魔法少女リリカルなのはStS -Ende der Rache, schlaf mit umarmender Liebe-   作:フォールティア

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/07 Begegnung

『本艦はまもなく惑星エルトリア付近に到着します。次元潜航状態から通常航行に移行しますので、各員は指定位置にて待機して下さい。繰り返します──』

 

八神との会話から暫く経ち、軽い朝食も済ませた午前九時頃。

そんな放送が流れ、艦内がにわかに騒がしくなる。

 

「いよいよか」

 

「みてぇだな」

 

待機場所である一室で暇潰しにと喋っていたヴィータが特に慌てる様子もなく憮然と答えた。

 

「緊張してるか?」

 

「少しはな。流石に初めての事ばかりじゃこうもなる」

 

悪戯っぽい声音の質問に肩を竦める。

次元潜航だの、惑星調査だの、普通じゃ経験すること無いだろ。

そんな俺のひねくれた返しにヴィータは「確かにな」とか言いながら笑う。

 

「ま、そんぐらいの緊張感は持っておいた方がいいぞ。緊張しないってのはそれはそれで問題だしな」

 

「なるほどな…………じゃあ、あれはどうなんだ?」

 

すっと指を指す。

その先にはカタカタ震えているナカジマとそれを必死に抑えようとしているランスターが居た。

 

「ありゃ逆に緊張しすぎだ」

 

ヴィータが盛大に溜め息を吐いて、額に手を当てる。

 

「ったく、あれじゃいざって時に動けねぇだろ……」

 

あとで発破かけてやるか、と憮然とした顔でそう付け足すとヴィータが外を見る。

つられて外を見ると同時に、小さな揺れを感じる。

次の瞬間、見えた景色はこれまでとは違うものだった。

 

「……」

 

「お、着いたな……ってクレン?どうした?」

 

目の前に広がる暗闇。それを埋めるように輝く那由多の星。

圧巻と言う他ない光景に、俺はただ息を呑むしかなかった。

 

「ああ、お前達は宇宙は初めてだったか」

 

いつの間にか横に立っていたシグナムが俺や、ナカジマ達を見て言う。

 

「よく見ておけ。この無数の星々、世界を回り守るのが我々の仕事だ」

 

「守る……か」

 

柄じゃない。そうは思うが、強く否定する気にはなれなかった。

そんな感傷に浸っていると、ヴィータが手を叩いて注目を集める。

 

「よーしお前ら、これからブリーフィングだ。さっさと行くぞ」

 

そう言ってシグナムと共に先導して全員で部屋を出る。

扉が閉まる間際、振り向いて見た星の輝きは、暫く忘れられそうにもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一時間後。

艦はエルトリアの成層圏ギリギリに停まっていた。

ちょうど変質されたとされるコロニーの真反対の位置だ。

 

「しっかし、まさかこんな代物まで用意してあるなんてな……」

 

対面に座ったヴィータが物珍しそうに周りを見渡す。

 

「私達も初めて乗りましたよ。この『ランチ』って言うのは」

 

隣に座ったランスターもヴィータと同じようにキョロキョロとしながらそれに同意した。

『ランチ』と呼ばれたこれは、何でも最近開発されたばかりの『広域未開拓惑星探査用小型輸送艇』……らしい。

「陸も空も宇宙も行けるちょっとデカいキャンピングカーや」なんて八神は言ってたが、そもそもキャンピングカーが何なのかわからない。

……まあそれはそれとして、調査の長期化の予想と、第一次調査での失敗の対策として今回初めて運用されることになったらしい。

車、と言うには大きすぎるこれに、実働隊である、ライトニング、スターズ、そして八神とリインフォースと俺。

もう一台に医療スタッフとデバイスメンテナンスの為の開発課が搭乗している。

 

「……時間やね」

 

空間投影された時計を見て、八神は声を上げた。

 

「これより、惑星エルトリア第二次調査を開始します!」

 

『ランチ一番二番、発進します!』

 

パラディオンのオペレーターの声と同時にランチが加速し……

 

俺たちはエルトリアへと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

一方、エルトリアでは。

 

「何だ、アレは?」

 

荒れ果てた台地の上で死に絶えた肉塊を踏みつけた黒衣の女性が、空から落ちる一条の光を見つけた。

 

「隕石……にしては軌道がおかしいですね」

 

傍らに立つ暗い赤衣の女性もそれを見つけて目を細める。

仰々しい左腕の籠手には機械らしき物の首が雑に握られていた。

 

「もしかして、フェイト達かな!?」

 

濃紺色の軽装に身を包んだ女性が期待したような目で光を見つめる。

対して黒衣の女性は首を横に振る。

 

「さあな、逆に『彼奴ら』の新しい玩具かも知れん。直線で堕ちてくる隕石なんぞ、有り得んからな」

 

「如何しますか、王よ」

 

「無視も出来まい。丁度手も空いたのだ、偵察に行くぞ」

 

「はっ」

 

「了解っ!」

 

王と呼ばれた女性が飛び立つと、二人の女性もまた空へ飛び立つ。

果たしてあの光はこの淀んだ空を晴らしてくれる物か、或いは──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大気濃度、魔力濃度安定。周辺十キロ圏内に熱源反応無し。何時でも降りれますぜ」

 

聞き慣れたヴァイスの声に瞼を開ける。

どうやら到着したらしい。

 

「てか居たのかヴァイス」

 

「最初から居ただろ!?てかお前の席から運転席見えてたよなあ!?」

 

「いや気にしてなかった」

 

「辛辣ッ」

 

態とらしく胸を抑えて苦しむヴァイスは放って置くとして「冷たくないか?なあ」……放って置くとして、俺は座席から立ち上がり八神たちの後ろについてランチを降りた。

念のためにとデバイスを起動し、エルトリアの地を踏みしめた。

 

「……見渡すかぎりの荒野だな」

 

ぐるりと周囲を見ても代わり映えのしない赤茶けた荒野が広がっているだけだ。

木の一本も生えちゃいない。

ナカジマたちは物珍しそうに見ているが、俺は気になったことがあり八神に近付く。

 

「なあ八神、降下地点はここで合ってたのか?」

 

「いや、違ってる。降下前に確認したポイントと何十キロとズレとる」

 

顎に手を当てて考え込んでいた八神がそう答えた。

 

「ズレてる?」

 

「そや。数メートル位ならまだ誤差で済ませられるけど、流石に何のアクシデントも無しにキロ単位でズレるなんてのは普通ありえへんからな」

 

確かに可笑しな話だ。

直前まで合っていた降下地点がいざ降りた途端ズレているなんてのは。

そう思い、頷こうとした所で感の良くなった耳が音を掴んだ。

 

「……予想より状況が進んでるのかも知れんね。とりあえずは周辺の調査を──」

 

「待て」

 

八神の話を遮り、耳を澄ます。

この距離……近いな。

 

「ヴァイス、周辺に熱源反応は無いんだな?」

 

通信を開いてヴァイスに問う。

その間も音は段々と近づいてきている。

 

『待ってろ……ああ、熱源反応は無いな。どうかしたのか?』

 

返ってきた答えに俺は危機感を強めた。

何故ならあり得ないからだ。

この世界に『熱を出さずに動ける物など無い』。

 

「警戒態勢!」

 

異変に気付いた八神が叫ぶと、高町達を筆頭として即座に陣形が組まれる。

そこから一歩踏み出し、俺は遠くを見据える。

 

「なんだ……ありゃ?」

 

そうして見えてきたのは視界一杯に広がる土煙と、黒い『ナニカ』だった。

 

「クレン君、見える?」

 

「ああ……黒い何か、獣みてえな奴が軽く二十……いや三十……っ!?」

 

高町の問いに答えようとして、俺は咄嗟にヴィーザルを正面に構え障壁魔法を展開した。

耳障りな音と共に、向こうから飛来した物体が障壁に衝突する。

 

「何っ!?」

 

「奴さん、やる気みてぇだぞ八神!!」

 

ナカジマの驚愕を遮って八神に叫ぶ。

同時に障壁魔法の範囲を広げ、ランチを含めた部隊全体を包むと、次々と物体が雨のように飛来する。

 

「あの距離から撃ってくるか……なのはちゃん、見える?」

 

「うん、クレン君が防いでくれたおかげで方向と距離もバッチリ」

 

八神の言葉に何かを察したのか、高町が俺の隣に立ち、レイジングハートを腰だめに構えた。

 

「レイジングハート、カートリッジリロード」

 

《Reload》

 

ガコン、と小気味のいい音を鳴らして空薬莢が排出される。

そこで俺も高町が何をするのか理解して、障壁の一部に穴を開けた。

丁度、レイジングハートが通る程度の大きさだ。

 

「相手の防御力は未知数だ。気をつけろよ」

 

「うん、分かってる」

 

レイジングハートの先端に魔法陣が展開し、魔力球が精製される。

そして。

 

「ディバイン──」

 

彼我の距離にして30kmを。

 

「バスターー!!」

 

桃色の閃光が引き裂いた。

 

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