魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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/08 Mock-Krieg

ヴァイスからの頼まれ事から2日が経った日の夜。

俺はランスター達の特訓の監視(?)をヴァイスにぶん投げて、部隊長室に来ていた。

その目的は──

 

「聖遺物の力を使いこなしたい、か……」

 

「ああ」

 

先日思い付いた、聖遺物の制御について。

現状、俺はこの十字架について全く理解が及んでいない。

能力だってあの隔離街の一件以来使っていない。

使い方が分かっていても、使いこなせないのでは意味が無い。

そういうワケで俺は八神に直談判しに来た、というのが顛末だ。

ソファの対面に座った八神が口を開く。

 

「確かに、スカリエッティも聖遺物──或いはそれに類する力を持っていると判明した以上、現状で対抗出来そうなクレンのその十字架の習熟は必要やね」

 

「だが、聖遺物の使用には本局への許可申請が要る、だろ?」

 

「せや」

 

聖遺物……ひいてはロストロギアと言うものは先史文明や各次元世界に於いて発見、発掘された現代技術では解明、制御が難しい代物の総称だ。

当然ながらどれもこれも未知なので制御方法が最初から確立されてる筈もなく。

そんな物を担い手だからとホイホイ使わせて暴走でもされたらそれこそ最悪だ、という至極全うな理由で使用には細心の注意と警戒の為に本局への許可申請が必須となっている。

現に八神が持っている夜天の書……だったか。あれも使用制限が掛けられ、制限解除には特別な申請が必要だ。

 

とどのつまり、八神が言いたいのは『現状では難しい』だろう。

 

「まあ、難しいよな」

 

「せやなぁ……ロストロギアならまだしも、聖遺物なんて管理局始まって以来の未知の代物となるとおいそれと許可も降りんやろなぁ」

 

「そもそも俺の立ち位置自体、かなり綱渡りな状態なんだろ?」

 

「うん。本来なら問答無用で本局の研究室送りなとこをアレコレやって嘱託魔導師にしてる」

 

つまりこれ以上は無理が効かないって事か。

何となく予想はしてたからそこまで残念な気分ではないが。

となると俺に出来るのは今まで通り、通常訓練あるのみ、か。

 

「ま、ダメ元で聞いただけだし、仕方ないさ」

 

「ごめんなぁ」

 

「八神が謝る事じゃ無いだろ、組織の決まりじゃしゃあないさ。悪かったな、時間とらせて」

 

「構へんよ、寧ろ嬉しいくらいや」

 

「……嬉しい?」

 

席を立とうとして聞こえた八神の言葉に首を傾げると、八神はクスクスと笑った。

 

「最初はあんな突っ慳貪な感じやったのに、こうしてちゃんと相談しに来てくれるようになって来た事が嬉しいんよ」

 

「……言ってろ」

 

笑う八神の様子に、どうにも心がざわついてしまい、そんな言葉しか返せなかった。

それでも八神はニコニコと笑うもんだから気が抜けてしまう。

この寛容さだからこそ、此処の連中は着いてくるんだろうな。

 

「はぁ……大した奴だよ、本当に」

 

「へ?」

 

「……あ」

 

やべ、口に出ちまった。

 

「今なんて?」

 

「何でもねぇよ」

 

「いや今絶対うちの事大した奴だよって」

 

「しっかり聞いてんじゃねぇか畜生!!」

 

思わず天を仰ぐ。

あぁ畜生、今すぐ数秒前の俺を殴りたい……。

そして正面を見れば先程とは違う、にやけ面の八神が。

……こんな時は。

 

「よし、聞きたいことも聞いたからもう行くわ。じゃあな」

 

「あ、ちょ──」

 

逃げる!!

俺は早口で別れを告げると即座にソファから立ち上がり、速攻で部隊長室から出た。

 

「また何時でも来いや~」

 

……ぜってぇに行かねえ。

 

背中に掛けられた八神の声に強く決意して俺は足早に部隊長室から離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

逃げるようにして建物の外に出ると、穏やかな風が頭を冷やしてくれた。

見上げれば最早見慣れた夜空が広がっている。

 

「ふぅ……」

 

昔から空を眺めていると自然と落ち着くタチで、少し妙な荒れ方をしていた内心も呼吸する度に沈静化していく。

耳をすませば遠くからランスター達の自主練の音が微かに聞こえる。

ヴァイスに監視を押し付け……もとい任せているのでそちらには向かわず、シミュレーターがある海岸側へと足を運ぶ。

特に理由はないが、強いて言うなら気分だ。

時間が時間だからか、昼間とはうって変わって静かな敷地内を歩いていくと、もはや嗅ぎ慣れた潮の匂いと月を写す海面が見えた。

 

「……先客が居たみたいだな」

 

「あれ?クレン君?」

 

シミュレーターフィールドの前に着くと、高町が端末を弄っていた。

画面を見ると、どうやら明日の訓練用にセッティングを変えていたようだ。

 

「よお。こんな時間まで仕事か?」

 

「明日の模擬戦用にフィールドの調整をね」

 

「ふうん……」

 

普段俺やナカジマ達が訓練で動き回ってる裏ではコイツやシャーリーがこうして色々やってたんだな……。

 

「クレン君はどうしてここに?」

 

「八神から逃げてきた」

 

「はやてちゃん何をしたの……」

 

俺の答えに高町が苦笑いを浮かべる。

 

「何時ものからかいだ。ったく、ギャップ有りすぎんだろアイツ」

 

「まあ、それがはやてちゃんだし……私も色々されてるから」

 

「アンタも苦労してんな……」

 

ぼそっと呟かれた言葉に思わず同情する。

聞けば高町と八神、ハラオウンは子供時からの付き合いらしく、その頃からあの調子だったと考えれば高町の苦労も推し量れる。

 

「そういえば、ティアナとスバルはどう?無理してないかな?」

 

「やっぱ、気付いてたか」

 

端末に向き直った高町の問いに俺は肩を竦めた。

幾ら隠そうとしても魔力を多少なりとも使っていれば察知されるのは当然だ。隊長格たる高町なら尚更だろう。

 

「まあね。私としては、あんまり無理はしてほしく無いんだけれど」

 

「俺とヴァイス……主にヴァイスがそこら辺見て止めてるよ。アイツらほっとくと日跨ぐまでぶっ通しでやりかねないしな」

 

「そっか……因みに練習内容とか分かる?」

 

「主にツーマンセルの連携だな。あとは軽い組み手だ」

 

さっと答えてから煙草を取り出そうとして──止めた。何となく、気分じゃない。

 

「ティアナとスバルは結構無茶するから、心配なんだ」

 

「だろうな、端から見ててもそう思う。特にランスターは何かに焦っているようだし」

 

「ティアナが?」

 

そこで俺は一つ頷いてから高町に問いを投げ掛けた。

 

 

「なあ高町。才能って何だと思う?」

 

 

暫くの沈黙の後、高町は答えた。

 

「私の思う才能は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

天気は雲一つない清々しい快晴。

それを、真っ白な煙で汚す。

 

「──で、今日は模擬戦なわけだが」

 

「ああ」

 

「お前からみてあの二人、やらかす(・・・)と思うか?」

 

いつぞやと同じように駐機場の壁に寄りかかり煙草を吸い、煙を吐き出す。

それを二回ほど繰り返してから隣に座るヴァイスの問いに答える。

 

「やるだろうな」

 

「だよなぁ……一応忠告はしたんだぜ、これでも」

 

「精々なにも起こらないことを祈るんだな」

 

「お前それフラグって言うんだぞ……」

 

がくりと肩を落とし、ヴァイスは盛大に溜め息を吐いた。

まあ、気持ちは分からんでもない。

 

「最悪、高町がキレるだろうな」

 

「ああ……」

 

昨夜話した様子だと、ヴァイスが以前言った通り余り高町にも余裕が無さそうなのは何となくだが察せた。

……今日の模擬戦は、一波乱ありそうだ。

吸い殻を携帯灰皿に捩じ込んで、壁から背を離す。

 

「一応、アイツらの動向は見といてやるよ。俺にも責任はあるしな」

 

「あいよ、俺もできる限りフォローするわ」

 

お互い顔を見ずにそれだけやり取りすると、俺はシミュレーターフィールドに、ヴァイスは駐機所の中へとそれぞれ別れた。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ今日は基礎教練のまとめとして、模擬戦をやっていくよ。ルールは簡単。制限時間内に私のBJに一撃、損傷を与える事。これまで教えた事をよく思い出して攻撃を当てるように」

 

「「「「はい!」」」」

 

シミュレーターフィールドは姿を変え、何時もの廃ビル群になっていた。

その中で高町が整列したランスター達に模擬戦のルールを説明している。

かく言う俺はそれをビルの屋上から眺めていた。

 

「お前は行かねぇのか?」

 

俺と同じように欄干に身体を預けたヴィータが訊いてくる。

コイツとはヴィーザルのフィッティング以来話す機会が増えた。

口調こそ粗野だが、性格はかなりの仲間思いのようだ。

風に揺れる赤髪を目端に捉えながらも質問に答える。

 

「俺はこれが終わってからだからな。順番待ちって所だ」

 

「相手は?」

 

「シグナムとハラオウン」

 

「隊長格二人同時かよ……ホントブッ飛んでるなお前」

 

「我が身の事ながら同意するわ」

 

隔離街に住んでた頃なら、管理局の隊長格二人同時に相手にしろとか言われたら即刻逃げてたわ。

それが今となっちゃそれ位じゃないと模擬戦にならないとか……。

 

「まあシグナムだけとタイマンじゃ、またあん時みたいにシミュレーターがエラー落ちするまでやるだろうしな」

 

そう、以前模擬戦をシグナムとタイマンでした時はお互い熱が入り過ぎてシミュレーターがエラーを吐く程やり合ってしまい、ハラオウンが止めに入らなかったらシミュレーターがぶっ壊れていた可能性すらあった、という事があったのだ。

今回はその反省点を踏まえ、最初からハラオウンに模擬戦の参加ついでに俺達がやり過ぎないように監視を頼む事にした。

 

「流石に前回みたいにはならねぇ……筈だ」

 

「不安になる言い方やめてくれよ……」

 

この前ん時はシャーリーの奴にシグナムと揃って説教されたからな……三時間も。

シスターの説教もまあ怖かったが、やはりというか女を怒らせると怖いのは何処に行っても同じらしい。

 

「ヴィータ副隊長、クレンさん、おはようございます!」

 

「おはようございます!」

 

「キュル~!」

 

そんな会話をしていると説明を聞き終えたエリオ、キャロ、フリードが屋上にやってきた。

 

「おう、おはよう」

 

「おはよう。エリオ達が来たってことは、最初はランスターとナカジマか」

 

挨拶を返してからビル群を見やると、既に高町達はここから結構な距離を置いて準備を始めていた。

さて、アイツら無茶しなきゃいいが……。

空中にモニターが投影され、高町達の姿が映し出される。

 

「なあ、クレン」

 

「あん?」

 

模擬戦が始まろうというタイミングでヴィータが再び声を掛けてきた。

 

「アイツら、なのはから一本取れると思うか?」

 

「……」

 

そんな試すような問いに俺は少し考えて──答えた。

 

 

 

「無理だな」

 

 

 

──模擬戦が、始まった。

 

 

 




次回、頭冷やそう回
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