続くかも未定ですがよければお楽しみください。
第七宇宙、北の銀河の辺境に存在する天の川銀河の中でも、あまり注目を受けることのない惑星、地球。
その中でも、西の都と呼ばれる大都市……から離れること徒歩まる3日の位置に存在する田園地帯。
……この大宇宙ではど田舎の中のど田舎の中、その中でも更にど田舎といった地域に、この物語の主人公であるアエ・ソシルミの生家、アエ家はあった。
しかし、その家にソシルミが住んでいたのは僅か5年程度のことである。
それは何故だろうか、彼がいわゆる転生者、別世界からこの世界についての事前知識を得て生まれてきた人間であったからだろうか。
……違う。
彼には転生者であるということよりも恐ろしい特徴があった、それは─────
───第20回天下一武道会会場───
数多く存在する『世界で一番強い武道家を決める大会』……その中でも、もっとも高い権威があるとされているのが、この天下一武道会だ。
石畳で作られた長方形のリングの上で戦い、勝利条件は『降参』『テンカウント』『場外』『相手が泣く』……。
……勝利条件はともかく、この危険さは、武道経験がまったくない人間でもなんとなく分かるのではないだろうか。
何しろ、石畳であるから、投げ技を使わなくても倒れた際に頭を打ち付けたらそれだけで死の危険がある。
申し訳程度に急所攻撃と殺害の禁止がルールに盛り込まれてはいるが、全身これ凶器とばかりに鍛え上げた武術家同士が、防具なしの素手で殴り合い投げ合うのだ。
そのルールがどれだけ意味のあるものかは、はっきり言って怪しい。
その危険極まりない天下一武道会の決勝戦、そのリング(武舞台と呼ばれる)の中央で二人の男が体面していた。
……いや、二人の男と一纏めにくくってしまうには、彼らの間に存在する『差』は大きすぎると言えるだろう。
方やまだあどけない顔つきの、中学生になっているかも怪しい少年。
方や鍛え上げられた筋肉を顕にした、色黒の中年男性である。
───だが、鍛え上げられた、という一点のみに注目するのなら、少年の側も対等か、それ以上と言えるだろう。
少年の小さな身体の発達途上にある骨格には、これでもかと言わんばかりの筋肉が搭載され、その皮膚にはまだ生々しいキズがいくつも刻まれていた。
「……幼いが、ずいぶんと鍛えられた身体だ、だが幼い頃からの激しすぎる鍛錬は身体に毒だぞ」
「フン、そんなことを気にしていては強くはなれねえ、それに────」
その瞬間、鈍く短い音が武舞台に響いた。
聴きさえすれば多くの人間が即座にその正体に気付くだろう、腕など振り回した時に発生する類の風音だ。
「キャァァァア!」
「ッッッ~~~~~~~!!」
武舞台の中央から鳴ったにも関わらず、観客にはまるで目の前でプロ野球選手がフルスイングをしたかのような轟音が叩きつけられ、いくつかの悲鳴が上がった。
思わず目を閉じたアナウンサーが再び目を開けると、そこには空中で足を振り抜いた少年と、その足に手を……つまり、ガードした男の姿があった。
「俺はそんなに、ヤワな身体してないんでな」
「グッ……、なるほど、決勝まで来ただけのことはあるということか!」
「ぜ、ぜんぜん見えませんでしたっ!アエ選手がチャパ王選手の背後をとっています!」
男、チャパ王が払いのけるように腕を動かすと同時に少年……、アエ・ソシルミも飛び退き、二人は開戦当初から立ち位置を反対にする形で再び構えを取った。
「ガキだからと舐めるようなことをしなかったのは褒めておいてやろう、もっとも、俺はお前をナメていたがな」
「ふふ……確かに並の武道家なら今ので終わっていたな、その歳でそこまでの力を得たら驕るのも仕方があるまい」
「そういうことじゃないんだが、……まあいいか」
ソシルミはボリボリと頭を掻くと、また構えを戻し、チャパ王も構えを深くすることを持ってそれに応えた。
「それとアナウンサー、俺のことはアエじゃなくてソシルミと呼んでくれ、これまで試合が短すぎて言う機会がなかったがな」
「は、はい!」
アナウンサーの返答を合図に、二人が衝突する。
今度、攻撃を放ち出したのはチャパ王だ、その両手両足を用いた激しい連打に対して、ソシルミはパンチにはパンチ、キックにはキックを以って応えていく。
「ずいぶんやるな、おっさん」
「お前もなかなかのものじゃないか!」
連続する風音と打撃音が鳴り響く武舞台の中央で、永遠に続くかのような打撃のぶつかり合い。
それを見る武に精通した者…特に、男、チャパ王の縁者や、先程まで武舞台の二人としのぎを削っていたはずの数人はある重大な事実に気づいた。
「きさま何のつもりだ小僧!!」
「さあ、当ててみな?」
「わしの構えを────!!」
「な、何が起こっているのか、突然チャパ王が怒りだしました、とてつもない猛攻です!」
ここまで明かされると、ついに一般客にも自体が飲み込めてきた。
そう、ソシルミの動きと、チャパ王の動きが、『同じ』になりつつあるのだ。
「くっ……」
「ありがとな、粗方覚えさせてもらったぜ」
チャパ王は自らと同じ武術をぶつけられ続けるプレッシャーに耐えかねたのか、ソシルミをはねつけながら飛び退いた。
「おおーっと、ソシルミ選手不敵な宣言!チャパ王の技を覚えてしまったようです!」
「ちぃっ!!」
アナウンサーに説明されたことで再認識した現状に怒り狂ったチャパ王が再びソシルミに襲いかかる。
だが……。
「ま、武術のデキは他の選手に比べりゃバツグンだが……こんなものか」
急激に速度を上げたソシルミの足払いをまともに受け───
「ほいっ!」
そのまま、宙に浮いた形を逆立ちでのキックで更に弾き飛ばされた。
人が人を飛ばしたとはとても思えない長さの滞空時間の末、観客まで静まり返った静寂の中、落下音が響き……
「場外!チャパ王選手場外です!前回優勝者が意外な新人に敗れ去りました!優勝者は13歳の少年、アエ・ソシルミ選手です!!」
アナウンサーの宣言とともに、本来大歓声が上がるはずの観客席からは散発的な拍手とどよどよと釈然としない雰囲気が流れ出す。
当然だ、前回優勝者が無名の新人、それも少年にあっさりと破れたのだから……。
「実力伯仲とは言い切れない試合内容でしたが、新進気鋭の選手に往年の優勝者が敗れるのもまた大武道大会の醍醐味!天下一武道会の名にふさわしい激しい戦いでした!」
少々強引気味だが、なんとか上手くまとめたスピーチとともに、観客のどよめきは収まり、それは予定通りの歓声に変わった。
「ソシルミ選手、こちらが優勝賞金の50万ゼニーです」
「ありがとう、旅費の足しにさせてもらう」
「旅費……と言いますと、どこかへ旅行に?」
「ああ、天下一武道会で優勝したとはいえ、この星にはまだまだ強い武道家や面白い武術が残っているはずだからな」
「なるほど!皆様、これからも更に力を蓄えるこの新しいチャンピオンに、今一度惜しみない拍手をお願いします!」
再び浴びせられる大歓声の中、ソシルミは静かに天下一武道会会場を去っていくのであった……。
オッス、オラソシルミ。
先程ご紹介に預かった通り、13歳の武道家だ。
前世は日本で大学生をやっていたが……、いやぁ、若者のガンはヤバいとは聞いていたがまさか自分が体験することになるとは思いもしなかった。
別に病弱だったとか、酷い生活習慣をしていたとかは無かったんだが、こればっかりは運とめぐり合わせと言うしかない。
前世の家族に未練がないわけじゃないが、すっぱりと諦めることにしたんだ、今の人生も楽しいし……これからもっと楽しくなるからな!
そう、俺が生まれ変わったこの世界はドラゴンボールの世界で、しかも俺の今の身体がとてつもない武術の才能を秘めている。
生まれた直後から首が座っていた俺は、生後一月もしない内に単独直立二足歩行を達成、二ヶ月後には家のどこにでもよじ登って移動でき、三ヶ月目には離乳食を飛び越して肉を食えるようになった。
……うん、一ヶ月目には健康すぎる我が子に喜んでいた両親も、二ヶ月、三ヶ月目になるにつれその笑顔が引きつり、俺を遠巻きに眺めるようになった。
それでも親の情と体面がある以上、すぐ養育放棄をするようなことはせずメシと寝床を提供し続けてくれた……が。
「ソシルミよ、アエの家はもうお前を置いておくことができなくなった、すまないがこれからはなんとか一人で暮らしてくれ」
5歳の誕生日から数日後、突然そんな宣言を受けた俺は、やむなく家から出て放浪の暮らしをすることになった。
一体何が悪かったんだろうか、村外れにあった岩を転がして崖から叩き落とし川の流れを変えてしまったことか、近隣の山河を駆け巡り魚や獣を狩りまくっていたことか、それとも村にやってきた盗賊をどこぞの配管工の如く次々と踏みつけ全滅させたことか。
……全部か。
ともかく、若干五歳にして俺は孤独で自由な放浪者としてこの地球上をさまよい始めたのだ、。
まあ、村を追い出されたのは俺にとって一つの転機とも言えた。
アエ家に居た頃からここがドラゴンボール世界だと分かっていた俺は、やっぱりZ戦士達に混ざって地球、ひいては宇宙の運命を巡る戦いに参戦の運命を巡る戦いに参戦したいと思っていたからだ。
最強の戦いが行われている世界に、それを知った男が、しかも素晴らしい才能を持って生まれてきたんだ、そう思うのはある意味当然ではないだろうか。
もちろん、それでも平和に暮らしたい、黙ってその戦いを見守って救われるだけの人生を送りたいと思うヤツも居るだろうし、それもまた普通のことだが……俺はごめんだ!
男と生まれたからには、誰でも一度は地上最強の男を目指す。
この言葉をお題目に掲げた作品じゃあ、『しかし、多くの人間がどこかで挫折する』と言われていたが……。
いつかその日が来るまで、戦い続けてやろうじゃないか、俺は最強になってやる。
……とか言いつつ、主人公の悟空達がたどる道筋を壊してしまうのも惜しいし怖いから、なかなか鶴、亀仙人なんかの武道家を尋ねることは出来ていないんだが。
そこ、チキンとか言うな、これは最強のライバルであり最強への挑戦の切符となる戦士たちの将来のためなのだ、決して心を読まれるのが怖いとか、鶴仙人の容赦無さが怖いとか、アクマイト光線が恐ろしいとかじゃあないんだ。
これから先の戦いに備えて力を蓄えられるアドバンテージを捨ててしまうことと、もしかしたらまだ生きているかもしれない孫悟飯との対戦の機会が失われるのは惜しいところだが、まあ仕方ないだろう。
そんなわけで、この俺はこの8年、ひたっすらに戦い、野山を駆け巡り、弱きを助けず強きをくじく日々を送ってきたわけだ、正直ちょっと無頼の日々には飽きてきた感もある。
当初は楽しかった武道家との戦いも、こちらがどんどん強くなっていくせいでつまらなくなってきている。
(ちょうどさっきのチャパ王との戦いのように、技だけ味わってみてはそれが終わったらすぐ倒してしまうような戦いばかりで、戦闘の楽しみというものがまったくない)
だがそんな日々も折返しは過ぎた、……次の第21回天下一武道会にやっと悟空、クリリン、そして亀仙人扮するジャッキー・チュンが出場する。
俺の力を存分に振るい、試せる絶好のチャンスと、幼い頃からのヒーローとの再開が今から楽しみだ!
────そして、第21回天下一武道会当日、俺は驚愕の光景を目撃することになった。
ちらちらと惑星ポポルに居るカエルの糞の色を視界に入れつつ楽勝で予選を突破した俺の前にはずらりと武術家達が並んだ。
(バクテリアンは俺がぶっ飛ばした、汚い臭いといっても、各地を巡って様々な武術家や生物と戦った俺には問題にならない)
インド風の青年、翼竜?の獣人、ワイルドさの漂う青年、中華風の道着を着たかつらの老人、そして亀仙流の道着を着込んだ少年二人、しっぽが生えた知らない少女。
………しっぽが生えた少女?
誰このおっさん。
もとい、誰この女。
あまりの不自然さに怪訝な視線を向けていると、あちらも何やら驚いたような視線を返してきた。
「……アエ・ソシルミ……エア味噌汁?」
一人で何やらぶつくさと呟いている怪しげな少女。
その隣にいる、跳ねた髪の少年が問いかけた。
「どうしたんだ?ねえちゃん」
─────────「ねえちゃん」?