。」
よく知ってるんだね、ルイス。
「シントウの価値観で言えば、ティルピッツの神様も、ダンケルクの神様もその八百万の神さまに当たるのではないかしら。だから………。」
なるほど、本当にありがとう、ルイスマッマ!
皆を抑える為にもこうしてくれたんだね?
「ええ♪ユニオンは宗教にも寛容なのよ?」
ルイスマッマ…本当にそういうところが大好き。
ジャンバールが崩壊どころの騒ぎじゃないような気がする?
気のせい、気のせい(殴