グラップラーソシルミ!   作:桐山将幸

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第一試合!そして二人の邂逅……

 一体あの女は何者だ?

 自分を棚に上げるようだが、本来存在しないはずの人物に対して俺は疑問を隠せなかった。

 ……悟空とあの女(孫紅流(ほんりゅう)というらしい)がスタッフに食事を用意されているのを尻目に、うっかり飯付きなのを忘れて持ち込んだおじやとバナナをかっこみながらでは格好つかないが。

 

 ともかく、俺は武道家でここは天下一武道会の会場だ、まずは試合のことを考えよう。

 

 まず、俺とヤツの二人が本戦に出場するにあたり、必然的に本来出るはずだった選手の内二人が予選のうちに敗れ去ることになった。

 具体的にはバクテリアン(臭い大男)とランファン(ナムに色仕掛けをする美女)が、それぞれ俺とヤツに差し替わっている。

 つまり、第一試合で俺はクリリンと戦わなくてはならないのだ。

 

 俺も武道家として戦闘経験や格闘技術の獲得に向け励む傍ら、かなりの重量のある荷物を背負って徒歩で旅をしたり、洞窟に潜む大量のコウモリと格闘したり、様々な障害物のある荒れた崖から飛び降りたりといった特訓により、普通の人間を超えた部分の力を鍛える訓練も欠かさずに行っってきた。

 その効果は決して彼らが行った亀仙流の修練に劣るものではない……はずだ。

 

 

 アナウンサーと管長による一通りの挨拶が終わり、第一試合が始まった。

 悟空とヤツがクリリンを激励しているが、……二人とも、どことなく勝てることを期待していないような雰囲気がある。

 おそらく、俺の力を見抜いているか、警戒しているのだろう。

 

 武舞台で向かい合う俺とクリリン、12歳の子供であることを差し引いてもかなりの小兵なクリリンと、190センチほどの身長を持つ俺とではそれこそ大人と子供ほどの差がある。

 俺の筋肉モリモリといったガタイもあって観客席からはクリリンを心配する声が上がっているが、こっちも正直言ってもかなり戦いにくい身長差だ。

 

 「こちらのクリリン選手はなんと若干13歳の出場者!そしてこちらの18歳の青年アエ・ソシルミ選手は前大会の優勝者です!」

 

 俺が前大会で優勝したことを知らされたことで、俺に対しては値踏みするような強い眼差し、クリリンに対しては不安と同情の視線が向けられる。

 ……悟空とともに壁を乗り出したヤツは俺を信じられないと言った顔で見ているが、あえて視線は向けず無視しておく。

 

 「うえ……、オレ勝てるかなぁ……」

 

 クリリンも慄いているが、これはおそらく俺の力を見てのことではなく、ただ単に前回優勝者の肩書にビビっているだけだろう。

 

 「クリリンさん!頑張って!」

 

 「オラも応援してるからなー!」

 

 身を乗り出した悟空とヤツが追加の激励を浴びせると、ようやくその怯えは収まったようで、戦意をたたえた顔つきをしている。

 

 「よ、よし!紅流さんも応援してくれてるんだ!頑張らないと……!」

 

 ……まさかコイツ、いや、うーん?

 

 かくして、改めてルール説明がなされると、いよいよ試合が始まることを確信した観客が静まり、それを見計らったようにアナウンサーが口を開く。

 

 「第一試合はじめッッ!!」

 

 

 その声と太鼓、銅鑼の音を前に俺とクリリンは臨戦態勢に入る。

 クリリンは軽く腕を広げた自然体の構え、俺は左を前にした半身で、左手を胴体の前に、右手を顎の横に置いた構え─────刃牙の構えだ。

 その瞬間、また横から驚愕の気配がするが、実力を知らない相手との戦いの中でよそ見をするほど俺は能天気な男じゃない。

 

 「………………」

 

 「………ごくり」

 

 「両者静かに睨み合っております!じっくりと相手の実力を測っているのでしょうか!」

 

 アナウンサーの言葉を合図に、クリリンが飛び出してきた。

 俺がチャパ王に放った初激よりも数段早い速度、流石は亀仙流だ────だが!

 

 「フンッ!!」

 

 飛び上がってのパンチが顔面に届く直前、ガードの左腕で払いのける。

 身体が浮き上がっている状態での衝撃に体勢を崩したクリリンは軽い悲鳴を上げるが、それでもすぐ手足を丸めて体勢を立て直しにかかった。

 

 ────だが、この隙を逃す俺ではない、上体を下げ掌底を叩き込み、そのままクリリンを前方へと弾き飛ばす!

 

 「うわぁっ!」

 

 まだ舞空術を持たないクリリンは、狭い武舞台をあっという間に飛び越し、場外の壁に激突した。

 

 「ク、クリリン選手場外!一瞬の出来事で間近に見ていた私にも何があったのかわかりません!とにかく、ソシルミ選手の勝利です!」

 

 (マイったなぁ、これで亀仙流の実力を測っておきたかったんだが、興奮のあまり場外にしてしまった)

 

 これは本当だ。

 最初の一合はあちらにこちらの実力を見せつけつつ二人の身体を温めるための準備運動くらいのつもりだったんだが……。

 クリリンがあまりに凄まじい力(旅の中でボコり倒してきた武道家基準)を持っているのが分かると、対抗心と楽しさが勝ってしまい、うっかり全力で叩き込んでしまった。

 

 「クリリン選手が凄まじい勢いでこちらに飛びかかってきたのを払い除け、更にもう一撃で武舞台からはじき出した、ハッキリ言ってアイツはチャパ王より強かったぜ」

 

 「な……なるほど……!相変わらずの凄まじいパワーとスピードで第一試合を突破したのはソシルミ選手です!!」

 

 その素早い体勢の立て直しを支える判断=戦闘思考の速度に、また俺は頭の中で亀仙流の凄まじさを実感していた。

 よく僅かな時間だけで13歳の少年をここまで鍛え上げたものだ、単なる訓練メニューの効果だけではあるまい、さすがは亀仙人、武天老師と呼ばれ、多くの偉大な師匠に師事したはずの弟子たちに頼られ続けるだけのことはある。

 

 しかし、俺が得た一勝の代償は大きくなるかもしれん、早くもダメージから回復して起き上がったクリリンは消沈し、自信を失ってしまっているようだ。

 

 このままではマズい、クリリンは主戦力としては頼りにならないが、立派なZ戦士の一員であり、戦力以外の面でもドラゴンボール世界のキーパーソンの一人だ、

 それが最初の勝利を得るはずの場で負けてやる気を失ったら、予選での勝利があるとはいえ将来に落とす影は大きいだろう。

 ここは……!

 

 

 「うぅ、負けちゃった……」

 

 「その様子だと大丈夫そうだな、ずいぶん強くぶっ飛ばしたつもりだったんだが、すごい鍛え方だ」

 

 武舞台脇をトボトボと歩くクリリンに声をかける、大して『いい勝負だったね!(爽やかな笑み)作戦』だ!

 

 「あ、アエ選手!いえ、そんな……ボクはあなたにたった一撃で……」

 

 「いや、お前は大したもんだ、俺が初優勝した大会にお前が居たら優勝できていたかどうか分からん」

 

 「そんなことはないですよ、アエ選手はボクより力もあるし技もすごいじゃないですか」

 

 「何しろ当時、俺はお前と同じ13歳だ、俺と比べるならあと5年は修行することだ……そうなったら、きっとお前は今の俺より強い武道家になってるだろうな」

 

 「本当ですか!?」

 

 よし、少し自信を取り戻してきたみたいだ。

 

 「本当だとも、もちろんその頃には俺は更に強い武道家になっているし────お前のような奴が居るのがわかった以上、更に激しい鍛錬を積む、23の俺には23のお前じゃ敵わんかもしれんぞ」

 

 「……ごくり」

 

 更に強くなった俺の姿を想像して息を飲むクリリン、だがこの世界じゃ今の俺なんかと比べてちゃどうしようもないような敵がわんさか出てくるんだぜ。

 

 「次の天下一武道会で会おう……と言っても、まだ俺は試合があるから、しばらくここに居るがな」

 

 「は…はい、次はがんばります!」

 

 

 (……よし、これくらいで十分だろう)

 

 「わざわざクリリンさんを元気づけたりして、罪滅ぼしのつもりですか?」

 

 「……なんのことだ?」

 

 控室で次の試合に備え炭酸抜きコーラをガブ飲みし、梅干しをかじる俺に、100センチと少しのロリが話しかけてきた。

 ヤツだ。

 

 「とぼける必要はありません、気を遣うくらいなら何もしなければいいのに」

 

 「何のことかは分からないが、俺にだって強い戦士と戦う権利くらいあるだろう」

 

 「まるでサイヤ人のようなことを言いますね、地球人のくせに」

 

 「───ッッ!!」

 

 戦闘民族サイヤ人、ドラゴンボールの主人公である孫悟空の種族だ。

 彼らの特徴は人間を遥かに超えた身体能力と特殊能力、戦いのために老いすら先延ばしにする生態、そして何より未だに全容が知れない特殊な変身能力の数々。

 心身ともに戦闘に特化した彼らは、宇宙最強と謳われた一族にも伝承という形で傷跡を残すほどで────。

 

 ────それ故に、現在(原作開始時)には宇宙の帝王フリーザに惑星ごと葬り去られ、僅かな生き残りを除き全滅している。

 

 いや、滅ぶ滅ばないではない、おかしいのだ、この星には数人しか「サイヤ人」などという種族名を持つものは居ないはずだ。

 (あらゆる知識を持つ『ズノー様』のような人物が地球に居れば別だが……案外居そうなのが恐ろしいところだな)

 そして、誰も知らないはずの知識を、使って、わざわざひけらかすように同意を求める者など居るはずがない。

 

 「まあ、いいです。貴方が余計なことをするようなら、私が倒しますから」

 

 ずいぶん物騒な事を言う女だが……こいつから感じる圧は本物だ。

 そして、コイツが何者かも、概ね理解できた。

 

 「クリリンのことが心配なら、お前がもうちょっと励ましてやれ、ちょっと煽ててやりゃあ効果てきめんだろうぜ」

 

 「……クリリンさんを馬鹿にしないでください、それに、言われなくたって励まします」

 

 いや、クリリンが単純なヤツと言いたい訳じゃないんだが……、本当に気付いてないなら、俺が言う話でもないか。

 

 「まあいい、お前もずいぶん鍛え込んで来たんだろう?せっかくの天下一武道会なんだ、続きは武舞台でやろうぜ」

 

 「……師匠に勝てるつもりで居るんですね」

 

 「さあな、やってみなきゃ分からん」

 

 そうだ、クリリンですらあのレベルの亀仙流、存分に楽しませて貰おうじゃないか。




続いちゃいました。
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